葉緑素(クロロフィル)

chlorophyll
クロロフィル

葉緑素は、植物や藻類などに含まれる緑色の天然色素で、クロロフィルとも呼ばれています。細胞内の葉緑体の中にあり、植物が太陽光のエネルギーを使って、水と空気中の二酸化炭素から糖などの有機物を合成する光合成を行っています。体内からコレステロールやダイオキシンなどの余分なものを排出してくれる作用があります。

葉緑素とは

●基本情報
葉緑素はクロロフィルとも呼ばれ、植物や藻類などに含まれる緑色の天然色素です。葉緑素は細胞内の葉緑体に存在し、光と水と空気中の二酸化炭素から糖などの有機物を合成する光合成に不可欠な成分です。
葉緑素は植物の成分ですが、人間の血液の色素であるヘム(ヘモグロビン[※1]の中の中心構造)と似た構造をしており「緑の血液」といわれます。体内に摂取された葉緑素は、血液中で鉄と結合し、赤血球や筋肉のヘモグロビンなどの色素に変わります。また、農作物や乳製品・魚などの食品を介して人間の体内に取り込まれるダイオキシン[※2]や、有害ミネラルのカドミウム[※3]や鉛などの物質を吸着して排出させる解毒作用を持っています。血管内のコレステロールを吸着する働きがあるため、コレステロールを抑えて、血液の流れを良くする働きもあります。さらに葉緑素は、体内に吸収される細胞を活性化させる働きを持っているため、筋肉を維持したり、ケガや傷の治りを早くするほか、病的状態にある細胞を健康な状態にする薬理作用もあります。このように体内に取り入れられた葉緑素は、有害物質が体内で吸収されることを抑え、速やかに体外への排出を促して細胞を活性化させる働きを兼ね備えています。

●葉緑素の歴史
葉緑素研究の歴史は古く、1817年にピエール・ジョセフ・ペルティエらが植物から抽出した緑色色素をクロロフィルと命名したことに端を発し、分子構造の解明が開始されました。
クロロフィルを純粋に分離することは困難を極めましたが、ドイツの生化学者・ウィルシュテッターらがクロロフィルを単体で分離することに成功して分子構造を明らかにし、1915年にノーベル化学賞を受賞しました。その後、クロロフィル分子全体の正しい構造式を決定するためにドイツのハンス・フィッシャーらが研究に取り組み、1939年に正しい構造式が発表されました。フィッシャーもこの業績により1930年にノーベル化学賞を受賞しています。
医学分野においては、葉緑素に脱臭作用があることは古くから知られており、造血機能の促進(1919年)、細胞を活発化させ創傷や潰瘍の治癒を促進させる効果(1922年)があることが医学論文で報告されています。葉緑素の薬理効果について多方面で研究されるようになり、1966年頃より数多くの医学効果が確認され、発表されるようになりました。

●葉緑素を多く含む食品
植物の葉が緑色に見えるのはこの葉緑素を豊富に含んでいるためです。葉緑素が含まれている食品は、青菜や緑黄色野菜、海藻などが挙げられます。これらは太陽光に当たるほど葉緑素が増えて色が濃くなり、緑の色が濃くるなるほど葉緑素が多く含まれていることになります。

[※1:ヘモグロビンとは、脊椎動物の赤血球に含まれる物質で、酸素を運搬する働きを持っています。]
[※2:ダイオキシンとは、環境汚染を引き起こすと考えられている物質の中で、ベンゼン環に塩素が結合した構造を持っているもののことです。]
[※3:カドミウムとは、カドミウムは亜鉛や水銀などとともに亜鉛族元素のひとつです。カドミウム塩は有毒で、日本では骨がもろくなるイタイイタイ病を引き起こすことで知られています。]

葉緑素の効果

●抗ガン効果
葉緑素には強力な抗酸化作用と浄化作用があり、他のファイトケミカルと一緒に植物を酸化ストレスから守っています。
体内で活性酸素が発生すると細胞の中にあるDNAなどの遺伝情報が傷つけられ、書き換えられてしまうことがあります。傷ついて間違った情報を持った遺伝子は、遺伝病などをもたらす可能性がありますが、葉緑素の持つ抗酸化作用が活性酸素を除去してくれるため、遺伝子のエラーが起きるのを防ぐことができます。
葉緑素の持つ抗酸化作用は、ガン予防にも効果があるとされています。ショウジョウバエの実験では、発ガン物質と葉緑素を加えたエサをショウジョウバエに与えると、発ガン物質のみを加えたエサを与えた場合よりも、長生きしたという研究報告が出ています。葉緑素を与えることによって染色体異常の発症が抑制され、染色体異常の一種と考えられているガン細胞の発症予防に効果があるのではないかといわれています。【1】

●コレステロール値を下げる効果
血中コレステロール値が高くなると、血管壁にコレステロールが付着して血液の流れが悪くなります。このような状態が続くと血栓ができ、動脈硬化に進行する場合があり、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を起こしやすくなります。
葉緑素は、血中コレステロール値を下げ、血栓の予防や血圧を下げる作用があります。葉緑素の摂取によりコレステロール値が下がると、血液がサラサラになり血行が促進されるため、循環器系の病気に効果が期待できます。
葉緑素がコレステロール値を下げ、血中脂質の正常化に働くことが研究されており、効果が期待されています。【2】

●デトックス効果
葉緑素は、血液中のコレステロールを抑える働きの他に、胃腸の中に付着した老廃物を吸着して体外に排出する働きがあります。葉緑素の主成分はマグネシウムであり、マグネシウムとその他の成分とが胃で分離され、マグネシウム以外の成分は吸収されずに小腸、大腸を経由して排泄される仕組みになっています。ダイオキシン、有害ミネラルのカドミウムや鉛などの物質も除去してくれる効果が期待できます。またダイオキシンの除去効果も報告されており、デトックス効果が期待されています。
【3】

●貧血を予防する効果
葉緑素の成分のひとつに有機ゲルマニウムがあり、この成分は酸素や血液の循環を助けて体のすみずみに酸素を供給する役割を担っています。葉緑素を摂取することで貧血の予防と改善効果があるとされています。

他に、整腸作用や消炎作用なども認められています。

葉緑素は食事やサプリメントで摂取できます

葉緑素を含む食品

○明日葉
○小松菜
○ほうれん草
○クロレラ
○緑茶

こんな方におすすめ

○コレステロール値が気になる方
○胃腸が弱っている方
○便秘を改善したい方
○貧血を改善させたい方

葉緑素の研究情報

【1】赤身肉摂取ラット(結腸細胞障害をさせたラット)に、葉緑素 1.2 mmol/kg もしくはほうれん草(葉緑素 1.2mmol/kg 含有)を2週間摂取させたところ、結腸細胞の傷害が緩和されたことから、葉緑素に結腸ガンのリスク軽減効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15550456

【2】 高脂肪食摂取ラットに、葉緑素(クロロフィル) 0.2% 含有の餌を3週間摂取させたところ、血中コレステロールの増加が抑制され、肝臓中のコレステロールの増加も緩和される傾向が見られたことから、葉緑素(クロロフィル)には、高コレステロール血症予防効果ならびに生活習慣病予防効果が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003167414/ja/

【3】44名の妊娠中の日本人女性から採取した脂肪組織、母乳、臍帯血および胎盤中に存在するダイオキシン同族体の濃度を調査しました。23名の妊娠女性に妊娠期間中、葉緑素を豊富に含むクロレラを摂取させた結果、ダイオキシン類の母体からのデトックス効果が確認されました。このことから、葉緑素を豊富に含むクロレラには、胎盤を通じた母体から胎児へのダイオキシン類の移行を軽減する可能性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15985279

参考文献

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・則岡孝子 著 ひと目でわかる あなたに必要な栄養成分と食べ物 河出書房新社

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・中嶋洋子 栄養の教科書 新星出版社

・中嶋洋子 著、阿部芳子、蒲原聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・Kanae Yamashita, Yuuko Nohara, Motomi Kumagai, Namiki Mitsuo 1991 “Effect of Chlorophyll on Plasma Lipids in Rats” Journal of home economics of Japan 42(7), 589-594, 1991-07-15

・de Vogel J, Jonker-Termont DS, van Lieshout EM, Katan MB, van der Meer R. 2005 “Green vegetables, red meat and colon cancer: chlorophyll prevents the cytotoxic and hyperproliferative effects of haem in rat colon.” Carcinogenesis. 2005 Feb;26(2):387-93.

・Nakano S, Noguchi T, Takekoshi H, Suzuki G, Nakano M. 2005 “Maternal-fetal distribution and transfer of dioxins in pregnant women in Japan, and attempts to reduce maternal transfer with Chlorella (Chlorella pyrenoidosa) supplements.” Chemosphere. 2005 Dec;61(9):1244-55.

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