えのき

ナメタケ ユキノシタ ナメススキ 榎茸

えのきは、キシメジ科のキノコの一種で、晩秋から初冬にかけてケヤキやえのきなどの広葉樹の枯れ木の根本や切り株で育ちます。えのきは、食物繊維やβ-グルカン、GABA、ビタミンB1を豊富に含み、腸内環境を整える効果や免疫力を向上させる効果、ストレスをやわらげる効果が期待できます。

えのきとは

●基本情報
えのきは、キシメジ科のキノコの一種で、晩秋から初冬にかけてケヤキやえのきなどの広葉樹[※1]の枯れ木の根本や切り株で育ちます。
天然のえのきは、店頭で見かける細長く乳白色をした一般的なものとは外見が異なり、褐色で、柄が短く、表面にぬめりがあります。天然のえのきは雑菌に弱く、気温が低く、雑菌が繁殖しにくい冬に成長するため、別名「ユキノシタ」とも呼ばれます。
一般に食用として活用されているえのきは、一年を通して出回っています。鍋物などによく用いられるため、冬の寒い時期に需要が高まります。天然のものは、晩秋から春にかけての期間が旬です。
えのきを醤油で煮込んだものは「なめ茸」と呼ばれます。

●えのきの歴史
えのきは、日本で古くから食用とされ、アジアやヨーロッパ、アフリカなどに広く分布しています。しかし栽培技術が発達する江戸時代までは、主に天然のえのきが食されていました。明治時代には、原木栽培が始まり、昭和の初期には現在よく見られるようなえのきが誕生し、1960年代には一般に普及するようになりました。
近年、食用としてだけでなく健康効果が見いだされ、研究が進められています。

●えのきの生産地
えのきは、全国各地で栽培が行われ、出荷されています。その中でも、特に長野県、新潟県、福岡県での生産が多くなっています。
スーパーなどで見かけるえのきは、おがくずや米ぬかが敷き詰められた培養ビンに種菌を植え付けて、暗室で培養したものが販売されています。天然のえのきは紫外線から身を守るためにメラニンという色素を出すため、褐色であるのに対して、栽培のえのきは日陰で育ち、白っぽい色をしています。

●えのきの選び方と保存方法
えのきの良品は全体がきれいな乳白色をしており、カサが小さく開いていないもの、できるだけ長さがそろっていて、軸がピンとしているものといわれています。
えのきは、状態によって、冷蔵庫で1週間程度は保存が可能だといわれています。洗う前に石づきを落として冷凍保存もできます。
汚れがある場合は、キッチンペーパーで落としてから使用します。

[※1:広葉樹とは、葉が広く平たい、サクラやケヤキ、ブナなどの植物に属する木のことです。]

えのきの効果

●腸内環境を整える効果
えのきは、食物繊維を豊富に含んでいます。食物繊維は大腸まで届き、便の量を増やして、スムーズな排便を促します。便の量が少ないと、排便に必要なぜん動運動[※2]も起こらないため、便秘がちになります。
えのきに含まれる食物繊維は腸内の不要物を排出し、さらに善玉菌を増やすため、腸内環境を整える効果があります。【3】

●免疫力を高める効果
えのきには、免疫細胞を活性化し、免疫力を増加させるβ-グルカンが豊富に含まれています。β-グルカンはキノコなどに含まれる多糖類[※3]の一種で、食物繊維の一種です。
免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザ、生活習慣病を引き起こす原因となります。
えのきには、β-グルカンが含まれ、免疫力を向上させる効果があります。【5】【6】
また、えのきにはEA6という糖たんぱく質が含まれており、EA6にはガンの発病を抑える効果も明らかになっています。えのきは様々な疫学調査[※4]も行われており、摂取量と病気の関連が研究されています。

●ストレスをやわらげる効果
えのきには、GABAとパントテン酸が含まれ、ストレスをやわらげる効果があります。
GABAは、リラックスしたときに出るα波という脳波を増加させます。また、えのきに含まれるGABAは、休息やリラックスをつかさどる副交感神経を活発にさせて心を落ち着かせる効果があります。
さらに、えのきに含まれるパントテン酸は、ストレスをやわらげる副腎皮質ホルモンの材料となるため、ストレスへの抵抗力を向上させる効果があります。【7】

●疲労回復効果
えのきは、ビタミンB1を豊富に含み、疲労を回復する効果があります。生のえのきに含まれるビタミンB1の含有量は、同じ重さの生のシイタケよりも多いともいわれています。ビタミンB1は水溶性のビタミンで、にんにくや豚肉に含まれています。ごはんやパンなどの炭水化物は消化吸収され、最終的に肝臓でブドウ糖に変換され、エネルギーとして利用されます。この際に必要となるのが、ビタミンB1です。
えのきには、ビタミンB1が含まれ、疲労回復効果があります。

[※2:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]
[※3:多糖類とは、糖質の最小単位である単糖が、多数結合したものです。]
[※4:疫学調査とは、病気や事故、健康状態についてある地域などの集団を対象とし、原因や発生条件を統計的に調査すること。]

えのきは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○便秘でお悩みの方
○免疫力を向上させたい方
○ストレスをやわらげたい方
○疲労を回復したい方

えのきの研究情報

【1】ラットの内臓脂肪細胞の培養系に添加し、えのき抽出物を脂肪蓄積に及ぼす影響を調べた結果、コントロールに比べて形態的に脂肪滴の顕著な減少および、脂肪蓄積抑制作用が見られました。また培養後に細胞のトリグリセリド(TG)/DNAも低下したことから、えのきは抗肥満作用ならびに生活習慣病予防効果が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008440499

【2】えのきを含む9種類の菌類(ハタケシメジ、ブナシメジ、マイタケ、ヒラタケ、マッシュルーム、エリンギ、シイタケ(菌床栽培および原木栽培) ナメコの9種類について、活性酸素除去能(ヒドロキシルラジカル消去能)がえのきタケとマイタケが優れていたことから、えのきは優れた抗酸化力を持つと考えられています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008675295

【3】ラットに、えのきを104日間投与したところ、脂肪蓄積防止作用および腸内有用細菌(Lactobacillus spp.)を増加させる効果があることがわかりました。えのきに含まれる食物繊維が有益であることから、えのきは抗肥満作用ならびに整腸作用を持つと期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008679433

【4】高血圧自然発症ラットを対象に、えのき粉末を5% 含有する餌を、3週間または2週間にわたり与えたところ、血圧低下ならびに血漿中のトリアシルグリセロール低下などは認められませんでしたが、肝中のトリアシルグリセロールおよびコレステロールの著名な低下が認められたことから、えのきには肝臓保護作用が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003168388

【5】被験者42名を対象に、えのきの機能性成分β-グルカンを1日あたり2.5mg の量で6週間摂取させたところ、白血球B細胞が有意に増加したことから、β-グルカンを含むえのきには免疫力を高めるはたらきが期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22164761

【6】健常人63名を対象に、えのきの機能性成分GABA 100mg を摂取させたところ、EEG(脳波)活性(α波およびβ波:精神ストレスに依存する)が低下したことから、GABAを含むえのきはストレス予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22203366

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参考文献

・五訂増補 日本食品成分表

・本多京子 食の医学館 株式会社小学館

・食材図典 小学館

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 株式会社主婦の友社・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社

・中島洋子監修 食べ物栄養事典 主婦の友社

・渡邊 智子、高居 百合子、土橋 昇 (1998) “ラットの成長および腸内菌叢に及ぼすエノキタケ投与の影響” 日本応用きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology 6(4)、 151-158、 1998-12-25

・Gaullier JM、 Sleboda J、 Øfjord ES、 Ulvestad E、 Nurminiemi M、 Moe C、 Tor A、 Gudmundsen O. (2011) “Supplementation with a soluble β-glucan exported from Shiitake medicinal mushroom、 Lentinus edodes (Berk.) singer mycelium: a crossover、 placebo-controlled study in healthy elderly.” Int J Med Mushrooms. 2011;13(4):319-26.

・Yoto A、 Murao S、 Motoki M、 Yokoyama Y、 Horie N、 Takeshima K、 Masuda K、 Kim M、 Yokogoshi H. (2011) “Oral intake of γ-aminobutyric acid affects mood and activities of central nervous system during stressed condition induced by mental tasks.” Amino Acids. 2012 Sep;43(3):1331-7.

・山口 昭博、平 敏夫、江口 文陽 (2010) “エノキタケ抽出物のラット初代前駆内臓脂肪細胞での脂肪蓄積抑制効果” 日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology 18(4)、 145-148、 2010-12-31

・苔庵 泰志、西井 孝文、杉山 泰崇、古市 幸生 (2007) “食用きのこのラジカル消去能について” 日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology 15(1)、 25-29、 2007-04-30

・桐渕 壽子、辻 悦子 (1997) “エノキタケによる高血圧自然発症ラットにおける血圧上昇抑制作用, 血中および肝臓脂質におよぼす影響” 日本家政学会誌  48(6), 485-490, 1997-06-15

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