コバルト

cobalt

コバルトはミネラルの一種で、ビタミンB12の構成成分です、悪性貧血を予防するほか、神経の機能を正常に保つために役立つ成分です。動物性食品に多く含まれている成分です。

コバルトとは

●基本情報
コバルトは、人間の体を構成するミネラルのうち、栄養素として不可欠な必須ミネラルのひとつです。
コバルトは他のミネラルのように単独では働かず、ビタミンB群の一種であるビタミンB12を構成する成分として存在しています。
人間の体内には約1.5㎎のコバルトが存在しています。ビタミンB12の構成成分となっているコバルトはこのうち15%だといわれており、残りの85%については働きが明らかにされていませんが、酵素の構成成分になるものがあるとわかっています。
また、ビタミンB12は赤色をしていますが、これはビタミンB12に含まれるコバルトが赤色であるためだと考えられます。

●コバルトの歴史
コバルトは、1935年に発見されました。
当時、オーストラリアやカナダで、羊や牛が貧血や筋委縮[※1]を起こし死亡するという病気があり、この病気は牧草地にコバルトが不足していたことにより発生したために発生しました。
のちにコバルトがビタミンB12の構成成分であることが分かり、その働きに注目が集まるようになりました。

●コバルトの働き
コバルトが持つ働きのほとんどがビタミンB12によるものと考えられています。
主に、赤血球[※2]に含まれるヘモグロビン[※3]を生成するほか、神経の機能を正常に保つなどの働きが知られています。

●コバルトを多く含む食品
ミネラルの一種であるコバルトは体内で合成することができないため、食事から補う必要があります。食品から摂取したコバルトは、腸内細菌によってビタミンB12に合成されます。
コバルトは、肉をはじめ、レバー、魚介類、乳製品などビタミンB12を含む食品に含まれています。
特殊な微生物によってしか合成されないため、動物性食品にしか含まれていませんが、納豆やもやしなど、例外としてコバルトが含まれている植物性食品もあります。
このように、コバルトは動物性食品に多く含まれることから、厳格な菜食主義者に不足しがちだといわれています。

●コバルトの欠乏症
コバルトは骨髄で血液をつくる上で必要不可欠な成分であるため、不足すると貧血を引き起こすほか、食欲不振、消化不良、手足のしびれなどの症状が現れることがあります。
また、コバルトは神経の働きを正常に保つ作用があるため、集中力や記憶力が低下する、神経過敏になるといった欠乏症も見られます。
コバルトの過剰症については、現在明らかになっていません。

<豆知識>材料としてのコバルト
コバルトは、磁石の原料のほか、虫歯の治療の際に用いられる合金などに使われる金属です。
コバルトはビタミンB12の中では赤い色となりますが、ガラスに混ぜると青色となり、この色はコバルトブルーといわれます。
この色を活かして、コバルト陶磁器の顔料などとしても使われています。

コバルトの効果

●ビタミンB12と一緒に働き貧血予防
コバルトはビタミンB12と一緒に働き、赤血球の核酸の生成やヘモグロビンの生成に関わっています。そのためコバルトは巨赤芽球性貧血などの悪性貧血の予防に力を発揮します。

●集中力と記憶力を維持
ビタミンB12は神経を正常に保つ働きがあります。コバルトもビタミンB12のこの働きを助け、集中力を高めたり記憶力を維持したりといった働きが知られています。

コバルトは食事やサプリメントで摂取できます

コバルトを多く含む食品

○レバー
○乳製品
○カキ
○ハマグリ
○アサリ
○うなぎ
○干しわらび
○もやし
○納豆

こんな方におすすめ

○貧血でお悩みの方
○集中力や記憶力を向上させたい方

コバルトの研究情報

1】Ⅱ価コバルトは貧血に対する研究が進んでおり、Ⅱ価コバルトを含む塩化コバルトを300mg を摂取した時に、貧血に対する有用性が示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/4641653

【2】心労を受けた高齢者900名 (試験群447名、平均65.92±4.30歳、オーストラリア) を対象に、1日に葉酸400μg、ビタミンB12 100μg を含むサプリメントを2年間摂取させたところ、認知機能の評価  (TICS-M total、TICS-M immediate、TICS-M delayed recall) で改善が認められました。コバルトはビタミンB12を構成するミネラルであることから、認知症予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22170358

参考文献

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・中嶋洋子 栄養の教科書 新星出版社

・中嶋洋子 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・上西一弘 栄養素の通になる第2版 女子栄養大学出版部

・Valberg LS, Sorbie J, Corbett WE, Ludwig J. (2012) “Cobalt test for the detection of iron deficiency anemia.” Ann Intern Med. 1972 Aug;77(2):181-7.

・Walker JG, Batterham PJ, Mackinnon AJ, Jorm AF, Hickie I, Fenech M, Kljakovic M, Crisp D, Christensen H. (2012) “Oral folic acid and vitamin B-12 supplementation to prevent cognitive decline in community-dwelling older adults with depressive symptoms–the Beyond Ageing Project: a randomized controlled trial.” Am J Clin Nutr. 2012 Jan;95(1):194-203.

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