ホンダワラ

sargassum fulvellum
馬尾藻 神馬藻 タワラモク

ホンダワラはヒジキの仲間で海藻の一種です。古くから食用として珍重され、塩づくりにも利用されてきました。食物繊維やマグネシウムが豊富に含まれているため、整腸やコレステロール値の低下、丈夫な歯の形成などの効果があります。

ホンダワラとは

●基本情報
ホンダワラは、ヒジキの仲間でホンダワラ科ホンダワラ属の海藻の一種です。宮城県から南九州の太平洋岸、新潟県以西の日本海側で生産されます。長さは1~2mほどで葉はへらの形をしています。水深1~3mの岩盤に多く見られます。また、ホンダワラの藻場は「がらも場」といわれ、小動物や魚類のすみかとなっています。日本海に存在するホンダワラ属だけでも50種類以上の品種があるといわれています。

●ホンダワラの歴史
ホンダワラは古代から食用として利用されてきました。アラメやワカメ、ヒジキ、ホンダワラは1万年前の貝塚[※1]からも発見されています。「大宝律令」[※2]に書かれた貢納品にはカジメやアラメなど30種類の海藻が記載されていることからも多くの海藻が古くから食用とされていたことがわかります。縁起物として利用されることも多く、京都府の丹後地方では結婚式にそのままの姿を祝いの汁物に使ったり、豊年の縁起物として正月飾りにはかかせないものとなっていました。これは、ホンダワラは米俵型の気泡を持つことから「ほだわら(穂俵)」と呼ばれており、豊作や子宝に恵まれるよう祈願するために縁起がよいとされていたためです。
また、ホンダワラは塩づくりにも利用されてきました。ホンダワラを海水に浸し、天日で乾かして海水を濃縮し、煮詰めて作ったものは藻塩と呼ばれます。この藻塩を焼く情景が日本に現存する最古の和歌集である「万葉集」にうわれています。この塩づくりは、毎年7月に宮城県の塩竈神社で行われる藻塩焼きの由来だといわれています。

●ホンダワラに含まれる成分と性質
ホンダワラは、食物繊維が多く、他の海藻と比較するとマグネシウムが多い点が特徴的です。同じホンダワラ科のヒジキと比べると100gあたりの含有量は約3倍にもなります。他にもカリウム、カルシウム、ナトリウムなどミネラルが大変豊富に含まれています。食物繊維は腸の環境を整える働きがあり、マグネシウムは、体内で様々な働きをする栄養として必要不可欠な必須ミネラルです。
また、海藻には比較的多いナトリウムの含有量がワカメやコンブ、ヒジキに比べると少ないのも特徴です。

[※1:貝塚とは、古代の人類のゴミ捨て場のうち、当時の人々が捨てた貝殻が積み重なった場所のことです。]
[※2:大宝律令とは、飛鳥時代701年に制定された日本最古の法律です。大宝律令の制定によって、天皇中心の中央集権国家の体制がかたまりました。]

ホンダワラの効果

●腸内環境を整える効果
ホンダワラには食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維には腸内の環境を整える効果があります。
ホンダワラに含まれる水溶性食物繊維は、水に溶けてゲル化[※3]し、余分な物質の吸収を妨げて便として排泄させる働きがあります。体内に不要物を体に溜め込んでおくと、肥満や肌荒れなどにもつながっていきます。腸は「体の根っこ」といわれ、腸をきれいにしておくことで体も軽くなり、栄養の吸収もよくなるといわれています。

●コレステロール値を下げる効果
ホンダワラに含まれる水溶性食物繊維には、コレステロール値を低下させる効果があります。水溶性食物繊維は、コレステロールを材料にしてつくられる胆汁酸[※4]の排泄を促進する働きがあるため、コレステロール値を下げる効果があるといえます。

●丈夫な骨をつくる効果
ホンダワラに豊富に含まれるマグネシウムには、丈夫な骨をつくる効果があります。マグネシウムは、人間に必要な必須ミネラルのひとつです。カルシウムやリンとともに骨や歯の発育や強化に重要な役割を担っています。マグネシウムは骨の中に存在し、弾力性を与え、しなやかな骨の維持に役立っています。
また、マグネシウムは体内でカルシウムと協力して働きます。マグネシウムは、骨や歯にカルシウムがしっかりと行き届くように調節しているため、カルシウムの摂取量が増えるとマグネシウムの必要量も増えます。体内のマグネシウムとカルシウムのバランスを保つことで、丈夫な骨や歯をつくることができます。【4】

●高血圧を予防する効果
マグネシウムは、動脈を弛緩させて血圧を下げる働きがあり、高血圧を予防する効果があります。反対に、カルシウムやナトリウムは動脈を収縮させて血圧を上げる働きがあり、これらの量が過剰になると高血圧につながります。マグネシウムは細胞内のカルシウムやナトリウムの量を調節し、正常な血圧の維持や血液の循環を保つ効果があります。【2】

●心疾患を予防する効果
マグネシウムは血液中のカルシウムの量を調節し、筋肉の収縮をスムーズにする効果があります。
筋肉の収縮は、筋肉細胞の中にカルシウムが流れ込んで刺激を与え、緊張が高まることによって起こります。マグネシウムはこのカルシウムの動きを必要に応じて抑え、調節する働きを持ちます。このため、マグネシウム不足によって必要以上に細胞内のカルシウムが増加すると、筋肉の収縮がうまくいかず痙攣や震えなどが起こり、心臓が規則正しく拍動できないといった症状が起こります。筋肉の痙攣が血管壁で起こると、狭心症や心筋梗塞[※5]の危険性も高まります。さらに、マグネシウムに対してカルシウムの摂取が高まるほど、心臓発作による死亡率が高いことがわかっています。【1】

[※3:ゲル化とは、ヌルヌルとした粘性が凝固したもののことです。]
​[※4:胆汁酸とは、胆汁に含まれている物質です。消化管内で食物の脂肪や脂溶性ビタミンをより吸収しやすくする働きをします。]
[※5:心筋梗塞とは、心臓を養っている動脈に血栓ができることによって血管が詰まり、発生する病気です。]

ホンダワラはこんな方におすすめ

○腸内環境を整えたい方
○便秘でお悩みの方
○コレステロール値が気になる方
○骨や歯を強くしたい方
○血圧が高い方

ホンダワラの研究情報

【1】ホンダワラには血栓溶解作用を持つ成分POGGが含まれていることが確認できました。ホンダワラは心筋梗塞や動脈硬化、循環器系疾患の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19597573

【2】ホンダワラの熱水抽出物、エタノール抽出物には、抗炎症作用、解熱鎮痛作用があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18079077

【3】高血圧患者に対するマグネシウムの研究(20件、1220名)において、マグネシウムを1日あたり10~40mmol 、3~24週間摂取したところ、収縮期血圧、拡張期血圧の低下がみられました。ホンダワラはマグネシウムを豊富に含むことから、高血圧予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12160191

【4】8~14歳の女性120名において、マグネシウムを1日当たり300mg 、12ヶ月間摂取させたところ股関節の骨密度が増加しました。ホンダワラはマグネシウムを豊富に含むことから、骨の健康に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17018656

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参考文献

・秋庭隆 FOOD’S FOOD 食材図典 小学館

・河村眞也 野田正司 原口健司 丹後地域水産資源の利用に関する研究 京都府中小企業技術センター技報

・アカモクとホンダワラ 京都府水産事務所

・桐村ます美 海藻(ホンダワラ)の食用利用に関する一考察 京都短期大学大学紀要

・新崎盛敏・新崎輝子 海藻のはなし 東海大学出版会

・Wu W, Hasumi K, Peng H, Hu X, Wang X, Bao B. (1994) “ibrinolytic compounds isolated from a brown alga, Sargassum fulvellum.” Mar Drugs. 2009 Apr 9;7(2):85-94.

・Kang JY, Khan MN, Park NH, Cho JY, Lee MC, Fujii H, Hong YK. (2008) “Antipyretic, analgesic, and anti-inflammatory activities of the seaweed Sargassum fulvellum and Sargassum thunbergii in mice.” J Ethnopharmacol. 2008 Feb 28;116(1):187-90.

・Jee SH, Miller ER 3rd, Guallar E, Singh VK, Appel LJ, Klag MJ. (2002) “The effect of magnesium supplementation on blood pressure: a meta-analysis of randomized clinical trials.” Am J Hypertens. 2002 Aug;15(8):691-6.

・Dimai HP, Porta S, Wirnsberger G, Lindschinger M, Pamperl I, Dobnig H, Wilders-Truschnig M, Lau KH. (1998) “Daily oral magnesium supplementation suppresses bone turnover in young adult males.” J Clin Endocrinol Metab. 1998 Aug;83(8):2742-8.   

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