クラウドベリー

cloudberry
ホロムイイチゴ 幌向苺
Rubus chamaemourus

クラウドベリーとは、亜寒帯地域ならびに高山地域の沼地に生育する果実です。ビタミンCやポリフェノール、エラジタンニンが豊富に含まれていることが特徴で、免疫力を高めたり腸内環境を整える働きがあります。

クラウドベリーとは?

●基本情報
クラウドベリーとは、バラ科キイチゴ属の植物です。10~20cmに成長し、地下に細い茎を伸ばします。
6月ごろに茎の先端に白または赤い斑点がついた花を咲かせ、琥珀色の果実は食用として利用されています。
果実は成長するにつれて色が変化し、はじめは緑がかった黄色から赤になり、完熟するころには琥珀色になります。フィンランド南部では7月の半ば、フィンランド北部では8月にクラウドベリーは収穫されます。
北部地方では、早い時期に花が咲いてしまうと、夜間の温度の低さに花が耐えきれず実が成熟しません。また、雌雄異株のため、場所によっては雄花のみしか生育していないということもあり、収穫が望めない場合もあります。このため、毎年収穫量が変動します。

●クラウドベリーの生産地
北半球の亜寒帯性または高山性地域に広く自生しています。日本では本州北部と北海道、近隣地域では千島列島、北朝鮮などに分布します。
最も収穫量が多いところはフィンランド北部のオストロボスニア地方のカイヌーとラップランドです。
クラウドベリーは湿地帯の植物で沼地に分布することが多いですが、森の窪地や沼地に沿った小道の脇などでもよく見かけることがあります。

●クラウドベリーの利用方法
クラウドベリーは加工せずそのまま食べることが一番美味しい食べ方であるといわれています。
クラウドベリーは、ジャム、ジュースやスープ、デザートなどに加工されたり、冷凍や濃縮ジュースなどで保存されることもあります。

●クラウドベリーに含まれる成分と性質
クラウドベリーには、ビタミンCが豊富に含まれています。
また、ビタミンEの含有力も多く、特に種油に多く含まれています。
その他にも、食物繊維やポリフェノール、エラジタンニンが豊富に含まれており、美肌や感染症予防に効果的です。

クラウドベリーの効果

クラウドベリーには、ビタミンCやビタミンE、食物繊維、エラジタンニンが豊富に含まれているため、以下の働きが期待できます。

●美肌効果
クラウドベリーに豊富に含まれるビタミンCには、シミ・そばかすを予防し、ハリのある若々しい肌を保つ効果があります。
シミ・そばかすの原因となるメラニンは、アミノ酸の一種であるチロシンから生成されます。ビタミンCはチロシンをメラニンに変換する酵素であるチロシナーゼの働きを抑制し、メラニンの沈着を防ぐ働きがあるため、シミ・そばかすの予防につながるとされています。
また、クラウドベリーにはビタミンEも豊富に含まれています。ビタミンEは強力な抗酸化力を持ち、細胞の酸化を防ぐことから「若返りのビタミン」と呼ばれ、老化を遅らせる効果が期待されています。
このように、ビタミンE、ビタミンCを豊富に含むクラウドベリーには、肌を若々しく美しく保つ効果があります。【1】【3】

●感染症を予防する効果
クラウドベリーにはビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCは、血液中の白血球に多量に含まれており、体外から侵入してきた細菌やウイルスなどを撃退する役割を担っています。ビタミンCは白血球の働きを高め、ビタミンC自体も細菌やウイルスに対抗する力を持っているため、ビタミンCを積極的に摂取することで免疫力が高まり、風邪などの感染症を予防したり、病気の回復を早める効果があります。
また、クラウドベリーには、特にエラジタンニンが豊富に含まれています。
エラジタンニンには、食中毒の原因菌であるサルモネラ菌[※1]、ブドウ球菌[※2]、カンピロバクター[※3]などの細菌の成長を妨げる効果があるといわれています。
このため、クラウドベリーには食中毒や、感染症を予防する効果があると考えられます。【1】【2】【4】【6】

●腸内環境を整える効果
クラウドベリーには食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は、腸内に溜まった不要な老廃物を体外へ排出する働きを持ち、善玉菌を増やす作用があります。
腸内の環境を整える効果があり、特に便秘症には効果的な成分です。【5】

 

[※1:サルモネラ菌とは、食中毒の病原菌の一種です。生肉、特に鶏肉と卵から感染することが多く、激しい腹痛や、下痢、発熱、嘔吐などの症状を引き起こします。]
[※2:ブドウ球菌とは、人間や動物の腸内に存在し、増えすぎることで下痢などの症状を引き起こす細菌のことです。]
[※3:カンピロバクター菌とは、古くからウシやヒツジなどの家畜で流産や腸炎を起こす菌として注目されておりましたが、1970年代に入り人にも腸炎を起こすことが判明した菌です。我が国においても1982年には食品衛生法で厚生省に報告する食中毒事件票の「病因物質の種別」の中に加えられ、食中毒起因菌として指定されました。]

クラウドベリーはこんな方におすすめ

○美しいお肌を保ちたい方
○感染症を予防したい方

クラウドベリーの研究情報

【1】クラウドベリーには、ビタミンC、エラゴタンニン、エラギン酸が含まれており、高い健康機能が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12830265

【2】高処理液体クロマトグラフィー-MS法を用いてクラウドベリーを分析した結果、エラジタンニンの誘導体、ケルセチンの誘導体(ヒドロキシ-3-メチルグルタロイルヘキソース)やアントシアニンの誘導体が新たに見つかり、高い健康機能が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21916411

【3】ヒト黒色腫細胞にビタミンCを投与すると、NO産生および誘導性NO合成酵素(eNOSおよびiNOS)が阻害され、メラニン形成が抑制されました。クラウドベリーにはビタミンCが豊富に含まれているので、美白効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21656367

【4】アレルギー性喘息マウスにビタミンCを1日当たり130mg/kg の量で5週間摂取させたところ、好酸球の浸潤が抑制されました。また免疫物質インターフェロン、IL-5が増加しました。クラウドベリーはビタミンCを豊富に含むことから、抗アレルギー作用と免疫力向上作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19831405

【5】成人男女20,630名において、性別や摂取栄養素、ライフスタイルと排便回数との関係を調査した結果、食物繊維が多い人ほど、排便回数が多いことが確認されました。クラウドベリーは食物繊維を豊富に含むことから、腸内環境を整えると期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14972075

【6】エラジタンニンは、ヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を抑制することが分かりました。クラウドベリーはエラジタンニンを豊富に含むことから、胃腸の健康を整えると期待されています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110008732360

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参考文献

・Thiem B, Berge V. (2003) “[Cloudberry: an important source of ellagic acid, an anti-oxidant].” Tidsskr Nor Laegeforen. 2003 Jun 26;123(13-14):1856-7.

・McDougall GJ, Martinussen I, Junttila O, Verrall S, Stewart D. (2011) “Assessing the influence of genotype and temperature on polyphenol composition in cloudberry (Rubus chamaemorus L.) using a novel mass spectrometric method.” J Agric Food Chem. 2011 Oct 26;59(20):10860-8. doi: 10.1021/jf202083b. Epub 2011 Sep 29.

・Panich U, Tangsupa-a-nan V, Onkoksoong T, Kongtaphan K, Kasetsinsombat K, Akarasereenont P, Wongkajornsilp A. (2011) “Inhibition of UVA-mediated melanogenesis by ascorbic acid through modulation of antioxidant defense and nitric oxide system.” Arch Pharm Res. 2011 May;34(5):811-20. doi: 10.1007/s12272-011-0515-3. Epub 2011 Jun 9.

・Chang HH, Chen CS, Lin JY. (2009) “High dose vitamin C supplementation increases the Th1/Th2 cytokine secretion ratio, but decreases eosinophilic infiltration in bronchoalveolar lavage fluid of ovalbumin-sensitized and challenged mice.” J Agric Food Chem. 2009 Nov 11;57(21):10471-6. doi: 10.1021/jf902403p.

・Sanjoaquin MA, Appleby PN, Spencer EA, Key TJ. (2004) “Nutrition and lifestyle in relation to bowel movement frequency: a cross-sectional study of 20630 men and women in EPIC-Oxford.” Public Health Nutr. 2004 Feb;7(1):77-83.

・伊東 秀之 (2005) “薬用植物中の酸化型エラジタンニン成分とその生理活性” 生薬學雜誌 59(2), 57-62, 2005-04-20

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