カロテノイド

carotenoid

カロテノイドは、動植物が持つ、自然界に存在する黄色や赤色の色素の総称で、600種類以上存在するといわれています。
特徴として強力な抗酸化力を持ち、活性酸素を除去する力に優れています。
眼病や生活習慣病などをはじめとする疾病の予防に効果的な栄養素として知られています。

カロテノイドとは?

●基本情報
カロテノイドとは、動物や植物に存在する、赤色、橙赤色、黄色などの天然色素の総称で、自然界では現在約600種類が見つかっています。
カロテノイドは大きく分けると、アルコールに溶けるカロテン類と、アルコールに溶けないキサントフィル類に分類されます。
植物に含まれるカロテノイドには、カロテン類として緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロテンや、トマトなどに含まれるリコピンなどが挙げられ、キサントフィル類としてはマリーゴールドに含まれるルテイン、みかんに含まれるβ-クリプトキサンチン、とうがらしに含まれるカプサンチンなどが代表として挙げられます。
また、動物性の食品に含まれているカロテノイドは、鮭やいくらに含まれている赤い色素のアスタキサンチンが代表的で、キサントフィル類に分類されます。
カロテノイドのカロテン類は、β-カロテンのように、体内でビタミンAへと変換されるものも存在し、それらはプロビタミンA(ビタミンA前駆物質)と呼ばれます。

カロテノイドは、肝臓、肺、乳房、子宮頚部、前立腺、大腸、皮膚、網膜をはじめとする眼組織など、人間の体のいたる所に存在していますが、人間をはじめとする動物は、カロテノイドを体内でつくり出すことはできません。

●カロテノイドの働き
カロテノイドに共通する特徴は、抗酸化作用という体内に過剰に発生した活性酸素[※1]を除去する働きを持つことです。
カロテノイドは、植物が紫外線による活性酸素から自らの身を守るために生成している抗酸化物質であり、人間の体内においても、同様の抗酸化作用を発揮し、細胞の保護などの働きを行っています。
カロテノイドはその種類によって対抗する活性酸素の種類や、人間に対する効果にも違いがあるといわれているため、様々な種類のカロテノイドをバランス良く摂取することが大切です。

●主なカロテノイドの種類
カロテノイドには様々な種類があり、その種類によって性質や働く場所が異なります。

β-カロテン> β-カロテンは、にんじんやほうれん草、かぼちゃなどの緑黄色野菜に多く含まれているカロテノイドです。
自然界に最も多く存在するカロテン類であり、体内でビタミンAに変換されるプロビタミンA(ビタミンA前駆物質)のひとつです。
ビタミンAは脂溶性[※2]のビタミン類であることから、本来は過剰摂取が心配される栄養素ですが、プロビタミンAは必要に応じてビタミンAへ変換されるため、β-カロテンの摂取ではビタミンAの過剰症の心配がなくなります。
体内ではビタミンAとして目の健康を維持する効果に加え、β-カロテン自体が持つ強力な抗酸化力も発揮します。

リコピン
リコピンは、トマト、すいかに多く含まれている赤色のカロテノイドです。
リコピンは抗酸化作用が強く、その抗酸化力はβ-カロテンの2倍以上、ビタミンEの約100倍ともいわれています。

ルテイン
ルテインは、マリーゴールドの花弁や、緑黄色野菜に多く含まれる、黄色のカロテノイドです。
人間の体内では目の水晶体[※3]や黄斑部[※4]、皮膚、大腸などに存在しています。
ルテインは、特に目の水晶体や黄斑部で強力な抗酸化作用を発揮するカロテノイドで、さらに目が受ける紫外線など、有害な青色の光を吸収する働きも持っており、目の健康維持に関与しています。

ゼアキサンチン
ゼアキサンチンは、パプリカや卵黄、ほうれん草などに多く含まれているカロテノイドです。
人間の体内では、主に水晶体や、網膜の中心部である黄斑部で、ルテインとともに存在しています。
ゼアキサンチンもルテインと同様に、強力な抗酸化作用を持ったカロテノイドであり、ルテインとともに光のダメージから目を守っているのです。

アスタキサンチン
アスタキサンチンは、サケ、イクラ、エビなどに多く含まれている赤色の色素で、強力な抗酸化作用をもったカロテノイドです。
別名「海のカロテノイド」とも呼ばれるアスタキサンチンは、強力な抗酸化力を持った栄養素で、その抗酸化力はビタミンEの約1000倍ともいわれています。
また、アスタキサンチンは網膜や脳などの栄養が行き届きにくい細部にまで働きかけ、抗酸化力を発揮することができるという特徴を持っています。よって、アスタキサンチンの高い抗酸化力は、人間の体内のあらゆる部位において、その効果が発揮されるといわれています。

β-クリプトキサンチン
β-クリプトキサンチンは、みかんなどの柑橘類の皮や、とうもろこしに多く含まれている黄色のカロテノイドです。
高い抗酸化力を持ち、活性酸素によるダメージから細胞を守る働きを行います。
抗腫瘍作用があるという研究報告があり、注目されている成分です。

<カプサンチン>
カプサンチンは、赤とうがらしや赤ピーマンに多く含まれている、赤色のカロテノイドです。
高い抗酸化力を持ち、生活習慣病の予防に対する効果が期待されています。

フコキサンチン
フコキサンチンは、コンブやワカメ、モズクなどの海藻類に多く含まれている赤褐色のカロテノイドです。
近年では、体内の脂肪燃焼を促進することが知られており、注目を集めています。

[※1:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素です。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化の原因になるとされます。]
[※2:脂溶性とは、油に溶けやすい性質のことです。]
[※3:水晶体とは、人間の目においてレンズの役割を担っている部位です。直径が1cmほどのレンズで、毛様体筋という筋肉によって厚さを変えることができます。遠くのものを見るときは厚さを薄く、近くのものを見るときは厚くすることで、ピント調節の働きも行っています。]
[※4:黄斑部とは、人間の目において、フィルムの役割を担っている部位です。眼球の内壁である網膜の中心部に存在し、直径2mm、厚さ0.2mmほどの非常に小さな部分であり、視力を支えています。]

カロテノイドの効果

カロテノイドは共通して抗酸化作用を持ちますが、各々で働きかける部位や特徴的な働きが存在するため、その効果にも違いが生じます。

β-カロテン
●夜盲症を予防・改善する効果
β-カロテンの摂取は、夜盲症[※5]の予防や改善に有効であるとされています。
β-カロテンは、体内に吸収されるとその一部がビタミンAに変換されて働きます。
ビタミンAは人間の目の網膜にて、見る働きを司るロドプシンの一部として働いているため、ビタミンAが不足すると、夜盲症に陥るリスクが高まります。
β-カロテンを摂取することは、ビタミンAの不足を解消することにつながるため、夜盲症の発症を予防できると考えられています。

リコピン
●血流を改善する効果
リコピンは血管内の健康を保ち、血液の流れを改善する効果があるといわれています。
活性酸素は、血液中の悪玉(LDL)コレステロールと結びつくことで、血管内壁にダメージを与えます。
活性酸素によって酸化された悪玉(LDL)コレステロールが血液中に増加すると、動脈硬化や血栓の原因となり、血液の流れが悪くなります。
リコピンが持つ抗酸化作用は、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を防ぐことで、血流を改善することができるのです。

ルテインゼアキサンチン
●白内障や黄斑変性症を予防する効果
ルテインやゼアキサンチンには、白内障[※6]や黄斑変性症[※7]を予防する効果が期待されています。
白内障や黄斑変性症などの加齢によって発症する眼病の大きな原因のひとつに、活性酸素が挙げられます。
目は外気にさらされているため、紫外線や青色の光を直接受ける唯一の臓器です。
そのため目は、活性酸素が発生しやすい状況にさらされており、酸化による疾病が発症しやすい部位であるといわれています。
水晶体や黄斑部に存在するルテインとゼアキサンチンは、有害な光を吸収し、また抗酸化作用を発揮することで、光のダメージによる酸化を抑制し、白内障や黄斑変性症を予防する効果を持ちます。

アスタキサンチン
●眼精疲労を予防・改善する効果
アスタキサンチンは人体の細部にまで入り込み、強力な抗酸化作用を発揮するため、眼精疲労に対する効果が期待されています。眼精疲労は集中してものを見続けたり、目を長時間酷使し続けることによって起こる症状で、目の疲れが慢性化した状態を指します。
アスタキサンチンは、特定の栄養素しか入り込むことのできない網膜にも入り込むことができ、その抗酸化力を発揮します。
アスタキサンチンの持つ強力な抗酸化作用は、目の疲れを軽減し、眼精疲労の予防や改善に効果的です。

β-クリプトキサンチン
●抗ガン効果
β-クリプトキサンチンには強力な抗酸化作用があり、DNAを傷つけガンのきっかけをつくる活性酸素を抑える効果があります。
また、ガンを抑える働きのある遺伝子を活性化し、ガン細胞の増殖を抑える効果があると期待されています。

<カプサンチン>
●生活習慣病を予防する効果
カプサンチンは高い抗酸化作用を持ち、生活習慣病の予防に役立ちます。善玉(HDL)コレステロールと悪玉(LDL)コレステロールの酸化を防ぐ効果が期待されています。さらに、善玉(HDL)コレステロールの濃度を高める効果も報告されており、いくつかの効果の組み合わせによってメタボリックシンドロームを予防する効果を示していると考えられます。

フコキサンチン
●メタボリックシンドロームを予防する効果
フコキサンチンには、メタボリックシンドローム[※8]に対する効果があると考えられています。
フコキサンチンは、脂肪の蓄積を抑え、その働きによって動物の内臓脂肪を減少させることができると報告されており、メタボリックシンドロームを予防・抑制する効果が期待できます。

[※5:夜盲症とは、光に対して目の反応が衰え暗い所で物が見えにくくなる症状のことです。鳥目とも呼ばれます。ビタミンAの欠乏症としても知られています。]
[※6:白内障とは、水晶体が活性酸素によって白く濁って徐々に見えづらくなる病気です。]
[※7:黄斑変性症とは、目の黄斑部が加齢などによって変性し、ゆがみや視野狭窄が起こり、放置しておくと最悪失明につながる病気のことです。アメリカでの失明率第1位の病気です。]
[※8:メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に高血糖、高血圧、脂質異常症のうち2つ以上を合併した状態をいいます。]

食事やサプリメントで摂取できます

カロテノイドを多く含む食材

<アスタキサンチン>
○サケ、イクラなど
<ルテイン>
○緑黄色野菜など
<ゼアキサンチン>
○緑黄色野菜など
<カプサンチン>
○とうがらし、赤ピーマンなど
<フコキサンチン>
○コンブ、ワカメなどの海藻類
<β-カロテン>
○緑黄色野菜など
<β-クリプトキサンチン>
○みかんなどの柑橘類
<リコピン>
○トマト、すいかなど

こんな方におすすめ

○夜盲症を予防・改善したい方
○血流を改善したい方
○白内障や黄斑変性症を予防したい方
○目の疲れが気になる方
○生活習慣病を予防したい方
○メタボリックシンドロームを予防したい方

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