グルタミン

glutamine

グルタミンは非必須アミノ酸の一種で、体に最も多く含まれるアミノ酸です。人間の骨格筋の遊離アミノ酸の約6割を占めます。筋肉を強化したり、筋肉疲労を回復する効果があります。また、胃腸の働きをサポートし、医薬品としても活用されています。近年の研究により、アルコール代謝を促進する効果があることもわかっています。

グルタミンとは?

●基本情報
グルタミンとは体内で合成することができる非必須アミノ酸 [※1]の一種で、体内のたんぱく質が分解されるのを抑え、筋肉の維持に重要な成分です。インスリンの分泌を刺激せずにグルコースに変換されるため、腸などの短時間で分裂する細胞のエネルギー源となります。さらにグルタミンには、腸の働きをサポートしたり、筋肉を強化し筋肉疲労を回復したりする効果があります。また、グルタミンは細胞を柔軟に保つことでエネルギーの代謝や窒素代謝に関与し、認知症を予防し、潰瘍の回復を早めるといわれています。グルタミンは人間の骨格筋に貯蔵される遊離アミノ酸の約6割を占め、体内で最も多いアミノ酸です。体内ではグルタミン酸とアンモニアが「グルタミンシンテターゼ」という酵素が働くことによって生成されます。
グルタミンは強いストレスや風邪の影響を受けると消耗してしまいます。肉や魚、たまごなどに多く含まれますが、加熱により変性するため、食事からの摂取は難しく、サプリメントからの摂取が効果的です。

●グルタミンの歴史
グルタミンは1883年にサトウダイコンの搾りかすから発見されました。
グルタミンは体内に最も多く存在するアミノ酸ですが、かつてはその働きについて解明されておらず、1980年代になると、グルタミンは消化管、特に腸管のエネルギーとなることが明らかとなりました。現在では研究が進み、様々なグルタミンの働きが解明されています

●グルタミンの過剰症と欠乏症
グルタミンは体内でも生成することができ、小麦粉や大豆海藻類、肉、魚などの身近な食品に多く含まれています。ただし、グルタミンは熱を加えると変性するため、サラダや刺身など生で食べられる食品から効率良く摂取できます。また、グルタミンは過剰に摂取すると肝臓にダメージを与えるため1日40g以上摂取すべきではないといわれています。なお、普段の食生活での過剰症の心配はほとんどなく、経口摂取[※2]においてはほぼ安全だといわれていますが、妊娠中や母乳授乳期の方は過度な使用を控える必要があります。また、重篤な肝障害の方やグルタミン酸ナトリウムアレルギー、精神疾患やひきつけのある方は使用しないでください。
一方、グルタミンの不足では、筋力低下や消化不良を起こしやすくします。

●グルタミンとグルタミン酸の違い
グルタミンは、体内でグルタミン酸とアンモニアに酵素が働くことによって合成されます。グルタミンが腸の働きをサポートする一方、グルタミン酸は脳機能を低下させる恐れのあるアンモニアを解毒し、体外に排出します。

[※1:非必須アミノ酸とは、体内で合成が可能なアミノ酸のことです。グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、システイン、チロシン、プロリンの11種類です。]
[※2:経口摂取とは、口を通して体内に取り入れることを指します。]

グルタミンの効果

●腸の働きをサポートする効果
グルタミンは腸の修復を行い、腸の働きをサポートする効果があります
腸管には栄養の吸収を行うじゅう毛という突起があり、グルタミンはじゅう毛の栄養源となります。腸管のじゅう毛は細胞分裂が活発に行われており、新しいじゅう毛が次々とつくられています。古いじゅう毛が剥がれ落ちると、その下から新しいじゅう毛が出てくるのです。このような腸の働きにより、人間は栄養を体内にとり入れています。しかし、抗ガン剤の投与などによって、新しいじゅう毛ができなくなると栄養を吸収できなくなります。グルタミンはじゅう毛の再構築をサポートする働きがあるため、抗ガン剤による治療を受けている患者などに投与されます。
また、抗ガン剤や細菌感染によって、腸管が萎縮してしまいますが、グルタミンは萎縮した腸管を再生する働きもあります。
さらに、外科手術の後などに骨格筋に蓄えられていたグルタミンには腸管に働きかけ、腸管から生体内へバクテリアの侵入を抑える役割をしていることがわかっています。【2】【3】

●免疫力を高める効果
グルタミンはウイルスや細菌などの、異物から体を守ってくれる免疫機能を高める効果があるため、インフルエンザウイルスに対抗する効果や、アレルギー症状の予防・改善も期待されています。
グルタミンを摂取していると風邪などの感染症にかかりにくくなるという報告もあります。
150人以上のマラソンランナーに、レース完走直後とその2時間後に5gのグルタミンを投与したグループと、投与しなかったグループで1週間後の風邪などの感染症の発症率を比較した結果、投与しなかった方では半数になんらかの感染症の発症が認められました。しかし、グルタミンを摂取した方では、感染を2割以下まで抑えることができました。このことからもグルタミンは免疫機能を高める働きがあることがわかります。【1】【2】【3】

●筋肉を強化する効果
グルタミンは筋肉の分解を抑制するため、筋肉の維持に効果があります。
激しい運動などで肉体的なストレスがかかると、筋肉中のたんぱく質の分解が活発化し、筋肉中からグルタミンが放出されます。そのグルタミンを補給することで、たんぱく質の分解を抑制できることが分かっています。グルタミンは筋肉が失われるのを防ぐことから、アスリートに適した成分であるといえます。また手術後、運動のできない患者が筋肉を失うことなく体力を維持できるよう、グルタミンが点滴に添加されることもあります。

●傷を治癒する効果
グルタミンは窒素[※3]の代謝[※4]に働きかけることで、創傷の治癒に必要なたんぱく質の前駆物質となります。そのため、外傷の回復を早める効果もあるといわれています。グルタミンがもとで生成する窒素量は、体内で生成される窒素量の3分の1にもなります。
腹腔部の手術患者に、グルタミンを含む高カロリー輸液[※5]を投与すると、外科手術の際の傷が早く回復したという報告があります。

●アルコール代謝を促進する効果
グルタミンにはアルコール代謝を促し、二日酔いを改善する効果があるといわれています。
アルコールを与え、アルコール性肝炎のような状態にしたラットは、グルタミンとアラニンが入った水をすすんで欲しがるということがわかりました。このことから、肝機能にはグルタミンとアラニンが必要である可能性が示唆されました。
さらに研究を続け、ラットにアルコールを混ぜたエサを与えたのち、グルタミンとアラニンを投与したもの、しなかったものでそれぞれの自発的な運動量を比較しました。その結果、比較的早く運動量が増加したのは、グルタミンとアラニンを投与したものだということが明らかとなりました。また、別の研究では、グルタミンとアラニンを投与したラットは、二日酔いなどの原因物質であるアセトアルデヒドの血中濃度が低下していたこともわかりました。これらの結果から、グルタミンとアラニンを同時に摂取することで、アルコール代謝が促進される効果があると考えられています。また、グルタミンとアラニンはアルコール代謝の促進だけでなく、肝障害[※6]の改善にも効果的だといわれています。肝臓の大部分を切除したラットに、グルタミンとアラニンをそれぞれ投与したところ、肝臓の再生が促進されたということもわかっています。肝機能を促進させることは、脂肪肝[※7]や肝硬変[※8]などのリスクの軽減にもつながります。

[※3:窒素とは、多くの生体、物質に存在する生体を維持するために必須の元素のことです。]
[※4:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※5:高カロリー輸液とは、通常よりも多く糖類を含む輸液のことです。]
[※6:肝障害とは、肝臓の機能に障害をもたらす状態のことです。脂肪肝などの原因にもなりえます。]
[※7:脂肪肝とは、食べ過ぎや飲みすぎによって肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった肝臓の肥満症とも言える状態です。肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった脂肪肝は、動脈硬化を始めとする様々な生活習慣病を引き起こす恐れがあります。]
[※8:肝硬変とは、肝臓が固くなり、本来の機能がきわめて減衰した状態のことです。]

グルタミンは食事やサプリメントで摂取できます

グルタミンを多く含む食材

○小麦粉
○海藻
○大豆
○サトウキビ
○肉
○魚
○卵
○チーズ
トマト

こんな方におすすめ

○腸の健康を保ちたい方
○免疫力を向上させたい方
○筋肉を強化したい方
○スポーツをする方
○お酒をよく飲む方

グルタミンの研究情報

【1】骨髄移植後の患者20名 を対象とした二重盲検無作為比較試験において、静脈栄養にグルタミンを付加したところ、血中のリンパ球 (CD4、CD8細胞) の増加がみられ、リンパ球の改善を支持するとの報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9427568

【2】マウスにて、グルタミンが腸管関門の透過性および細菌転移に及ぼす影響を評価する研究が行われています。グルタミンを投与することで腸粘膜の防御機構を高め、腸管透過性および細菌転移を抑制したとの報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20631386

【3】腸管由来敗血症ラットの腸内免疫に対する、敗血症感染前のグルタミン添加餌の影響、敗血症感染後のグルタミン強化完全静脈栄養(TNP)の影響、そしてその両方を用いた場合の影響について検討した結果、敗血症による腹膜炎を起こす前の経腸的グルタミンサプリメントの予防的利用と、腹膜炎を起こした後の静脈内グルタミンサプリメントの摂取は、腸に関連するリンパ組織において総リンパ球の増加を促し、IgA分泌を促進し、そしてパイエル板におけるTリンパ球集団の維持に効果が認められたとの報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14990270

【4】低体重乳児は肝損傷のリスクが高いことが知られています。注射によるグルタミンの投与によって肝臓の負荷が軽減できるかを調べました。グルタミンの注射投与によって、低体重児でも肝臓の耐性を改善でき、結果として肝保護効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20416995

【5】健康な神経細胞で、グルタミンの細胞内および細胞外からの補給によって、神経保護作用を発揮されました。この結果、グルタミンの補給はアルツハイマーの治療に対しても有益である可能性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22413000

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参考文献

・櫻庭雅文 アミノ酸の科学 その効果を検証する 講談社

・船山信次 アミノ酸 タンパク質と生命活動の化学 東京電機大学出版局

・本多京子 食の医学館 小学館

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP

・Ziegler TR, Bye RL, Persinger RL, Young LS, Antin JH, Wilmore DW. 1998 “Effects of glutamine supplementation on circulating lymphocytes after bone marrow transplantation: a pilot study.” Am J Med Sci. 1998 Jan;315(1):4-10.

・dos Santos RG, Viana ML, Generoso SV, Arantes RE, Davisson Correia MI, Cardoso VN. 2010 “Glutamine supplementation decreases intestinal permeability and preserves gut mucosa integrity in an experimental mouse model.” JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2010 Jul-Aug;34(4):408-13.

・Lai YN, Yeh SL, Lin MT, Shang HF, Yeh CL, Chen WJ. 2004 “Glutamine supplementation enhances mucosal immunity in rats with Gut-Derived sepsis.” Nutrition. 2004 Mar;20(3):286-91.

・Wernerman J. 2008 “Clinical use of glutamine supplementation.” J Nutr. 2008 Oct;138(10):2040S-2044S.

・Wang Y, Tao YX, Cai W, Tang QY, Feng Y, Wu J. 2010 “Protective effect of parenteral glutamine supplementation on hepatic function in very low birth weight infants.” Clin Nutr. 2010 Jun;29(3):307-11.

・Chen J, Herrup K. 2012 “Glutamine acts as a neuroprotectant against DNA damage, beta-amyloid and H2O2-induced stress.” PLoS One. 2012;7(3):e33177.

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