シトルリン

citrulline

シトルリンは、すいかから発見された栄養素で、スーパーアミノ酸とも呼ばれている、アミノ酸の一種です。
ウリ科の植物に多く含まれており、一酸化窒素の生産を促すことで、血管を拡張させる効果を持ちます。
血流を改善する効果や、むくみや冷えの解消、疲労を回復する効果、筋力・精力の増強効果、美肌に対する効果などが期待されています。

シトルリンとは?

●基本情報
シトルリンとは、すいかなどのウリ科の植物に含まれる遊離アミノ酸の一種で、スーパーアミノ酸と呼ばれることもあります。
アミノ酸はそのほとんどが、たんぱく質として人間の体内に存在しており、血管や内臓、皮膚、筋肉などを構成していますが、一方たんぱく質を構成せずにひとつひとつバラバラの状態で体内に存在し、細胞や血管を巡りながら、必要な時にすぐ働けるような状態のものを「遊離アミノ酸」と呼んで区別しています。
遊離アミノ酸はシトルリン以外に、GABAオルニチンも知られており、その高い機能性から注目を集め、多くの研究が進められています。
また、シトルリンはすいか以外にも、きゅうり、苦瓜(ゴーヤ)メロン、冬瓜などの可食部に含まれており、安全性の高さが確認されています。まとまった量のシトルリンを食品から摂ることは難しいため、サプリメントによる摂取が効果的として、シトルリンを配合したサプリメントが販売されています。

●シトルリンの歴史
シトルリンは、1930年に日本で、すいかから発見された栄養素です。
シトルリン(citrulline)という名称は、すいかの学名であるシトルラス ブルガリス(citrullus vulgaris)から名付けられました。
シトルリンは、すいかの原種であるといわれているカラハリ砂漠の野生すいかに特に多く含まれており、強力な日光が降り注ぎ、乾燥した過酷な環境で生き抜くために、シトルリンは重要な役割を持つ成分であると考えられています。
日本では、2007年8月にシトルリンが食品成分として利用可能になり、現在では主に健康食品として利用されています。
また、シトルリンはフランスなどの欧州では医薬品成分として、アメリカではサプリメントとして注目を集めています。

●シトルリンの働き
シトルリンで特に注目されている働きは、血流を改善する作用です。
シトルリンは、血管を拡げる作用を持つ一酸化窒素(NO)[※1]づくりをサポートするといわれています。
一酸化窒素は、血管の平滑筋[※2]を弛緩させる作用があり、それによって動脈を拡張させ、血流を改善することができるのです。
シトルリンが血流を改善することにより、むくみや冷えの改善、新陳代謝の向上などの効果が期待されています。
また、シトルリンは肝臓内でアンモニアを解毒する機能において、重要な役割を担う成分であるほか、皮膚の水分保湿因子(NMF)のひとつとしても知られています。

<豆知識>シトルリンの効果的な摂り方
シトルリンは、果肉にも含まれていますが、特に皮に多く含まれている成分です。
そのため、きゅうりなどの皮ごと食べることのできる食材とは異なり、すいかなどの果肉を主に食する食材に関しては、シトルリンをあまり多く摂取することができません。
すいかの皮は洗って炒めることで甘味が出るため、炒めものなどの食材として用いることができ、効率的にシトルリンを摂取するためには、果肉だけではなく果皮もうまく活用し、食することが必要であるといえます。

[※1:一酸化窒素(NO)とは、酸素と窒素からなる、無機化合物の一種です。血管内皮細胞から血液中に生産され、血管拡張作用や、血小板凝縮抑制作用などの働きを示します。]
[※2:平滑筋とは、血管、気管、腸管、膀胱、子宮などの臓器壁を構成している筋肉の一種です。]

シトルリンの効果

●むくみを解消する効果
シトルリンが持つ、血流を改善させる作用は、むくみに対する効果が期待されています。
むくみは、人間の体内に余分な水分や老廃物が蓄積されて起こる症状であり、特に筋肉量が少ない女性に多い悩みです。心臓から遠い足にむくみを感じやすいといわれています。
血流が改善されることによって、体内に蓄積された余分な水分等が体外へ排出されやすくなるため、むくみの解消に効果的です。【4】

●冷え性を改善する効果
シトルリンを摂取することは、冷え性を改善することにつながるといわれています。
冷え性は、女性に多い症状であり、末梢血管の血行不良が原因です。
シトルリンが持つ血管を拡張する作用は、末梢血管においても効果を示し、血流の改善を期待することができるため、シトルリンを摂取することは、冷え性の緩和や改善につながるといえます。【4】

●美肌効果
シトルリンは天然保湿因子(NMF)を構成するアミノ酸の一種であるため、肌の美しさを保つことができると考えられています。
天然保湿因子(NMF)とは、人間がもともと持っている保湿成分で、角質層[※3]や角質細胞[※4]の中に存在し、水分を保持する力を持つ物質です。
天然保湿因子(NMF)はシトルリン以外にもグリシンセリンアラニンスレオリンなどが挙げられますが、それらはたんぱく質として肌を構成しているアミノ酸であるため、遊離アミノ酸としてはシトルリンが最も多く存在しています。
肌のツヤやハリは、天然保湿因子(NMF)の量や効力に依存するため、シトルリンを摂取することは肌の潤いを保つためには有効であるといえます。
また、シトルリンは血流の改善に対して効果を発揮するため、新陳代謝を活発化し、ターンオーバーという肌の生まれ変わりを促進する作用も持つといわれています。
シトルリンはその多彩な機能性によって、美肌へ導くことができるのです。

●疲労回復効果
シトルリンを摂取することは、疲労を回復する効果につながるといわれています。
疲労は、様々な要因によって蓄積されますが、主な原因はアンモニアと乳酸の蓄積です。
アンモニアや乳酸は、運動のためのエネルギーづくりを行う際に生産される物質であり、蓄積したアンモニアは疲労臭となって、体臭の原因になる場合もあります。
シトルリンには、疲労の原因物質であるアンモニアを肝臓内で尿素へ分解し、体外へ排出する作用があるため、疲労の回復に効果的であると考えられています。
欧米では、アスリートを対象としたシトルリンサプリメントが販売されており、シトルリンの疲労を回復する効果が広く認知されています。
また、シトルリンによって産生を促進される一酸化窒素は、運動時のパフォーマンスに対しても影響を与えるといわれており、運動後の筋肉痛を抑制する効果にも効果が期待されています。【6】

●筋肉を増強する効果
シトルリンを摂取することによって、筋力の増大が期待できるといわれています。
遊離アミノ酸であるシトルリンには、筋肉増強に働きかける成長ホルモンの分泌を促進する作用があります。
成長ホルモンは体の成長を促すホルモンであり、筋肉をつくったり、骨を伸ばすなどの作用があるため、筋肉を増強する上で欠かせない物質です。
シトルリンを摂取することによって成長ホルモンの分泌が促されるため、筋力の増強を行うことができる上、シトルリンには血流を改善する作用もあるため、成長ホルモンの分泌促進作用との相乗効果が期待できます。

●集中力や記憶力を向上させる効果
シトルリンが持つ血流を改善する働きは、集中力や記憶力などを向上させることができるといわれています。
集中力や記憶力は、人間の思考を司る臓器である脳の働きに影響されますが、脳の血流が減退すると精神疲労が蓄積されることが知られています。
シトルリンの血流を改善する効果は、脳にも作用し、血流量を活発化することができるため、精神疲労を軽減し、脳が元気になるため、集中力や記憶力の向上が期待できるのです。

[※3:角質層とは、表皮を多い、皮膚の最も外側に位置している層です。肌の深部から新しい細胞が生まれ変わるたびに、垢となって剥がれ落ちることで一定の厚みを保っています。]
[※4:角質細胞とは、角質層を構成している細胞です。ケラチンたんぱく質で構成されています。]

シトルリンは食事やサプリメントで摂取できます

シトルリンを含む食品

○すいか
○苦瓜(ゴーヤ)
○きゅうり
○メロン
○冬瓜

こんな方におすすめ

○手足のむくみでお悩みの方
○冷え性の方
○美肌を目指したい方
○運動時の疲労を回復したい方
○運動能力を向上したい方
○集中力や記憶力を向上させたい方

シトルリンの研究情報

【1】先天性心疾患手術を受けた乳幼児40名を対象とした無作為化プラセボ比較試験において、術中および術後に10%シトルリン液を12時間おきに計5回経口投与したところ、血漿中シトルリン、アルギニン濃度の上昇が認められ、シトルリン濃度が37μmol/L以上の患者では術後肺高血圧の発症がなかったという報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16798303

【2】鎌形赤血球患者5名を対象とした予備的な試験において、L-シトルリンを1日に約0.1 g/kg体重、4週間摂取させたところ、摂取前と比較して血漿中L-アルギニン濃度の上昇、左心室重量係数、白血球数、好中球数の低下が認められたという研究報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11688916

【3】健康な男女20名を対象とした二重盲検クロスオーバープラセボ比較試験において、シトルリン0.75 g、1.5 g、3 gを1日2回、6日間摂取させたところ、3 g×2回/日摂取群において、摂取前と比較して血中アルギニン、尿中窒素酸化物NOx、cGMP濃度の増加が認められたという報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17662090

【4】ウサギに高コレステロール食と同時にシトルリン、アルギニン、抗酸化剤 (ビタミンE、ビタミンC) を与えたところ、これらの成分を併用で与えた群では血管弛緩および血流が改善し、動脈硬化傷害が抑えられたという報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16157883

【5】15名の健康な男性対象に5.6g/日のシトルリンもしくはプラセボを1週間与えた結果、シトルリンを与えたグループでは脈拍が下がり、血中の窒素酸化物(NO)が増加したことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21067832

【6】シトルリンを与えたマウスと与えなかったマウスのそれぞれで、激しい運動として水泳をさせた際のシトルリンの影響を調べた研究があります。シトルリンの摂取によって、水泳の時間が延長され、血中の乳酸量も減少していました。シトルリンの摂取は、体内のアンモニアの解毒を促進させ、解糖系を抑えるという可能性があり、シトルリンがアスリートの運動パフォーマンスに役立つ可能性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21908948

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参考文献

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 株式会社主婦の友社

・食材図典 小学館

・船山信次 アミノ酸 東京電機大学出版部

・Smith HA, Canter JA, Christian KG, Drinkwater DC, Scholl FG, Christman BW, Rice GD, Barr FE, Summar ML. 2006 “Nitric oxide precursors and congenital heart surgery: a randomized controlled trial of oral citrulline.” J Thorac Cardiovasc Surg. 2006 Jul;132(1):58-65.

・Waugh WH, Daeschner CW 3rd, Files BA, McConnell ME, Strandjord SE. 2001 “Oral citrulline as arginine precursor may be beneficial in sickle cell disease: early phase two results.” J Natl Med Assoc. 2001 Oct;93(10):363-71.

・Schwedhelm E, Maas R, Freese R, Jung D, Lukacs Z, Jambrecina A, Spickler W, Schulze F, Böger RH. 2008 “Pharmacokinetic and pharmacodynamic properties of oral L-citrulline and L-arginine: impact on nitric oxide metabolism.” Br J Clin Pharmacol. 2008 Jan;65(1):51-9.

・Hayashi T, Juliet PA, Matsui-Hirai H, Miyazaki A, Fukatsu A, Funami J, Iguchi A, Ignarro LJ. 2005 “l-Citrulline and l-arginine supplementation retards the progression of high-cholesterol-diet-induced atherosclerosis in rabbits.” Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Sep 20;102(38):13681-6.

・Ochiai M, Hayashi T, Morita M, Ina K, Maeda M, Watanabe F, Morishita K. 2012 “Short-term effects of L-citrulline supplementation on arterial stiffness in middle-aged men.” Int J Cardiol. 2012 Mar 8;155(2):257-61.

・Takeda K, Machida M, Kohara A, Omi N, Takemasa T. 2011 “Effects of citrulline supplementation on fatigue and exercise performance in mice.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2011;57(3):246-50.

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