ベルガモット

bergamot
citrus bergamia

ベルガモットはイタリアが原産地のミカン科の植物です。ベルガモットから採れる精油は、アロマテラピーや香水、紅茶の香りづけとしても利用されています。甘い柑橘系の香りをしており、ストレスをやわらげる効果や体を温める効果があります。

ベルガモットとは

●基本情報
ベルガモットはイタリア南部のカラブリア地方が原産地のミカン科の植物です。サワーオレンジとレモンまたはライムを交配させてできたものとされています。実はレモンほどの大きさをしており、果皮から採れる精油[※1]はやや緑色をしています。ベルガモットの名前は、最初に栽培された地域が北イタリアにあるベルガモという小さな都市だったことから名付けられました。
現在では、イタリアやコートジボワール、ギニアなどが主産地です。

●ベルガモットの成分と働き
ベルガモットには、酢酸リナリル、リモネン、リナロールなどが含まれています。精油として使われることが多く、オイルは圧搾法により果皮から抽出されます。甘い柑橘系の香りをしており、ストレスをやわらげる働きや体を温める働きがあります。

●ベルガモットの利用法
・アロマテラピー
アロマテラピーをはじめとする芳香療法はフランスで盛んになりました。1875年に医学雑誌で初めて香料の治癒力があることが取り上げられました。その中でイギリス人のW.S.ワトソンは、心の病には香りが効果的であり、ベルガモットやレモンには勇気と決断力を与える効果があると述べています。
ベルガモットは主に精油を入浴や足浴、芳香浴で使用します。入浴や足浴で用いる際には、精油を少量たらして使用します。入れすぎると刺激が強く、肌が赤くなったり、ヒリヒリしたりすることがあるため注意が必要です。

・香水
ベルガモットの香りの中心となる成分はリモネンです。香水に利用すると高級感が出ることで知られています。また、香水以外では高級化粧品の香りにも用いられています。

・フレーバーティーの香りづけ
ベルガモットはフレーバーティーのひとつであるアールグレイの香りづけに使われています。アールグレイは、イギリスの外交官であるグレイ伯爵が中国に赴任した際、お茶に香りをつける技術を身につけ、イギリスに持ち帰ったのが始まりとされています。スッとする香りが特徴です。

●ベルガモットを使用する際の注意点
ベルガモットの精油を皮膚に塗布した場合、皮膚が日光に過敏になる可能性があります。これは、ベルガモットに含まれるベルガプテンという成分が日光にあたると強い日焼けを起こしてしまうためです。そのため、ベルガモットを使用した後、すぐに強い日光に当たることは避ける必要があります。

<豆知識>ハーブティーのベルガモット
香料に利用されるベルガモットの他に、ハーブティーとして利用されるベルガモットがあります。こちらのベルガモットはシソ科ヤグルマハッカ属のハーブで、タイマツバナやビーバーム、モナルダとも呼ばれます。葉の香りが香料に利用されるベルガモットとよく似ているためベルガモットと呼ばれています。全草から水蒸気蒸溜法で抽出される精油は、淡黄色でベルガモットの精油にミントの香りがミックスされたような香りです。

[※1:精油とは、植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などから抽出した有効成分を高濃度に含有した100%天然の揮発性の芳香物質です。各植物によって特有の香りと機能をもち、アロマテラピーに利用されています。]

ベルガモットの効果

●ストレスをやわらげる効果
ベルガモットはストレスをやわらげ、心をリフレッシュさせる効果があります。ベルガモットに含まれる酢酸リナリルには神経バランスを整え、心を落ち着かせる働きがあります。そのため、ストレスが原因で生じた食欲不振や消化不良などの症状などに使われることもあります。
また、禁煙のための香りとしても知られています。これはタバコを吸ってしまう原因となるストレスを、ベルガモットの香りが緩和させるため間接的に禁煙の効果が得られると考えられます。【1】【2】

●不眠を解消する効果
ベルガモットは不安や抑うつを伴う不眠を解消する効果も期待できます。ベルガモットの甘い柑橘系の香りは気分を明るくし、心をリフレッシュさせます。就寝前に芳香浴を行ったり、入浴時に用いたりすることで睡眠を促してくれます。【2】

●下痢や膀胱炎の症状を緩和する効果
ベルガモットには、体を温める働きがあります。これは、ベルガモットに含まれるリモネンには血流を増加させ、腸のぜん動運動[※2]を助ける働きがあるためです。そのため、膀胱炎や下痢などの症状に使われることがあります。ベルガモットが体を温め、さらに不快感やストレスも解消する効果もあることから、症状緩和に大変効果的です。

●冷えを改善する効果
冷えの主な原因はストレス・食生活・運動不足だといわれています。これらの3つの要因が重なり合い、症状となって表れます。ベルガモットに含まれるリモネンには血流を増加させ、血液循環を高めることが知られています。また、ベルガモットにはストレスをやわらげる効果もあるため、ベルガモットの精油を1~2滴たらして入浴や足浴をすることで冷えの改善が期待できます。

●抗菌効果
ベルガモットには抗菌作用があります。料理を作る際、食品を長持ちさせるためにハーブを用いるのはハーブの中に含まれる精油が抗菌作用や防腐剤の役割をするためです。特にベルガモットは、大腸菌[※3]や枯草菌[※4]などの病原体に対して抗菌力を発揮します。フランスのアロマテラピーでは、精油の抗菌効果利用し、抗生物質などの薬の代わりに精油を使った治療も行われています。【3】【4】

[※2:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]
[※3:大腸菌とは、人間や動物の腸内に存在し、増えすぎることで下痢などの症状を引き起こす細菌のことです。]
[※4:枯草菌とは、土壌中や空気中に存在する細菌のことです。ヒトに対する病原性を持っていませんが、呼吸器感染症、食中毒、眼感染症をごく稀に引き起こします。]

ベルガモットはこんな方におすすめ

○ストレスをやわらげたい方
○心を落ち着かせたい方
○睡眠でお悩みの方(不眠でお悩みの方)
○冷え症の方

ベルガモットの研究情報

【1】健康成人8名(男性4名、女性4名)を対象として、4種類の香料(ペパーミント、ベルガモット、ラベンダー、サンダルウッド)および対照(空気)を用いました。脳波解析には非線形解析を用い、心理テストおよび脳波測定にて香りよる生理学的変化を検討しました。内田-クレペリン作業負荷後に心理テスト→香り刺激→脳波測定→嗜好テストをおこないました。この結果、ベルガモット、ラベンダーにより不安傾向が緩和したことから、ベルガモットは抗不安作用を持つと考えられています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001080292

【2】8名の健常成人を対象として、 4種類の香り(ペパーミント, ベルガモット, ラベンダー, サンダルウッド)とコントロールとして空気にさらしました。内田・クレッペリンテストを用いたストレス負荷に対する香りの効果を、脳波を用いて検討しました。被験者にはストレス負荷後の香り刺激において, コントロールでδとθ帯域の振幅が増加しましたが、他の香りでは徐波の増加はありませんでした。これらの結果から、ベルガモットの香り刺激はストレス負荷後の覚醒度の低下を防ぐ効果のあることが示唆されました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001095352

【3】MRSAやVREのもとになる細菌(黄色ブドウ球菌、腸球菌)を対象に、エッセンシャルオイル(オレンジ、ベルガモットの混合)を添加したところ、バイオフィルムの形成が減少したことが分かりました。ベルガモットは、抗菌作用があることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22153952

【4】最近の研究で、ティー・ツリー、ベルガモット、ラベンダーなどが、抗細菌作用、抗真菌作用を有することが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22133088

【5】タイム、クローブ、ローズ、ベルガモット、フェンネル、ユーカリの混合物を炎症性関連酵素COX-2が発現する細胞(LPSによって誘発)に加えたところ、COX-2の発現を抑制することが分かりました。ベルガモットを含む混合物は、炎症を抑制する働きがあることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19578162

【6】ベルガモットの成分を調べた結果、ベルガプテンとシトロプテンに炎症性物質であるIL-8が緩和されたことから、ベルガモットには抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21496221

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参考文献

・三上杏平 カラーグラフで読む精油の機能と効用  フレグランスジャーナル社

・海老塚豊 医薬品天然物化学 南江堂

・田部井満男 ハーブスパイス館 小学館

・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦、石川広己、東洋彰宏

・健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 株式会社同文書院

・林真一郎 アロマテラピーの事典 東京堂出版

・ワンダー・セラー 高山林太郎訳 アロマテラピーのための84の精油 フレグランスジャーナル社

・エドウィン・T・モリス FRAGRANCE 求龍堂

・竹澤 健司、木村 真人、森 隆夫、遠藤 俊吉 (2002) “長時間単純作業のストレス負荷に対する香り効果の脳波変化;カオス理論に基づく非線形解析を用いた検討” Journal of International Society of Life Information Science 20(2), 721-731, 2002-09

・木村 真人、森 隆夫、鈴木 博子、遠藤 俊吉、河野 貴美子 (2001) “長時間単純作業のストレス負荷に対する香り効果の脳波変化” Journal of International Society of Life Information Science 19(2), 271-278, 2001-09-01

・Laird K, Armitage D, Phillips C. (2012) “Reduction of surface contamination and biofilms of Enterococcus sp. and Staphylococcus aureus using a citrus-based vapour.” J Hosp Infect. 2012 Jan;80(1):61-6. doi: 10.1016/j.jhin.2011.04.008. Epub 2011 Dec 6.

・Laird K, Phillips C. (2012) “Vapour phase: a potential future use for essential oils as antimicrobials?” Lett Appl Microbiol. 2012 Mar;54(3):169-74. doi: 10.1111/j.1472-765X.2011.03190.x. Epub 2012 Jan 6.

・Hotta M, Nakata R, Katsukawa M, Hori K, Takahashi S, Inoue H. (2010) “Carvacrol, a component of thyme oil, activates PPARalpha and gamma and suppresses COX-2 expression.” J Lipid Res. 2010 Jan;51(1):132-9. doi: 10.1194/jlr.M900255-JLR200.

・Borgatti M, Mancini I, Bianchi N, Guerrini A, Lampronti I, Rossi D, Sacchetti G, Gambari R. (2011) “Bergamot (Citrus bergamia Risso) fruit extracts and identified components alter expression of interleukin 8 gene in cystic fibrosis bronchial epithelial cell lines.” BMC Biochem. 2011 Apr 15;12:15. doi: 10.1186/1471-2091-12-15.

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