ビワ

Loquat 
枇杷 Eriobotrya japonica

ビワは、葉や果実など植物全体が古くから健康果実として利用されてきました。ビタミン類やミネラル類、ポリフェノールなどの有効成分が豊富に含まれ、生活習慣病や感染症の予防、アンチエイジング、疲労回復など様々な効果が期待されています。

ビワとは

●基本情報
ビワは、バラ科ビワ属に属する常緑高木植物[※1]です。
秋から冬にかけて5枚の花弁を持った白い花を咲かせた後、実をつけます。薄い毛に覆われた小ぶりの果実に比べ、非常に大きな葉を持ちます。初夏に旬を迎えるビワは、季節感を感じられる果物として広く親しまれています。また、ビワの葉は古くから漢方や中国伝統医学で用いられていたことが知られています。

日本名のビワ(枇杷)は、果実あるいは葉の形が楽器の「琵琶」の形に似ていることが名前の由来であるといわれています。

●ビワの原産地・生産地
ビワの原産地は中国です。一説によると日本にも野生種のビワが自生していたともいわれていますが、現在日本で栽培されているビワは中国から導入された品種です。温暖な気候を好んで育つビワは、東アジアなどを中心に生産されています。
日本の主なビワの生産地は「茂木ビワ」で知られる長崎県と、「房州ビワ」で知られる千葉県です。全国で生産されるビワの3分の1が長崎県で生産されています。年間の平均気温が15℃以上で、最低気温が-5℃以下にならない環境が適しているため、日本国内では千葉県より北の地域では本格的な栽培は行われていません。

●ビワの品種
以下はよく知られている3つの品種です。

・茂木
「西の茂木」ともいわれる西日本における代表的な品種のひとつで、長崎県茂木地区を中心として主に九州で生産されています。小ぶりで、甘みが強く控えめな酸みを持ちます。
江戸時代に中国商船から持ち込まれたビワの種を、当時長崎県茂木町に住んでいた女性が庭にまいたことがきっかけで生産されるようになりました。

・田中
「西の茂木」に対して「東の田中」といわれ、全国では房州ビワの名で知られている品種です。主に千葉県や愛媛県などで生産されています。果実は茂木よりも大きく、甘みと酸みのバランスがとれた味わいを持ちます。
1879年頃、植物学者の田中氏が長崎で食べたビワの種を東京の自宅にまき、育成したことが始まりといわれています。

・長崎早生(ながさきわせ)
寒さに弱いためハウス栽培されることが多く、早いものは1月になると出荷されます。露地ものより2ヵ月ほど早く店頭に並びます。茂木ビワと他の品種が勾配されたもので、出荷される箱には茂木ビワと書かれていることもあります。

他にも、千葉県で生産されている大房(おおぶさ)や瑞穂、果実が白色を含んだ白茂木などの品種もあります。

●ビワの歴史
中国では6世紀頃からビワが栽培されていたといわれ、古くから葉が漢方として使われていました。
日本では江戸時代中期、千葉県富浦で本格的なビワの生産が始められました。その頃のビワは小ぶりでしたが、天皇や皇族の方々へ贈る「献上ビワ」として使用されていました。その後、江戸時代末期になると、現在のような大ぶりのビワの生産が盛んに行われるようになりました。

<豆知識>ビワ葉療法
ビワの葉は古くから健康に良いとされていました。ビワの葉をあぶって患部に当てたり、ビワの葉の上で温灸を行うビワ葉療法は、1500年程前に中国の僧医により日本へ伝えられました。当時、施薬院[※2]や全国のお寺で僧侶などにより行われ、病に苦しむ人々から絶大な信頼を集めていました。
その後、ビワの葉を当てた上からもぐさをする方法が生まれ、現在では「ビワ葉温熱療法」と呼ばれ親しまれています。

●ビワの選び方・保存方法
美味しいビワを選ぶポイントは、果皮にハリがあり、果皮の色がビワ特有の鮮やかなオレンジ色をしていることです。また、果皮に産毛とブルームと呼ばれる白い粉が残っていると、さらに新鮮な証拠です。

ビワはキウイフルーツや洋ナシのように追熟しないので、できるだけ早く食べるようにします。冷蔵庫などで冷やしすぎると風味が落ちてしまうため、直射日光を避け、風通しが良い場所に常温保存します。

●ビワの利用
ビワの果実は、生で食べられる他、ジャムや果実酒などに加工されます。
ビワの葉は乾燥させてビワ茶にして飲まれたり、直接患部に貼るなど生薬として利用されています。
また、ビワの木は乾燥させると非常に硬く、昔から杖の材料として利用されてきました。また、激しく打ち合わせても折れない程頑丈なため、剣道や剣術用の高級な木刀としても利用されています。

●ビワに含まれる成分と性質
ビワの果実には、ビタミンB群やビタミンC、カリウムなどのミネラル類、リンゴ酸やクエン酸などの有機酸、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸などが豊富に含まれています。
ビワの果皮のオレンジ色は、豊富に含まれるβ-カロテンやβ-クリプトキサンチンなどのカロテノイド色素によるもので、体内で必要な分だけビタミンAに変換されて働きます。

ビタミンCや、β-カロテン、また、クロロゲン酸などのポリフェノールには強い抗酸化作用があります。
抗酸化作用とは、紫外線や喫煙、ストレスなど生活の様々な場面で発生する活性酸素[※3]を除去し、体が酸化することを防ぐ働きのことです。
例えば、クギを放置し空気中にさらしておくとクギがサビついてしまいます。これが酸化です。人間の体内で酸化が起こると、病気や老化、肌トラブルが引き起こされます。ビワの果実に含まれるこれらの成分が体内で強い抗酸化作用を発揮して酸化から体を守ることで、病気や老化、肌トラブルの予防につながります。

ビワの果実や葉は漢方としても多用され、胃腸の働きを整え夏バテを予防したり、咳や嘔吐を止める働きがあるとされています。

[※1:常緑高木植物とは、幹や枝に一年中葉がついていて、樹高が5m以上の植物のことです。]
[※2:施薬院とは、貧しい病人に薬を与え治療をした施設のことです。現在の病院の原型となっています。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]

ビワの効果

ビワの果実や葉には様々な有効成分が含まれており、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●生活習慣病の予防・改善効果
血液中の悪玉(LDL)コレステロールが増加すると、血管の内壁が脂質で分厚くなり、こぶのようにせり出して血管を狭めるため、高血圧や動脈硬化などが引き起こされます。ビタミンCやクロロゲン酸、タンニンをはじめとするビワの果実や葉に含まれる様々な成分には、血中の悪玉(LDL)コレステロールを減少させる働きがあります。さらに、ビワの果実に含まれるカリウムやβ-クリプトキサンチンには、血圧の上昇を抑える働きがあります。そのため、これらの成分が豊富に含まれているビワの果実や葉には高血圧を防ぎ、動脈硬化などの生活習慣病の予防や改善に効果的であると考えられています。【1】【2】

●ダイエット効果
ビワの果実に含まれるクロロゲン酸には、肝臓において脂肪を燃焼させる働きがあります。さらに、ビタミンB群には、糖質や脂質を効率よくエネルギーに変える働きがあります。そのため、これらの成分が含まれるビワの果実は、脂肪の蓄積を抑制し、肥満の予防・改善に効果が期待できます。

●感染症を予防する効果
ビワの果実に豊富に含まれているβ-カロテンやβ-クリプトキサンチンには、粘膜や皮膚を強化し、風邪や咳、のどの痛みなどを緩和する効果があります。
さらに、ビワの果実にはビタミンCが豊富に含まれています。ビタミンCは、血液中の白血球、特に好中球[※4]に多量に含まれており、体外から侵入してきた細菌やウイルスなどを撃退する役割を担っています。ビタミンCは白血球の働きを高め、ビタミンC自体も細菌やウイルスに対抗する力を持っています。これらの成分が含まれているビワには免疫力を高め、感染症を予防したり、病気の回復を早めたりする効果があるといわれています。

●老化を防ぐ効果
ヒトの肌は、紫外線などによって発生する活性酸素によって細胞が傷つけられ、老化していきます。ビワの果実に含まれるビタミンCやβ-カロテン、クロロゲン酸には強い抗酸化作用があり、活性酸素を除去して細胞の老化を防ぐ効果が期待されています。

●炎症を抑制する効果
ビワの葉に含まれているタンニンには殺菌作用があります。ビワの葉を入浴時に湯船に入れたり、煎じた液を湿布などの外用薬として使用すると細菌の増殖が抑制され、あせもや湿疹、肌の炎症の予防・改善に効果があるといわれています。【3】【4】

●下痢を予防する効果
ビワの葉に含まれるタンニンの殺菌作用によって腸内の悪玉菌[※5]が減少するため、悪玉菌による大腸の炎症によって起こる下痢を予防する効果が期待できます。

●疲労回復効果
ビワの果実には、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸が豊富に含まれています。
激しい運動やストレス、不規則な生活によって細胞が酸欠状態になると、体内に疲労物質である乳酸が溜まります。有機酸には乳酸を分解しエネルギーに変える働きがあるため、疲労の蓄積が抑えられます。さらに、ビワの果実に含まれるビタミンB群には、糖質などの代謝に関わりエネルギーを効率よく生産し、神経や筋肉へエネルギーを運ぶ働きがあるため、疲労回復に効果があります。

[※4:好中球とは、体内に存在する白血球の40%~60%占める白血球の一種です。急性的な炎症に対して中心となって血液中の細菌やウイルスと闘います。]
[※5:悪玉菌とは、ヒトの腸内に住む細菌の一種です。増えすぎると体に悪い影響を及ぼすと考えられており、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、緑膿菌などが悪玉菌といわれます。]

ビワはこんな方におすすめ

○生活習慣病を予防したい方
○肥満を防ぎたい方
○風邪をひきやすい方
○いつまでも若々しくいたい方
○あせもや湿疹を予防したい方
○疲労を回復したい方

ビワの研究情報

【1】糖尿病マウスにびわ葉抽出物を1日当たり300mg/kg 、1週間~2週間摂取させたところ、総コレステロールやトリグリセリドの増加が抑制され、抗酸化酵素SODや血中インスリン濃度の増加が見られました。正常マウスでは血糖値の低下が見られたことから、びわ葉には抗糖尿病効果、生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19427773

【2】糖尿病マウスにびわの機能性成分トリテルペンを300mg/kg 投与したところ、血糖値と総コレステロール値、トリグセリド値が低下し、抗酸化酵素SODと血中インスリン濃度が上昇したことから、びわトリテルペンには糖尿病予防効果と生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19429317

【3】ヒトの細胞(肥満細胞)にびわ葉抽出物を投与すると、炎症関連物質TNF-α、IL-6, IL-8 の増加が抑制されたことから、びわには抗炎症作用があると考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19665545

【4】ヒトの細胞(歯肉繊維芽細胞)にびわ葉抽出物を投与すると、炎症関連因子の活性化を阻害するはたらきが見られたことから、びわには抗炎症作用があり、歯周病の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21473904

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参考文献

・本多京子 食の医学館 小学館

・Choi YG, Seok YH, Yeo S, Jeong MY, Lim S. 2011 “Protective changes of inflammation-related gene expression by the leaves of Eriobotrya japonica in the LPS-stimulated human gingival fibroblast: microarray analysis.” J Ethnopharmacol. 2011 Jun 1;135(3):636-45.

・Kim SH, Shin TY. 2009 “Anti-inflammatory effect of leaves of Eriobotrya japonica correlating with attenuation of p38 MAPK, ERK, and NF-kappaB activation in mast cells.” Toxicol In Vitro. 2009 Oct;23(7):1215-9.

・Lü H, Chen J, Li WL, Ren BR, Wu JL, Zhang HQ. 2009 “Hypoglycemic effect of the total flavonoid fraction from folium Eriobotryae.” Phytomedicine. 2009 Oct;16(10):967-71.

・Lü H, Chen J, Li WL, Ren BR, Wu JL, Kang HY, Zhang HQ, Adams A, De Kimpe N. 2009 “Hypoglycemic and hypolipidemic effects of the total triterpene acid fraction from Folium Eriobotryae.” J Ethnopharmacol. 2009 Apr 21;122(3):486-91.

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