パセリ

Parsley 
オランダ芹  早芹菜

野菜の中でも栄養素の含有量がトップクラスのパセリは、健康維持や美容など様々な働きを持っています。
特にβ-カロテンやビタミンC、カリウム、カルシウム、鉄を豊富に含んでおり、サラダやスープ、野菜ジュースなどにプラスするだけで、栄養価がぐんと上がります。

パセリとは?

●基本情報
原産地は地中海沿岸を原産地とする、セリ科オランダゼリ属の歴史の古い野菜です。
通常は、生の葉を料理に利用しますが、乾燥した葉や、粉砕した種子を用いることもあります。添え物としての
使われ方が多いですが、葉先をちぎってレタスなどの野菜と組み合わせてサラダにすると、美味しくたくさんの量を食べることができます。

●パセリの歴史
パセリは南イタリアやアルジェリアを原産地とし、紀元前から薬用および香辛料として利用されてきました。
古代エジプトでは食用にされていましたが、古代ギリシャでは家畜のエサとされていたようです。古代ギリシャ・ローマ時代には儀式用にも用いられており、華やかな席では出席者が首に新鮮なパセリの束を花環のようにかけて、その香りを楽しんだそうです。
その後、ローマ人がパセリを食べるようになり9世紀になるとフランスに伝わり、ドイツやイギリスなどに広がりました。
パセリがヨーロッパ全土で栽培されるようになったのは17世紀頃で、日本には18世紀末にオランダ船により長崎に持ち込まれたことがきっかけで広まりました。
しかし、料理の彩りとして利用されることが多く、食用とはされませんでした。この傾向は現在も続いており、日本で一般的に食べられているモスカレードパセリも、やや歯ごたえが硬いことから料理の彩りとして用いられることが多くなっています。

●パセリの種類
大きくは葉を食用とするものと、根を食用にするものに分かれます。

<根パセリ>
ハンブルグパセリ(Hamburg Parsley)
ターニップ・ルーテッド・パセリとも呼ばれます。
にんじんのような見た目をしており、スライスしてスープなどにして食べます。葉を食用とするものよりも香りが優しく、食べやすいといわれています。
日本国内ではまだあまり普及していません。

<葉を食用とするパセリ>
日本でパセリといえば、葉の縮れた種類(縮葉種)が主流ですが、原産地である地中海沿岸では、真っすぐな葉の種類(平葉種)のパセリが一般的です。
葉を食用とするパセリには、日本でおなじみの葉の縮れたものやイタリアンパセリなど、大きく3つの種類に分類されます。

・モスカールドパセリ(Moss Curled Parsley)
日本で最も知られている葉の縮れたパセリです。主に小葉や小葉に近い細い部分の葉柄が食べられます。

・イタリアンパセリ(Plain Leaved Parsley)
フレンチパセリとも呼ばれています。モスカールドパセリと異なり葉が真っすぐですが、葉以外はモスカールドパセリとよく似ています。現在では日本にも普及しており、目にする機会が増えてきました。モスカールドパセリ同様、小葉や小葉に近い細い部分の葉柄が食べられます。味もモスカールドパセリとほとんど同じですが、葉の形状が違う分、食感が異なります。

・ナポリタンパセリ(Neopolitan Parsley)
葉柄の部分が大きなパセリです。セロリと同じように葉柄の部分を食べます。

●パセリの選び方・保存方法
縮れが細かくて多く、緑色が濃いもの、ツヤがあるものが良質のパセリです。暑さや乾燥に弱いため、ポリ袋などに入れるか、水にさして冷蔵庫に入れておくと長持ちします。使い切れなかったパセリは、みじん切りにして乾燥させるか冷凍して保存すると長持ちします。キッチンペーパーの上にパセリを広げて、電子レンジで乾燥させると簡単につくることができます。
よく目にする瓶入りの乾燥パセリも常温では変色しやすいので、冷蔵庫や冷凍庫で保存すると色が長持ちします。

●パセリの旬
パセリは春から初夏にかけてが旬といわれていますが、一年を通して収穫されます。
特に春のパセリは香りが高く、葉がやわらかく良質です。
夏場になると、葉の縮れが大きくなり、硬く苦みの強いものが出回るようになります。

●パセリに含まれる成分と性質
パセリは、日本では主に料理の飾りとして使われていますが、ビタミン類ミネラル類が共に豊富に含まれているので料理と一緒に食べることをおすすめします。その独特の香りのため、よい口直しにもなりますので、ニンニクなど匂いの強いものを食べた後などに口にするのもおすすめです。
パセリには体内でビタミンAに変換されるβ-カロテン、糖質の代謝を助けるビタミンB₁、健康な皮膚・髪・爪をつくるビタミンB₂、美容や風邪の予防に効果のあるビタミンC、赤血球中のヘモグロビンの合成に必要な鉄など豊富な栄養素が含まれており、どの成分も野菜の中ではトップクラスの含有量を誇ります。そのため、サラダにパセリを少量加えるだけで、そのサラダが栄養バランスのとれたものになります。また、悪玉(LDL)コレステロールから体を守ってくれる葉緑素(クロロフィル)も多く含まれています。その他、アピオールという芳香成分も含まれており、食中毒の予防や、口臭の防止効果があるといわれています。
また、パセリに含まれるフラボノイド類には強力な殺菌作用があるため、料理やお弁当などに添えることで食中毒の予防などに働きます。【2】

パセリの効果

パセリには、β-カロテンやビタミンB₁、ビタミンB₂、鉄、カルシウムなどの有効成分が豊富に含まれているため、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●生活習慣病の予防・改善効果
日常生活で体内に発生する活性酸素[※1]は、血中の脂質を酸化させるため動脈硬化の原因となります。
β-カロテンには体内の活性酸素を除去する働きがあり、血中の脂質の酸化を防ぎ血管を若々しく保ってくれるため、動脈硬化の改善や予防に効果を発揮するといわれています。
また、パセリの緑色は、カロテンの黄色と葉緑素の色素であるクロロフィルの緑色が合わさったものです。クロロフィルは血液中の悪玉(LDL)コレステロールを強力に低下させ、同時に善玉(HDL)コレステロールを増やすため血液がサラサラになり、動脈硬化の予防に効果的です。
食塩の過剰な摂取などによりナトリウムが血中に多く存在すると、体内で水分の移動が正常に行われなくなり、高血圧を引き起こします。
パセリに含まれるカリウムには、余分なナトリウムを体外に排出する働きを持ち、また余計な水分を外に出す利尿作用を持つことも報告されており、血圧を下げ高血圧を予防する効果が期待できます。
パセリは様々な栄養素が一度に補えるため、生活習慣病の予防に適した野菜であると考えられています。【1】

●胃の健康を保つ効果
パセリに含まれるピネンと呼ばれる成分には、胃を適度に刺激することにより消化を促す働きがあります。
また、パセリの芳香成分であるアピオールには、食欲を増進させる働きがあり、夏バテなどに効果的であるといわれています。【3】

●精神を安定させる効果
パセリにはイライラを抑える働きを持つミネラルであるカルシウムや豊富なビタミン類が含まれるため、イライラや興奮といった神経系の過活動を抑制し、精神を安定させる効果のあるハーブとして親しまれています。

●美肌効果
パセリにはβ-カロテンが豊富に含まれています。β-カロテンから変換されたビタミンAには皮膚や粘膜を丈夫に保ってくれる働きがあり、肌のカサつきや肌荒れの改善に期待できます。
また、β-カロテンには紫外線によって発生した活性酸素を無効化する働きがあり、ビタミンCの働きとあわせてメラニン色素[※2]の発生を抑制する効果もあります。
他にも、パセリに含まれているビタミンCがコラーゲンの生成を促進し肌のハリが保たれることにより、シワの予防や改善にも役立ちます。
様々な栄養素の相乗効果により、パセリには美肌を導く効果があるといわれています。

●貧血を予防する効果
貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少している状態を指します。
ヘモグロビンは、呼吸をした際に肺に取り込まれた酸素を全身の組織に供給する役割を果たしています。ヘモグロビンの量が減ると、細胞に供給される酸素が不足します。このため、顔が青白くなる、少し動いただけでも息切れがする、動悸が起こる、疲れやすくなる、立ちくらみがするなどの症状が起こります。
パセリはヘモグロビンの材料となる鉄に加え、鉄の吸収を高めるビタミンCを豊富に含んでいるため、貧血の予防・改善に適した野菜であるといわれています。

●口臭を予防する効果
パセリに含まれるピネン、アピオールという有機化合物は、口内の雑菌の繁殖を抑えることにより口臭を抑える効果があるといわれています。また、パセリの色素である葉緑素にも強力な消臭効果があります。【2】

●むくみを予防・改善する効果
パセリには利尿作用があるとされ、ヨーロッパでは薬用ハーブとして利用されています。
また、パセリには体を温める働きもあり、冷えが原因のむくみにも効果を発揮します。【1】

●腸内環境を整える効果
パセリに含まれるピネンには、腸内の有害細菌の繁殖を抑える働きがあります。
また腸の痙攣を抑える働きもあるため、痙攣性下痢の緩和にも役立つと報告されています。
この働きにより、腸の働きを整える効果があります。【4】

[※1:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※2:メラニン色素とは、シミの原因になるものです。メラニン色素の蓄積によってシミは形成されます。]

パセリはこんな方におすすめ

○生活習慣病を予防したい方
○胃腸の健康を保ちたい方
○イライラしやすい方
○美肌を目指したい方
○貧血でお悩みの方
○手足のむくみでお悩みの方

パセリの研究情報

【1】パセリは腎臓中での水分調整に関わる「Na-Kポンプ(ナトリウムカリウムポンプ)」のはたらきを阻害します。腎臓での水分再吸収を抑制することで、余計な水分を外に出す利尿効果を持つことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15118318

【2】パセリにはフロクマリンが含まれています。フロクマリンは病原性大腸菌などに対する抗菌効果を持っており、パセリは抗菌作用を持つと示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10465045

【3】ラットにおいて、パセリ抽出物を1日当たり1g/kg,2g/kg を投与したところ、アルコールによる胃潰瘍の発症が抑制されたことから、パセリの胃潰瘍抑制効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14696673

【4】ラットより摘出した回腸にパセリ抽出物を投与したところ、腸の痙攣を和らげる鎮痙効果が見られました。痙攣性下痢の予防に役立つなど、パセリには腸の健康を維持する効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21446133

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参考文献

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・池上保子 おいしく食べて健康に効く目で見る食材便利ノート 永岡書店

・本多京子 食の医学館 小学館

・内田正宏 芦沢正和 花図鑑野菜 星雲社

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社

・Kreydiyyeh SI, Usta J. 2002“Diuretic effect and mechanism of action of parsley.” J Ethnopharmacol. 2002 Mar;79(3):353-7.

・Manderfeld MM, Schafer HW, Davidson PM, Zottola EA. 1997 “Isolation and identification of antimicrobial furocoumarins from parsley.” J Food Prot. 1997 Jan;60(1):72-7.

・Al-Howiriny T, Al-Sohaibani M, El-Tahir K, Rafatullah S. 2003 “Prevention of experimentally-induced gastric ulcers in rats by an ethanolic extract of “Parsley” Petroselinum crispum.” Am J Chin Med. 2003;31(5):699-711.

・Branković S, Kitić D, Radenković M, Ivetić V, Veljković S, Nesić M. 2010 “Relaxant activity of aqueous and ethanol extracts of parsley (Petroselinum crispum (Mill) Nym. ex A. W Hill, Apiaceae) on isolated ileum of rat.” Med Pregl. 2010 Jul-Aug;63(7-8):475-8.

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