アスパラガス

asparagus

アスパラガスには、アスパラガスから発見されたアスパラギン酸や、ビタミン・ミネラルなどを豊富に含んでいます。特に、アスパラガスの穂先には健康成分がたっぷりと詰まっており、疲労回復に役立つアスパラギン酸、毛細血管を丈夫にする効果のあるルチンが多く含まれています。

アスパラガスとは?

●基本情報
アスパラガスは、キジカクシ科クサスギカズラ属に属しており、和名で「オランダうど」「松葉うど」「オランダきじかくし」ともいわれています。アスパラガスの旬は、4月~6月の春から初夏にかけてです。
アスパラガスはヨーロッパでは、春を告げる野菜として紀元前から栽培されるほど古くから人々に親しまれています。
日本へは18世紀後半、江戸時代中期にオランダ人によって観賞用として伝わりました。アスパラガスが食用として流通するようになったのは、明治初期にアメリカやフランスから種子として再導入された後のことです。日本では大正12年に北海道でアスパラガスの本格的な栽培がはじまり、その2年後にはアジア最初のアスパラガス缶詰の生産が始まりました。
アスパラガスは食用として枝や葉が出る前の若い茎を使用します。
アスパラガスのほろ苦いような特有の味は、100gのアスパラガスに360mgと大変豊富に含まれているアスパラギン酸によるものです。アスパラギン酸の名は、アスパラガスから発見されたことに由来しています。

●アスパラガスの種類
アスパラガスには、栽培方法の違いによって、グリーンアスパラガスとホワイトアスパラガスに分けられます。
グリーンアスパラガスは、発芽後も日光に当て続けて育てたもので、ホワイトアスパラガスは発芽後に土寄せをして、白く軟化させたものです。
グリーンアスパラガスは、ホワイトアスパラガスに比べて栄養価が高く、香りや風味も豊かだと言われています。グリーンアスパラガスは緑黄色野菜に分類され、ビタミンミネラル(ビタミンAビタミンB₁ビタミンB₂ビタミンCビタミンEカリウムカルシウムなど)が含まれています。
一方、ホワイトアスパラガスは、ビタミンA以外の栄養素はグリーンアスパラガスと同様に含まれていますが、ビタミン類などの含有量はグリーンアスパラガスより総体的に劣ります。ホワイトアスパラガスはグリーンアスパラガスより栄養価は落ちますが、ほんのりと苦みがあり、やわらかい食感です。
北イタリアはアスパラガスの名産地として知られ、ヴェネトン州のバッサーノは特別に太いホワイトアスパラガスで有名です。
日本のアスパラガスの主要生産地は、北海道、長野県、佐賀県です。以前はホワイトアスパラガスが主流でしたが、現在はグリーンアスパラガスが主流となっています。

●グリーンアスパラガスの選び方
・アスパラガスの穂
アスパラガスの穂は、穂先が開いておらず、穂がぎゅっと詰まっているものが鮮度が高いものです。また、アスパラガスの穂先の下の首部分が太く、ハリのあるものが新鮮といわれています。劣化するとアスパラガスの穂の部分から曲がってきます。

・アスパラガスの茎
アスパラガス茎は、茎が太くて均一にまっすぐ伸びているものの方が鮮度が高く、細く曲がっているものは鮮度が低いとされています。

・アスパラガスの切り口
アスパラガスの切り口は、褐変がなく乾燥していないものが新鮮なアスパラガスの証です。切り口が乾いて繊維が目立っているものは鮮度が低下している証拠です。

・アスパラガスの色
アスパラガスの色は、緑色が濃く、鮮やかでつやのあるものが新鮮です。変色が見られるものは、茎が筋っぽく、味が落ちています。

●アスパラガスの保存方法
アスパラガスはできるだけ立てて保存することで鮮度を保つことができます。
アスパラガスを横に置いて保存しておくと、穂先が起き上がろうとして糖やアミノ酸を消費してしまうため、アスパラガスの栄養やうまみが損なわれてしまいます。
また、アスパラガスは生のままラップに包んで冷蔵庫に入れて保存することも可能です。2~3日は保存することができますが、時間の経過とともに硬くなり、苦みが出てきて、栄養がどんどん失われていくため、新鮮なうちにさっとゆでてから冷蔵または冷凍することが良い保存方法といえます。

●アスパラガスの調理方法
・根元は手で折る
アスパラガスの根元は、ゆでても固くて食べられません。
手で根元を持ってしならせると、固い部分から簡単に折ることができます。あるいは、固い表皮をピーラーなどでむけば、ゆでて食べることも可能です。

・根元からゆでる
アスパラガスは根元と穂先の固さが違います。固い方の根元から立てて入れ10秒ほどしてから寝かせてゆでると、均一の柔らかさにゆであがります。

アスパラガスは、下ゆでをしてから利用することが多くあります。下ゆでをする場合には、塩を加えた熱湯で硬めにゆで、すぐにたっぷりの氷水で急速に冷まします。こうすることで、色や歯触りがよくなり、水に溶けやすい性質のビタミンCやルチンなどの損失も最小限に抑えられ、栄養効果を保ったまま摂取できます。
また、揚げ物や炒め物などに使う場合は、下ゆでをせずに調理した方が、味わいや栄養面をほとんど損なうことなく調理することができます。
グリーンアスパラガスの場合、油を使って調理することで、油に溶けやすい性質のビタミンEやビタミンAの吸収効率が上がります。

アスパラガスの効果

●美肌効果
アスパラガスには、ビタミンC、ビタミンEという抗酸化力[※1]の強いビタミンを含んでいます。

ビタミンCはコラーゲンの生成に欠かすことができない成分です。コラーゲンは、正常な皮膚を形成する上で必要不可欠な成分で、皮膚組織である真皮の約70%を占めています。十分なコラーゲンはお肌のキメを整え、ハリと弾力のある潤いに満ちた状態へと導くのに効果的です。
コラーゲンは、ビタミンCを摂ることで、体内での生成がより一層促進されます。
また、ビタミンCはしみのもとであるメラニン色素[※2]の生成を防ぐ働きや効果があるため、ビタミンCは肌のハリとしみ予防に効果的なビタミンともいえます。

ビタミンEは「若返りのビタミン」といわれています。
ビタミンEは、末梢血管[※3]を広げて血行を促進し、全身の血行をよくすることで細胞の生まれ変わりである新陳代謝を活発にする効果があります。
新陳代謝が活発になることで、肌にハリが出てきます。さらに、紫外線に対する抵抗力も高まるため、しみやそばかすにも効果的だといえます。
また、ビタミンEは細胞自体を活性酸素から守る働きも担っています。
人間の体は約60兆個もの細胞で構成されています。
細胞は、脂質でできた細胞膜という膜で覆われています。
紫外線やストレスなどから体内に活性酸素[※4]が発生すると、活性酸素は細胞膜の脂質と反応し、体内に過酸化脂質をつくり出します。過酸化脂質とは、細胞を劣化させる物質で、老化や病気の原因となります。
このため細胞膜の脂質中には、常にビタミンEが存在しており、活性酸素による過酸化脂質をつくらないように抑制し、老化や病気にならないよう細胞を守るために働いています。

アスパラガスに含まれるビタミンEは、脂溶性のビタミンのため、油脂に溶ける性質を持ちます。よって、油と一緒に調理をすることで吸収の効率が上がります。
さらにビタミンEは、ビタミンCと一緒に摂取することで、抗酸化力が強まります。ビタミンCは、独自に抗酸化作用を持っているだけでなく、ビタミンEの抗酸化力を高める働きもあるのです。
このようにビタミンEとビタミンCは抗酸化力を高める働きを担う相性抜群の成分だといえます。

●血流を改善する効果
アスパラガスの穂先には、ビタミンPともいわれるルチンという成分を含んでいます。ルチンは、ビタミンCと共に働き毛細血管を強くして、血流を改善する効果があります。
毛細血管を丈夫にすることで、高血圧や動脈硬化、脳卒中の予防への効果に期待できます。

●疲労回復効果
アスパラガスの穂先には、アスパラギン酸が多く含まれています。
アスパラギン酸は、アミノ酸の一種で、アスパラガスから発見されたことからこのように名づけられました。
アスパラギン酸には、体のスタミナをつけて、疲労に対する抵抗力を高める作用があります。ゆえに、スタミナ強化をうたったドリンク剤に、アスパラギン酸が配合されていることがあります。
またアスパラギン酸には、エネルギーや窒素の代謝を高めるミネラル(カルシウム、カリウム、マグネシウム)を全身へスムーズに運ぶ作用があります。この作用によって、疲労回復を素早く促し、体の活力を増す効果を発揮します。
また、糖質や脂質をエネルギーに変える力も強いことからも、疲労回復に効果的だといわれています。

●便秘改善効果
アスパラガスは、食物繊維オリゴ糖を含んでいます。
食物繊維は、人間の消化酵素で消化されない食品の成分で、腸内環境を整えて便秘の解消に効果があるといわれています。
またオリゴ糖は、腸内の善玉菌を増やす働きがあり、生活習慣病の予防効果が知られています。
さらに、食物繊維と同様に、腸内の余分なコレステロールや胆汁酸を吸収して排出する作用があるので、動脈硬化を予防する効果もあります。

●新陳代謝を活発にする効果
アスパラガスに含まれているアスパラギン酸は、新陳代謝を高め、体内でたんぱく質の合成を高める働きをします。この作用から、肌を美しく保つ効果が知られています。

●尿の合成促進
アスパラギン酸は尿の合成を促進する働きを持っています。
たんぱく質に含まれる窒素から生成されるアンモニアは、尿として体の外へ排出されます。このアンモニアが尿として排出されず、体の中で循環器系に入ると体の各部分の活動の命令、調節、伝達を行っている中枢神経[※4]に悪影響を及ぼし、毒性を発揮します。
アスパラギン酸は、尿の合成を促進し、体の外へアンモニアの排出を促すことで、中枢神経を守ることに効果的です。

●コレステロール値を下げる効果
アスパラガスを摂取することで、総コレステロールおよび悪玉(LDL)コレステロール値を低下させる効果があります。【4】

[※1:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※2:メラニン色素とは、シミの原因になるものです。メラニン色素の蓄積によってシミは形成されます。]
[※3:末梢血管とは、手先や足先に向かって枝分かれしている血管のことです。]
[※4:中枢神経とは、脳と脊髄のことで、感覚、運動、意思、情緒、反射 呼吸など、体のあらゆることに関するコントロールをしています。]

アスパラガスは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○美肌を目指したい方
○疲労を回復したい方
○ストレスをやわらげたい方
○生活習慣病を予防したい方
○便秘でお悩みの方
○体内の毒素を排出したい方

アスパラガスの研究情報

【1】ストレス誘発マウスに、アスパラガスを摂取させると、ストレスによる血中グルコース、トリグリセリド、コレステロール、副腎ホルモンの上昇が抑制されたことから、アスパラガスが抗ストレス効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22734253

【2】妊娠中のバッファローに、アスパラガスを摂取させると、血中プロラクチン、コルチゾールおよび乳脂肪コレステロールが増加したことから、アスパラガスが免疫力向上効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22544434

【3】Ⅱ型糖尿病マウスに、アスパラガス抽出物 250, 500 mg/kg を摂取させたところ、血糖値上昇ならびにインスリンの低下、膵臓β細胞の機能低下に改善が見られたことから、アスパラガスが抗糖尿病効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22221560

【4】高脂血症ラットに、アスパラガス125, 250, 500 mg/kg を摂取させたところ、総コレステロールおよび悪玉(LDL)コレステロール、動脈硬化に改善が見られました。また、抗酸化酵素SODおよびカタラーゼの活性も保護されたことから、アスパラガスが抗酸化作用、高脂血症および動脈硬化予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22203881

【5】アスパラガスの有効成分サルササポゲニングリコシドは、免疫細胞T細胞を活性化するはたらきが知られており、アスパラガスが免疫力向上作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21035507

【6】アスパラガスに含まれるジオスゲニンおよびサルササポゲニンは様々な生物活性(抗腫瘍、抗菌性、抗ウイルス作用)を持つことが知られており、アスパラガスの高い機能性が注目されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20799270

【7】若年マウスおよび老マウスに、アスパラガスを200 mg/kg を摂取させたところ、海馬が活性化し記憶力や学習能力が向上しました。アスパラガスは、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)に働きかけ、認知症予防効果や学習能力向上効果を果たすと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20795365

【8】ラットにアスパラガスを50, 100, 200mg/kg を7日間摂取させたところ、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)を介した、学習能力改善が見られたことから、アスパラガスに学習能力改善効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20594636

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参考文献

・本多京子.根本幸夫.伊田喜光.田口進. 食の医学館 小学館

・則岡孝子. 栄養成分の事典 新星出版社

・本橋登. いちばん体に効く野菜の教科書 主婦の友社

・西崎統.鈴木園子. 専門医がやさしく教える食品成分表 PHP研究所

・池上保子. おいしく食べて健康に効く目で見る食材便利ノート 永岡書店

・芦澤正和.内田正宏. 花図鑑野菜 草土出版

・中村丁次. 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・〔監訳〕田中平三.門脇考.篠塚和正.清水俊雄.山田和彦. 健康食品のすべて-ナチュラルメディシン・データベース- 同文書院

・Joshi T, Sah SP, Singh A. (2012) “Antistress activity of ethanolic extract of Asparagus racemosus Willd roots in mice.” Indian J Exp Biol. 2012 Jun;50(6):419-24.

・Singh SP, Mehla RK, Singh M. (2012) “Plasma hormones, metabolites, milk production, and cholesterol levels in Murrah buffaloes fed with Asparagus racemosus in transition and postpartum period.” Trop Anim Health Prod. 2012 Apr 29. [Epub ahead of print]

・Hafizur RM, Kabir N, Chishti S. (2012) “Asparagus officinalis extract controls blood glucose by improving insulin secretion and β-cell function in streptozotocin-induced type 2 diabetic rats.” Br J Nutr. 2012 Jan 6:1-10. [Epub ahead of print]

・García MD, De la Puerta R, Sáenz MT, Marquez-Martín A, Fernández-Arche MA. (2011) “Protective effects of Asparagus racemosus on oxidative damage in isoniazid-induced hepatotoxic rats:” Evid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:814752. Epub 2011 Nov 17.

・Sidiq T, Khajuria A, Suden P, Singh S, Satti NK, Suri KA, Srinivas VK, Krishna E, Johri RK. (2010) “A novel sarsasapogenin glycoside from Asparagus racemosus elicits protective immune responses against HBsAg.” Immunol Lett. 2011 Mar 30;135(1-2):129-35. Epub 2010 Oct 28.

・Wang L, Wang X, Yuan X, Zhao B. (2010) “Simultaneous analysis of diosgenin and sarsasapogenin in Asparagus officinalis byproduct by thin-layer chromatography.” Phytochem Anal. 2011 Jan-Feb;22(1):14-7. doi: 10.1002/pca.1244. Epub 2010 Aug 26.

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・Ojha R, Sahu AN, Muruganandam AV, Singh GK, Krishnamurthy S. (2010) “Asparagus recemosus enhances memory and protects against amnesia in rodent models.” Brain Cogn. 2010 Oct;74(1):1-9. Epub 2010 Jul 1.

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