もろみ酢

Unrefined sake vinegar

もろみ酢とはクエン酸やアミノ酸を豊富に含んだ、泡盛のもろみ(酒粕)からつくられる清涼飲料水です。鼻にツンとくる酸味がなく、そのまま飲むことができます。
おいしく飲めて、疲労回復・脂肪燃焼・生活習慣病予防など健康に幅広く働きかけます。

もろみ酢とは

●基本情報
一般的にもろみ酢と呼ばれているものは、泡盛のもろみ粕からつくられる「琉球もろみ酢」を指します。
「酢」という言葉は付いていますが、分類上では米酢や黒酢のように主成分が酢酸の食用酢ではありません。もろみ酢は主成分がクエン酸で酢酸発酵をしていないため、清涼飲料水[※1]に含まれます。30年ほど前から健康に良いとして注目を集めるようになりました。

もろみ酢の「もろみ」とは、泡盛の原料であるタイ米(インディカ米)に黒麹菌を加えてできた黒麹に、酵母と水を加えて発酵させたものを指します。黒麹菌とは、もろみ酢のもととなる泡盛づくりには欠かせない麹菌であり、泡盛の仕込み段階である発酵時に非常に多くのクエン酸をつくりだします。
酸の多い麹で仕込んだもろみは雑菌が繁殖しにくいため、年間の気温や湿度が高い沖縄でも腐る心配がありません。

昔の人々は酒造所から発生する泡盛蒸留後のもろみ粕を家畜のエサにしたり、肥料として畑にまいたりと生活の中で有効に活用してきました。もろみ粕を与えた家畜は病気にかかりにくい上、肉質が良く、また畑の作物もよく成長しました。
泡盛づくりの職人達は昔からもろみ粕を食べて、暑い夏を乗り切る力をつけていたといわれています。
このように古くから活用されてきたもろみですが、近年、泡盛製造の酒造所に発酵食品の加工技術が導入されたことで、もろみ酢が誕生しました。

●もろみ酢のつくり方
もろみ酢は泡盛の製造過程で発生するもろみ粕からつくられます。
泡盛の製造は、原料であるタイ米(インディカ米)に黒麹菌を散布して黒麹をつくります。その黒麹に酵母と水を加えて発酵させ、発酵したもろみを蒸留してアルコール分を抽出したものが泡盛の原酒になります。アルコール分を抽出した後のもろみ粕には、クエン酸をはじめアミノ酸やミネラルなどの豊富な栄養成分が多く残っています。そのもろみ粕を圧搾・ろ過することによって、栄養成分を豊富に含むもろみ酢ができあがります。

●もろみ酢の魅力
もろみ酢の魅力として豊富に含まれるクエン酸やアミノ酸の他に、健康酢としての飲みやすさが挙げられます。リンゴ酢や梅酢など、従来の健康酢と呼ばれるものは酸味のもととなる酢酸の成分が主体であるため、胃を荒らしたり、鼻にツンとくる酸味があります。しかし、もろみ酢は黒麹菌によってつくられるクエン酸が主体になっているため、胃を荒らすことも鼻にツンとくる酸味もありません。水などで希釈することなくそのまま飲むことができます。

●もろみ酢の利用法
もろみ酢はドリンクとしてだけでなく、調味料やサラダのドレッシングなどにも利用できます。もろみ酢を冷凍庫で凍らし、シャーベットとしても楽しめます。

●もろみ酢に含まれる成分と性質
もろみ酢には非常に多くのクエン酸が含まれています。クエン酸は疲労回復や脂肪燃焼などに働きかける健康に欠かすことのできない大切な成分です。さらに、体内ではつくり出せない9種類の必須アミノ酸[※2]を含む、計19種類のアミノ酸も豊富に含んでいます。もろみ酢に含まれる主なアミノ酸は、アルギニン・リジン・ヒスチジン・チチオニン・アラニン・アスパラギン酸・プロリンなどです。もろみ酢はクエン酸とアミノ酸を豊富に、そしてバランス良く含んでいます。他にもミネラルやGABA(ギャバ)などの健康成分が含まれています。

[※1:清涼飲料水とは、アルコール分が1%未満の飲料で、味と香りのある水のことです。一般的には、のどの渇きを癒してくれ清涼感を感じさせてくれる飲料のことを指し、炭酸飲料・果汁飲料・コーヒー飲料・茶系飲料などの総称とされています。]
[※2:必須アミノ酸とは、動物の成長や生命維持に必要であるにも関わらず体内で合成されないため、食物から摂取しなければならないアミノ酸のことです。バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファンの9種類が存在します。]

もろみ酢の効果

もろみ酢にはクエン酸やアミノ酸が豊富に、かつ、バランス良く含まれています。特にもろみ酢に含まれるクエン酸の量は非常に多く、以下のような健康効果が期待できます。

●疲労回復効果
人が疲れを感じるのは、乳酸と呼ばれる疲労物質が体内に蓄積しているためです。乳酸は通常なら代謝[※3]によって自然と消費されますが、代謝機能が衰え乳酸が体内に増えると体の様々な筋肉と結合して溜まってしまい、疲労を感じるようになります。もろみ酢に豊富に含まれるクエン酸が、クエン酸回路[※4]の働きをサポートすることで、乳酸が分解され疲労が回復します。
クエン酸回路とはクエン酸が働きかけることにより、乳酸や糖質が分解されエネルギーに変わるサイクルのことです。このサイクルがうまく機能することで私たちは元気を取り戻したと感じます。もろみ酢にはクエン酸が豊富に含まれているため、クエン酸回路の働きを強力にサポートし、疲労を回復します。
さらに、もろみ酢に含まれるアミノ酸も疲労回復のために重要な働きをしています。
BCAAと呼ばれる筋肉のたんぱく質を構成するバリン、ロイシン、イソロイシンという3つの重要なアミノ酸には体の筋肉を増やす働きがありますが、これらは運動をする時のエネルギー源としても働きます。もろみ酢を摂取することで運動時の持久力を高めたり、疲労を軽減する効果が期待されています。
また、もろみ酢に含まれるアスパラギン酸はエネルギー源として最も利用されやすく、運動時の疲労回復を促進するといわれています。
肌の潤いを保つ天然保湿成分(NMF)[※5]として重要な成分であるプロリンも、もろみ酢に含まれるアミノ酸の一種であり、体のエネルギー源として利用されます。

●ダイエット効果
もろみ酢に含まれるアミノ酸には体内の脂肪を効率良く燃焼させる効果があります。
アルギニン・リジンが脳下垂体の成長ホルモンを刺激し、脂肪細胞中の体脂肪を分解して遊離脂肪酸[※6]として血液中に放出することをサポートするため、肝臓や筋肉で脂肪が燃焼されやすくなります。
ヒスチジンからつくられるヒスタミンは交換神経[※7]を刺激して脂肪を燃焼させ、エネルギーをつくりだすために働きかけます。さらにヒスチジン自体も血液中に体脂肪を放出し、効率良く体脂肪が使われるように促します。
もろみ酢に含まれるアミノ酸のチチオニンとリジンからはカルニチンがつくられ、血液中に放出された脂肪分を細胞まで運び、燃焼させます。この脂肪分はさらに小さな物質となり、クエン酸回路に取り込まれます。
また、アラニン・アスパラギン酸はクエン酸回路の主要な物質であるオキサロ酢酸[※8]に変換され、クエン酸回路の働きをサポートします。
もろみ酢に豊富に含まれるクエン酸もクエン酸回路の働きを強力にサポートし、脂肪の燃焼に働きかけます。
このように、もろみ酢には体内の脂肪を効果的に燃焼させる成分が多く含まれています。【2】

●肩こりをやわらげる効果
もろみ酢のクエン酸は肩こりの改善にも有効とされています。人間の体は健康であれば、弱アルカリ性に保たれています。しかし、疲労やストレスなどによって酸性に傾くと酵素やホルモンの働きが著しく低下してしまいます。もろみ酢のクエン酸には体を正常な弱アルカリ性に近づけ、酵素やホルモンの働きを促進する効果があります。酵素やホルモンが正常に働くと、肩こりがやわらぐなどの効果が期待できます。

●リラックス効果
もろみ酢にはGABA(ギャバ)が含まれています。GABAとは正式にはγ(ガンマ)-アミノ酪酸といわれ、哺乳類の脳に多く存在するアミノ酸の一種です。脳の血流を改善する作用があり、リラックス成分として知られています。GABAが含まれているもろみ酢には血圧を下げイライラを解消する効果や、寝つきを良くし、快適な眠りに導く効果も期待されています。

●血流を改善する効果
血中コレステロール値や中性脂肪値、血糖値が高い人の血液はドロドロであるといわれています。血液がドロドロになると、血液の流れが悪く、血流が滞った状態になります。これが悪化すると高脂血症[※9]になります。高脂血症をそのままにすると、血栓が発生し、動脈硬化を引き起こしてしまう危険性が高まります。動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞といった生活習慣病の発症リスクを高める、という指摘があり注意が必要な症状です。
もろみ酢に含まれるアミノ酸の一種であるアルギニンには、一酸化窒素をつくり出す効果があります。一酸化窒素には体内の血管を拡張する作用があり、血管をつまりにくくし、血流を改善してくれます。また、もろみ酢に含まれるアミノ酸やクエン酸などの有機酸は、血液の循環を正常にし、サラサラの血液にしてくれます。【1】【2】

[※3:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※4:クエン酸回路とは、体内に入った食物を燃焼させエネルギーをつくり出す、一連の流れのことです。]
[※5:天然保湿因子(NMF)とは、人間がもともと持っている保湿成分で、皮膚の一番外側にある角質層、角質細胞の中にあり、水になじみやすく水分を保持する力を持つ物質のことです。NMFはNatural Moisturizing Factorの略です。]
[※6:遊離脂肪酸とは、人間がエネルギーとして使うために血液中に溶け出した脂肪のことです。]
[※7:交換神経とは、生命を維持している自律神経の一種です。不安・恐怖・怒りなどストレスを感じている時に働きます。]
[※8:オキサロ酢酸とは、低分子生体物質で、クエン酸回路を構成する物質のひとつです。]
[※9:高脂血症とは、血液中に溶けているコレステロールや中性脂肪値が必要量よりも異常に多い状態をのことです。コレステロールは過剰になると体に障害をもたらします。糖尿病と同様に自覚症状に乏しく、動脈硬化によって重篤な病気を引き起こすのが特徴です。]

こんな方におすすめ

○疲れやすい方
○肥満を防ぎたい方
○肩こりでお悩みの方
○ストレスをやわらげたい方
○血流を改善したい方
○生活習慣病を予防したい方

もろみ酢の研究情報

【1】高コレステロール血症ウサギに、酢を摂取させたところ、LDLコレステロール、アポB100たんぱく質、および総コレステロールで改善が見られたことから、酢が動脈硬化予防効果や高コレステロール血症予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20109192

【2】日本人を対象に酢を1日当たり500ml を12週間摂取させたところ、BMI、内臓脂肪面積、ウエスト周囲径に改善が見られたことから、酢が抗肥満作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19661687

【3】健常人30名を対象に、酢酸750mg を含む飲料とカプセルをそれぞれ摂取させた時の、吸収を比較すると飲料では摂取15分後に、カプセルでは摂取30分後に血中の酢酸がピークを迎えたことから、飲料では即効性が、カプセルではゆるやかに吸収されることがわかります。またカプセルの吸収量は飲料の80% でした。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20924150

【4】健常人12名を対象に、酢酸を28mmol に摂取させると、糖負荷30及び45分後で血糖値の上昇が抑制され、インスリン感受性が高まることが明らかとなりました。酢が糖尿病予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16015276

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参考文献

・Setorki M, Asgary S, Eidi A, Rohani AH, Khazaei M. 2010 “Acute effects of vinegar intake on some biochemical risk factors of atherosclerosis in hypercholesterolemic rabbits.” Lipids Health Dis. 2010 Jan 28;9:10.

・Lipids Health Dis. 2010 Jan 28;9:10. 2009 “Vinegar intake reduces body weight, body fat mass, and serum triglyceride levels in obese Japanese subjects.” Biosci Biotechnol Biochem. 2009 Aug;73(8):1837-43.

・Sugiyama S, Fushimi T, Kishi M, Irie S, Tsuji S, Hosokawa N, Kaga T. 2010 “Bioavailability of acetate from two vinegar supplements: capsule and drink.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2010;56(4):266-9.

・Ostman E, Granfeldt Y, Persson L, Björck I. 2005 “Vinegar supplementation lowers glucose and insulin responses and increases satiety after a bread meal in healthy subjects.” Eur J Clin Nutr. 2005 Sep;59(9):983-8.

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