rice

米とは、体のエネルギー源となる炭水化物をはじめ、栄養が豊富に含まれている食材で、日本人の主食として古くから親しまれています。生活習慣病の予防に役立つほか、血圧を下げる効果なども期待されています。

米とは

●基本情報
米とは、イネの種子である籾(もみ)から籾殻(もみがら)を取り除いた玄米の外皮などを削り取り精米されたもののことです。
米はエネルギー源となる炭水化物が多く含まれており、乾燥させると長期保存が可能です。日本ではその気候から、米が良く育ち、多く収穫できる条件が揃っているといった理由から、重要な食料源として食されています。
米には、体のエネルギー源となる炭水化物をはじめ、ビタミン・ミネラルなどの栄養素が豊富に含まれており、生活習慣病予防や血圧を下げる効果などが期待されています。

●米の歴史
米の起源については、インド・雲南(中国西南部)・中国南部など様々な説があります。
米の栽培は紀元前3500年前、東南アジアの丘陵地帯で始まったと考えられており、その後世界各地へ稲作文化が広まりました。
日本への米の伝来は、縄文時代の後期に中国大陸から朝鮮半島を経由して伝えられたという説が有力だといわれています。
その後、米は日本人の主要な食材として、嗜好に合わせた品種改良が重ねられています。

●米の生産地
米の主な生産地は、中国、インド、インドネシアを始めとする東南アジア、ブラジル、アメリカ、日本などが挙げられます。
世界全体では、約6億9000万tもの米が生産されています。(2010年度)
中国とインドだけで世界の生産量の約半分を占めており、上位10ヵ国で世界の米の生産量の8割以上を占めています。
日本国内では、第二次世界大戦後の米不足の時代には収穫量の多い品種が栽培されていましたが、米の供給が満たされるとともに、コシヒカリやササニシキなど、味わいを重視した品種へと移り変わりました。
日本では毎年840万t前後の米が収穫されます。しかし、作付(さくつけ)[※1]面積と収穫量は、昭和40年代前半をピークに米の消費量の減少や農家数の減少などの理由により、年々減っているのが現状です。

●米の種類
米は、主に熱帯・亜熱帯で栽培されるインディカ米と、温帯で栽培されるジャポニカ米、インドネシアでつくられるジャパニカ米の3種類に大きく分類されます。

・インディカ米
中国の中南部やタイ、ベトナム、インド、マレーシア、バングラデシュ、フィリピン、アメリカ南部などで主に作られ、生産量は世界で最も多い米の種類です。
細長い形、ぱさつきがあり米粒同士がひっつきにくいという特徴があります。

・ジャポニカ米
日本をはじめ、朝鮮半島や中国東北部、ヨーロッパの一部などで主に作られている米の種類です。
米粒が短く、粘り気が強いという特徴があります。日本で食用にされている米のほとんどがジャポニカ米です。

・ジャパニカ米
もとはインドネシアの在来種でしたが、アメリカ、ブラジル、イタリア、スペインなどでも作られている米の種類です。幅が広く、粒が大きいという特徴があります。

さらに、品種で分類するとその数は2万種類以上に上るともいわれています。
日本の代表的なうるち米の品種には、全国で広く生産される「コシヒカリ」、東北地方を中心に生産される「ひとめぼれ」や「あきたこまち」、九州を中心に、中国・四国地方や近畿地方などで生産される「ヒノヒカリ」などが挙げられます。
もち米では、「ヒヨクモチ」、「はくちょうもち」、「ヒメノモチ」、「コガネモチ」などの品種が多く生産されています。

●米に含まれる成分と性質
米は、でんぷんを主体とする炭水化物を多く含んでいることから、重要なエネルギー源として食されています。
また、良質なたんぱく質のほか、脂質、ミネラル、ビタミンも含まれています。
また、ポリフェノールの一種であり抗酸化力[※2]の高いγ‐オリザノールやフェルラ酸、アミノ酸の一種であるGABA、ビタミン様物質のイノシトール、食物繊維などが含まれています。
しかし、精米時に取り除かれる部分に栄養素が多く含まれているため、最近では栄養価の高い胚芽を残した「胚芽精米」などの米も数多く流通しています。

<豆知識>様々な米の種類
形や大きさ以外にも、様々な性質を持つ米があります。

・玄米
籾から籾殻を取り除いたもので、精米したものよりたんぱく質や脂質、ミネラルが多く含まれています。
また、玄米を水に浸して0.5mm~1mmほど発芽させた発芽玄米も流通しています。発芽させることにより、酵素が働きアミノ酸の一種であるGABAがつくられるため、健康食品として注目されています。

・色素米
玄米の表面が赤色をしており、たんぱく質やビタミン類が多く含まれている「赤米」や、糠の部分にアントシアニン系の色素が含まれている「黒米」などがあります。
このような米を古代米といい、一部の地域で祭事などに使用するために受け継がれてきました。

・香り米
見た目は普通の白米と変わりはありませんが、炊飯時に独特の香ばしい香りを発する米の種類です。

[※1:作付とは、田畑に作物を植えつけることです。]

米の効果

●脳を活性化する効果
糖質と食物繊維を合わせて炭水化物と呼びますが、糖質は体をつくる要素であり、エネルギー源となる成分です。
また、脳の唯一のエネルギー源は糖質のため、糖質が不足すると頭の回転が鈍くなったり、集中力が欠けたり、ひどい場合には意識障害を引き起こすこともあります。
そのため、炭水化物を多く含む米は脳を活性化させる効果が期待できます。

●生活習慣病の予防・改善効果
米に含まれるγ‐オリザノールは、抗酸化力が高く、善玉(HDL)コレステロール[※3]を増やして悪玉(LDL)コレステロール[※4]を減らす働きを持っています。そのため動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果が期待されています。【1】

●脂肪肝を予防する効果
米に含まれるイノシトールが、脂肪の代謝を促進するため脂肪肝[※5]の予防に効果的です。

●高血圧を予防する効果
米に含まれるGABAは、腎臓の働きを高め、塩分(ナトリウム)を排出することによって血圧の上昇を抑える効果があるといわれています。【2】

●腸内環境を整える効果
米に含まれる食物繊維には、腸内に溜まった不要な老廃物を排出する働きがあり、善玉菌[※6]を増やす働きもあるため、腸内の環境を整える効果が期待されています。

[※3:善玉(HDL)コレステロールとは、血管壁に溜まった余分なコレステロールを抜き取って、肝臓に運ぶ機能がある物質です。動脈硬化などを防ぐ役割があります。]
[※4:悪玉(LDL)コレステロールとは、肝臓から血管にコレステロールを運ぶ機能を持った物質です。悪玉(LDL)コレステロール値が高くなると、動脈硬化の原因になるといわれています。]
[※5:脂肪肝とは、食べ過ぎや飲みすぎによって肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった肝臓の肥満症ともいえる状態です。肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった脂肪肝は、動脈硬化をはじめとする様々な生活習慣病を引き起こす恐れがあります。]
[※6:善玉菌とは、ヒトの腸内にすむ細菌の一種です。健康に役立つ働きを行っており、もともと大腸にすんでいる腸内ビフィズス菌や乳酸菌、腸球菌などが善玉菌といわれます。]

米はこんな方におすすめ

○脳を活性化したい方
○生活習慣病を予防したい方
○肝臓の健康を保ちたい方
○血圧が高い方
○便秘でお悩みの方

米の研究情報

【1】γ-オリザノールを含むコメ胚芽油(0.8g/日)の4週間の摂取により,総コレステロールの減少、LDL/HDL比が減少したことから、γ-オリザノールによる高脂血症や高コレステロール血症の改善が考えられました。
https://link.springer.com/article/10.1007/s00394-004-0508-9?LI=true#

【2】二重盲検法によりGABAが血圧調節に有用であるかどうかを調査しました。収縮期血圧(SBP)130-159mmHgまたは拡張期血圧(DBP)85-99mmHg(40例/グループ)の80例は、12週間1日2回GABA(GABA 20 mg含有)またはプラセボの飲用し、その後、4週間の追跡観察を行いました。プラセボ(p < 0.01)と比較して、GABAを与えられる被験者での収縮期血圧は有意に低下し、拡張期血圧も低下する傾向であった。GABA飲用が高血圧予防の有用なサプリメントであることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19811362

【3】口腔細菌の一種であるP. gingivalis に対し、コメに含まれるシステインプロテナーゼインヒビターがこの細菌の増殖を抑制することが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19691286

参考文献

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・蔵敏則 食材図典 小学館

・米穀安定供給確保支援機構:米ネット
https://www.komenet.jp/_qa/index.html

・A. Berger, D. Rein, A. Schäfer, I. Monnard, G. Gremaud, P. Lambelet, Dr. C. Bertoli (2005) “Similar cholesterol–lowering properties of rice bran oil, with varied γ–oryzanol, in mildly hypercholesterolemic men” European Journal of Nutrition March 2005, Volume 44, Issue 3, pp 163-173

・Shimada M, Hasegawa T, Nishimura C, Kan H, Kanno T, Nakamura T, Matsubayashi T. (2009) “Anti-hypertensive effect of gamma-aminobutyric acid (GABA)-rich Chlorella on high-normal blood pressure and borderline hypertension in placebo-controlled double blind study.” Clin Exp Hypertens.2009Jun;31(4):342-54.

・Taiyoji M, Shitomi Y, Taniguchi M, Saitoh E, Ohtsubo S. (2009) “Identification of proteinaceous inhibitors of a cysteine proteinase (an Arg-specific gingipain) from Porphyromonas gingivalis in rice grain, using targeted-proteomics approaches.” J Proteome Res. 2009 Nov;8(11):5165-74. doi: 10.1021/pr900519z.   

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