ヒスチジン

histidine

ヒスチジンとは、大人は体内で合成でき、子どもの場合は合成できないため、子どもにとっては必須アミノ酸となります。ヒスチジンは体内で成長に関与し、神経機能補助を行います。また、慢性関節炎の症状緩和、ストレスの軽減などの効果もあります。

ヒスチジンとは?

●基本情報
ヒスチジンはギリシャ語で「組織」という意味を持ち、子どもの発育期に欠かすことのできないアミノ酸です。子どもには合成できず、大人になると合成できるようになるアミノ酸のため、ヒスチジンは唯一、体内で合成できる必須アミノ酸[※1] という特殊な性質を持っています。かつて、ヒスチジンは乳児期には準必須アミノ酸で、それ以降の年齢では体内での生成が可能であるとされ、非必須アミノ酸として扱われていました。しかし、大人でもヒスチジンが不足すると体内の窒素のバランスが乱れ、皮膚疾患や神経系に異常が現れることが確認されたため、1985年より必須アミノ酸となりました。

ヒスチジンは体内で成長に関するほか、神経機能補助の役割を果たしています。その他にも、ヒスチジンは赤血球を形成する時に必要であるため、貧血の治療に有効といわれています。また、紫外線による皮膚への刺激を軽減させる効果があるのでシミやそばかす、皮膚ガンの予防に効果があるといわれています。さらに、ストレスの軽減や慢性関節炎の緩和などにも働きかけます。
また、アレルギー反応に関与するヒスタミン[※2] はヒスチジンから合成されます。ヒスタミンは、外傷や薬などの外部からの刺激に応じて血管を拡張する働きがあり、血圧低下やアレルギー発症などの作用をもたらします。虚血性脳障害[※3]の予防や透析による貧血の治療効果なども報告されており、最近では食欲を抑制して脂肪燃焼を促進する作用があることが明らかとなり、ダイエット効果が期待されています。

ヒスチジンはカツオやマグロといった魚を筆頭に、子牛肉や鶏肉、ハム、チェダーチーズ、ドライミルクなどに多く含まれています。
ヒスチジンが不足してしまうと、成長不良や神経機能の低下が起こります。成長に関わる必須アミノ酸はヒスチジン以外にもありますが、体内で合成することのできない子どもの場合は発育阻害となってしまいます。ヒスチジンを体内で合成することができる大人であっても、不足することによって皮膚トラブルや肥満などを引き起こす恐れがあるため、食事からの摂取は欠かせません。
ヒスチジンを過剰に摂取してしまうと、ヒスタミンの血中濃度が増加します。ヒスタミンは神経伝達物質として働きますが、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を持つ方は、強いかゆみやじんましん、場合によってはショック症状を起こすなどの過剰反応が出る場合があります。

●ヒスチジンを摂取する際の注意点
ヒスチジンは、適切に経口摂取する場合には安全性が示されています。
また、妊娠中・授乳中の安全性については確認されていないため、過剰摂取は控える必要があります。
相互作用に関しては、葉酸欠乏症の人がヒスチジンを摂取すると、ホルムイミノグルタミン酸[※4]が蓄積する恐れがあり、臨床検査値に影響を与えることがあることが明らかになっています 。
他のハーブやサプリメント、食品との相互作用については十分なデータがありませんが、過剰な摂取、疾病やそれに伴う服薬などとの組み合わせにより、副作用が起こる可能性があるため、医師への相談が推奨されています。

[※1:必須アミノ酸とは、たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうち、体内で合成することができない9種類のアミノ酸のことです。食品から摂取しなければならないアミノ酸で、欠乏すると血液や筋肉、骨などの合成ができなくなります。]
[※2:ヒスタミンとは、動物の組織内に広く存在する化学物質のことです。普通は不活性状態にありますが、けがや薬により活性型となって血管拡張を起こし(発赤)、不随意筋を収縮します。また、かゆみや痛みの原因になるともいわれています。過剰に活性化されるとアレルギー疾患の原因となります。]
[※3:虚血性脳障害とは、脳血管の血管が詰まることで脳の機能が障害され、半身運動麻痺、嚥下障害、感覚麻痺、言語障害、意識障害等の症状が出現し、ひどい場合には死亡する病気です。]
[※4:ホルムイミノグルタミン酸とは、ヒスチジンの代謝中間体のことです。]

ヒスチジンの効果

ヒジキには、カルシウムや鉄、ヨウ素などの栄養素が含まれており、以下のような健康に対する働きが期待できます。

●成長を促進する効果
​ヒスチジンは、発育に不可欠なアミノ酸です。大人は体内で合成することができますが、子どもは合成できないため、魚や肉、乳製品などの食品からヒスチジンを摂取することで、成長促進の効果を得ることができます。

●慢性関節炎を緩和する効果
ヒスチジンは、体内で交感神経を刺激するヒスタミンに変換され、外傷や薬などの刺激により血管を拡張する作用があります。血管が拡張されることで、慢性関節炎の痛みやストレスをやわらげます。

●ダイエット効果
ヒスチジンは、交感神経を刺激するヒスタミンに変換されることにより、神経機能に働きかけ、脂肪細胞において交感神経を刺激することで脂肪燃焼を促進する効果があるとされています。また、食欲を抑制する効果もあるとされ、近年ではヒスチジンには2つの肥満防止作用があることが明らかとなり、ダイエット効果が期待されています。【1】

●脳神経を保護する効果
最近の研究では、脳梗塞などの急性期の脳虚血疾患による脳組織の死滅が抑制される可能性が動物実験により明らかになっています。【2】

食事やサプリメントで摂取できます

○カツオ
○マグロ
○子牛肉
○鶏肉
○ハム
○チェダーチーズ
○ドライミルク

こんな方におすすめ

○子どもの成長が気になる方
○関節が痛む方
○ストレスを解消したい方
○ダイエットをしたい方

ヒスチジンの研究情報

【1】ラットに、ヒスチジン含有(0, 1, 2, 2.5, 5%)の餌を8日間摂取させたところ、食欲の減退が見られました。また脂肪燃焼に関連する褐色脂肪細胞が活性化されたことから、ヒスチジンが食欲調節効果と脂肪燃焼効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15561489

【2】脳虚血ラットに、ヒスチジンを1000mg/kgの量で腹腔内投与したところ、記憶を司る海馬の神経細胞が保護されたことから、ヒスチジンは神経保護作用を持つと考えられています。
http://kaken.nii.ac.jp/d/p/18791081.ja.html

【3】肝障害マウスに、ヒスチジンおよびカルノシンを0.5, 1, 2g/L の量で摂取させたところ、抗酸化酵素SOD、カタラーゼなどが上昇し、活性酸素種、マロンジアルデヒドなど酸化ストレス物質も減少しました。また、炎症性物質であるTNFαやMCP-1の働きが抑えられたことから、ヒスチジンは肝臓保護効果ならびに抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19799668

参考文献

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社

・Kasaoka S, Tsuboyama-Kasaoka N, Kawahara Y, Inoue S, Tsuji M, Ezaki O, Kato H, Tsuchiya T, Okuda H, Nakajima S. (2004) “Histidine supplementation suppresses food intake and fat accumulation in rats.” Nutrition. 2004 Nov-Dec;20(11-12):991-6.

・山下 敦生 “ヒスチジン・ヒスタミンによる抗炎症作用と脊髄保護効果に関する研究”

・Yan SL, Wu ST, Yin MC, Chen HT, Chen HC. (2009) “Protective effects from carnosine and histidine on acetaminophen-induced liver injury.” J Food Sci. 2009 Oct;74(8):H259-65.

・則岡孝子 栄養成分の事典 新星出版社

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