グァバ

Guava
バンジロウ  番石榴(バンセキリュウ)

グァバは葉や果実に、強い抗酸化作用を持つビタミンCやビタミンE、ミネラル、カリウムなど様々な栄養成分を豊富に含む果物です。グァバの葉に多く含まれているポリフェノールが、ダイエットや糖尿病の予防に効果があると注目を集めています。

グァバとは?

●基本情報
グァバとは、フトモモ科バンジロウ属に属する常緑中高木植物[※1]です。樹高は3~4mで、樹皮はスベスベとしています。卵形の葉を持ち、5枚の花弁を持った白い花を咲かせます。グァバの果実は特有の香りを持ち、小さく固い種子を持っています。果肉の形や色、味などは品種によって様々です。

●グァバの原産地・生産地
グァバの原産地は、熱帯アメリカなどの熱帯や亜熱帯の地域です。
グァバの主な生産国は、ブラジルやアメリカ、ハワイ、ニュージーランド、インド、台湾などです。日本では、日本では沖縄県での生産量が最も多く、他にも気候が温暖な鹿児島県などでも生産されています。

●グァバの品種
グァバは世界に160種類以上もの品種があるといわれています。
地方名や果肉の色、形などが名前の由来となっていることが多く、同じ品種のグァバでも地域により呼び方が異なる場合があります。例えば、果肉の色が赤やピンク色だと「スイカグァバ」、果実が大きいと「キンググァバ」、果実が丸型だと「アップルグァバ」と呼ばれることがあります。
また、ハワイが原産地であるバーモントや台湾が原産地である東山月抜、インドが原産地であるラックナウ49などの品種もあります。
よく市場に出回っているストロベリーグァバやイエローストロベリーグァバは、分類学上はグァバとは別の種類ですがグァバの仲間として扱われています。

●グァバの歴史
グァバは、紀元前から熱帯アメリカの先住民の間で食用として親しまれていました。
16~17世紀に東南アジアに伝わり、実を食べる以外にも葉がお茶として用いられていましたが、具体的な健康成分は科学的には証明されていませんでした。近年の研究により、グァバの健康成分が科学的に証明され、グァバの葉からつくられるグァバ茶などは特定保健用食品(トクホ)[※2]として商品化され、血糖値が気になる方や健康志向の高い方の間で人気を高めています。
現在でも台湾などの東南アジアでは、街中で販売されており簡単に手に入れることができます。また、多くの家庭の庭にもグァバが植えられており、親しまれています。

●グァバの用途
グァバは果実を生で食べる他、ジャムやジュース、ゼリー、お菓子などに加工され食べられています。また、グァバの葉はお茶にして飲まれています。
グァバは室内で育てることが可能なため、園芸用としても用いられています。

●グァバの選び方・保存方法
美味しいグァバの果実は、きれいな丸みを帯びていて重みがあり、果皮の色が黄緑色です。グァバ特有の香りが強く、触ると少し柔らかく弾力があると食べ頃です。食べ頃のグァバは新聞紙に包み冷蔵庫で保存し、早めに食べるようにします。
果皮が青く固い未熟なグァバは追熟が必要なため、食べ頃になるまで常温で保存します。

●グァバに含まれる成分と性質
グァバの葉には、強い抗酸化作用を持つタンニンケルセチンなどのポリフェノール、ビタミンB群[※3]、ビタミンCβ-カロテンビタミンEが豊富に含まれています。β-カロテンは、体内でビタミンAが不足した場合に必要な量だけビタミンAに変換され、抗酸化作用を発揮し体の健康を維持します。
抗酸化作用とは、紫外線や喫煙、ストレスなど生活の様々な場面で発生する活性酸素[※4]を除去し、体が酸化することを防ぐ働きのことです。例えば、クギを放置し空気にさらしておくとクギがサビついてしまいます。この現象が酸化であり、人間の体内で起こると、病気や老化、肌トラブルの原因となってしまいます。グァバに含まれるこれらの成分が体内で強い抗酸化作用を発揮して酸化から体を守ることで、病気や老化、肌トラブルが予防されます。
また、グァバの葉に多く含まれるポリフェノールには糖の吸収をおだやかにする働きがあります。

他にも、体を構成することに必要不可欠なミネラルであるカリウム食物繊維などの栄養成分が豊富に含まれています。

[※1:常緑中高木植物とは、幹や枝に一年中葉がついていて、成長しても樹高が2.5m以上4m未満の植物のことです。]
[※2:特定保健用食品(トクホ)とは、特定の保健の目的が期待できることを表示した食品のことです。身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分(関与成分)を含んでいます。その保健効果が当該食品を用いたヒト試験で科学的に検討され、適切な摂取量も設定されています。また、その有効性・安全性は個別商品ごとに国によって審査されています。]
[※3:ビタミンB群とは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸の総称です。]
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]

グァバの効果

グァバの葉には、タンニンやケルセチンなどのポリフェノールが豊富に含まれています。葉と果実には、ビタミンC、β-カロテン、ビタミンE、カリウム、食物繊維なども含まれ、これらの成分は以下のような健康に対する効果が期待できます。

●血糖値を下げる効果
グァバの葉には、ポリフェノールが豊富に含まれています。
食べ物に含まれる糖質(炭水化物)は、体内の酵素により最終的にブドウ糖に分解されることで小腸に吸収され血糖値が上がります。グァバの葉のポリフェノールには、糖質をブドウ糖に分解する酵素の働きを抑える効果があり、血液中への糖の吸収を遅らせ、血糖値の上昇を抑えます。結果、高血糖が原因で起こる糖尿病の予防にも効果があります。【5】【7】【8】

●ダイエット効果
グァバの葉に含まれているポリフェノールの効果により、体内に吸収されるブドウ糖の量が減少します。
体内に余分に吸収されたブドウ糖は、脂肪に変換されて蓄積されます。このため、体内での脂肪合成減少が見込まれ、ダイエット効果が期待できます。

●動脈硬化を予防・改善する効果
血液中の悪玉(LDL)コレステロールが増加すると、血管の内壁が脂質で分厚くなり、こぶのようにせり出して血管を狭めるため、高血圧や動脈硬化などが引き起こされます。グァバの葉や果実に豊富に含まれるビタミンCや食物繊維には、血中の悪玉(LDL)コレステロールを減少させ血液をきれいにする働きがあります。さらに、ケルセチンには血液中の抗酸化力を高め、血流を改善したり、血管の健康を保つ効果があり、動脈硬化の予防に効果的です。

●高血圧を予防する効果
グァバの葉や果実にはカリウムが豊富に含まれています。カリウムは体内でナトリウムとバランスを取り合って存在しています。体内のナトリウム濃度が高くなると、濃度を薄めようとして水を取り込み体液量が増加してしまうため、血管が圧迫され血圧が上がってしまいます。カリウムには、ナトリウムを排泄させる働きがあるため高血圧の予防に効果があります。

●便秘や下痢を解消する効果
グァバの葉や果実に豊富に含まれる食物繊維は、腸内の有害物質を吸着して一緒に体外へ排泄する働きを持っています。また、腸内の善玉菌[※5]を増やし、腸の調子を整える働きも持つため、便秘の解消に効果を発揮します。さらに、グァバの葉に含まれるタンニンには抗菌効果があり腸内の悪玉菌[※6]を減らす働きがあるため、下痢の予防にも効果的です。【2】【3】【9】

●感染症を予防・改善する効果
グァバの葉や果実にはビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCは、血液中の白血球、特に好中球[※7]に多量に含まれており、体外から侵入してきた細菌やウイルスなどを撃退する役割を担っています。ビタミンCは白血球の働きを高め、ビタミンC自らも細菌やウイルスと闘う力を持っています。さらに、β-カロテンやビタミンEと一緒に摂取することでビタミンCの働きが強くなるため、グァバを積極的に摂取することで免疫力を高め、風邪などの感染症を予防したり、病気の回復を早める効果があります。【1】

●ストレスをやわらげる効果
グァバの葉や果実に豊富に含まれるビタミンCには、心地良さなどの感情をつくり出すドーパミンややる気を起こさせるノルアドレナリンなどの神経伝達物質[※8]と、ストレスをやわらげる副腎皮質[※9]ホルモンの合成をサポートする働きがあります。ビタミンCが含まれるグァバには、ストレスに対する抵抗力を高めたり、イライラを鎮める効果があります。

●美肌・美白効果
グァバの葉や果実に豊富に含まれるビタミンCやビタミンEには、シミやそばかすを予防し、ハリのある若々しい肌を保つ効果があります。
シミやそばかすの原因となるメラニン色素は、アミノ酸の一種であるチロシンから生成されます。
ビタミンCにはチロシンからメラニンをつくり出す、チロシナーゼという酵素の働きを抑制し、メラニン色素の沈着を防ぐ効果が期待できます。さらに、ビタミンEには血管を広げて血行を良くする働きがあるため、新陳代謝[※10]が活発になり肌にハリを与える効果があります。
またアトピー性皮膚炎の改善にも役立つことも報告されており、肌に対する働きも期待されています。【6】

●丈夫な体をつくる効果
グァバの葉や果実に豊富に含まれるビタミンCは、丈夫な血管や筋肉、骨、肌などをつくるコラーゲンの合成に必要不可欠な成分です。コラーゲンはたんぱく質の一種で体内のたんぱく質の約30%を占めており、体の組織や細胞をしっかり結びつける接着剤のような働きをします。ビタミンCがコラーゲンの合成をサポートすることで壊血病[※11]の予防や骨を丈夫にする効果があります。さらに、β-カロテンは体内で皮膚や爪、髪などの健康を保つ働きがあるため、グァバは丈夫な体づくりや健康維持に効果的であるとされています。

●疲労回復効果
グァバの果実には、ビタミンB群が豊富に含まれています。
ビタミンB群は体内で糖質の分解を助け、効率良くエネルギーへと変換するサポートをするため、疲労回復の効果が期待できます。

[※5:善玉菌とは、ヒトの腸内にすむ細菌の一種です。健康に役立つ働きを行っており、もともと大腸にすんでいる腸内ビフィズス菌や乳酸菌、腸球菌などが善玉菌といわれます。]
[※6:悪玉菌とは、ヒトの腸内にすむ細菌の一種です。増えすぎると体に悪い影響を及ぼすと考えられており、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、緑膿菌などが悪玉菌といわれます。]
[※7:好中球とは、体内に存在する白血球の40%~60%を占める白血球の一種です。急性的な炎症に対して中心となって血液中の細菌やウイルスと闘います。]
[※8:神経伝達物質とは、神経細胞の興奮や抑制を他の神経細胞に伝達する物質のことです。]
[※9:副腎皮質とは、腎臓の上に位置する臓器である副腎の周辺部分のことです。副腎皮質からはアドレナリンなどの様々なホルモンが分泌され、生命を維持するために欠かせない臓器です。]
[※10:新陳代謝とは、古い細胞や傷ついた細胞が、新しい細胞へ生まれ変わることを指します。]
[※11:壊血病とは、ビタミンCの不足によって体内の各器官に出血性の障害が生じる疾患のことです。]

グァバはこんな方におすすめ

○糖尿病を予防したい方
○スリムな体型を目指したい方
○高血圧を予防したい方
○生活習慣病を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○風邪をひきやすい方
○免疫力を向上させたい方
○肌荒れでお悩みの方
○丈夫な体をつくりたい方
○ストレスをやわらげたい方
○血流を改善したい方
○腸内環境を整えたい方
○疲れやすい方

グァバの研究情報

【1】グァバの果実に含まれるペプチド(Pg-AMP1)は大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用を持っており、グァバに感染症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22841855

【2】ヒトの細胞(HEp-2細胞)に、グァバ葉抽出物を投与したところ、病原性大腸菌、大腸菌、コレラ菌の細胞への接着が抑制され、大腸菌やコレラ菌の毒素も抑制されたことから、グァバが病原菌による下痢症状の改善に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20584265

【3】グァバ抽出物は腸チフス菌や食中毒菌や赤痢菌に対する抗菌作用を持つことから、グァバは食中毒性下痢の予防に役立ちますと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22589684

【4】ラット30匹に、グァバ抽出物を1日100mg/kg の量で8週間与えた後、ヒ素中毒に対する保護作用を調べました。ヒ素による中毒症状、赤血球やヘモグロビンの減少、白血球の上昇、また肝臓障害の指標ASTやALT、ALPの上昇が抑制されました。同時に血液や内蔵組織に対するヒ素の蓄積も抑制されたことから、グァバにヒ素中毒など薬物中毒に対する解毒作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22778508

【5】糖尿病ラットに、グァバ葉抽出物(120mg/kg , 240mg/kg) を摂取させたところ、空腹時血糖値の上昇、血中インスリンの低下やインスリン感受性の低下が抑制されました。また腎臓機能の指標となるクレアチニンやBUN も改善されたことから、グァバに糖尿病予防作用と腎臓保護作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22734419

【6】アトピー性皮膚炎マウスに、グァバ葉抽出物を塗布すると、病変スコアやアレルギーや炎症関連物質である血中IgE およびTARC、TNF-αやIL-4 が改善されました。次いで免疫を正常化させる物質であるIL-10 の増加も確認されました。また、表皮や真皮における炎症組織や損傷細胞が減少していたことから、グァバにアトピー性皮膚炎予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22609491

【7】糖尿病マウスにおいて、グァバ抽出物を1%, 2% を12週間摂取させたところ、血糖値や腎臓障害の指標である尿素窒素の上昇が抑制されました。また抗酸化酵素であるカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼの活性が維持され、腎臓における活性酸素や炎症関連物質であるIL-6やTNF-α, IL-1βの上昇が抑制されました。グァバに糖尿病予防効果と腎臓保護作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22581156

【8】糖尿病ラットに、4週間のグァバ果実を1日あたり125, 250 mg/kg の量で4週間摂取させたところ、血糖値上昇が抑制され、インスリンを分泌するすい臓ランゲルハンス等(β細胞)を守るはたらきが示されました。同時に、抗酸化酵素の活性が維持され、炎症関連物質NF-κB を抑制したことから、グァバに糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21679740

【9】グァバの果実は抗酸化作用が高く、またビタミンC が豊富に含まれています。また乳酸菌やビフィズス菌のはたらきを促進することも知られており、グァバに腸内環境改善が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19111636

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参考文献

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・旬の食材 四季の果物 講談社

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・Tavares LS, Rettore JV, Freitas RM, Porto WF, Duque AP, Singulani JD, Silva ON, Detoni MD, Vasconcelos EG, Dias SC, Franco OL, Santos MD. 2012 “Antimicrobial activity of recombinant Pg-AMP1, a glycine-rich peptide from guava seeds.” Peptides. 2012 Jul 27.

・Birdi T, Daswani P, Brijesh S, Tetali P, Natu A, Antia N. 2010 “Newer insights into the mechanism of action of Psidium guajava L. leaves in infectious diarrhoea.” BMC Complement Altern Med. 2010 Jun 28;10:33.

・Lutterodt GD, Ismail A, Basheer RH, Baharudin HM. 1999 “Antimicrobial effects of psidium guajava extract as one mechanism of its antidiarrhoeal action.” Malays J Med Sci. 1999 Jul;6(2):17-20.

・Tandan N, Roy M, Roy S. 2012 “Ameliorative Potential of Psidium guajava on Hemato-biochemical Alterations in Arsenic-exposed Wistar Rats.” Toxicol Int. 2012 May;19(2):121-4.

・Kuang QT, Zhao JJ, Ye CL, Wang JR, Ye KH, Zhang XQ, Wang Y, Ye WC. 2012 “Nephro-protective effects of total triterpenoids from Psidium guajava leaves on type 2 diabetic rats.” Zhong Yao Cai. 2012 Jan;35(1):94-7.

・Choi JH, Park BH, Kim HG, Hwang YP, Han EH, Jin SW, Seo JK, Chung YC, Jeong HG. 2012 “Inhibitory effect of Psidium guajava water extract in the development of 2,4-dinitrochlorobenzene-induced atopic dermatitis in NC/Nga mice.” Food Chem Toxicol. 2012 Aug;50(8):2923-9.

・Lin CY, Yin MC. 2012 “Renal Protective Effects of Extracts from Guava Fruit (Psidium guajava L.) in Diabetic Mice.” Plant Foods Hum Nutr. 2012 May 12. [Epub ahead of print]

・Huang CS, Yin MC, Chiu LC. 2011 “Antihyperglycemic and antioxidative potential of Psidium guajava fruit in streptozotocin-induced diabetic rats.” Food Chem Toxicol. 2011 Sep;49(9):2189-95.

・Thuaytong W, Anprung P. 2011 “Bioactive compounds and prebiotic activity in Thailand-grown red and white guava fruit (Psidium guajava L.).” Food Sci Technol Int. 2011 Jun;17(3):205-12.

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