サポニン

saponin

サポニンは、植物の根、葉、茎などに広く含まれている配糖体の一種で、コレステロールを除去したり、体内で血栓をつくり動脈硬化の原因となる過酸化脂質の生成を抑制する効果があります。特に、大豆や高麗人参に含まれるサポニンには様々な効果・効能が期待されています。

サポニンとは?

●基本情報
サポニンは、植物の根、葉、茎などに広く含まれている配糖体[※1]の一種で、苦味やエグみなどのもととなる成分です。
大豆をはじめ、高麗人参田七人参桔梗アマチャヅルなどの植物に含まれ、特にマメ科の植物に多く含まれています。サポニンには種類があり、植物ごとに含まれる種類が異なります。大豆に含まれるものを大豆サポニン、高麗人参に含まれるものを「高麗人参サポニン」と呼ぶこともあります。
サポニンは、水に溶けると石けんのような発泡作用を持つため、ラテン語で石けんを意味する「サポ」が名前の由来となっています。サポニンは水と油の両方に溶ける性質があり、サポニンには脂質を溶かす働きがあることから、昔から石けんなどに使用されていました。

また、サポニンには殺菌・抗菌作用があり、水に溶けると石けんのように発泡作用があり汚れを落とす働きがあるため、天然の界面活性剤として用いられています。
はるか昔、平安時代においてもシャンプーの代わりにサポニンを高濃度に含むムクロジの果皮やサイカチの実を潰して水と混ぜ、泡立てて使っていたといわれています。【4】

サポニンは体内のコレステロールを除去したり、血栓のもととなる過酸化脂質[※2]の生成を抑制したりする作用があります。
特に大豆や高麗人参に含まれるサポニンには、様々な効果・効能が期待されており、サプリメントなどに活用されています。

●サポニンの歴史
サポニンには数多くの種類がありますが、中でも有名なのが大豆や高麗人参に含まれるサポニンです。
漢方薬などにはサポニンを含む生薬が使われることが多く、昔から人々の生活に取り入れられることが多かったことがわかります。サポニンそのものの研究の歴史は古く、1900年代初頭には、血液に対するサポニンの効果が論文で報告されています。
現在も、サポニンの効果については数多くの臨床試験が実施されており、サポニンの秘めたるパワーが解明され続けています。

●サポニンを含む食品
サポニンは、大豆や高麗人参田七人参、桔梗などに多く含まれており、大豆サポニンや人参サポニン、黒豆サポニン、ヘチマサポニンなど、含まれている食品によって名前が付けられ、由来する植物によってサポニンの性質や働きが異なります。
サポニンは食品から摂取できますが、より効率良く摂取できるようにサプリメントやお茶などに配合され、販売されています。

●サポニンを摂取する際の注意点
サポニンは様々な植物に含まれていますが、サポニンの種類によって安全性が異なります。
一般的に大豆や人参に含まれるサポニンは安全性が高く、大豆サポニンだと1日に100mgを目安に摂ると良いといわれています。
一方、生薬である桔梗や柴胡(さいこ)などに含まれるサポニンは、過剰に摂取すると、赤血球の膜が溶ける溶血作用や吐き気を引き起こすことがあるため用法・用量を守ることが大切です。

[※1:配糖体とは、糖と様々な種類の成分が結合した有機化合物のことです。生物界に広く分布し,植物色素であるアントシアニンやフラボン類などがあげられます。]
[※2:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]

サポニンの効果

●肥満を予防する効果
大豆に含まれるサポニンには、腸で吸収したブドウ糖が脂肪と合体しないように抑制し、脂肪の蓄積を抑えることによって肥満を予防する効果があります。
BMI値[※3]が25~30の成人男女に大豆サポニンと大豆たんぱく質を含む試験食品を摂取させると、摂取前よりも体重、内臓脂肪が減少したということがわかっています。
また、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症の患者に大豆サポニンを投与すると、血中脂質について総コレステロールが71%、中性脂肪が88%改善されたという報告もあります。
このように、サポニンには脂肪の吸収を抑制し、蓄積を抑えることによって肥満を予防する効果があります。

●コレステロール値を下げる効果
血中の悪玉(LDL)コレステロールが多くなり、酸化されると、血液の流れが滞り、血液がドロドロになります。血液がドロドロになると、酸素や栄養が末端の細胞まで届けられなくなったり、動脈硬化などの深刻な病気を引き起こしたりします。
大豆に含まれるサポニンには、血中の悪玉(LDL)コレステロールを低下させる効果があります。【1】

●血流を改善する効果
田七人参高麗人参に含まれるサポニンには、血流をスムーズにし、血管内に血栓ができにくくする働きがあります。血管が詰まった状態が続くと、動脈硬化となり、さらには心筋梗塞や脳梗塞につながります。
高麗人参のサポニンは、血小板凝集を抑え全身の細胞に酸素や栄養を届ける毛細血管の血流を改善する効果があり、体内のめぐりをスムーズにする働きがあります。【3】

●免疫力を高める効果
サポニンには、ウイルスや細菌から体を守る免疫機能を司る「ナチュラルキラー細胞」を活性化する働きがあります。
免疫力とは、人間の体内にもともと存在するけがや病気を治癒しようとする力のことです。
免疫力が低下すると、体外から入ってくるウイルスに対抗することができず、風邪やインフルエンザなどの病気を長引かせます。
サポニンには免疫力を高める効果があり、風邪やインフルエンザにかかりにくい体をつくります。

●肝機能を高める効果
サポニンには、過酸化脂質の生成を抑制し、肝機能を高める効果があります。
過酸化脂質とは、活性酸素[※4]によって中性脂肪やコレステロールなどの脂質が酸化されたもので、老化や動脈硬化などを引き起こします。
高脂肪な食事を摂取しすぎると、この過酸化脂質が増加し、肝機能障害を起こしやすくなります。
大豆に含まれるサポニンには過酸化脂質の生成を抑制し、肝機能を高める効果があります。【6】

●咳や痰(たん)を抑制する効果
桔梗に含まれる薬用成分のサポニンを適量に摂取することで、肺に侵入してきたごみや異物を排除する気管の分泌液が促進され、痰が出やすくなることがわかっています。
そのため、咳を鎮めたり、痰を除く薬として利用されています。
桔梗に含まれる薬用成分のサポニンは、咳や痰、のどの腫れや化膿などにも効果があるといわれ、風邪薬などにほかの生薬と合わせて配合されることがあります。【7】

[※3:BMI値とは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出される、肥満度を示す国際的な指標のことです。]
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化や生活習慣病などの原因になります。]

サポニンをは食事やサプリメントで摂取できます

サポニンを含む食品

高麗人参(紅参)

こんな方におすすめ

○肥満を予防したい方
○血流を改善させたい方
○免疫力を向上させたい方
○生活習慣病を予防したい方
○風邪にかかりにくい体をつくりたい方

サポニンの研究情報

【1】プラティコジン(キキョウgrandiflorumの仲間:サポニン配糖体を含む)は抗肥満お
よびコレステロール低下特性を有します。高脂肪食誘発アテローム形成ハムスターに28日間、プラティコジン水性抽出物または粗サポニン分画を投与し、アテローム生成に対する作用を調べました。プラディコジン介入後、血漿および肝の中の総コレステロール濃度はそれぞれ13%~28%、41%~79%を低下し、糞便中のコレステロール濃度は2.5倍増加しました。このことから、サポニン配糖体は、血中のコレステロールを下げ、アテロームの形成を抑制する働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19019115

【2】糖尿病ラットの血中グルコース、血中脂質、血漿脂質ペルオキシドおよび血小板凝集活性に対するイソフラボンおよびソヤサポニン(SPE)を含んでいる大豆植物の影響を検討しました。糖尿病ラットは、20週間SPE20 g/kgを含んでいる飼料で育てました。SPE摂取群は非摂取群よりも有意に血中グルコース、アテローム指数、脂質過酸化を低下させました。このことから糖尿病患者のSPEの摂取は、血漿中のグルコース、アテローム性指標、脂質過酸化を抑制する働きがある可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14989898

【3】血栓症、血栓溶解に対するXuesaitong滴薬(総サポニン : XDP)の作用および機序について調べました。XDP 90、30 mg/kgを摂取させたラットは、有意かつ用量依存的様式におけるラットの動静脈シャント・モデルで血栓の湿重量および乾重量を減少させました。XDP 90mg/kg の3日間の胃内投与はラットの電気刺激誘発総頸動脈の血栓症に対して血栓溶解療法の十分な効果が認められました。XDP 80, 40mg/kgは有意に赤血球凝集を減らし、全血血液粘度を減少させました。このことから、サポニンを含むXDPは、抗血栓作用を有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17432152

【4】アカシアの索から分離されるサポニンをアシル化したアカシアシドAまたはBについての抗菌活性および抗菌作用について調べました。アスペルギルスおよびクラブリアの発生発芽を300μg/ml、チフス菌、緑膿菌は700μg/mlで発育を抑制しました。このことから、細菌および真菌に対するサポニンの阻害作用は、それぞれ別のメカニズムであることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15951137

【5】サポニンはマウスのオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)活性のプロラクチン様作用を示すことが分かりました。ODCの用量反応活性化は、サポニン濃度2~10 μg/mlで観察されました。さらに、サポニンは脂質のプロラクチン放出因子の刺激およびカゼイン合成を阻害することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1478613

【6】マウス肝および脳を摘出しホモジネートし、そこへサポニン成分を添加して、ホモジネート中のTBARS(チオバルビツール成生物:脂質過酸化のマーカー)について調べました。サポニン添加により、TBARSは、濃度依存的に減少したことが明らかとなりました。このことから、サポニン抽出物は脂質過酸化抑制作用があることがわかりました。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110001866603

【7】ハナスゲAnemarrhena asphodeloides BUNGE (Liliaceae)の根茎の知母は,煩熱,口渇,肺熱,燥咳,消渇及び潮熱などの症状に対して解熱,鎮静,消炎,利尿,鎮咳,止潟などを目的として種々の漢方方剤に配合して用いられています。知母の成分としては,現在までに,10種のサポニン,mangiferin,多糖類及び数種のフェノール性成分等の存在が知られています。これらの成分のうち,サポニンのtimosaponin B-II及びキサントンのMangifeerin は量的にも比較的多く含まれており,その薬理作用としてはtimosaponin B-II に血糖降下作用が,またMangifeerinに胆汁うっ滞改善作用、慢性気管支炎改善作用があることが知られています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110008908458

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参考文献

・中嶋洋子 栄養の教科書 新星出版社

・本多 京子 フーズ・メディカ食の医学館 小学館

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・松本 欣三、Huong Nguyen Thi Thu 、笠井 良次、山崎 和男、渡辺 裕司 (1998) “マウス肝及び脳ホモジェネートの脂質過酸化反応に対するベトナム人参サポニン画分及びその成分の影響” 和漢医薬学会大会要旨集 15, 137, 1998-08-12

・木津 治久、山本 勝、島名 英輝、富森 毅 (1993) “ハナスゲ根茎中のTimosaponin B-II及びMangiferin含量の季節変化” 生薬学雑誌 47(4), 426-428, 1993-12-20

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・Zhao HL, Harding SV, Marinangeli CP, Kim YS, Jones PJ. (2008) “Hypocholesterolemic and anti-obesity effects of saponins from Platycodon grandiflorum in hamsters fed atherogenic diets.” J Food Sci. 2008 Oct;73(8):H195-200.

・Yin XZ, Quan JS, Takemichi K, Makoto T. (2004) “[Anti-atherosclerotic effect of soybean isofalvones and soyasaponins in diabetic rats].” Zhonghua Yu Fang Yi Xue Za Zhi. 2004 Jan;38(1):26-8.

・Chen YH, Zhang SF, Sun JN, Wu JY, Jia ZH. (2007) “[Effect of Xuesaitong drop pills on experimerntal thrombosis and thrombolysis in rats].” Zhongguo Zhong Yao Za Zhi. 2007 Feb;32(3):253-6.

・Mandal P, Sinha Babu SP, Mandal NC. (2005) “Antimicrobial activity of saponins from Acacia auriculiformis.” Fitoterapia. 2005 Jul;76(5):462-5.

・Koduri PB, Rillema JA. (1992) “Saponin effects of prolactin-like stimulation of ornithine decarboxylase activity in mouse mammary gland explants.” Horm Metab Res. 1992 Dec;24(12):562-4.

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