クリルオイル

krill oil

クリルオイルとは、海中に生息するプランクトンの一種である南極オキアミから得られるオイルのことです。
ω(オメガ)-3脂肪酸の一種DHAやEPA、抗酸化物質であるアスタキサンチンを豊富に含んでおり、生活習慣病の予防や脳の活性化、月経前症候群(PMS)の改善に効果があるといわれています。

クリルオイルとは

●基本情報
クリルオイルとは、海中に生息する甲殻類の一種である南極オキアミから得られるオイル成分です。
オキアミは動物プランクトンの一種で、世界中の海に分布していますが最も大型で体調は5~6cm、体重は1~2gにまで成長します。
オキアミは、クジラをはじめとする様々な生物のエサとなり、南極海の生態系を支える重要な役割を担っています。
クリルオイルは、南極付近などの野菜が少なく肉中心の食生活を送っている人々の健康を守るオイルとして重宝されてきました。

●クリルオイルに含まれる成分と性質
クリルオイルはω(オメガ)-3系必須脂肪酸であるDHAやEPAを含むリン脂質や、海のカロテノイドと呼ばれるアスタキサンチンなどを含むため、高い健康増進機能が期待されています。
不飽和脂肪酸はω(オメガ)-3系、オメガ6系、オメガ9系に分類されますが、現代の食生活ではオメガ6系(とうもろこし油、ごま油など)が過剰になり、ω(オメガ)-3系(魚油、しそ油、亜麻仁油等)が圧倒的に不足していることが指摘されています。
青魚の魚油に含まれているEPAやDHAは、通常はトリグリセリドという形状をしており、こちらは流動性はありますが、高度不飽和脂肪酸が酸化されやすいという弱点があります。
クリルオイルが注目されているのは、一般の魚油に含まれているω(オメガ)-3脂肪酸が「トリグリセリド結合型」であるのに対し、クリルオイルは従来のトリグリセリド結合型に加えて、「リン脂質結合型」のω(オメガ)-3脂肪酸を含んでいるためです。

<豆知識>脂質とリン脂質
先進国における現代の食事は、リン脂質の含量が減少しており、食事から摂取しているリン脂質は総脂質量のうちわずかで、そのうちリン脂質型のω(オメガ)-3系脂肪酸はさらにごくわずかしかないため、意識的に食事から摂取することが非常に重要であるといわれています。
クリルオイルに多量に含まれるリン脂質型ω(オメガ)-3系不飽和脂肪酸のリン脂質は、細胞を構成する主要成分であり、細胞膜の機能で重要な役割を果たしています。
細胞膜や細胞内膜を経由する物質の輸送にもリン脂質が必須であるため、体の細胞・組織・器官の機能は様々なリン脂質脂肪酸の働きにより成り立っているといえます。
クリルオイルには、ω(オメガ)-3脂肪酸の一種であるDHAやEPA、抗酸化物質であるアスタキサンチンが豊富に含まれているため、以下のような働きが期待できます。

クリルオイルの効果

●生活習慣病の予防・改善効果
クリルオイルや魚油に含まれる脂肪酸のDHAやEPAは、海中の様な低温の環境でも固まることがありません。
動物の脂は常温でも固まってしまいますが、魚の油は-40℃でも液体のままというほどの柔軟性があります。
こういった性質を持つDHAやEPAは、血流や血管の健康を守る力を持っています。
DHAには、血管壁の細胞膜を柔らかくする働きがあるため、血流を改善する効果があるといえます。
また、勢いよく血液が流れても血圧が高くなるのを防ぐ働きもあります。同時に赤血球の細胞膜も柔らかくするため、血流が改善され血液がサラサラの状態になります。
また、DHAは悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪を減らし、善玉(HDL)コレステロールを増やす働きもあります。
これらの働きにより、血流を改善し、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞、高血圧、高脂血症などの生活習慣病を予防できると期待されています。
さらに、EPAには高い血小板凝集抑制効果があり、血栓をつくらせない働きがあります。心筋梗塞や虚血性心疾患など、生活習慣病予防の効果があります。
善玉(HDL)コレステロールを増やし、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪を減らす働きもあり、血液をサラサラにしてくれます。高血圧の予防や改善に効果的です。
EPAの高脂血症に対する効果はDHAも含めたn-3系列の脂肪酸の作用として検証されてきました。1日あたり4g以下のEPAとDHAを摂取する場合、悪玉(LDL)コレステロール値を5〜10%低下させ、中性脂肪も25〜30%引き下げる効果が報告されました。
ある臨床試験では、EPA600mgとDHA260mgを高脂血症傾向がある人に12週間投与したところ、中性脂肪の低下が認められました。
この2つの不飽和脂肪酸に加え、強力な抗酸化作用をもつため動脈硬化やメタボリックシンドローム予防に役立つといわれているアスタキサンチンを含んでいるクリルオイルには、生活習慣病を予防する働きがあるといえます。【3】【4】【5】

●女性特有の悩みを改善する効果
女性の健康は女性ホルモンの影響を強く受けています。
月経前になるとイライラしたり、気分が落ち込んだり、肌トラブルが起こったりという体の不調を月経前症候群(PMS)といいます。
また、40代後半から50代前半の閉経前後の10 年では、ほてりや発汗、不安感などの症状の更年期障害が起こります。
これは年齢とともに卵巣の機能が衰えることにより、ホルモンバランスが崩れるためです。
クリルオイルに含まれるリン脂質とDHA・EPAなどのω(オメガ)-3脂肪酸がイライラ、気分の落ち込みなどのPMSの症状や、ほてりや不安感、イライラなどの更年期障害の緩和に役立つことが臨床試験で証明されました。【6】

●心疾患を予防する効果
心不全は心臓血管系死亡をもたらす最も大きな原因のひとつとなっています。
ノルウェーの大学病院で、ラットを使用したクリルオイルの働きを調べる実験が行われました。
ラットを、対照グループ、クリルオイルを前投与するグループ、心筋梗塞の誘発後にクリルオイルを投与するグループの3つに分け、心機能の経過を観察しました。
その結果、クリルオイルを前投与したグループでは、対照グループと比較して左室拡張、心重量、肺重量が有意に低減したことが発見されました。
この実験により、心不全の実験モデルにおいて、心筋梗塞発症後の左室の拡張と肥大が改善されるため、クリルオイルには心機能を改善する働きがあるといえます。【2】
この他にも、記憶力の向上や脳の活性化、また肝機能にも良い効果をもたらすことが分かっています。

クリルオイルはこんな方におすすめ

○生活習慣病を予防したい方
○月経前症候群・更年期障害にお悩みの方
○心臓を健康に保ちたい方

クリルオイルの研究情報

【1】硫酸デキストリン塩によって炎症を誘発したラットに5%クリルオイルを4週間摂取させたところ、大腸の長さを正常にし、酸化ストレスマーカーを減少させました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22126533

【2】ラット53匹を、対照群・クリルオイル(魚由来ではないn-3系脂肪酸を豊富に含む)を前投与群・心筋梗塞の誘発後にのみクリルオイルを投与した群の3グループに分け摂取させた結果、クリルオイルを前投与したグループでは、対照グループと比較して左室拡張、心重量、および肺重量が有意に低減されました。またこれらの作用に伴い、左室応力、マトリックス・リモデリング、および炎症に関与する遺伝子の発現低下も認められたことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22206454

【3】リン脂質型のクリルオイルを、4週間コレステロール食餌ラットへ投与したところ、体重の改善が認められ、血中の総コレステロール量、LDLコレステロールが減少しました。リン脂質型クリルオイルは、多価不飽和脂肪酸を豊富に含むため、通常のクリルオイルよりも効果が強いことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23505070

【4】76名の体重過多及び糖尿病の男女に2gのクリルオイルまたはプラセボを4週間飲用させた結果、収縮期血圧および血中尿素窒素を低下させたことが分かりました。また、血中のEPAおよびDHAを上昇させました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19854375

【5】高脂血症患者120名に1-3g/日のクリルオイルを3ヶ月飲用させたところ、プラセボ群より総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の値が低下し、HDLコレステロール値は上昇しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15656713

【6】二重盲検無作為化試験にて月経前症候群(PMS)と診断された70名にクリルオイル、または魚油を3か月間摂取させた結果、クリルオイル摂取によって月経困難症および月経前症候群が改善されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12777162

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参考文献

・Grimstad T, Bjørndal B, Cacabelos D, Aasprong OG, Janssen EA, Omdal R, Svardal A, Hausken T, Bohov P, Portero-Otin M, Pamplona R, Berge RK. (2012) “Dietary supplementation of krill oil attenuates inflammation and oxidative stress in experimental ulcerative colitis in rats.” Scand J Gastroenterol. 2012 Jan;47(1):49-58. doi: 10.3109/00365521.2011.634025. Epub 2011 Nov 30.

・Fosshaug LE, Berge RK, Beitnes JO, Berge K, Vik H, Aukrust P, Gullestad L, Vinge LE, Øie E. (2011) “Krill oil attenuates left ventricular dilatation after myocardial infarction in rats.” Lipids Health Dis. 2011 Dec 29;10:245. doi: 10.1186/1476-511X-10-245.

・Li DM, Zhou DY, Zhu BW, Chi YL, Sun LM, Dong XP, Qin L, Qiao WZ, Murata Y. (2013) “Effects of krill oil intake on plasma cholesterol and glucose levels in rats fed a high-cholesterol diet.” J Sci Food Agric. 2013 Jan 26. doi: 10.1002/jsfa.6072. [Epub ahead of print]

・Maki KC, Reeves MS, Farmer M, Griinari M, Berge K, Vik H, Hubacher R, Rains TM. (2009) “Krill oil supplementation increases plasma concentrations of eicosapentaenoic and docosahexaenoic acids in overweight and obese men and women.” Nutr Res. 2009 Sep;29(9):609-15. doi: 10.1016/j.nutres.2009.09.004.

・Bunea R, El Farrah K, Deutsch L. (2004) “Evaluation of the effects of Neptune Krill Oil on the clinical course of hyperlipidemia.” Altern Med Rev. 2004 Dec;9(4):420-8.

・Sampalis F, Bunea R, Pelland MF, Kowalski O, Duguet N, Dupuis S. (2003) “Evaluation of the effects of Neptune Krill Oil on the management of premenstrual syndrome and dysmenorrhea.” Altern Med Rev. 2003 May;8(2):171-9.

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