プチヴェール

petit vert

プチヴェールは「小さい緑」という意味を持ち、ケールと芽キャベツとの交配により生まれた野菜です。プチヴェールには、β-カロテンやビタミンC、鉄、カルシウム、食物繊維など、現代人に不足しがちな栄養素がバランス良く豊富に含まれており、肥満や肌荒れ、便秘の方におすすめです。

プチヴェールとは?

●基本情報
プチヴェール(プチベール)とは、芽キャベツケールを交配して生まれたケールと同じアブラナ科の野菜で、1990年に日本で誕生しました。ケールと芽キャベツの良い部分を受け継いでおり、ケールより栄養価が高く、芽キャベツのような味わいを持ちます。

プチヴェールという名前の由来は、フランス語のpetit=「小さい」とvert=「緑」といわれており、これらを合わせて名づけられたとされています。
プチヴェールは糖度が11~13度と高く、一般的なみかんやいちごと同じぐらいの数値を示します。甘すぎるわけではなく、食べた時にほのかに甘みを感じることが特徴です。
芽キャベツと同じように本葉のわきにいくつもの芽を出しますが、芽キャベツと違い結球[※1]はしません。
プチヴェールは緑のバラのような形をしており、通常1つの木から50~80個ほど収獲することができます。
また、プチヴェールは栄養価が非常に高く、青汁の原料として多く使われています。

●プチヴェールの原産地、生産地
プチヴェールは静岡県で品種改良の末生まれました。現在では静岡県だけでなく、新潟県など全国各地で栽培されており、12月~3月に旬を迎えます。
寒さの中で育てることにより糖度や栄養が蓄えられ、甘みが増します。

●プチヴェールの食べ方
プチヴェールは、外葉や実だけではなく、葉柄や軸も無駄なく食べることができます。
クセがないので塩を入れた熱湯で2~3分茹で、ドレッシングをかけるだけで美味しく食べることができます。ゴマ和えやおひたしなどの和食にも、シチューやグラタンなどの洋食にも簡単に使用できます。

●プチヴェールに含まれる成分と性質
プチヴェールにはβ-カロテンビタミンCカルシウム食物繊維など現代人に不足しがちな栄養素がバランス良く含まれています。特にカルシウムが牛乳の4倍と豊富に含まれており、牛乳よりも体内で吸収されやすいという研究結果が出ています。
その他にも食物繊維がさつまいもの3倍、ビタミンEがほうれんそうの2倍、β-カロテンはかぼちゃの6倍と、様々な栄養素が豊富に含まれています。
β-カロテンは体内でビタミンAに変換されます。必要な分のみ変換されるので、脂溶性ビタミンであるビタミンAの過剰症の心配がいりません。

[※1:結球とは、植物の葉が重なり合って球のようになることです。]

プチヴェールの効果

プチヴェールには、β-カロテンビタミンCカルシウム食物繊維などが豊富に含まれているため、以下のような健康に対する効果・効能が期待できます。

●生活習慣病の予防・改善効果
カルシウムの摂取不足は高血圧の一因となります。
カルシウムが不足すると、血中のカルシウム濃度を一定に保とうと体が働きます。その際、ホルモンの働きにより筋肉が収縮するため、血管の内側が狭くなり高血圧を引き起こされます。
また、カルシウムの摂取によりナトリウムの排出が促されることがわかっています。ナトリウムを排出することにより血圧が下がります。
血中の脂肪が多すぎることで起こる高血圧にも、プチヴェールは効果的に働きかけます。プチヴェールは体内の活性酸素[※2]を除去する働きがあるβ-カロテンを豊富に含むため、血中の脂質の酸化を防ぎ血管を若々しく保ち、動脈硬化の改善や予防に効果を発揮するといわれています。
さらに、プチヴェールに含まれるビタミンEには活性酸素により酸化した脂質を分解することで、血中に粘度のある物質が流れ出ることを防ぎ血行を良くする働きや、血管を丈夫にする働きがあります。プチヴェールは動脈硬化の予防や冷え症の改善にも期待できると考えられます。【1】

●肥満を予防する効果
食事の中に含まれる脂質であるトリグリセリドは、摂取された際にほぼ全てが体内に取り込まれます。しかし、プチヴェールを一緒に摂取することで、トリグリセリドの排出が促され、体内での脂質の蓄積が抑制されることがマウスを使った実験で証明されました。
また、摂取した脂質は消化吸収された後、肝臓中の脂肪酸合成酵素が働くことにより、肝臓で再び脂質に合成され蓄積されます。プチヴェールには、脂肪酸合成酵素の活性を抑制する働きがあることもわかっています。
この2つの働きにより、プチヴェールは脂肪の吸収、蓄積を防止する働きがあると考えられています。【1】

●美肌効果
プチヴェールにはβ-カロテンが豊富に含まれています。β-カロテンから変換されたビタミンAには皮膚や粘膜を丈夫に保ってくれる働きがあるため肌のカサつきや肌荒れを改善する効果があると期待されています。
β-カロテンには紫外線によって発生した活性酸素を無効化する働きがあり、シミやそばかすの原因となるメラニン色素の発生を抑制する効果があります。
プチヴェールには、β-カロテンの他にも若返りのビタミンといわれているビタミンEが豊富に含まれています。
また、実験によりプチヴェールには肌のハリを保つコラーゲンを産生する効果があることが証明されています。

●免疫力を高める効果
プチヴェールに含まれるβ-カロテンから変換されたビタミンAには皮膚やのどなどの粘膜を正常に保つ働きがあり免疫力を高めてくれるため、口内炎や風邪の予防にも効果的です。
また、カロテノイドを多く含むプチヴェールには感染症を予防する効果があることが証明されています。

●骨粗しょう症を予防する効果
骨粗しょう症とは、骨密度が低下することにより骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。年齢や閉経、カルシウム不足など様々な原因があり、日本では65歳以上の女性の2人に1人が骨粗しょう症であるといわれています。
骨粗しょう症を予防するためには、日常的に十分な量のカルシウムを摂取する必要があります。
プチヴェールには、牛乳の4倍ものカルシウムが含まれています。さらに、他の野菜に比べカルシウムの吸収を阻害するシュウ酸の量が少なく、牛乳よりもプチヴェールに含まれているカルシウムの方が体内で吸収されやすいといわれています。
また、プチヴェールには骨を構成しているコラーゲンを形成する働きがあるビタミンCも含まれています。カルシウムとビタミンCが含まれるプチヴェールには、より丈夫な骨を生成する働きがあるといえます。

●精神を安定させる効果
現代社会には、ストレスの要因が多く存在します。継続的にストレスを感じていると、心と体の両方の健康に影響し、胃潰瘍やうつ病を引き起こす場合もあります。
プチヴェールには、β-カロテンやルテインなどの抗酸化作用[※3]を持つカロテノイドや胃潰瘍を予防する働きがあるビタミンU[※4]が豊富に含まれているため、ストレスを軽減する効果があるといわれています。
また、プチヴェールには豊富なカルシウムが含まれているため、イライラの防止にも効果的です。

●視機能を改善する効果
β-カロテンから変換されたビタミンAは、目が網膜で光を感じる時に必要なロドプシンというたんぱく質の生成に必要な成分で、夜盲症や眼精疲労の予防に効果があります。また、プチヴェールにはルテインが含まれています。ルテインは目の水晶体や黄斑部に多く存在し、強い抗酸化作用を持つカロテノイド色素で、紫外線などのダメ-ジから目を守ります。

●認知症を改善する効果
脳における神経成長因子[※5]は、脳の老化防止や新しい神経細胞の産生、維持など大変重要な働きをしています。神経成長因子は体内の細胞から産生されます。マウスを用いた実験により、プチヴェールには神経成長因子の産生を促進する働きがあることが証明されました。
この働きにより、アルツハイマー病[※6]などで失われた神経細胞を修復するために必要な神経成長因子の産生が促進されることにより、認知症などの改善につながる可能性があるとされています。

●便秘を解消する効果
プチヴェールには、さつまいもの3倍の食物繊維が含まれています。食物繊維は腸内の不要なものを吸着し、腸の動きを促進する働きがあるため、便秘の解消に効果的です。

[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※3:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※4:ビタミンUとは、ビタミン様物質と呼ばれる、ビタミンと似た働きを行う物質の一種で、「U」は、ulcus(潰瘍)の言葉の頭文字を取ったもので、潰瘍を防ぐビタミンという意味があります。]
[※5:神経成長因子とは、神経細胞の成長を促す活性物質の一種です。]
[※6:アルツハイマー病とは、脳の神経細胞が少なくなり脳が萎縮する病気のことです。記憶障害、失見当識、視空間失認などの症状が現れます。]

食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

◎生活習慣病を予防したい方
◎肥満を予防したい方
◎美肌を目指したい方
◎免疫力を向上させたい方
◎骨粗しょう症を予防したい方
◎リラックスしたい方
◎目の健康を維持したい方
◎認知症を予防したい方
◎便秘でお悩みの方
◎食事が偏っており野菜不足の方

プチヴェールの研究情報

【1】高脂肪食摂取による肥満マウスにおいて、プチヴェールを5%配合した餌を摂取させたところ、体重および内臓脂肪重量の増加が抑制され、糞中へのトリグリセリドとコレステロールの排出が促進されました。また肝臓中の脂肪酸合成酵素 (FAS) の活性化が抑制されたことから、プチヴェールに高コレステロール血症予防効果や肥満予防効果が期待されています。他に、プチヴェールにはカルシウムやビタミン、βカロテンが豊富に含まれており、高い健康機能に期待が高まっています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/64/3/64_3_169/_article/-char/ja/

参考文献

・Mazieres B, Combe B, Phan Van A, Tondut J, Grynfeltt M. 2001 “Anti-obesitic Effect of Petit Vert on Mice Fed a High-fat Diet” Nippon Eiyo Shokuryo Gakkaishi. 2011 Vol. 64(3):169-175.

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

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