ラズベリー

raspberry

ラズベリーとは、その中に含まれる香り成分である「ラズベリーケトン」が、脂肪を分解する働きがあることがわかってきた注目の果実です。
酸味のある赤い果実には美白効果・美容効果のあるエラグ酸をはじめ、アントシアニンなどの健康成分が豊富に含まれています。目の健康維持や生活習慣病を予防する効果もあります。

ラズベリーとは?

●基本情報
ラズベリーとはバラ科キイチゴ属に属する数種類の種の小さな低木で、ヨーロッパキイチゴ、西洋キイチゴなどとも呼ばれています。ラズベリーは、まっすぐに生育する特徴を持つ、ヨーロッパやアジア、アメリカを中心に自生する二年生植物[※1]です。分類学的には亜属 Idaeobatus に相当します。一般的にはケーキやジャムなどスイーツによく使われ、フランス語の「フランボワーズ」の名でも知られています。ルビーのように美しく、独特の甘酸っぱい香りが特徴のフルーツとしても人気です。

●ラズベリーの歴史
日本にラズベリーが伝えられたのは19世紀頃だといわれています。ラズベリーが群生するアジアの山「Bramble of Mount Ida」は、野バラやイバラを意味しますが、その山の名にちなんで、「ラズベリー」という名がつけられたと伝えられています。

ラズベリーの最初の栽培の記録は1548年といわれ、16~17世紀頃イギリスで栽培が始まったと記されています。修道士が滋養強壮のために栽培を始めたといわれており、そこから徐々にヨーロッパ全域に広がりました。

ラズベリーは、5月から6月にかけて白く愛らしい花を咲かせます。バラ科であるラズベリーには、バラの花と同じように刺があり、刺が人を傷つけることからその花言葉は、「深い後悔」といわれています。花が咲くと、やがて美しく美味しそうな赤い実をつけます。それがラズベリーの果実です。品種によっては黒や黄色の果実をつけるものもあります。

ラズベリーはユーラシア大陸から北米にかけて生息してきました。古くからアフリカ、ヨーロッパ、西アジア、アメリカなど世界各地で食用として親しまれてきましたが、特にヨーロッパの人々の嗜好にぴったり合っているといわれ愛されてきました。

●ラズベリーに含まれる成分の効果
香り成分である「ラズベリーケトン」には、脂肪を分解する働きがあるとされ、そのダイエット効果に近年注目が集まっています。

この真っ赤な果実にはアンチエイジング効果があるとされるエラグ酸アントシアニンといった成分をはじめ、ビタミンEや葉酸、食物繊維などの栄養素も豊富に含まれています。

●「メディカルハーブ」としてのラズベリー
ヨーロッパでは、ラズベリーが食料としてだけでなく、メディカルハーブ[※2]として多くの人々に重宝されてきました。とりわけ女性の出産の際には、なくてはならないハーブティーとして、何千年にも渡り活用されてきたといわれています。妊婦のつわりがおさまることから出産の3ヵ月前からラズベリーのハーブティーを飲み、また回復が早いとされるため、出産後もラズベリーのハーブティーが愛飲されてきました。ラズベリーの葉は収れん作用[※3]を持ち、浸剤(しんざい)[※4]や煎剤(せんざい)[※5]として下痢や赤痢、扁桃腺などにも内服されてきました。また、炎症を緩和するのに効果的とされ、外傷や結膜炎などにも役立てられました。
また、ラズベリーの葉は、ヨーロッパでは、「安産のためのお茶」として知られ、助産婦たちが出産準備に欠かせないものとして用いたそうです。また、消化不良やのどの炎症にも効果があるとして家庭薬としても使われてきました。
一方、中国では、古くから生薬として、覆盆子(フクボンシ)の名で親しまれてきました。利尿作用があるため常備薬とされてきました。ラズベリーには実と葉に異なる働きや効果があり、それぞれが治療の分野でも注目されています。

[※1:二年生植物とは、秋に発芽して冬を越し、翌春に開花・結実する植物のことです。]
[※2:メディカルハーブとは、人々の暮らしの中で美容と健康の維持・増進を目的に用いることのできる、香りのある植物のことです。]
[※3:収れん作用とは、縮こませたり、引き締めたりする働きを指します。]
[※4:浸剤とは、細かくしたハーブなどに熱湯を注ぎ、成分を抽出して服用する飲み薬のことです。]
[※5:煎剤とは、ハーブや生薬などに水を注ぎ、加熱して布ごしした内服用の薬のことです。]

ラズベリーの効果

ラズベリーには、健康に対する 様々な効果が研究されています。

●ダイエット効果
ラズベリーの働きの中でも、特に着目されているのが「ラズベリーケトン」と呼ばれる、ラズベリーの香り成分の働きです。ラズベリーケトンは、脂肪分解に効果を持つキイチゴに含まれる成分のひとつです。この甘酸っぱい香り成分には脂肪分解効果があることが発見されました。ラズベリーケトンには、脂肪細胞に直接作用して脂肪分解を促す効果があります。脂肪の分解は、脂肪分解酵素(ホルモン感受性リパーゼ)が脂肪と結合することで起こります。ラズベリーケトンには、脂肪分解酵素と脂肪の結合を促進する作用があると報告されています。つまりラズベリーケトンにより合成と分解のバランスが分解優勢となって、ダイエット効果を発揮するのです。そのため、脂肪分解のサポート成分としてラズベリーは、今、最も注目されています。同様の効果を持つものの中に唐辛子に含まれるカプサイシンがありますが、ラズベリーケトンはカプサイシンの脂肪分解効果の3倍もの効果があるともいわれています。【1】【2】【4】

●育毛を促進する効果
知覚神経は、刺激されるとカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を放出します。知覚神経を刺激することにより、皮膚のインスリン様成長因子-I濃度が増加し、育毛効果を促します。同様の効果をもつ成分がラズベリーケトンです。ラズベリーケトンには、毛髪を生やしている細胞を増やし、育毛を促進する効果があることが報告されています。【3】

●老化を防ぐ効果
エラグ酸は、赤いラズベリーに最も多く含まれていて、細胞の突然変異を抑え、体中の毒素を排除する作用があるため、健康効果があると期待されています。食べ物から摂取するエラグ酸については、赤いラズベリーのエラグ酸のみが、人体に非常に効率よく吸収されることが確認されています。体の酸化を防ぐ抗酸化力[※6]があるので、メラニンの生成防止に効果的に働きかけます。加齢によるしわやたるみなどの老化現象を防ぐ効果、内臓機能を高めてくれる効果などが期待できます。

●美白効果
エラグ酸にはメラニン生成に関わる酵素(チロシナーゼ)内の銅イオンの活性化を防ぐ効果があり、この働きによってもシミの原因であるメラニンが生成されることを防ぐといわれています。さらに、美白効果が高いといわれるハイドロキノンと似た効果を持っていると注目されています。

●眼精疲労を改善する効果
ラズベリーには抗酸化作用があるポリフェノールの一種アントシアニンが含まれています。アントシアニンは視力を高めたり、眼精疲労を改善させる働きをもつことで知られています。

●生活習慣病の予防・改善効果
ラズベリーには高血圧や糖尿病、動脈硬化の予防などへの効果も期待されています。ラズベリーの実には、食物繊維が含まれていることから、コレステロールや糖質、老廃物が腸管から吸収されてしまうことを阻害し、また、これらの排泄を促進させる働きがあるといわれています。 このため、動脈硬化や糖尿病などへの効果があると期待されています。また、整腸作用があり、腸内に存在する善玉菌の増加を活発化させる働きもあります。また、血糖値が高くなることをコントロールする作用があります。【8】【9】

●婦人病を改善する効果
女性の味方として、子宮に関係した諸症状の緩和、安全な分娩、母体の早い回復など、出産準備として、出産の約3ヵ月前からラズベリーの葉をハーブティーにして飲むと良いといわれています。その他、PMS(月経前症候群)、月経困難、月経過多、つわり、母乳の分泌促進、子宮強壮にも効果が期待されています。

●炎症を抑制する効果
口腔内の粘膜の炎症やトラブルにラズベリーの葉のハーブティーでうがいをすると、症状が緩和されるといわれています。歯石を取り除くのにも効果があるとされています。

[※6:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]

ラズベリーは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○肥満を予防したい方
○目の疲れが気になる方
○美肌を目指したい方
○生活習慣病を予防したい方

ラズベリーの研究情報

【1】ラズベリーケトンは非アルコール性脂肪肝炎を誘発させたラットで、種々の肝障害を改善させ脂肪を減少させる効果があることがわかっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22551412

【2】ラズベリーケトンは脂肪細胞において脂肪分解を高めて脂肪酸の酸化を高めることで、脂肪細胞への脂肪の蓄積を防ぐということがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20425690

【3】ラズベリーケトンは、感覚ニューロンを活性化することで肌の弾力を高め、真皮のIGF-1産生を促進して発毛を促進すると考えられています。0.01%の ラズベリーケトンを5ヶ月間適応することで、脱毛症を50%の人で改善しました。また同じ研究では、2週間、ラズベリーを適応させることで頬の肌の弾力を高めることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18321745

【4】ラズベリーケトンは白色脂肪細胞に働きかけ、ノルエピネフリンの放出を誘導し、脂質代謝を盛んにします。この研究から、ラズベリーケトンは抗肥満作用を持つことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15862604

【5】ラズベリーエキスは高い抗酸化力を持つことが知られており、ラズベリーエキスを摂取することで、血管新生を抑制し、肝臓を守る力があることが確認できました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22417609

【6】ラズベリーエキスは炎症によるプロテオグリカン及びⅡ型コラーゲンの分解を抑えるということが研究されています。ラズベリーに軟骨を保護する働きが確認され、関節や軟骨を保護する働きがあると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22111586

【7】ラズベリーは腎臓のカルシウム量の増加を抑制することで、腎臓結石を予防すると考えられます。また高シュウ酸尿も抑制することで、腎臓結石を予防することが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21557843

【8】ブラックラズベリー種子エキスは高脂肪食を摂ることによる善玉コレステロールの低下を抑制し、他のコレステロールの増加を抑制することで、コレステロールを調節します。
また豊富に含まれるαリノレン酸に、高トリグリセリド血症の予防効果があるということが研究されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21548801

【9】ラズベリーエキスは血圧上昇を抑制して、高血圧の予防に役立つことが研究によりわかっています。ラズベリーは血清中の一酸化窒素(NO)やSOD酵素を活性化し、血管収縮作用のあるエンドセリンなどの上昇を抑制することで、高血圧に役立ちます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21472074

【10】ブラックラズベリーは高い抗酸化力により、大腸炎や潰瘍性大腸炎の発症を予防します。その作用はシクロオキシゲナーゼ阻害作用による抗炎症作用によるものと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21098643

【11】ブラックラズベリー抽出物は逆流性食道炎による食道の炎症を防ぐことで、健康をサポートすると考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20538426

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参考文献

・日経ヘルス 著 サプリメント事典 日経BP社

・林真一郎 編 メディカルハーブの事典 東京堂出版

・佐々木薫 著 ハーブティー事典 池田書店

・リエコ・大島・バークレー 著 英国流メディカルハーブ 説話社

・アン・マッキンタイア 著 女性のためのハーブ自然療法 産調出版

・ヴィクトリア ザック 著 ハーブティーバイブル 東京堂出版

・Wang L, Meng X, Zhang F. 2012 “”Raspberry ketone protects rats fed high-fat diets against nonalcoholic steatohepatitis.”” J Med Food. 2012 May;15(5):495-503.

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・Harada N, Okajima K, Narimatsu N, Kurihara H, Nakagata N. 2008 “”Effect of topical application of raspberry ketone on dermal production of insulin-like growth factor-I in mice and on hair growth and skin elasticity in humans.”” Growth Horm IGF Res. 2008 Aug;18(4):335-44. Epub 2008 Mar 5.

・Morimoto C, Satoh Y, Hara M, Inoue S, Tsujita T, Okuda H. 2005 “”Anti-obese action of raspberry ketone.”” Life Sci. 2005 May 27;77(2):194-204. Epub 2005 Feb 25.

・Chen HS, Liu M, Shi LJ, Zhao JL, Zhang CP, Lin LQ, Liu Y, Zhang SJ, Jin JC, Wang L, Shen BZ, Liu JR. 2011 “”Effects of raspberry phytochemical extract on cell proliferation, apoptosis, and serum proteomics in a rat model.”” J Food Sci. 2011 Oct;76(8):T192-8

・Jean-Gilles D, Li L, Ma H, Yuan T, Chichester CO, Seeram NP. 2011 “”Anti-inflammatory Effects of Polyphenolic-Enriched Red Raspberry Extract in an Antigen-Induced Arthritis Rat Model.”” J Agric Food Chem. 2011 Dec 1.

・Ghalayini IF, Al-Ghazo MA, Harfeil MN. 2011 “”Prophylaxis and therapeutic effects of raspberry (Rubus idaeus) on renal stone formation in Balb/c mice.”” Int Braz J Urol. 2011 Mar-Apr;37(2):259-66; discussion 267.

・Ash MM, Wolford KA, Carden TJ, Hwang KT, Carr TP. 2011 May 6. 2011 “”Unrefined and refined black raspberry seed oils significantly lower triglycerides and moderately affect cholesterol metabolism in male Syrian hamsters.”” J Med Food. 2011 Sep;14(9):10gg32-8. Epub 2011 May 6.

・Jia H, Liu JW, Ufur H, He GS, Liqian H, Chen P. 2011 “”The antihypertensive effect of ethyl acetate extract from red raspberry fruit in hypertensive rats.”” Pharmacogn Mag. 2011 Jan;7(25):19-24.

・Grussu D, Stewart D, McDougall GJ. 2011″”The antihypertensive effect of ethyl acetate extract from red raspberry fruit in hypertensive rats.”” Pharmacogn Mag. 2011 Jan;7(25):19-24.

・Montrose DC, Horelik NA, Madigan JP, Stoner GD, Wang LS, Bruno RS, Park HJ, Giardina C, Rosenberg DW. 2011 “”Dietary freeze-dried black raspberry’s effect on cellular antioxidant status during reflux-induced esophagitis in rats.”” Nutrition. 2011 Feb;27(2):182-7. Epub 2010 Jun 11.

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