らっきょう

scallion
ナメミラ オオニラ サトニラ カミラ
Allium bakeri REGEL

ユリ科ネギ属の野菜である、らっきょうは、古代の医学書にも取り上げられるほど薬効が高いことから「畑の薬」ともいわれています。また食物繊維も豊富に含んでおります。

らっきょうとは

●基本情報
らっきょうは鱗茎[※1]が肥大したもので、寒さに強く、暑さに弱い多年生植物[※2]です。旬の時期は6月~7月で初夏の野菜です。らっきょうの花は、茎先から散形花序[※3]を出し、淡紫色の小さな花をたくさんつけます。花言葉は、「つつましいあなた」です。中国原産で、辣韮(辛いにら)と書きます。たまねぎにも含まれている硫化アリルという成分を持つため独特の刺激臭(香気成分)と辛みがあり、この独特の香味とシャキシャキとした食感で食卓の名脇役といえ、らっきょうの甘酢漬けはカレーの付け合わせによく使われます。また、らっきょうは食物繊維の一種であるフルクタンが多く含まれています。野菜に含まれる多くの食物繊維の種類は不溶性食物繊維[※4]ですが、らっきょうには野菜からは摂りにくい、水溶性食物繊維[※5]がたくさん含まれており、その量は食物繊維が多いことで知られているごぼうの3~4倍です。

●らっきょうの歴史
中国原産で、中国では紀元前から利用されていました。平安時代に、薬用として日本に渡来したとされています。古くは於保美良(おおみら)として薬用に利用していました。食用とされるようになったのは江戸時代からです。

●らっきょうの産地
日本での生産量が多いのは順に、宮崎県、鳥取県、鹿児島県です(農林水産省 平成23年7月データ)。栽培する土質を選ばないらっきょうですが、砂丘地など、砂質土壌で栽培することで、良質のらっきょうが育ちます。

●らっきょうができるまで
植え付け時期は7月中旬~10月頃で、収穫時期は植え付けの翌年6月~7月頃です。
らっきょうには1年堀りと2年堀があり、1年堀りの場合は大粒のものが収穫でき、さらに1年まって分球[※6]させたものが2年堀りで、良質のものがたくさん収穫できます。

●らっきょうの種類
国内で栽培されているらっきょうの種類は、以下の四種類が主に栽培されているらっきょうの種類です。

・らくだ
在来品種で、らっきょうの代表的な種類です。このらっきょうは各地で栽培されています。特徴は、草丈は比較的長く成長し、一度に収穫できるらっきょうの数が多く、粒も大きいです。

・八房
『らくだ』と『玉らっきょう』のちょうど中間ぐらいの大きさで、重量が軽いです。在来品種の中玉品種で収穫量はやや少ないです。つけものへの利用が多いです。

・九頭竜
最近の改良品種でできたもので、粒の揃いがよく、年に10~15個ほど分球して能率よくたくさんのらっきょうを収穫することができる品種です。

・玉らっきょう
台湾などの輸入物がほとんどで、生産国でらっきょうの甘酢付けなど加工されたものが、国内で流通しています。在来品種と異なり、草丈は余り成長せず、球根部分は小さくて白いのが特徴です。

●らっきょうの生活への取り入れ方
らっきょうは、外皮に傷がなく丸みを帯び、白くて、硬く、艶がよく、粒がそろっているものを選んでください。泥付きのものは、すぐに芽が伸びてくるので、早めに使いきることが大切で、冷蔵庫の野菜室での保存がおすすめです。日に当たると緑色になり硬くなってしまいます。
調理方法としては、らっきょうは甘酢漬けが一般的とされていますが、他のもしょうゆ漬けやはちみつ漬け、ピクルスにしてもおいしく食べられます。水溶性食物繊維がたくさん含まれていることから漬けたときには、漬け汁も一緒に摂るとよいでしょう。
らっきょうの独特の刺激臭と辛みのもとで様々な働きがある硫化アリルは、熱に弱く、水に溶ける性質があるので、長く熱すると消えてしまいます。硫化アリルを効果的にとるなら、生で食ベるのが適しています。

[※1:鱗茎とは、短い茎の周囲に生じた多数の葉が養分を貯えて成長とともに厚みを増し、重なり合って球形になったもののことです。]
[※2:多年生植物とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する植物のことです。]
[※3:散形花序とは、花軸の先に、柄をもつ花が放射状につく形状のことです。]
[※4:不溶性食物繊維とは、便のかさを増やして、腸を内側から刺激し、腸の動きを活発させる働きのある食物繊維のことです。飲み込んだ時の形をほとんど変えず、消化・吸収されずに腸まで移動します。]
[※5:水溶性食物繊維とは、腸内で水分を吸収しながら、同時に有害物質も吸着して排泄する働きのある食物繊維のことです。水に溶け、ヌルヌルしているという特徴があります。]
[※6:分球とは、球根が子孫である子球をつくり、それが分かれて、ひとつの新しい個体になることで、球根の一般的なふえ方です。]

らっきょうの効果

●ガンを予防および抑制する効果
らっきょうに含まれる硫化アリル化合物のジアリルスルフィドは体内で発ガン物質を解毒する酵素を活性化し、また、活性酸素を除去する2つの働きでガンの発生を予防します。また、らっきょうに含まれるフラボノイドには、ガン細胞を死滅させるアポトーシス[※7]という酵素の働きを強める効果もあります。強い抗菌作用もあるため胃の中のピロリ菌[※8]にも効果を発揮し、胃ガンの予防にも有効とされています。らっきょうに含まれるサポニンは強い抗酸化作用[※9]を持つイソクリエチゲニンで、こちらも肺ガンや皮膚ガン、大腸ガンに有効とされています。【1】【2】

●疲労回復効果
らっきょうの硫化アリルはビタミンB1の吸収を助けます。ビタミンB1は乳酸たんぱくなどの疲労物質の分解を助ける働きがあるので、不足するとエネルギーが不足しやすく疲労がたまります。体内のエネルギーづくりのサポートを行うため、らっきょうには疲労回復効果が期待できます。

●腸内環境を整える効果
らっきょうは、食物繊維が多いことで知られているごぼうの3~4倍もの食物繊維を含んでおり、お腹の調子を整える効果があます。

●生活習慣病の予防・改善効果
硫化アリルの強力な抗酸化作用により、有害な活性酸素[※10]を除去・消去してくれるため、生活習慣病[※11]の予防が期待できます。

●血流を改善する効果
硫化アリルは、血液凝固を遅らせて、血液をサラサラにする働きがあります。これによって動脈硬化[※12]や心臓病の予防が期待できます。

●糖尿病を予防する効果
フルクタンがビフィズス菌などのエサとなり、その活性を促進し食後の血糖値[※13]の上昇を抑えることで、糖尿病[※14]予防が期待できます。【3】【4】

●血中コレステロール値の上昇を抑える効果
フルクタンが腸内でコレステロールや胆汁酸[※15]を吸着します。それらを一緒に排出することで、コレステロール値の上昇を抑え、動脈硬化や心筋梗塞[※16]、脳梗塞[※17]の予防が期待できます。

●風邪の症状を緩和する効果
硫化アリルには、身体を温めて発汗を促し、殺菌作用もあるため、風邪や発熱のときにも効果的です。

●食欲増進効果
硫化アリルは消化液の分泌を高める働きがあることから、食欲を増進させる作用があります。

[※7:アポトーシスとは、細胞が自己プログラムとして持っているメカニズムのことで、必要に応じた細胞死を引き起こすプログラムのことです。]
[※8:ピロリ菌とは、正式にはヘリコバクター・ピロリ菌といい、胃粘膜に感染するらせん状の細菌です。]
[※9:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※10:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]
[※11: 生活習慣病とは、病気の発症に、日頃の生活習慣が深く関わっているとされる病気の総称です。糖尿病、脳卒中、脂質異常症、心臓病、高血圧、肥満などが挙げられます。]
[※12:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。]
[※13:血糖値とは、血液中にブドウ糖がどれくらいあるのかを示すものです。ブドウ糖が血液中にあふれてしまうと血糖値が高くなります。]
[※14:糖尿病とは、インスリンの不足などによって糖代謝がうまくいかなくなる病気です。もともとインスリンが不足している場合と、年齢や生活習慣によってインスリンが不足していく場合があります。]
[※15:胆汁酸とは、胆汁に含まれている物質です。消化管内で食物の脂肪や脂溶性ビタミンをより吸収しやすくする働きをします。]
[※16:心筋梗塞とは、心臓を養っている動脈に血栓ができることによって血管が詰まり、発生する病気です。]
[※17:脳梗塞とは、脳の血管に血栓ができることによって血管が詰まり、発生する病気です。]

こんな方におすすめ

○ガンを予防したい方
○疲労を回復したい方
○腸内環境を整えたい方
○生活習慣病を予防したい方
○血流を改善したい方
○糖尿病を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○風邪の症状を緩和させたい方
○食欲不振の方

らっきょうの研究情報

【1】らっきょう抽出物は、抗炎症作用を持ち、腫瘍のアポトーシスを誘導することから、らっきょうは抗がん作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23024755

【2】動物を用いた試験にて、硫化アリル、インドール3カルビノール、ゲルマニウムは肝、肺、尿道、甲状腺がんを防ぐことが報告されています。らっきょうはこれらの成分を含むことから、抗がん作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2013133

【3】らっきょうの機能性成分フルクタンを摂取することにより、被験者の炭水化物摂取後の血糖値上昇が抑制されました。らっきょうは糖尿病予防効果を持つと考えられています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009470503

【4】らっきょうの機能性成分フルクタンを摂取することにより、被験者の炭水化物摂取後の血糖値のAUCが緩和されたことから、らっきょうは糖尿病予防効果を持つと考えられています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009478190

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参考文献

・吉田企世子 旬の野菜の栄養辞典 エクスナレッジ

・野間佐和子 旬の食材 春‐夏の野菜 講談社

・菅原龍幸・井上四郎 原色食品図鑑 株式会社建帛社

・本多京子 食の医学館 株式会社小学館

・食で治す医学大辞典 主婦と生活社

・Arulselvan P, Wen CC, Lan CW, Chen YH, Wei WC, Yang NS. (2012) “Dietary administration of scallion extract effectively inhibits colorectal tumor growth: cellular and molecular mechanisms in mice.” PLoS One. 2012;7(9):e44658. Epub 2012 Sep 14.

・Jang JJ, Cho KJ, Lee YS, Bae JH. (1991) “Modifying responses of allyl sulfide, indole-3-carbinol and germanium in a rat multi-organ carcinogenesis model.” Carcinogenesis. 1991 Apr;12(4):691-5.

・谷 政八、池田 涼子、谷 洋子、小林 恭一 (2010) “食物摂取後の血糖値上昇に及ぼすラッキョウフルクタンの影響” 仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 2, 21-28, 2010-12-30

・谷 政八、池田 涼子、新庄 絹代、小林 恭一 (2009) “耐糖能試験における血糖レベルに及ぼすラッキョウフルクタンの影響” 仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 1, 9-15, 2009-12-30

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