大豆

Soybean

大豆は、豆類の中でも特にたんぱく質を豊富に含むことから、「畑の肉」とも呼ばれています。
その他にも、体に必要なビタミンやミネラル、脂質などを含む栄養価の高い食材として知られており、コレステロール値を下げることによって生活習慣病を予防する効果があるといわれています。

大豆とは?

●基本情報
大豆は、マメ科ダイズ属の植物の一種です。色や形、栽培時期などによって分類され、数百もの品種があるといわれています。
茎の丈は約30~90cmであり、直立するものや、ツル状に伸びるものもあります。
夏から秋にかけて葉の付け根に白や紫、淡い紅色の花を咲かせます。開花後に、約5cmの長さに伸びた莢(さや)ができ、中には約2~3個の種子が入っています。種子には球体や楕円形のものがあり、品種によって形状が異なっています。

●大豆の歴史
大豆の原産地と考えられている中国では、約5000年前から大豆が栽培されていたといわれています。
日本では、縄文時代の遺跡から炭化した大豆が出土しており、18世紀頃にはヨーロッパにも大豆が伝えられました。
その後19世紀にはアメリカに大豆が伝わり、1940年代から大規模な栽培が行われるようになりました。現在、アメリカは世界最大の大豆栽培国とされており、大豆はアメリカの農業を支える重要な農作物となっています。
近年では、ブラジルやアルゼンチンをはじめとする南米諸国でも大豆が盛んに栽培されています。

●大豆の生産地
アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、中国が大豆の4大生産国といわれています。
日本でも大豆が栽培されていますが、国内で消費される大豆の大半は輸入品です。

●大豆の品種
・黄大豆
最も多く利用されている大豆の種類です。
日本で生産される大豆は、大きさによって大粒・中粒・小粒に分類されています。
主に、大粒大豆は煮豆、中粒大豆は豆腐やみそ、小粒大豆は納豆に加工されています。

・黒大豆(黒豆)
大半が大粒の品種であり、主に煮豆に利用されます。
代表的な品種として、近畿、中国、四国地方で栽培される丹波黒が挙げられます。

・青大豆
青大豆の実を、未熟な状態のまま利用した枝豆が広く知られています。
その他、きな粉や菓子などにも利用されています。

●主な大豆の加工食品
・豆腐
大豆を水に浸し、ろ過・加熱した後、潰した豆乳を凝固させたものです。
濃度が低い豆乳でつくったものは木綿豆腐、濃度が高い豆乳でつくった豆腐は絹ごし豆腐と呼ばれます。
また、豆腐を薄く切って揚げた油揚げや厚揚げのほか、豆腐にぎんなんやゆり根、ごまなどを加えて揚げた、がんもどきなどの関連食品があります。

・納豆
蒸し煮した大豆を、納豆菌によって発酵させたものです。
強い粘り気が特徴であり、発酵させることによって消化性が良くなるほか、栄養価が高くなるといわれています。

・しょうゆ
炒って粉砕した小麦と大豆を混ぜたものに麹と食塩水を加えて発酵させ、粕を搾り取ったものです。
また、みそもしょうゆと同じく麹と食塩を加えて発酵させた大豆食品のひとつです。

その他、きな粉、湯葉、おからなどの加工食品や、大豆から油脂を採取した大豆油などがあります。

●大豆の調理・保存方法
生のままの大豆には消化酵素を阻害する働きを持つ物質が含まれているため、消化されにくいという特徴があります。
そのため、大豆を調理する際には、十分に水に浸して加熱することが重要です。
また、大豆を選ぶ際には、粒に光沢があり、大きさが揃っていて、皮が薄くてしわがないものが良いといわれています。
大豆は湿気に弱く、虫が付きやすいため、密閉容器に入れて冷暗所での保存が適しています。

●大豆に含まれる栄養成分
・アミノ酸
大豆に含まれるたんぱく質の割合は、約30~40%と非常に高く、体内で合成することができない必須アミノ酸のバランスが良いことから、「畑の肉」とも呼ばれています。
たんぱく質は筋肉や細胞など、体をつくるために必要となる栄養素です。大豆は肉類などの動物性たんぱく質と比較してカロリーが低いことや、ビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富に含まれているため、良質なたんぱく源として知られています。

・大豆サポニン
大豆に含まれる渋みや苦みの成分です。
大豆を煮る時に出る泡に含まれており、サポニンという成分名には「泡のたつもの」という意味があります。
サポニンは強い抗酸化力[※1]を持ち、体内で脂質の過酸化を抑える働きがあります。

・レシチン
脂質の一種であり、ホスファチジルコリンとも呼ばれています。
レシチンは、細胞膜の主成分であり、脳や神経組織、肝臓などに多く存在しています。
また、脳や神経、細胞内の情報伝達物として、それぞれの組織での機能調節を司っています。
体内に存在するレシチンのうち、30%が脳に存在しているといわれています。脳細胞の活動を支える重要な成分であることから、レシチンは「脳の栄養素」とも呼ばれています。

・イソフラボン
イソフラボンは、大豆をはじめとするマメ科の植物に多く含まれるポリフェノールの一種です。
女性ホルモンのひとつであるエストロゲン[※2]と似た働きを持つことから、「植物性のエストロゲン」とも呼ばれています。
エストロゲンは美しい肌やふくよかな体つきをつくる上で欠かせない女性ホルモンであり、大豆に含まれるイソフラボンにはエストロゲンの分泌量を調整する働きがあります。

[※1:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※2:エストロゲンとは、女性ホルモンの一種で、卵胞や黄体から分泌される女性らしい体つきを促進するホルモンのことです。]

大豆の効果

●コレステロール値を下げる効果
​​大豆に含まれるサポニンが持つ抗酸化作用によって、コレステロール値を下げることができます。
コレステロールをはじめとする脂質は、細胞をつくる上で重要となる成分です。
しかし、脂質は長時間空気や光にさらされることによって過酸化脂質[※3]へと変化し、血液中で増加すると血栓[※4]がつくられやすくなり、動脈硬化などを引き起こす原因となります。
サポニンは、脂質の酸化を防ぐことによって過酸化脂質の発生を抑え、代謝[※5]を促進する働きがあります。
高脂血症、動脈硬化症、高血圧症の患者に大豆サポニンを投与した結果、総コレステロールは71%、中性脂肪は88%に改善されたという報告があり、大豆に含まれるサポニンが血液中の脂質を減少させる作用を持つことが明らかとなっています。

また、大豆に含まれるレシチンにも、脂質の代謝を活発にさせる働きがあります。
レシチンの働きによって、コレステロールや中性脂肪が減少するほか、エネルギーが効率良く代謝されることによって血糖値[※6]の低下や肥満防止などの効果も期待できます。【1】【2】

●更年期障害の症状を改善する効果
大豆に含まれるイソフラボンには、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を促進することによって、更年期[※7]障害の症状を改善する効果があります。
女性は、年齢とともに卵巣の機能が衰え、エストロゲンの分泌量が減少することによって、様々な不快症状が現れます。このような症状は、特に更年期の女性に多くみられます。
顔のほてりやのぼせ、発汗、肩こり、頭痛などの身体的なものに加えて、イライラ、不安、憂鬱など、精神的な症状も見られます。
また、年齢だけではなく、無理なダイエットやストレス、喫煙や睡眠不足などの生活習慣が原因でエストロゲンの分泌量が減少するといわれています。
その結果、更年期障害に似た症状が現れるほか、月経周期が乱れることがあります。
大豆に含まれるイソフラボンには、エストロゲンの分泌を促し、更年期障害の症状を改善する効果があります。

●集中力を高める効果
大豆に含まれるレシチンの働きによって、脳の働きを活発化させ、集中力を高めることができます。
脳を構成する神経細胞のグループをニューロンといいます。ニューロン同士を結合する部分はシナプスと呼ばれ、シナプスから分泌される神経伝達物質によって受け取った情報を全体に伝達するほか、情報を記憶として留め、留めたものを引き出します。
レシチンは、この神経伝達物質を合成する成分であり、レシチンの働きによって記憶力や集中力が高まるほか、老人性痴呆症の改善にも有効だといわれています。【3】

●骨粗しょう症を予防する効果
骨粗しょう症とは、骨密度[※8]が低下し、骨がもろくなり、折れやすくなる病気です。
カルシウムは、骨や歯だけではなく血液や筋肉、脳にも含まれています。カルシウムが不足すると、骨からカルシウムを取り出し、血液中のカルシウムの量を一定に保つという仕組みがあります。
大豆には骨に必要なカルシウムのほか、骨からカルシウムが溶け出さないよう調節する働きを持つイソフラボンが含まれています。
エストロゲンの分泌量が減少すると、骨にカルシウムを蓄えておく力が低下してしまうため、骨粗しょう症は更年期の女性に多くみられます。また、若い世代の女性であっても、不規則な生活習慣が原因でエストロゲンの分泌量が減少し、骨粗しょう症が引き起こされる可能性があります。
大豆に含まれるカルシウムが骨を強く保ち、イソフラボンが骨にカルシウムを蓄えることによって、骨粗しょう症を予防する効果があります。【5】【7】

[※3:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]
[※4:血栓とは、血液中の血小板などが固まってできる塊のことです。動脈硬化や脳梗塞の原因にも成り得るといわれています。]
[※5:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※6:血糖値とは、血液中にブドウ糖がどれくらいあるのかを示すものです。ブドウ糖が血液中にあふれてしまうと血糖値が高くなります。]
[※7:更年期とは、閉経年齢の前後約10年間を表します。平均的な閉経年齢は50歳前後といわれているため、40~60歳前後の期間が更年期にあたります。]
[※8:骨密度とは、骨の密度をいいます。一定の面積あたり骨に存在するカルシウムなどのミネラルがどの程度あるかを示し、骨の強度を表します。]

大豆は食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○コレステロール値が気になる方
○更年期障害でお悩みの方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○骨粗しょう症を予防したい方

大豆の研究情報

【1】精巣摘出(Orx)ラットと通常(IA)の中年雄ラットに対し、イソフラボンゲニステイン(G)またはダイゼイン(D)を10mg/kgまたは30mg/kgを摂取させました。GおよびDの高用量の摂取はOrxラットIAラットともに血中LDLコレステロールを低下させました。低用量のイソフラボン投与はOrxラットのみ、コレステロールを低下させました。このことから、大豆イソフラボンであるGおよびDの摂取は男性中高年の血清コレステロールを下げる働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17895530

【2】閉経後女性において、安静時のエネルギー消費(REE)に関する大豆タンパク質摂取の影響を調べました。60名の女性に対しG1(運動+大豆タンパク質摂取)、G2(運動+プラセボ摂取)、G3(運動なし+大豆タンパク質摂取)およびG4(運動なし+プラセボ摂取)に分け、テストをおこないました(大豆たんぱく質は25g/日)。REEはG1(158kcal/日 17%)が最も高いことがわかりました。このことから、大豆の摂取と運動を一緒に行うことにより、安静時のエネルギー消費が高くなることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21152831

【3】若年マウスおよび成熟マウスに通常の食事に大豆を加えたものを60日間摂取させました。高架式十字迷路試験を行ったところ、大豆摂取群は記憶障害を防ぐことが分かりました。また、脳内のアセチルコリン活性、脳内脂質過酸化の減少、グルタチオンの上昇がみとめられました。このことから、大豆は、体内抗酸化能を上昇させることにより脳神経保護作用を有する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20954807

【4】閉経後女性(46-63歳)に対する骨ミネラル濃度(vBMD)および強度(末梢血の定量的CT法)をプラセボまたは2種類の大豆イソフラボン濃度(80 mg/日または120mg/日)での作用について検討しました。120mg/日の大豆イソフラボンの摂取は、大腿骨皮質ミネラルが有意に上昇し、80mg/日の投与では、骨代謝が早くなったことがわかりました。これらのことから、大豆イソフラボンは、骨の吸収・代謝を促進させる働きがあることが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21295742

【5】大豆由来のソヤサポニン豊富なエキス(SRE)の、急性アルコール肝毒性に対する保護作用について調べました。SREの投与は急性アルコールによって引き起こされる血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ、アラニントランスアミナーゼ、アルカリホスファターゼおよび乳酸脱水素酵素の増加を防ぎました。また、SRE投与は、SOD、GPx活性などの体内の抗酸化酵素の活性を上昇させました。病理学的検査においてもSREはアルコール性脂肪肝壊死、炎症および膨潤を防ぎました。このことから、SREは急性アルコール性肝炎を抑える働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21280631

【6】大豆イソフラボンの摂取が尿中デオキシピリジノリン、血清骨特異アルカンホスファターゼ(BAP)および脊椎骨ミネラル密度(SBMD)に及ぼす作用について調べました。イソフラボンを摂取した対象の尿中デオキシピリジノリン濃度は低下しました。イソフラボンの1日あたり摂取量が90 mg以上、または6ヶ月間摂取を継続した試験がそれぞれ28.5 mg/cm^2および27 mg/cm^2骨ミネラル密度を高めました。このことから、大豆イソフラボンは、骨吸収阻害・骨形成刺激を促す可能性があると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21280631

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参考文献

・本多京子 食の医学館 小学館

・西崎統 鈴木園子 専門医がやさしく教える食品成分表 PHP研究所

・蔵敏則 食材図典 小学館

・菅原龍幸・井上四郎 新訂 原色食品図鑑

・瀬口正晴・八田一 食品学各論 ㈱化学同人

・池上保子 おいしく食べて健康に効く目で見る食材便利ノート 永岡書店

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・原山建朗 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・Bansal N, Parle M. (2010) ” Soybean supplementation helps reverse age- and scopolamine-induced memory deficits in mice.” J Med Food. 2010 Dec;13(6):1293-300. Epub 2010 Oct 18.

・Sosić-Jurjević B, Filipović B, Ajdzanović V, Brkić D, Ristić N, Stojanoski MM, Nestorović N, Trifunović S, Sekulić M. (2007) “Subcutaneously administrated genistein and daidzein decrease serum cholesterol and increase triglyceride levels in male middle-aged rats.” Exp Biol Med (Maywood). 2007 Oct;232(9):1222-7.

・Trevisan MC, Souza JM, Marucci Mde F. (2010) “Influence of soy protein intake and weight training on the resting energy expenditure of postmenopausal women.” Rev Assoc Med Bras. 2010 Sep-Oct;56(5):572-8.

・Ristić Medić D, Ristić V, Arsić A, Postić M, Ristić G, Blazencić Mladenović V, Tepsić J. (2006) “Effects of soybean D-LeciVita product on serum lipids and fatty acid composition in type 2 diabetic patients with hyperlipidemia.” Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2006 Sep;16(6):395-404. Epub 2005 Nov 4.

・Shedd-Wise KM, Alekel DL, Hofmann H, Hanson KB, Schiferl DJ, Hanson LN, Van Loan MD. (2011) “3-yr effects on pQCT bone mineral density and strength measures in postmenopausal women.” J Clin Densitom. 2011 Jan-Mar;14(1):47-57.

・Yang X, Dong C, Ren G. (2011) “Effect of soyasaponins-rich extract from soybean on acute alcohol-induced hepatotoxicity in mice.” J Agric Food Chem. 2011 Feb 23;59(4):1138-44. Epub 2011 Jan 31.

・Ma D, Qin L, Liu B, Wang P. (2009) “[Inhibition of soy isoflavone intake on bone loss in menopausal women: evaluated by meta-analysis of randomized controlled trials].” Wei Sheng Yan Jiu. 2009 Sep;38(5):546-51.

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