ペパーミント

peppermint

ペパーミントとは、シソ科の植物で、セイヨウハッカとも呼ばれているハーブの一種です。
メントール、精油成分、フラボノイド、タンニン、ミントポリフェノールなど多数の成分を含んでおり、肌の調子を整える効果や消化器の不調を改善する効果が期待されています。

ペパーミントとは

●基本情報
ペパーミントとは、シソ科ハッカ属の多年草植物で、日本ではセイヨウハッカとも呼ばれるハーブの一種です。
ペパーミントは、スペアミントとウォーターミントの交配種で、ミントは現在、スペアミント系とペパーミント系の大きく2つに分けられます。
スペアミントはほのかに甘い香りが特徴的で、主にガムや歯磨き粉などに利用されています。
ペパーミントは、メントール[※1]の含有量が多いため、スペアミントよりも強力な香りと清涼感が特徴です。
ペパーミントの利用部分は主に葉であり、乾燥させてハーブティーやサプリメントなど食用に使用されます。また、葉から抽出したオイルはアロマオイルやエッセンシャルオイルにも配合されています。
ペパーミントはミントの中でも特に効果が高い品種であるといわれており、ヨーロッパで薬用に利用されるミントは、そのほとんどがペパーミントです。

●ペパーミントの歴史
ミント自体は、何千年も前から古代ギリシャで生薬として使用されており、歴史上最も古い栽培植物であるという説もあるハーブです。1700年代後半にイギリスで人気を博し商業的な栽培が広がりました。

ミントの学名である「Mentha(メンタ)」は、ギリシャ神話に登場する「メンテー」という妖精の名前が由来であると言い伝えられています。
エピソードによると、冥界の王であるハデスが惹かれた妖精のメンテーが、ハデスの妻であるペルセフォネの嫉妬にあい、植物へと姿を変えられてしまいます。それを可哀想に思ったハデスが、メンテーを香りの良い薬草へと変身させ、それが後にミントと呼ばれるようになったとされています。
また、ペパーミントの学名である「Mentha piperita(メンタ ピペリタ)」は、ペパーミントを食すとコショウのようにピリッとした味がするため「piperita(コショウの)」「Mentha(ミント)」という意味から名付けられました。

●ペパーミントの生産地
ペパーミントの原産地はヨーロッパで、現在は欧米諸国などを中心に、世界中で広く栽培されています。
ペパーミントは湿地を好み、イギリスの気候条件が栽培に適しているとされ、イギリス産のペパーミントが最も高品質であるといわれています。

●ペパーミントに含まれる成分と性質
ペパーミントは主に葉が使用され、メントール、精油成分、フラボノイド、タンニン、ミントポリフェノールなど多数の成分を含んでいます。
有効成分であるメントールは揮発性[※2]の精油成分で、強力な抗菌作用、頭皮の血管を拡張させる作用、肌に触れると冷たく感じる作用などが特徴的な成分です。
また、ペパーミントは比較的多数の成分を含んでいるハーブであり、独特の風味と優れた効果を発揮するといわれています。

[※1:メントールとは、揮発性の精油成分です。独特のハッカ臭と清涼感が強いのが特徴で、高い抗菌作用を持っていることが知られています。]
[※2:揮発性とは、液体の蒸発しやすい性質を指します。]

ペパーミントの効果

●美肌効果
ペパーミントの葉に含まれる成分には、美肌効果が期待されています。
肌は、周囲の気候などに応じて皮脂(油分)や水分(汗)を調節することで、弾力を保ち、外敵から身を守っています。
しかし、化粧品の使用や汚れた空気によって、過剰に皮脂が分泌されたり、汗の量が少なくなったり、汗が蒸発し過ぎるなどの問題が生じ、脂性肌や乾燥肌へと肌質が変化してしまうのです。
肌表面の水分である汗が少なくなった場合、肌は皮脂を分泌し、肌を保護しようとします。
そのため、水分量が少なくなった乾燥肌がさらに深刻化すると、脂性肌へと変化します。
過剰に皮脂が分泌されることで毛穴が広がり、そこから皮脂が溢れ出ることで角栓などがつくられ、酸化によって黒く変色し、毛穴の黒ずみの原因になるとされています。
ペパーミントには、肌の水分と油分のバランスを調節する働きがあるため、水分の蒸発や過剰な油分の分泌を抑制し、肌の調子を整える効果があります。それによって、毛穴の黒ずみの改善にも効果的です。
また、ペパーミントは殺菌・消毒作用、冷却作用、血管を収縮する作用があることから、にきびなどを防ぐ働きもあるといわれており、多くの作用の相乗効果によって肌に対する様々な効果が発揮されると考えられています。

●胃腸の機能を高める効果
ペパーミントを摂取することによって、消化器[※3]の不調を改善することができます。
消化器のひとつ、胃は、食べ過ぎなどによる胃もたれ、胸やけ、吐き気などが起こりやすい症状として挙げられますが、ペパーミントには消化液のひとつである胆汁の分泌促進作用を強化するなど、消化器の働きを促進させる作用があるため、食べ過ぎた後の胃もたれや胸やけの解消にも効果的であるといわれています。
また、ペパーミントには胃の筋肉をリラックスさせる作用(鎮痙作用[※4])があるため、胃痙攣を防止する効果も期待されています。
ペパーミントの腸に対する作用を確認した実験も行われており、この実験では、ペパーミントの精油成分とキャラウェイ[※5]の精油の混合物を腸溶性のカプセルに入れたものを被験者に摂取させた結果、IBS(過敏性腸症候群)[※6]の症状が緩和されたという報告がされています。

●口臭を予防する効果
ペパーミントが持つ、消化器の健康を維持する作用は、口臭の予防にも効果的です。
口臭には、起床時や空腹時などに発生する生理的な口臭や、老化とともに発生する加齢性の口臭など、原因によって様々な種類があります。魚臭症という遺伝によって発生する口臭も存在しますが、病気によって起こる口臭も数多く存在します。
病気によって起こる口臭のほとんどは、虫歯、歯周病、歯肉炎など口腔内の異常によって発生しますが、胃や腸などの臓器に疾患が起こった際にも口臭が発生する場合があります。
ペパーミントには消化器の不調を改善する働きがあるため、口臭の原因と成り得る疾患を防ぐことができます。
また、ペパーミント自体が持つ清涼感のある香りは気になる口臭を直接防ぐ効果があるため、相乗効果で口臭を予防することができると考えられています。【6】

●精神を安定させる効果
ペパーミントの清涼感ある香りには、精神を鎮静する効果があるとされています。
神経の疲労やうつ状態などには気分をリフレッシュさせ、怒ったときなどの精神が興奮している状態においては神経を鎮める作用を持ちます。
また、ペパーミントの刺激性のある香りは、気付け薬[※7]の役目を担うとも考えられているほか、脳を活性化させて集中力を向上させるといわれています。

●花粉症を予防・改善する効果
ペパーミントにはアレルギー症状を抑制する作用があるため、花粉症の予防や改善に効果的であるといわれています。
ペパーミントに含まれている有効成分は、キシリトールなどの精油成分が代表的ですが、精油成分を抽出した後の葉には、ルテオリン-7-O-ルチノサイドというポリフェノールの一種が含まれています。
ペパーミントに含まれているルテオリン-7-O-ルチノサイドはミントポリフェノールとも呼ばれており、この成分はペパーミント以外のミントにはほとんど含まれていません。
ミントポリフェノールは鼻の粘膜の腫れを抑制する作用など、アレルギー症状を緩和するために有効な働きを持っているため、ペパーミントを摂取することで花粉症を予防・改善する効果が期待できます。
また、水に溶けやすい性質のため、ペパーミントティーなどから手軽に摂取することが可能です。【4】

[※3:消化器とは、食物を摂取してから消化し、栄養素を吸収した後、排泄にいたるまでに働く臓器群を指します。]
[※4:鎮痙作用とは、痙攣を抑える作用です。一般的には胃などに用いられる鎮痛鎮痙剤を指します。]
[※5:キャラウェイとは、セリ科の植物です。種子のような外見をした果実が香辛料の材料として使われています。]
[※6:IBS(過敏性腸症候群)とは、大腸の運動や分泌系の異常で起こる病気の総称です。]
[※7:気付け薬とは、失神した人間の意識を回復させる際に用いる興奮剤です。一般的にアンモニア類やブランデーなどが用いられます。]

ペパーミントはこんな方におすすめ

○美肌を目指したい方
○消化を促進したい方
○口臭が気になる方
○心を落ち着かせたい方
○花粉症でお悩みの方

ペパーミントの研究情報

【1】ペパーミントは様々な形で、香料、食品および医薬品などに利用される薬草です。ペパーミント油状物は鋭いメントールの香気を持ち、その辛味とともに涼しい心地を感じます。そのため、多様な治療上の特性を有し、アロマテラピー、入浴、洗口、歯磨き粉および局所用製剤に使用されます。皮膚に使用した場合は、かゆみ、刺激および炎症の抑制が期待できます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21144345

【2】大腸菌O157: H7および黄色ブドウ球菌を対象にラベンダーおよびペパーミントの精油の抗酸化および抗菌作用を調べました。結果として、ひき肉中の細菌の増殖を抑制し、TBARS値(脂質酸化の指標)の低下を示しました。以上のことから、ラベンダーおよびペパーミントの精油の抗酸化および抗菌効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22789458

【3】ペパーミントのエタノール抽出物のラットに対する効果を調べました。抽出物3 μg/mlをラット腹腔細胞に投与すると、ヒスタミンの放出を抑制しました。また、鼻炎の症状、くしゃみおよび鼻のこすりを抑制しました。これらの結果から、ペパーミントのエタノール抽出物がアレルギー性鼻炎の症状を緩和することが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11201253

【4】ペパーミントから分離したフラボノイドのうち、ルテオリン-7-O-ルチノシドを100および300 mg/kg投与すると、抗原抗体反応によって誘導されるヒスタミン放出の強力な抑制効果が示されました。この結果は、ルテオリン-7-O-ルチノシドが臨床的にアレルギー性鼻炎の症状を緩和することに有効である可能性を示しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11853178

【5】ランブル鞭毛虫(ヒトなどの哺乳類にジアルジア症を引き起こす寄生虫)に対するペパーミントの抽出物の作用を検討しました。いくつかの抽出物のうち、ジクロロメタン抽出物はランブル鞭毛虫の細胞膜表面に影響し、栄養体の接着を阻害したことが示されました。また、腸細胞に対する毒性は見られませんでした。これらの結果から、ペパーミントは抗ジアルジア活性を持ち、ランブル鞭毛中感染症に対する治療薬としての有益な可能性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16843460

【6】揮発性硫黄化合物(大腸で発生する口臭の原因物質)へのペパーミント、シソ、キランソウの効果を調べました。3つのハーブエキスをそれぞれブタに与えたところ、どのハーブエキスにおいても腸内の水素スルフィド、メタンチオールおよびアンモニアの合成の有意な減少が見られました。また、これらのハーブエキスのn-ブタノール分画において、有意に揮発性硫黄化合物の生産が減少しました。このことから、ペパーミントは口臭を抑制する働きを持つ可能性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12026183

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参考文献

・ハーブ スパイス館 小学館

・リエコ・大島・バークレー 英国流メディカルハーブ 説話社

・林真一郎 メディカルハーブの事典 東京堂出版

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・板倉弘重 ハーブティー図鑑 主婦の友社

・アン・マッキンタイア 女性のためのハーブ自然療法 産調出版

・Herro E, Jacob SE. 2010 “Mentha piperita (peppermint).” Dermatitis. 2010 Dec;21(6): 327-9.

・Djenane D, Aïder M, Yangüela J, Idir L, Gómez D, Roncalés P. 2012 “Antioxidant and antibacterial effects of Lavandula and Mentha essential oils in minced beef inoculated with E. coli O157:H7 and S. aureus during storage at abuse refrigeration temperature.” Meat Sci. 2012 Jun 21.

・Inoue T, Sugimoto Y, Masuda H, Kamei C. 2001 “Effects of peppermint (Mentha piperita L.) extracts on experimental allergic rhinitis in rats.” Biol Pharm Bull. 2001 Jan;24(1): 92-5.

・Inoue T, Sugimoto Y, Masuda H, Kamei C. 2002 “Antiallergic effect of flavonoid glycosides obtained from Mentha piperita L.” Biol Pharm Bull. 2002 Feb;25(2): 256-9.

・Vidal F, Vidal JC, Gadelha AP, Lopes CS, Coelho MG, Monteiro-Leal LH. 2007 “Giardia lamblia: the effects of extracts and fractions from Mentha x piperita Lin. (Lamiaceae) on trophozoites.” Exp Parasitol. 2007 Jan;115(1): 25-31.

・Ushid K, Maekawa M, Arakawa T. 2002 “Influence of dietary supplementation of herb extracts on volatile sulfur production in pig large intestine.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2002 Feb;48(1): 18-23.​

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