β-クリプトキサンチン

β-cryptoxanthin
β-CRP

β-クリプトキサンチンとは、温州みかんに特異的に多く含まれているカロテノイドの一種です。体内蓄積期間が他のカロテノイドよりも長く、血液によって体の隅々まで届けられます。近年、多彩な健康機能が期待される成分として注目されています。

β(ベータ)クリプトキサンチンとは

●基本情報
β-クリプトキサンチンは、みかんに含まれるだいだい色の色素で、カロテノイドの一種です。β-クリプトキサンチンはカロテノイドの中でも、キサントフィルに分類されます。私たち動物はカロテノイドを生合成することができないため、植物や一部の動物などが合成したものを摂取する必要があります。食品として摂取したカロテノイドは、小腸上皮から吸収された後、血液によって体の隅々まで届けられます。β-クリプトキサンチンの含有量が高い温州みかん1個で1日に必要なβ-クリプトキサンチンを摂取することができます。β-クリプトキサンチンは柑橘系の果物の皮に多く含まれていますが、特に温州みかん(うんしゅうみかん)の皮に多く含まれています。発ガン物質や活性酸素などの有害物質が体内の健康な細胞を傷つけるのを防ぎます。

●β-クリプトキサンチンの歴史
カロテノイドの研究自体は、19世紀の初頭に既に始まっていました。
β-クリプトキサンチンの研究は、β-カロテンやα-カロテンなどの他のカロテノイドに比べてまだ発展途上ですが、近年、β-クリプトキサンチンの含有量が多い温州みかんをよく摂取する日本において、新たな研究成果が次々と発表されています。

●β-クリプトキサンチンの体内蓄積
β-クリプトキサンチンは脂溶性[※1]の成分で、β-カロテンやリコピンなどの他のカロテノイドよりも長期間体内に蓄積されます。体内蓄積期間がある程度長いため、冬期に温州みかんを食べることで血清β-クリプトキサンチン濃度が高まり、夏期に温州みかんが食べられなくても、継続して健康をサポートしてくれます。

●β-クリプトキサンチンを減少させるもの
体内のβ-クリプトキサンチンの量は喫煙や飲酒、肥満などによって減少するという報告があります。酒やたばこは体内で活性酸素[※2]を生み出します。体内の活性酸素に対抗するため、β-クリプトキサンチンが利用されていると考えられます。

[※1:脂溶性とは、油に溶けやすい性質のことです。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べて著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

β(ベータ)クリプトキサンチンの効果

●骨粗しょう症を予防する効果
β-クリプトキサンチンには、閉経後の女性に多い骨粗しょう症を防ぐ働きがあります。骨粗しょう症とは、古くなった骨を壊す「骨吸収」は進むけれども新しい骨をつくる「骨形成」は行われず、骨の代謝バランスが崩れて骨はスカスカになってしまう状態をいいます。β-クリプトキサンチンの直接作用により、破骨細胞数を減少させて骨吸収を抑制するとともに、骨形成を促進し、骨密度[※3]だけでなく、骨質や骨代謝も改善することが明らかにされています。【1】

●糖尿病の進行を抑制する効果
糖尿病とは、血液中にあるブドウ糖濃度が異常に高い状態をいいます。β-クリプトキサンチンは、耐糖能[※4]を改善し、血中インスリンを低下させ、脂肪細胞の肥大化を抑制する効果が報告されています。【2】

●免疫力を高める効果
β-クリプトキサンチンを経口摂取させることで、体内の免疫系が活性化され抗体などの免疫たんぱく質の産生が促進されたこととがわかっています。マウスに2週間にわたってβクリプトキサンチンを経口投与させたところ、体内のIgMとIgAという抗体濃度が上昇し細胞性免疫に関わるインターフェロンという物質の酸性も促進されました。
また、β-クリプトキサンチンは、発ガン性物質から体内の健康な細胞を守り、その効果はβ‐カロテンの5倍になります。【3】【5】

●美肌効果
β-クリプトキサンチンは皮膚にも比較的多く存在していることが知られています。ヒトの表皮細胞を用いた実験で、β-クリプトキサンチンはヒアルロン酸合成酵素の活性化を誘発し、ヒアルロン酸の量を増やすことが分かりました。また、表皮の水分保持のために存在しているアクアポリンという器官の発現量が増えるということもわかっており、美肌の維持に有効であることが示されています。【4】

[※3:骨密度とは、骨の密度をいいます。一定の面積あたり骨に存在するカルシウムなどのミネラルがどの程度あるかを示し、骨の強度を表します。]
​[※4:耐糖能とは、血糖値を正常に保つ働きのことです。食物を摂取した際、通常であればホルモンの一種であるインスリンの働きによって血糖値は一定に保たれますが、インスリンがうまく働かないと血糖値のコントロールができなくなり、糖尿病の原因となります。]

β-クリプトキサンチンは食事やサプリメントで摂取できます

β-クリプトキサンチンを含む食品

○温州みかん
○でこぽん
○ぽんかん
○パパイヤ

こんな方におすすめ

○骨粗しょう症を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○免疫力を高めたい方
○いつまでも若々しくいたい方

β-クリプトキサンチンの研究情報

【1】β-クリプトキサンチンは骨芽細胞を活性化し、一方破骨細胞を抑制することにより、骨量を増加させる働きを持ちます。β-クリプトキサンチンは骨粗しょう症予防効果に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22471523/

【2】肥満糖尿病モデルマウスを対象に、β-クリプトキサンチンを摂取させたところ、脂肪細胞の肥大ならびにサイトカイン分泌が抑制されたことから、β-クリプトキサンチンは肥満予防効果ならびに糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22085304/

【3】β-クリプトキサンチンは、リンパ芽球細胞であるRaji細胞においてがん抑制作用を持つことが確認されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7742789/

【4】UVB暴露マウスを対象に、β-クリプトキサンチンを10mg/kg の量で14日間摂取させたところ、メラニンの生成、皮膚の色素沈着が緩和されました。β-クリプトキサンチンは美白効果を持つと考えらえています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12455062/

【5】ヒト肺ガン特異的モノクローナル抗体を産生する細胞にβ-クリプトキサンチンを添加した際、抗体(IgM)産生促進効果が見られ、さらにマウスの場合も同様に血中のIgM、IgA濃度が有意に上昇し、脾臓リンパ球においてはインターフェロン-γの産生が促進されたことから、β-クリプトキサンチンは免疫向上作用を持つと考えられています。

もっと見る 閉じる

参考文献

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・中嶋洋子 栄養の教科書 新星出版社

・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社

・菅原卓也 温州ミカン果皮成分の免疫促進活性 FOOD STYLE 21 2012年2月号

・白倉義之 向井克之 井上誠 うんしゅうみかんの美感講座Vol .2 β-クリプトキサンチンによる体脂肪低減作用について① FOOD STYLE 21 2012年97月号

・向井克之 白倉義之 うんしゅうみかんの美感講座Vol .8 うんしゅうみかんの美容効果について③ FOOD STYLE 21 2013年1月号

・Yamaguchi M. (2012) “Role of carotenoid β-cryptoxanthin in bone homeostasis.” J Biomed Sci. 2012 Apr 2;19:36.

・Takayanagi K, Morimoto S, Shirakura Y, Mukai K, Sugiyama T, Tokuji Y, Ohnishi M. (2011) “Mechanism of visceral fat reduction in Tsumura Suzuki obese, diabetes (TSOD) mice orally administered β-cryptoxanthin from Satsuma mandarin oranges (Citrus unshiu Marc).” J Agric Food Chem. 2011 Dec 14;59(23):12342-51.

・Tsushima M, Maoka T, Katsuyama M, Kozuka M, Matsuno T, Tokuda H, Nishino H, Iwashima A. (1995) “Inhibitory effect of natural carotenoids on Epstein-Barr virus activation activity of a tumor promoter in Raji cells. A screening study for anti-tumor promoters.” Biol Pharm Bull. 1995 Feb;18(2):227-33.

・Fung TT, Spiegelman D, Egan KM, Giovannucci E, Hunter DJ, Willett WC. (2003) “Vitamin and carotenoid intake and risk of squamous cell carcinoma of the skin.” Int J Cancer. 2003 Jan 1;103(1):110-5.

・菅原卓也、門田歩 “食品と免疫 温州ミカン果皮成分の免疫促進活性” (2012) Food Style 21 Vol.16, No.2, Page45-47 (2012.02.01)

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ