クロロゲン酸

chlorogenic acid

クロロゲン酸とはポリフェノールの一種で、主にコーヒー豆やじゃがいも等に含まれる成分です。抗酸化作用のほか、脂肪の蓄積を抑える効果などが知られており、糖尿病や肥満の予防のためのサプリメントなどに利用されています。

クロロゲン酸とは

●基本情報
ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸は、主にコーヒー豆に多く含まれている成分です。
特にコーヒー豆にはクロロゲン酸が豊富に含まれており、コーヒーの健康成分であるカフェインと並んで注目されている成分です。

●クロロゲン酸の歴史
クロロゲン酸はコーヒー豆から初めて単離されたという歴史があります。
クロロゲン酸はコーヒーの渋味や苦味といった雑味の原因物質とされていましたが、ドイツの製薬会社によってクロロゲン酸が持つ様々な効能が明らかにされ、その後糖尿病や肥満の予防のための素材として利用されるようになりました。

●クロロゲン酸の働き
ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸は、抗酸化作用[※1]が強いことで知られています。
傷や紫外線などにさらされると、活性酸素[※2]が生じることによって組織が傷ついてしまいます。油や鉄が酸素にさらされて、酸化する・サビつくこととよく似た現象です。
クロロゲン酸が持つ抗酸化作用によって、植物はこのようなダメージから身を守ることができるのです。
また、近年ではクロロゲン酸が脂肪の蓄積を抑える働きに注目が集まっており、ダイエット時のサポート食品の素材などとして利用されています。

[※1:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]

クロロゲン酸の効果

●脂肪肝を予防する効果
クロロゲン酸には、中性脂肪の蓄積による脂肪肝を予防する効果あります。
脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が溜まった状態を表します。メタボリックシンドローム[※3]にもつながるといわれており、放置すると肝炎[※4]などを引き起こす可能性が高くなります。
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ってしまうと、余分なエネルギーはグリコーゲンや中性脂肪につくり替えられ、体に蓄積されます。中性脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪として蓄積されるほか、肝臓にも貯蔵されます。肝細胞の30%以上に中性脂肪が貯まると脂肪肝と診断されます。
脂肪肝はメタボリックシンドロームを合併するケースが多く、動脈硬化の原因にもなります。糖尿病を合併するケースもあるといわれています。
初期にはほとんど症状はありませんが、やがて肝炎を起こし、肝硬変[※5]に進行することもあります。クロロゲン酸は、このような肝臓の病気につながる脂肪肝を予防する効果があるといわれています。【1】【2】

●糖尿病を予防する効果
クロロゲン酸には、糖新生[※6]を抑えることによって、糖尿病を予防する効果があります。
肥満や運動不足などの不規則な生活習慣によって血糖値[※7]が正常に保てなくなると、糖尿病が引き起こされます。
糖尿病が悪化すると、全身の血管や神経などに悪影響を及ぼし、やがて合併症や動脈硬化を引き起こしてしまいます。
食事で摂り入れた糖質が体内に吸収されると、血糖値の急激な上昇を抑えるために、インスリンという血糖値を正常に保つホルモンが分泌されます。しかし、糖尿病になると、インスリンの分泌が遅れるため、血液中のブドウ糖が正しく処理されず、食後に血糖値が急激に上昇することがあります。
クロロゲン酸はこのような糖尿病の原因となる糖新生を抑えるため、糖尿病の治療薬の活用に関する研究も進められています。【3】【4】

[※3:メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に高血糖、高血圧、脂質異常症のうち2つ以上を合併した状態をいいます。]
[※4:肝炎とは、肝臓が炎症を起こし、発熱、黄疸、全身倦怠感などの症状をきたす疾患の総称です。]
[※5:肝硬変とは、肝臓が固くなり、本来の機能がきわめて減衰した状態のことです。]
[※6:糖新生とは、乳酸や糖原性アミノ酸を原料として動物が体内で糖(グルコース)を合成することです。]
[※7:血糖値とは、血液中にブドウ糖がどれくらいあるのかを示すものです。ブドウ糖が血液中にあふれてしまうと血糖値が高くなります。]

クロロゲン酸は食事やサプリメントで摂取できます

クロロゲン酸を含む食品

○コーヒー豆
さつまいも
じゃがいも
りんご
ごぼう

こんな方におすすめ

○肥満を防ぎたい方
○スリムな体型を目指したい方
○生活習慣病を予防したい方
○肝臓の健康を保ちたい方
○糖尿病を予防したい方

コーヒー豆とカップに入ったコーヒー

クロロゲン酸の研究情報

【1】高コレステロール血症マウスを対象に、クロロゲン酸を1日あたり1mg/kgまたは10mg/kg の量で28日間摂取させたところ、血中コレステロールやLDLコレステロール、動脈硬化や心血管リスクの増加やHDLコレステロールの減少という高脂血症の諸症状が緩和されたことから、クロロゲン酸は心血管保護作用ならびに肝臓保護作用を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22674675

【2】四塩化炭素誘発肝障害ラットを対象に、クロロゲン酸を投与したところ、四塩化炭素による肝臓障害と肝線維症の症状が減少し、コラーゲンや筋肉アクチンの発現増加が確認されました。肝障害による炎症物質NF-κBやTNF-α、IL-6, IL-1βの増加が抑制されたことから、クロロゲン酸が肝臓保護作用を持つことが期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23146752

【3】マウスを対象に、クロロゲン酸を250mg/kg の量を腹腔内投与したところ、空腹時血糖値の低下が投与10分後~30分後まで継続しました。クロロゲン酸はグルコース取込物質GLUT4 を介した筋肉へのブドウ糖取込を促進することから、クロロゲン酸に糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22412912

【4】糖尿病ラットにクロロゲン酸を投与すると、空腹時血糖値や過酸化脂質の増加ならびに抗酸化酵素SODやグルタチオンの低下などの糖尿病症状が緩和されたことから、クロロゲン酸には糖尿病抑制効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20339905

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参考文献

・Wan CW, Wong CN, Pin WK, Wong MH, Kwok CY, Chan RY, Yu PH, Chan SW. 2012 “Chlorogenic Acid Exhibits Cholesterol Lowering and Fatty Liver Attenuating Properties by Up-regulating the Gene Expression of PPAR-α in Hypercholesterolemic Rats Induced with a High-Cholesterol Diet.” Phytother Res. 2012 Jun 6. doi: 10.1002/ptr.4751.

・Shi H, Dong L, Jiang J, Zhao J, Zhao G, Dang X, Lu X, Jia M. 2012 “Chlorogenic acid reduces liver inflammation and fibrosis through inhibition of toll-like receptor 4 signaling pathway.” Toxicology. 2012 Nov 9. pii: S0300-483X(12)00381-2.

・Ong KW, Hsu A, Tan BK. 2012 “Chlorogenic acid stimulates glucose transport in skeletal muscle via AMPK activation: a contributor to the beneficial effects of coffee on diabetes.” PLoS One. 2012;7(3):e32718. Epub 2012 Mar 7.

・Pari L, Karthikesan K, Menon VP. 2010 “Comparative and combined effect of chlorogenic acid and tetrahydrocurcumin on antioxidant disparities in chemical induced experimental diabetes.” Mol Cell Biochem. 2010 Aug;341(1-2):109-17.

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