アーモンド

almond
扁桃 アマンド

ナッツ類の代表格であるアーモンドは、古来より食用として愛されている植物です。
近年では、アーモンドのビタミンE含有量に注目が集まっており、生活習慣病を予防する効果が高いと期待されています。

アーモンドとは?

●基本情報
アーモンドは、バラ科サクラ属に属するアンズなどと近縁の植物です。
桃や梅は果実が食べられますが、アーモンドは仁と呼ばれる最も内側の部分が食用とされます。
アーモンドの花は桜に似ており、2月から3月にかけて開花します。

●アーモンドの歴史
アーモンドと桃はもともと同じ原種でした。
しかし、太古の地殻変動で隆起した中央アジア山脈により中東と東アジアに隔てられ、それぞれの地域で異なった進化を遂げてきました。
桃は比較的湿度の高い中国の低地を中心に生育し、アーモンドは乾燥した西アジアから中央アジアの砂漠や丘峰の斜面などに自生するようになりました。
原種のアーモンドは、天山山脈西方の山裾からチグリス・ユーフラテス川の流域にかけてさらに進化を続け、硬い殻に覆われた小さな実をつけるようになりました。
やがて、人々はアーモンドの実が甘く食用として適していることに気づき、特に遊牧民の携帯食として用いられるようになりました。
西アジアの集落近郊や中央アジアと中国を結ぶ、後にシルクロードと呼ばれる交易の道筋に、遊牧民や旅人の懐から転がり落ちたアーモンドが野生の林になり、これをきっかけにアーモンドは自生範囲を広げてきました。現在でも中央カルフォルニアの川べりや道路などに野生のアーモンドが見られます。
アーモンドは紀元前4000年頃には、メソポタミアなどの文明で食べられるようになりました。
この時期は、人類が樹木の栽培をするようになった時期とも重なっています。そのため、アーモンドの栽培はチグリス・ユーフラテス川流域からヨルダンやイスラエルなどの地中海沿岸へと広がっていきました。
アーモンドは暖かい春、暑く乾燥した夏、温暖な秋、雨の多い冬といった地中海性気候に適していることから、アーモンドの栽培は急速に拡大していきました。
その後アーモンドは地中海に沿ってエジプトやトルコへと広がり、やがてヨーロッパの地中海沿岸の諸国へと普及していきました。さらに、アーモンドはアレキサンダー大王の東方遠征により、地中海西方の地域へも拡大していきました。
18世紀の中頃、スペインの宣教師フニペロ・セラ神父によりアーモンドがカルフォルニアに伝えられました。
アメリカでは、東部や中部でもアーモンドの栽培がされていたようですが、定着したのはカリフォルニアだけでした。1840年代に入るとアーモンドの本格的な栽培が始まり、現在では世界のアーモンドの8割以上がカルフォルニアで生産されています。

●アーモンドの収穫方法
アーモンドの実の収穫は8月~9月に行われます。外側の果肉が裂け乾燥した殻が見えてきた時に、木をゆすって収穫します。その後、3~4日ほど日光によく当て、外側の果実と殻を取り除きます。
殻なしのアーモンドを購入した場合は、酸化による劣化が早いため、密封された缶などに入れ冷暗所に保存します。

●アーモンドの種類
アーモンドの主な種類は以下の通りです。
・スイートアーモンド
食用として栽培されているアーモンドのほとんどがスイートアーモンドです。カルフォルニアで栽培されているアーモンドの100%を占めます。

・ビターアーモンド
野生種のアーモンドです。アミグロタリンという青酸化合物を含んでいるため、苦みがあり、多量に食べると有毒であるといわれています。ヨーロッパや中近東で生産されています。
青酸化合物を含んでいるため、日本には輸入することができません。香料として使用されることが多い種類です。

・アプリコットカーネル(杏仁)
スイートアーモンドやビターアーモンドよりも小型ですが、中国ではアーモンドと混同されています。杏の仁の部分を指し、ビターアーモンドと同様の香りを持つためビターアーモンドの代用とされることもあります。
古来より咳止め等の漢方薬とされ、杏仁豆腐の材料として用いられていることでも有名です。

●アーモンドに含まれる成分と性質
アーモンドの主成分は脂質ですが、そのほとんどはオリーブ油などに含まれるオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸です。オレイン酸は血栓予防に、リノール酸は体内のコレステロール排出に働きかけます。
アーモンドはナッツ類の中でもビタミンEビタミンB₂の含有量に富んでいるといわれています。
ビタミンB₂は代謝を高め、ビタミンEは活性酸素[※1]を除去する力を持つため生活習慣病の予防に効果的であるといわれています。他のナッツ類に比べアーモンドには特に多くのビタミンEが含まれています。
また、アーモンドには、カルシウムたんぱく質も豊富に含まれており、肝臓を保護する働きがあるため、お酒のおつまみに適していると考えられています。

[※1:普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

アーモンドの効果

アーモンドには、オレイン酸やリノール酸、ビタミンB₂、ビタミンEなどの有効成分が含まれるため、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●生活習慣病を予防する効果
不飽和脂肪酸には、血中コレステロール値を低下させる働きがあることが証明されています。
アーモンドに含まれる8~9割以上の成分が不飽和脂肪酸であるため、アーモンドを常食するとコレステロール値を低下させることができると考えられています。
カリフォルニア州で行われた研究では、1日100gのアーモンドを摂取した高血圧の患者がわずか3週間で血中コレステロール値を8~15%低下させるという結果が出ています。
さらにアーモンドには様々な栄養素が含まれているため、より血中コレステロール値を低下させる働きがあるという報告がされています。
また、日常生活で体内に発生する活性酸素は、血中の脂質を酸化させるため動脈硬化の原因となります。
アーモンドに豊富に含まれているビタミンEには体内の活性酸素を除去する働きがあり、血中の脂質の酸化を防ぎ血管を若々しく保ってくれるため、動脈硬化の改善や予防に効果を発揮するといわれています。
さらに、アーモンドを食べる習慣のある人は食べる習慣のない人に対して体重を維持、または減少させる働きがあるという報告もあります。
このように、様々な働きを持つ成分が豊富に含まれているアーモンドには、生活習慣病を予防する働きがあるといわれています。【1】

●老化を防ぐ効果
アーモンドに含まれているビタミンB₂には、健康的な肌や爪、髪を維持する働きがあります。
また、若返りのビタミンと呼ばれるビタミンEには肌荒れを防ぐ働きがある他に、肌の老化につながる活性酸素を除去する働きがあるため、老化を抑制する働きがあるといわれています。【2】

●貧血を予防する効果
貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少している状態を指します。
ヘモグロビンは、呼吸をした際に肺に取り込まれた酸素を全身の組織に供給する役割を果たしています。ヘモグロビンの量が減ると、細胞に供給される酸素が不足します。このため、顔が青白くなる、少し動いただけでも息切れがする、動悸が起こる、疲れやすくなる、立ちくらみがするなどの症状が起こります。
アーモンドにはヘモグロビンの材料となる鉄が豊富に含まれているため、貧血を予防する効果があるといわれています。

●便秘を解消する効果
アーモンドには不溶性食物繊維が豊富に含まれており、便秘解消に効果的であるといわれています。

アーモンドは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○生活習慣病を予防したい方
○老化を防ぎたい方
○貧血を予防したい方
○便秘を解消したい方

アーモンドの研究情報

【1】アーモンドには、抗酸化作用やコレステロール低下作用、抗炎症作用を持つことから、アーモンドは心臓血管疾患予防や糖尿病予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22296169

【2】マウスにアーモンド抽出物を摂取させたところ、紫外線による皮膚老化や皮膚中の過酸化脂質の増加が抑制されたことから、アーモンド抽出物は紫外線から肌を守る作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17348990

【3】アーモンドの皮抽出物は、免疫細胞(単球細胞)を活性化し、IFNαやIL-12、TNFα の産生を促進することにより、抗菌作用ならびに抗ウイルス作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20438761

参考文献

・本多京子 食の医学館 小学館

・吉田企世子 松田早苗 あたらしい栄養学 高橋書店

・Kamil A, Chen CY. (2012) “Health Benefits of Almonds beyond Cholesterol Reduction.” J Agric Food Chem. 2012 Feb 17. [Epub ahead of print]

・Sultana Y, Kohli K, Athar M, Khar RK, Aqil M. (2007) “Effect of pre-treatment of almond oil on ultraviolet B-induced cutaneous photoaging in mice.” J Cosmet Dermatol. 2007 Mar;6(1):14-9.

・Arena A, Bisignano C, Stassi G, Mandalari G, Wickham MS, Bisignano G (2010) “Immunomodulatory and antiviral activity of almond skins.” Immunol Lett. 2010 Aug 16;132(1-2):18-23. Epub 2010 May 11.

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