プラセンタ

Placenta

プラセンタとは、哺乳類の胎児を成長させるための胎盤のことです。馬や豚などの動物由来のプラセンタは、美肌効果や肌の若返りへの効果が期待され、サプリメントや化粧品に配合されています。最近では、植物の胎座から抽出される植物由来のプラセンタも広く知られるようになりました。

プラセンタとは

●基本情報
プラセンタとは、哺乳類の胎児を成長させるための胎盤のことです。
胎盤には、アミノ酸、たんぱく質、糖質、ビタミン類、核酸、ペプチド、ムコ多糖類などの代謝や肌質の改善に必要とされる成分が豊富に含まれています。
中でも非常に多く含まれているアミノ酸には、皮膚細胞の新陳代謝を高め、肌に潤いを与えたり、血液やホルモンを正常な状態に保つ働きがあります。

哺乳類の体内で胎盤が形成される過程は、精子と卵子が受精し受精卵となり、子宮に移動して着床することから始まります。その後、受精卵から柔らかい絨毛(じゅうもう)が無数に伸び、子宮の内壁と結合します。この絨毛が成長して、胎児と子宮内壁との間にできるものが胎盤です。未熟な胎児の生命活動を全て担っており、栄養の補給から老廃物の除去まで一貫して胎児を守り育てるために必要とされます。厚みがあり、へこんだ円盤型をしている胎盤は、体内で胎児を優しく受け止めるクッションのような存在でもあります。
また、胎盤は未熟な胎児の細胞が正しく分裂を繰り返し、健康に育っていくために働きかける成長因子が含まれており、現代人の美容と健康に対して優れた効果を発揮するといわれています。

●プラセンタの歴史
プラセンタの効果は古くから世界中で注目されており、特にアンチエイジングや肌を美しくする効果が認められています。
紀元前4世紀の西洋では、医学の父と知られる古代ギリシャの医者ヒポクラテスによってプラセンタが治療に用いられ、その後の中世ヨーロッパでは不妊症、脳梗塞、てんかんなどの治療薬として使用されていたといわれています。
古代エジプトのクレオパトラやフランスの宮廷マリーアントワネットも、若返りを目的にプラセンタを用いていたと伝えられています。
中国では、古くからプラセンタが漢方薬として親しまれていました。紀元前の時代、秦の始皇帝が不老長寿の妙薬としてプラセンタを使用していたことが知られています。世界三大美女の楊貴妃も、若さと美貌を保つためにプラセンタを使っていたといわれています。
日本でも江戸時代に、加賀藩の秘薬といわれた昆元丹(こげんたん)にプラセンタが処方され、民間薬として使われていたとの記録が残っています。

近年になると、プラセンタは医療用として本格的に研究されるようになりました。第二次世界大戦末期の日本では、京都大学の三林教授がプラセンタの医学的効能に着目し、栄養剤が開発されました。その後、1956年には更年期障害と乳汁分泌不全の治療薬であるプラセンタ注射の「メルスモン」が発売されました。1959年には久留米大学の稗田博士によって、プラセンタ抽出エキスによる肝臓病の治療薬である「ラエンネック」が発表されています。この薬は、40年以上経った今日でも肝炎の治療薬として医療現場で使用されています。プラセンタからつくられた肝臓病の治療薬は、肝細胞の組成を促して肝機能を高め、全身の免疫力を高めるなどの効果があるといわれています。

また、最近では医療分野から抗加齢医学と呼ばれる分野が登場し、その医療品としてプラセンタが使用されています。抗加齢とはアンチエイジングとも呼ばれ、これまで不可能といわれていた若返りを可能にしたといわれている医学のことです。プラセンタには、衰え始めた身体機能を根本から立て直す働きがあるといわれ、若返りの効果が期待されています。注射や点滴でプラセンタを直接血液に取り入れる治療法であるため、非常に実感が早いといわれています。
また、プラセンタが配合されたサプリメントやドリンクなどの健康食品も注目を浴び、多くの女性から人気を集めています。

●プラセンタに含まれる成分と性質
プラセンタには、多くの栄養成分がバランス良く含まれています。主な成分として、たんぱく質の原材料ともいえるアミノ酸、胎児の血液や筋肉のもととなる栄養成分であるたんぱく質、生命活動のエネルギー源である糖質、生理機能のバランスを整えるビタミン類、正常な細胞分裂や新陳代謝を担う核酸、たんぱく質の消化吸収を促す活性ペプチド、細胞や細胞の結合部分の組成物質であるムコ多糖体、様々な病気予防の効果があるといわれる脂質・脂肪酸などが挙げられます。

成長因子とは、細胞分裂を活性化させる因子のことです。成長因子が細胞を刺激することで、新陳代謝が活発になると考えられています。プラセンタにはこの成長因子の働きを促す働きがあるため、美容や健康を導く効果があるといわれています。

●プラセンタの種類
プラセンタには、豚や馬、羊、ヒトなどの動物由来のものと、メロンなどの植物由来のものが存在します。
良くない環境で育てられた動物から抽出されるプラセンタには、不純物が多く含まれ、アミノ酸や成長因子の含有量が不安定な場合があるといわれています。その場合、細胞を活性化させるというプラセンタの重要な役割が大きく失われてしまうと考えられており、動物由来のプラセンタを使用する場合は、その動物が良い環境で育てられていたかどうかが重要であるとされています。

・豚プラセンタ
市販されているプラセンタの中で、最も多く使用されています。豚プラセンタは、他由来のプラセンタに比べ比較的値段が手頃なものが多いことが特徴です。

・馬プラセンタ
馬プラセンタには、豚プラセンタには含まれていない6種類の必須アミノ酸が含有されています。馬は豚に比べて体温が高く、寄生虫がすみにくいことや狂牛病にかかることがないため、プラセンタの原材料として人気を高めています。

・ヒトプラセンタ
人間の胎盤から抽出されたエキスが使用されたプラセンタです。抽出する前にHIV(エイズ)やHBV(B型肝炎)、梅毒など血液検査が緻密に行われ、感染の危険のない安全な胎盤を使用するよう徹底管理がされています。日本では現在、医療用以外にヒトプラセンタを使用することは認められていません。

・植物プラセンタ
植物由来のプラセンタは、メロンなどの植物の胎座から抽出されます。胎座とは、植物の子房の中で種に触れている部分のことです。植物プラセンタにもアミノ酸やビタミン類、ミネラル類が豊富に含まれているため、美肌効果や美白効果が期待されています。植物プラセンタはサプリメントや化粧品に使用されています。植物プラセンタには、病原問題や残留ホルモンの問題を懸念する必要がなく、安心して使用することができると考えられています。

プラセンタの効果

●美肌効果
人間の皮膚は、厚さが約2㎜で表面から表皮層、真皮層、皮下組織の3層に分かれています。表皮層は、さらに表面から角質層、顆粒層、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層と呼ばれる4層で構成されています。
肌の潤いは、角質層にどれくらいの水分が含まれるかで大きく左右されています。プラセンタに豊富に含まれるアミノ酸は、角質層の中にある天然の保湿因子として重要な働きをしており、乾燥によってできるしわを防ぐ効果があるといわれています。

また、加齢や紫外線、活性酸素の増加によって皮膚の真皮にある線維芽細胞が減少し、肌を支えているコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの生成が十分に行われなくなります。そのため、皮膚の細胞間がゆるみ、しわやたるみができやすく、また消えにくくなります。
プラセンタには、加齢などで減少する線維芽細胞を増殖させる因子を持っているため、肌の細胞レベルから働きかけ、肌の環境を整えるといわれています。
そのため、プラセンタにはしわやたるみ、毛穴の開きなどの肌トラブルを防ぎ、キメを整え、ニキビのできにくい美しい肌へ導く効果が期待されています。【1】

●美白効果
プラセンタには、シミやそばかすの原因であるメラニンの生成を防ぐことに加え、活性酸素を除去する働きがあるといわれています。また、抗炎症作用もあるため、日焼けによる炎症などで傷ついた表皮の回復を促す働きも期待されています。さらに、プラセンタは皮膚細胞の新陳代謝を活発にし、過剰に発生したメラニンの排出を促すため、美白効果があると注目されています。

●アトピー性皮膚炎を改善する効果
アトピー性皮膚炎とは、アレルギー体質に様々な刺激が加わって生じる、かゆみを伴う慢性的な皮膚疾患のことです。食生活や生活環境、遺伝や人間関係、精神的なストレスなど、様々な要因が重なり合って発症するといわれています。湿疹と強いかゆみが出ることが特徴で、患部から組織液が浸出したり、慢性化すると鳥肌だったようにザラザラした皮膚が次第に厚くなっていきます。
皮膚の細胞がアレルギー反応を起こすと、細胞が壊れることによりヒスタミンと呼ばれる物質が発生します。ヒスタミンは炎症原因のひとつとされており、プラセンタにはこの反応を抑える効果があるといわれています。また皮膚を保湿し、新陳代謝を活発にするため、皮膚の再生力を高める効果もあると考えられています。さらに、プラセンタにはホルモンのバランスを整え、自律神経を正常に戻す働きがあるため、アトピー性皮膚炎を改善する効果が期待されています。【2】

●更年期障害の症状を改善する効果
プラセンタには、更年期の女性に起こる更年期障害の症状を改善することができると考えられています。
更年期とは、妊娠に備えて卵巣から分泌されるエストロゲンなどの女性ホルモンが減少し始める、女性の閉経前後10年程の期間です。
更年期障害とは、女性ホルモンの減少によって自律神経のバランスが崩れることで発生する、体のほてりやのぼせ、大量の汗、冷え性、肩こり、不眠といった様々な症状を指します。
プラセンタはホルモンのバランスを整え、自律神経の働きを正常にし、体調不良を改善する効果があるといわれ、更年期障害の治療にも使用されています。【3】

●疲労回復効果
病気や体調不良の多くは、免疫力の低下が原因であるといわれています。
プラセンタは、新陳代謝や感染症などへの抵抗力を高めて体の修復を早めるとして、様々な病気の治療や改善に働きかけ、健やかで疲れにくい体をつくる効果があると期待されています。
また、プラセンタには精神バランスを安定させる作用もあるとして、うつ病や自律神経失調症、不眠症などの治療にもプラセンタが用いられています。

プラセンタは食事やサプリメントから摂取できます

プラセンタを含む食品

○メロンなどの植物の胎座

こんな方におすすめ

○美肌を目指したい方
○肌のハリや弾力を保ちたい方
○シミ、そばかすが気になる方
○アトピー性皮膚炎の方
○更年期障害でお悩みの方
○疲れやすい方

プラセンタの研究情報

【1】ヒトの皮膚細胞(繊維芽細胞)に対し、プラセンタとL -アスコルビン酸-2-ホスファートマグネシウムを投与したところ、線維芽細胞の増殖が促進されたことから、プラセンタが肌に対する健康効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18528587

【2】アレルギー性接触皮膚炎マウスに、プラセンタを投与したところ、免疫細胞T細胞のはたらきを整え、リンパ球の浸潤が抑制されたことから、プラセンタにアレルギー性皮膚炎予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20619383

【3】プラセンタは、更年期症状、創傷治癒、肝再生および抗炎症反応を持つことが知られています。ラットにプラセンタを摂取させたところ、酸化ストレス誘発物質ベンゾピレンラットによる活性酸素、炎症物質TNFα、IL-1β、IL-6 の増加が抑制されたことから、プラセンタに抗酸化作用と抗炎症作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20708262

参考文献

・Cho HR, Ryou JH, Lee JW, Lee MH. (2008) “The effects of placental extract on fibroblast proliferation.” J Cosmet Sci. 2008 May-Jun;59(3):195-202.

・Cianfarani F, Zambruno G, Brogelli L, Sera F, Lacal PM, Pesce M, Capogrossi MC, Failla CM, Napolitano M, Odorisio T. (2006) “Placenta growth factor in diabetic wound healing:altered expression and therapeutic potential.” Am J Pathol. 2006 Oct;169(4):1167-82.

・Kim YS, Park JJ, Sakoda Y, Zhao Y, Hisamichi K, Kaku T, Tamada K. (2010) “Preventive and therapeutic potential of placental extract in contact hypersensitivity.” Int Immunopharmacol. 2010 Oct;10(10):1177-84. Epub 2010 Jul 7.

・Park SY, Phark S, Lee M, Lim JY, Sul D. (2010) “Anti-oxidative and anti-inflammatory activities of placental extracts in benzo[a]pyrene-exposed rats.” Placenta. 2010 Oct;31(10):873-9. Epub 2010 Aug 13.

・天野洋之 プラセンタで10歳肌が若返る! 史輝出版

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