ジュニパー

juniper
セイヨウネズ 杜松 トショウ commom jumiper
Juniperus communis

ジュニパーとは、お酒のジンの香りづけに使用される、ライムに似た香りのするハーブです。ジュニパーの精油には、体内にたまった老廃物や毒素を排出する働きがあることから、にきびのケアなどの肌への効果があるとして注目されている成分です。

ジュニパーとは

●基本情報
ジュニパーとは、ヒノキ科ビャクシン属の棘のある低木です。栽培されているものは丈が1.8m位ですが北欧の原野に生育しているものは高さ10mほどにまで成長します。数多くの品種があり、アルプスの高い山々に生育する丈の低いドゥオーフ・ジュニパーから、暖かい国に多く見られる大木になるジュニパーまで、様々です。秋に熟すジュニパーの果実は熟すのに3年間かかるとされています。熟して紺色になった果実、ジュニパーベリーはライムに似た香りを持つことから、お酒のジンの香りづけなど風味をつけるものとして使われています。
ジュニパーの果実のもつ利尿作用は古くから知られ、中世には薬草酒として利用されていました。その優れた利尿作用はデトックス[※1]やダイエットにはとても有効ですが、腎臓の弱い人には負担がかかりすぎるともいわれています。
ジュニパー油は、月経の周期を整えるように働き、月経を正常化し、生理痛を緩和させます。また、安全に出産するのを助ける力があるともいわれています。

●ジュニパーの歴史
ジュニパーは、コレラや腸チフス[※3]のような多くの伝染病に大きな医療上の役割を演じてきました。15世紀、16世紀の薬草学の専門家たちは、ジュニパーが疫病に効果があるだけでなく、傷の治療にも役立つとしてジュニパーを高く評価しました。
フランスの病院では、長い間、ジュニパーの小枝をたいて病棟の空気を浄化していました。また、ユーゴスラビアでもジュニパーは万能薬と考えられていました。今日では、ジンの風味づけに使われることで知られています。
ジュニパーには疲労した精神をリフレッシュさせる力があり、旧約聖書では預言者エリヤが疲れ切ってジュニパー樹のもとで眠ったことが記されています。

●ジュニパーの利用方法
ジュニパーの果実は、肉料理の臭み消しのスパイスとしてや、リキュールのジンの香りづけとしてもよく使われています。他にも、お茶にして飲用したり、そのお茶を化粧水としても使用しています。
殺菌作用のあるジュニパーの精油はアロマテラピーに用いられている他、マッサージや湿布でも利用されています。

●ジュニパーを使用する際の注意点
ジュニパー油を長期にわたって使用すると、腎臓を過度に刺激する可能性があります。腎臓に重い障害があるときや、体に各種の炎症をおこしている場合はこの精油を避けるべきです。また、ジュニパーの精油には痛経剤としての効果もあるので、妊娠中は避ける方が望ましいです。

●ジュニパーに含まれる成分
ジュニパーには、精油成分をはじめポリフェノールの一種で毛穴を引き締める効果のあるタンニンなどを含んでいます。他にもフラボノイドビタミン類も含まれています。
主要成分であるジュニパーの精油は、利尿作用や解毒に効果を表し、腎臓への健康効果が期待されます。
他にも、健胃[※4]や駆風[※5]の作用もあるので、胃腸の調子を整えて腹痛を治療する効果があります。

[※1:デトックスとは、体にたまった有害物質や老廃物を取り除くことです。]
[※2:腸チフスとは、チフス菌が腸に侵入することによって起こる感染症です。]
[※3:健胃とは、胃を丈夫にし、その動きを盛んにすることです。]
[※4:駆風とは、胃や腸に溜まったガスを取り除くことをいいます。]

ジュニパーの効果

●腎機能を改善する効果
ジュニパーの精油には、利尿効果と腎臓回復の効果があります。利尿作用をもち、尿をよく出るようにすることで、糖尿病をふくむ腎臓疾患に有効とされています。
また、ジュニパーは、体の余分な水分と体内の毒素を排出する効果があります。
性尿路の殺菌消毒剤になり、膀胱炎、有痛排尿困難、腎臓結石に効果を発揮します。【1】

●胃腸の調子を整える効果
ジュニパーの精油には、健胃と駆風、解毒の効果があるとされています。
体内の毒素をとるのに、とりわけアルコール飲料を飲み過ぎたり、こってりとした食物を摂り過ぎたりした時に生じる毒性物質を排出するのにも効果があります。【2】
このことからジュニパーの精油には、胃腸の調子を整え腹痛を治療したり、肥満の解消にも効果的です。
また解毒全般に効果を表し、血中の尿酸値を下げて、淋病、リウマチへも効果があるとされています。
また、消化器全体に作用することから、食欲を増進させる効果もあります。

●美容効果
人間の肌は周囲の気候などに応じて皮脂や水分を調節することで、弾力を保ち、外敵から身を守っています。しかし、化粧品の使用や汚れた空気によって、過剰に皮脂が分泌されたり、汗の量が少なくなったり、汗が蒸発し過ぎるなどの問題が発生し、最終的に毛穴の黒ずみなどの肌のトラブルにつながってしまうのです。
ジュニパーに含まれるタンニンには、毛穴を引き締める効果や皮膚を保護する効果、美白効果があるとされます。このことからジュニパーはにきびのケアにも良く、また脂っぽい頭皮を改善する他、美容への効果があると考えられます。実際に、ニキビや湿疹の消毒のために化粧水として使用されます。

●リラックス効果
ジュニパーに含まれる清涼感をそそる抗うつ成分は、神経を明敏にし、刺激して強化します。疲労した精神をリフレッシュさせ神経症状を落ち着かせてリラックスさせる効果があるとされています。

ジュニパーはこんな方におすすめ

○お腹の調子をよくしたい方
○むくみでお悩みの方
○体がだるいと感じる方
○リラックスしたい方

ジュニパーの研究情報

【1】ジュニパーベリーを含む様々な植物から精油を採取し抗菌活性を調べたところ、すべての精油に抗菌活性が見られました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20922991

【2】ジュニパーを含む薬用植物の数々をイヌ、ネコ、ブタに処方し6ヵ月間で胃の状態と寄生虫について確認したところ、これらの薬用植物に有効性が見られたという報告があります。。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17628343

参考文献

・ワンダセラー著 アロマテラピーのための84の精油 フレグランスジャーナル社

・武政 三男 80のスパイス辞典 フレグランスジャーナル社

・佐々木 薫 著者 アロマ&ハーブの教科書

・ピーター&ケイト・ダミアン 著者 アロマテラピー ハンドブック

・ヴィクトリア・ザック ハーブティーバイブル 東京堂出版

・ハーブスパイス館 小学館

・佐々木 薫 ハーブティー事典 池田書店

・アースプランツリサーチオーガニゼーション監修 HERB BIBLE 双葉社

・Wanner J, Schmidt E, Bail S, Jirovetz L, Buchbauer G, Gochev V, Girova T, Atanasova T, Stoyanova A. (2010) “Chemical

composition and antibacterial activity of selected essential oils and some of their main compounds.” Nat Prod Commun. 2010

Sep;5(9):1359-64.

・Lans C, Turner N, Khan T, Brauer G. (2007) “Ethnoveterinary medicines used to treat endoparasites and stomach problems in

pigs and pets in British Columbia, Canada.” Vet Parasitol. 2007 Sep 30;148(3-4):325-40.

・RIPKA O. (1964) “DIURETIC EFFECT OF TERPINENOL, A CONSTITUENT OF JUNIPER OIL.” Sb Lek. 1964 Jun;66:161-6.

・JANKU I, HAVA M, MOTL O. (1957) “Diuretic substance from juniper (Juniperus communis L.).” Experientia. 1957 Jun 15;13

(6):255-6.

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