クロマメノキ

bog bilberry
黒豆の木 アサマブドウ
Vaccinium uliginosum

クロマメノキは合弁花類ツツジ科の植物です。ポリフェノールの一種であるアントシアニンやケルセチン、ミリセチンなどを含んでおり、これらの成分は抗酸化作用があります。そのため黄斑変性症の予防や肌の調子を整えたり下痢の改善といった効果が期待できます。

クロマメノキとは?

●基本情報
クロマメノキとは、合弁花類ツツジ科の多年草低木植物です。高さ15~50cmほどの大きさで荒れ地や泥炭地などの湿地を好み、沼地や水際の森などでたくさん実をつけます。葉は丸みを帯び、表面は青みがかった緑色、裏面は黄緑色をしています。5月~6月にかけて開花し、花は白く、1~3つほどまとまった房をしています。果実は8~12mmの先端が少し尖った球状で、果実は灰色っぽい青色をしており、マイルドな味です。
また、日本ではNPO法人野生動物調査協会とNPO法人 Envision環境保全事務所により岩手県で準絶滅危惧種に指定され、新潟県では地域個体群[※1]に指定されています。

●クロマメノキの歴史
クロマメノキは古来より中国では健康酒として飲まれてきました。クロマメノキが健康維持や予防のために使われ始めたのは、中世ドイツの修道院長であったセイントヒルドガードという女性がクロマメノキの果実を女性特有の病気に関わる薬としてすすめたことがきっかけでした。現在では眼病予防や下痢や血流の改善にも効果があると注目されています。

●クロマメノキの利用法
クロマメノキは生の果実のまま食べることができます。また、オートミールと牛乳を混ぜてつくるポリッジやスープ、ジュース、ジャムなどにも使用されます。クロマメノキはマイルドな味わいをしているため他の香りの強い果実を混ぜてもおいしくいただけます。保存する際は一般的に冷凍保存されます。

●クロマメノキに含まれる成分と性質
クロマメノキにはポリフェノールの一種であるアントシアニンケルセチン、天然フラボノイドの一種であるミリセチン、炎症・下痢に効果を発揮するタンニンを豊富に含んでいます。アントシアニンやケルセチン、ミリセチンには抗酸化作用[※2]があり、体内に発生した活性酸素を除去する働きがあります。

[※1:地域個体群とは、ある一定範囲に生育・生息する生物一種の個体のまとまりのことです。]
[※2:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]

クロマメノキの効果

クロマメノキには、アントシアニンやケルセチン、ミリセチンなどが含まれているため、以下のような効果が期待できます。

●眼病を予防する効果
クロマメノキには黄斑変性症を予防する効果が期待できます。黄斑変性症とは目の黄斑部が加齢などによって変性し、ゆがみや視野狭窄が起こり、放置しておくと最悪失明にもつながる病気のことです。アメリカでの失明率第1位の病気ともいわれています。この黄斑変性症の原因物質のひとつとしてA2Eという視サイクルの代謝産物が深く関わっていると考えられています。クロマメノキは網膜色素上皮細胞でのA2Eの蓄積や酸化を阻害・抑制する働きがあります。これらの働きにより、クロマメノキには黄斑変性症を予防する効果があるといえます。
また、クロマメノキにはその抗酸化力[※3]から糖尿病網膜症[※4]など他の眼病予防にも効果が期待できます。【1】

●肌の調子を整える効果
クロマメノキには肌の調子を整える効果があります。クロマメノキは抗酸化作用を持っているため、活性酸素を除去する働きがあります。活性酸素は紫外線や喫煙、ストレスなどが原因で発生します。体内で過度に発生すると、脂質たんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。クロマメノキはこの活性酸素を抑制し、肌の老化を予防します。また、メラニン細胞におけるメラニンの生成を抑制したり、コラーゲンの分解を抑制させるといった働きもあるため、美白効果やシワの改善にも効果が期待できます。【4】

●下痢を予防する効果
クロマメノキには下痢を改善し、楽にする効果があります。クロマメノキに含まれるタンニンには、たんぱく質を変性させることにより組織や血管を縮める、収れん作用[※5]があります。この収れん作用によりクロマメノキには下痢を改善する効果があるといわれています。【3】

●血流を改善する効果
クロマメノキには血流を改善する効果があります。クロマメノキに含まれるケルセチンには抗酸化作用があります。この働きにより活性酸素によるダメージを防ぎ、血流を改善するします。 血管を流れる赤血球[※6]は、健康な状態であれば、自由に変形することで細い血管の中であっても正常に流れ、体のすみずみまで酸素を運んでくれます。しかし、活性酸素によって赤血球がダメージを受けると、柔軟性を失い、細い血管を通りにくくなるため、血流が滞ってしまいます。ケルセチンは、この活性酸素によるダメージを防ぎ、赤血球の働きを活発にさせる効果があります。さらに、血管や血液の健康を保つケルセチンには、血圧の上昇を抑える効果もあるといわれています。【2】

[※3:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※4:糖尿病網膜症とは、血糖値が高い状態が長期間続くことが原因となって、網膜の毛細血管が細く、もろくなる目の病気のことです。その結果、眼底出血や硝子体出血を起こしたりします。]
[※5:収れん作用とは、縮こませたり、引き締めたりする働きを指します。]
[※6:赤血球とは、動物の血液を構成する血球で、形は両面中央がややへこんだ円盤の形状をしています。赤い色はヘモグロビンによるもので、主に酸素を運搬する働きがあります。]

クロマメノキはこんな方におすすめ

○眼病を予防・改善したい方
○美肌を目指したい方
○肌のハリや弾力を保ちたい方
○下痢になりやすい方
○血流を改善したい方

クロマメノキの研究情報

【1】クロマメノキ抽出物および分画物がリポフスチンA2Eの酸化を抑制することにより、網膜色素上皮細胞の死滅を抑制し、黄斑変性症を抑制する可能性が考えられました。
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2013522188

【2】ケルセチンは野菜と果実、茶やワインに多く含まれており、高い抗酸化力を持っており、骨粗しょう症予防や抗がん作用、循環器系疾患の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18417116

【3】ヒトの腸の細胞に生薬の五倍子の有効成分タンニンを投与すると、下痢症状が抑制されました。マウスを用いた試験においても、コレラ毒素による下痢症状が抑制されたことから、タンニンには下痢抑制効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20225391

【4】クロマメノキ抽出物は、紫外線誘発皮膚活性酸素発生を消去し、また、チロシナーゼを阻害することのよるメラニン生成を抑える働きがあることが分かりました。プロコラーゲン生成促進能もあることが分かりました。
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2008526956

【5】アトピー性皮膚炎モデルマウスにクロマメノキ由来ポリフェノール、アントシアニンを経口投与した結果、IgE、IgG1を低下させ、脾臓中のインターロイキン-4、13(IL-4、IL13)及びIFN-γ等の炎症性サイトカインを抑制しました。また、組織学的検証の結果、明らかに炎症性細胞が減少していたことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23133493

【6】すりつぶしたクロマメノキを4.8g/kg(日)4週間にわたって飲用させたウサギへ光誘発網膜障害を引き起こしました。その結果、クロマメノキを飲用していないウサギに比べて網膜電位図(ERG)は、有意に高く検出され、外顆粒層(ONL)は厚い状態を保っていることが分かりました。また、光誘発網膜障害を行った後にクロマメノキを飲用させてもERGおよびONLの改善がみとめられたことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22457142

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参考文献

・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦、石川広己、東洋彰宏
健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 株式会社同文書院

・日本のレッドデータ検索システム

・チョウン・ス−ヨン、 チョウン・セ−ヨン (2013) “クロマメノキ抽出物またはクロマメノキ分画物を有効成分として含む黄斑変性症の治療、予防または改善用組成物” 特許番号:2013-522188

・Boots AW, Haenen GR, Bast A. (2008) “Health effects of quercetin: from antioxidant to nutraceutical.” Eur J Pharmacol. 2008 May 13;585(2-3):325-37. doi: 10.1016/j.ejphar.2008.03.008. Epub 2008 Mar 18.

・Wongsamitkul N, Sirianant L, Muanprasat C, Chatsudthipong V. (2010) “A plant-derived hydrolysable tannin inhibits CFTR chloride channel: a potential treatment of diarrhea.” Pharm Res. 2010 Mar;27(3):490-7.

・チュンセヤン (2008) “クロマメノキの抽出物を含有する、サイトカインの分泌に起因する皮膚の色素沈着およびシワ防止用の組成物とサイトカイン生成抑制剤” 特許番号:2008-526956

・Kim MJ, Choung SY. (2012) “Mixture of Polyphenols and Anthocyanins from Vaccinium uliginosum L. Alleviates DNCB-Induced Atopic Dermatitis in NC/Nga Mice.” Evid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:461989. doi: 10.1155/2012/461989. Epub 2012 Oct 23.

・Yin L, Pi YL, Zhang MN. (2012) “The effect of Vaccinium uliginosum on rabbit retinal structure and light-induced function damage.” Chin J Integr Med. 2012 Apr;18(4):299-303. doi: 10.1007/s11655-011-0901-1. Epub 2012 Mar 30.

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