メチオニン

methionine

メチオニンとは、必須アミノ酸のひとつで、食事から栄養分として摂取しなければならない成分です。硫黄を含んだ含硫アミノ酸で、肝機能を高めたり、アレルギーの原因となるヒスタミンを抑える働きがあります。不足すると利尿能力が低下するため、むくみが生じます。

メチオニンとは?

●基本情報
メチオニンとは硫黄を含んだ含硫アミノ酸で、食品から摂取しなければならない必須アミノ酸[※1]のひとつです。鶏肉・牛肉・羊肉などの肉類や、マグロ、カツオなどの魚介類、牛乳やチーズなどの乳製品、豆腐・納豆などの豆類や加工食品、ナッツ類や全粒小麦などに含まれています。
体内では、アレルギーを引き起こすヒスタミン[※2]の血中濃度を低下させる働きを担っています。また、肝臓で毒素や老廃物の排除や代謝を促進し、脂質を乳化[※3]する働きもあります。その他、うつ病や統合失調症を改善する効果があるとされています。さらに、メチオニンは育毛や発毛にも効果を発揮します。

メチオニンが不足してしまうと、肝臓の機能が衰えてしまうので、血中コレステロールの増加による動脈硬化や抜け毛を引き起こします。また、利尿能力が低下して老廃物の蓄積が進むことによりむくみが生じます。メチオニンはアルコールの過剰摂取によって、肝臓で大量消費されてしまいます。肝臓に入ってきた毒素や老廃物を排除したり、血中コレステロール値をコントロールする働きを担っているためです。また、アルコールの過剰摂取は髪に栄養素が届きにくくなるため、摂取を控える必要があります。
メチオニンを過剰に摂取してしまうと、血液中のホモシステイン[※4]濃度を上昇させ、血中コレステロールの増加による動脈硬化の発症リスクを高める危険性があるといわれています。

●メチオニンを摂取する際の注意点
メチオニンは、適切に経口摂取する場合には安全性が示されています。一方、多量に摂取した場合には危険性が示唆されており、悪心、嘔吐、めまい、低血圧、興奮といった副作用が起きる場合があります。
また、妊娠中・授乳中の安全性については確認されていないため、摂取は避ける必要があります。
相互作用に関しては、肝機能障害を起こしている場合にメチオニンの多量摂取を行うと症状が悪化してしまう恐れがあり、統合失調症患者が過剰摂取した場合に混乱やせん妄などの意識障害が起きることがあるとされています。
他のハーブやサプリメント、食品との相互作用については十分なデータがありませんが、過剰な摂取、疾病やそれに伴う服薬などとの組み合わせにより、副作用が起こる可能性があるため、医師への相談が推奨されています。

[※1:必須アミノ酸とは、たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうち、体内で合成することができない9種類のアミノ酸のことです。食品から摂取しなければならないアミノ酸で、欠乏すると血液や筋肉、骨などの合成ができなくなります。]
[※2:ヒスタミンとは、動物の組織内に広く存在する化学物質のことです。普通は不活性状態にありますが、けがや薬により活性型となって血管拡張を起こし(発赤)、不随意筋を収縮します。また、かゆみや痛みの原因となるともいわれています。過剰に活性化されるとアレルギー疾患の原因となります。]
[※3:乳化とは、水に溶けにくく体外に排出しにくい脂質を、水に溶けやすいやすい形に変えることです。]
[※4:ホモシステインとは、血液中に含まれるアミノ酸のひとつで、メチオニンの体内代謝過程での不完全な代謝やバランスの乱れからつくられます。様々な健康上のトラブルを引き起こすとされ、特に心臓、血管系の疾病に関連します。]

メチオニンの効果

●アレルギー症状を緩和する効果
アレルギーは、免疫細胞が、外部からの刺激に過剰に反応することにより、発生します。この際免疫細胞から放出されるのがヒスタミンで、メチオニンはアレルギーを引き起こすヒスタミンの働きを抑制する作用を持っています。メチオニンを摂取することによって、血液中のヒスタミン濃度を抑えることができ、アレルギー症状を抑制する効果が期待できます。

●うつ症状を改善する効果
メチオニンは、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなど、うつ病を改善させる作用を持つ脳内物質の材料となります。記憶力の向上や、認知症の予防・改善といった脳の活性に効果があると期待されています。

●老化防止の効果
メチオニンを摂取することで、細胞の老化抑制や免疫力を高める効果が期待できるといわれています。メチオニンは、抗酸化ミネラルであるセレンを運搬する役割を担っており、体内の抗酸化作用を高める働きを持ちます。
また、アルギニンやグリシンとともに、クレアチンを生成する際の材料となることから、体内エネルギーの産出に重要な役割を果たしています。加齢とともに体力が衰える原因のひとつにクレアチン合成能力の減少が挙げられることから、メチオニンは老化を抑制する重要な役割を持っている成分といえます。

●ヘアケア効果
メチオニンは、毛髪の健康はもちろん、薄毛や男性型脱毛症、抜け毛対策を考える上でも重要視されている要素となっています。
髪の99%は、約18種類のアミノ酸が結合してつくられたケラチンというたんぱく質からできています。メチオニンが毛髪に占める割合は1%程ですが、毛髪の健康に深く関係しているのです。メチオニン不足が続くと薄毛や抜け毛の原因となるといわれています。【2】

●その他の効果
メチオニンは、ミネラルのセレンと一緒に働くことで、水銀や鉛、カドミウムなどの有害重金属を体外へ排泄してくれます。さらには、脳神経細胞や中枢神経に有害重金属が蓄積することを防ぐ働きも持っているため、デトックス効果に期待が寄せられています。

メチオニンは食事やサプリメントで摂取できます

メチオニンを含む食品

○鶏肉
○牛肉
○羊肉
○マグロ
○カツオ
○牛乳
○チーズ
○豆腐
○納豆
○ナッツ類
○全粒小麦

メチオニンの研究情報

【1】肝障害ラットに、メチオニンを0, 30, 120mg/kg の量で摂取させたところ、肝臓中のトリグリセリドの量が低減し、肝臓病変が改善されたことから、メチオニンに肝臓保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9581640

【2】裂毛症(切れ毛や枝毛を引き起こす病気)患者は、健常人に比べて、メチオニンが低下していることから、メチオニンが毛髪の健康に重要な役割を果たすと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19754869

【3】難聴チンチラに、メチオニンを腹腔内投与したところ、聴覚器官である蝸牛管の外有け細胞の減少が抑制され、難聴症状の改善も見られたことから、メチオニンが難聴予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21924333

参考文献

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社

・Parlesak A, Bode C, Bode JC. (1998) “Free methionine supplementation limits alcohol-induced liver damage in rats.” Alcohol Clin Exp Res. 1998 Apr;22(2):352-8.

・Cheng S, Stone J, de Berker D. (2009) “Trichothiodystrophy and fragile hair:the distinction between diagnostic signs and diagnostic labels in childhood hair disease.” Br J Dermatol. 2009 Dec;161(6):1379-83.

・Campbell K, Claussen A, Meech R, Verhulst S, Fox D, Hughes L. (2011) ” D-methionine (D-met) significantly rescues noise-induced hearing loss: timing studies.” Hear Res. 2011 Dec;282(1-2):138-44.

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