コロハ

fenugreek

コロハはマメ科の植物で、その種子は南西アジアでは昔から食用や薬用として用いられており、日本ではコロハの名前でカレーの香料としてなじみが深いです。サポニンや食物繊維を含み、漢方として古くから知られます。種子をそのまま食べるほか、粉状にして香辛料として使用、薬用にも使われます。

コロハとは?

●基本情報
コロハはマメ科の一年草で、種子をそのまま食べるほか、粉状にして香辛料として使うほか、薬用にも使われます。たんぱく質が豊富で、サポニン食物繊維も多く含まれます。
果実はサヤ状で、その中にハブ茶に似た種子が十数個入っています。
地中海西部の沿岸地域が原産地といわれており、栽培の歴史は古く、紀元前7世紀ごろには古代アッシリアで始められたといわれています。
数千年の年月を経てインドや中国へ伝播したと考えられ、現在ではモロッコやトルコなどの地中海沿岸諸国をはじめ、インド、ウクライナ、中国など世界各国で栽培されています。
とくにインドでは広く栽培されています。また中国では、安徽(あんき)省、河南(かなん)省、四川(しせん)省などの冷涼な所で栽培されていることが特徴です。
日本や中国ではコロハ(胡蘆巴)と呼びます。
胡の字があらわすように胡瓜(きゅうり)や胡麻(ごま)のように、胡の国という中国近縁の民族で古くから用いられていました。
昔から薬用とされていたことから、インドでも古くから用いられ、使用されてきた歴史をみても、なじみ深いマメ科の一年草であることがわかります。
特有の芳香を放ち、香辛料として使用されます。

●コロハの歴史
コロハの種子は、中近東や南アジアの国々ではスパイスとしてカレー粉の原料や野菜料理の味付けに欠かせないものであり、ほかの豆類と同様に穀物として栄養源に利用されています。
インドなどでは種子のほかに、少し苦みがあってセロリに似た香りがあるコロハの若葉や若いさやおよびコロハの種子を発芽させたモヤシも食用に使われています。
コロハの種子には、特有の青臭い匂いがあり、日本人にはなじみにくいところがありますが、煎った種子は青臭さは全くなく、メープルシロップのような芳ばしい香りを放ちます。
エジプトなどでは煎ったコロハの種子に熱湯を入れてつくる飲料や菓子がよく知られています。
コロハの種子は古代から薬用に広く利用されてきました。紀元前1552年に記されたとされ、医薬の歴史で最も重要な文献とされる古代エジプトのエーベルス・パピルスには、コロハが安産のハーブであると記載されていました。

●漢方としてのコロハ
コロハは漢方では、「胡蘆巴」と書き、免疫力を高めたり、体を温める原動力である「腎陽(じんよう)」を補う生薬で、滋養強壮や健胃効果を持ちます。

●コロハを摂取する際の注意点
毎日100gを超えるコロハの摂取は、腸の不快感や吐き気をもたらす場合がありますので、使用する際は目安量を守って適切に使用すべきです。また女性ホルモン様作用を持つとされているので、妊娠中の方が摂取する際には、医師に相談しましょう。

コロハの効果

●免疫力を高める効果
コロハに含まれるサポニンには、ウイルスや細菌から体を守る免疫機能をつかさどる細胞を活性化する働きがあります。
サポニンは、植物の根、葉、茎などに広く含まれている配糖体の一種で、コレステロールを除去したり、体内で血栓をつくり動脈硬化の原因となる過酸化脂質の生成を抑制する効果があります。
コロハのサポニンには免疫力を高める効果があります。
この免疫力とは人間の体内にもともと存在するケガや病気を治癒しようとする力のことです。免疫力が低下すると体外から入ってくるウイルスに対抗することができず、風邪やインフルエンザなどの病気を長引かせます。コロハに含まれるサポニンが免疫力を高め、風邪やインフルエンザにかかりにくい体をつくります。【1】【4】

●腸内環境を整える効果
食物繊維は、水溶性・不溶性ともに腸内の環境を整える効果があります。
水溶性食物繊維は、に溶けゲル化し、糖分脂質などの吸収をゆるやかにし、生活習慣病を予防する効果があります。
不溶性食物繊維は、水には溶けませんが、水分を含んで膨張し、それによって腸を刺激することでぜん動運動[※1]を盛んにするため、食べ物の残りカスをすみやかに体外に排出する働きがあります。
食物繊維は水溶性・不溶性ともに、腸内に溜まった不要な老廃物を体外へ排出する働きを持つ上、善玉菌を増やす作用もあるため、腸内の環境を整える効果があり、特に便秘などに効果的な成分です。
コロハに含まれる食物繊維は水溶性です。そのためゲル状になって、消化吸収時間を長くするので、急激な血糖値の上昇が予防でき、糖尿病にも効果的です。
最近のコロハの働きで注目されているのは、糖尿病や高脂血症の予防作用で、複数の臨床試験で、血糖値や悪玉であるLDLコレステロール値を下げることが確認されています。【2】【3】

[※1:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]

コロハはこんな方におすすめ

○免疫力を向上させたい方
○腸内環境を整えたい方

コロハの研究情報

【1】コロハを使ったマウスの実験においてマクロファージの捕食能を活性化し、免疫力の調整する。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12586606

【2】コロハに含まれる食物繊維は肝臓のコレステロールの生成を制御し、グルコースやコレステロールの吸収を緩和することから、コロハは生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21861724

【3】糖尿病モデルラットを使った実験より、コロハとオメガ-3を同時に摂取することで、αアミラーゼ・マルターゼなど糖尿病に関連酵素の活性を阻害することから、コロハは糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22142357

【4】コロハの種子に含まれるサポニンは普通のラットにおいては食欲増進を、糖尿病モデルラットでは食欲を抑える効果あった。また、両マウスにおいて血漿中のトリグリセリドの変化なしにコレステロール値が低下したことから、コロハはダイエット効果、生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8539775

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参考文献

・日経ヘルス サプリメント事典 日経BP出版センター

・食材図典 小学館

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・工藤秀機 蒲池桂子 栄養を知る事典 日本文芸社

・Bin-Hafeez B, Haque R, Parvez S, Pandey S, Sayeed I, Raisuddin S. (2011) “Immunomodulatory effects of fenugreek (Trigonella foenum graecum L.) extract in mice.” Int Immunopharmacol. 2003 Feb;3(2):257-65.

・Roberts KT. (2011) “The potential of fenugreek (Trigonella foenum-graecum) as a functional food and nutraceutical and its effects on glycemia and lipidemia.” J Med Food. 2011 Dec;14(12):1485-9.

・Hamden K, Keskes H, Belhaj S, Mnafgui K, Feki A, Allouche N. (2011) “Inhibitory potential of omega-3 fatty and fenugreek essential oil on key enzymes of carbohydrate-digestion and hypertension in diabetes rats.” Lipids Health Dis. 2011 Dec 5;10:226.

・Petit PR, Sauvaire YD, Hillaire-Buys DM, Leconte OM, Baissac YG, Ponsin GR, Ribes GR. (1995) “Steroid saponins from fenugreek seeds: extraction, purification, and pharmacological investigation on feeding behavior and plasma cholesterol.” Steroids. 1995 Oct;60(10):674-80.

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