ユーカリ

eucalyptus
ユーカリノキ  tasmanian blue gum

オーストラリアの南東端部とタスマニア島に分布しているフトモモ科の常緑高木です。生長が早いので世界各地で造林用に用いられ、公園などにも植えられています。ユーカリの葉を水蒸気蒸溜して得られる精油成分は、アロマテラピーやのど飴などの食品香料、うがい薬などに利用されています。

ユーカリとは

●基本情報
ユーカリはフトモモ科ユーカリ属の木です。成長がとても早く、原産のオーストラリアでは70mを越える大木になります。和名のユーカリは、学名の英語発音、ユーカリプタスを日本で短縮した略称に由来します。学名の語源は eu-(真に・強く・良く)+ kalyptós(~でおおった)、つまり「良い蓋」を意味するギリシア語をラテン語化したもので、花の蕾がガクと花弁が合着して蓋に覆われていること、または、乾燥地でもよく育ち大地を緑で被うことに由来して命名されたとされています。ユーカリはマラリアが流行する国々で育つ傾向があり、土地の水はけを良くして健康な風土を生み出すことに役立ちます。薬用の「熱の木」として知られており、虫除けや空気の消毒作用もあります。ユーカリの葉は大きくて表面が革のように硬く、ユーカリプとるという揮発性の油分をだす腺を持っています。
ユーカリの葉の精油成分に含まれている成分はシネオールが70%~85%で、他にカンフェン、ピネンなどがあります。ユーカリの精油の多くはアロマテラピー[※1]に利用されています。

●ユーカリの歴史
ユーカリの精油を含有する軟膏は昔からオーストラリア原住民のアボリジニ民族の間で「キノ」と呼ばれ傷や菌が繁殖して炎症している箇所を治す治療薬として使用され、古くからその暮らしに役立てられていました。 アルジェリアの深刻な熱病地域にマラリア対策として植えられ、5年間で空気を無害にしたともいわれています。1788年前後に装飾の用途でヨーロッパに導入され、シドニーペパーミントの名で親しまれています。日本には明治10年ごろに種子が持ち込まれ、大正時代の中頃に、植えれば空気がきれいになるという利点があると言われ、「有加利」の当て字が使われました。現在、産業上有用なことから、世界各地で栽培され、幹は紙の原料や木材として利用されています。

<豆知識>コアラとユーカリ
ユーカリはその葉に毒素を含み、通常は動物の餌として適していません。しかし、コアラはとてもおとなしく、他の動物と戦って食料を確保することもできないので、他の動物が住み着かないユーカリの森に住み、そして他の動物が食べないユーカリの葉を食べるような生態を持つことによって生きのびてきました。

●ユーカリを摂取する際の注意点
ユーカリは強力な精油で、アレルギー反応を起こす人もいるので、精油などの使用に際しては少量で行わなければなりません。また、肌の弱い方、目の周りでの使用は注意が必要です。

[※1:アロマテラピーとは、花や木など植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を用いて、健康増進や美容に役立てていこうとする自然療法です。]

ユーカリの効果

●精神を安定させる効果
ユーカリの葉の精油成分は気持ちや感情の乱れを鎮め、集中力を高める効果があります。

●炎症を抑制する効果
粘膜の炎症を抑制する働きとともに、過剰な粘液を排出する働きがあるので、風邪による喉の痛み、鼻づまり、インフルエンザ、花粉症などに効果があります。また、関節や粘膜の炎症を鎮め、筋肉痛やリウマチの症状をやわらげます。【1】【3】【4】【5】

●抗菌・抗ウイルス効果
ユーカリは殺菌効果が高く、ハウスダストによる空気の汚れなどにも有効とされています。また、ユーカリの葉の精油成分に含まれている成分、シネオールが、優れた抗菌作用で風邪や感染症の予防に役立ちます。【2】

●血行を促進する効果
ユーカリの葉に含まれるシオネールには、血行を促進する作用があり、老廃物をスムーズに排出させます。また、血行を促進し脳内の血流量を増やしたり、筋肉の痛み、肩こり、頭痛などを緩和します。

●口臭を予防する効果
消臭作用に優れていることから、消臭スプレーなどにも利用されています。
またユーカリの優れた殺菌作用は、口臭予防としても役立つといわれています。【7】【8】

●防虫効果
多くのアレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎の原因とされているヒョウヒダニの忌避効果に優れています。ヒョウヒダニは普通の洗剤や石鹸たけでは駆除しにくいので、ユーカリが効果的とされています。【6】

ユーカリは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○心を落ち着かせたい方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○鼻づまりの方
○風邪をひきやすい方
○血流を改善したい方
○口臭を防ぎたい方

ユーカリの研究情報

【1】ユーカリオイルの19の精油成分が同定され、ユーカリオイル全体のうちシトロネラールが85.3%を占めます。ユーカリは、ラットにおけるホルマリン誘発浮腫を抑制するほか、解熱鎮痛作用を持つことがわかり、さらにその効力はレモングラスよりも強いことが確かになったため、ユーカリは抗炎症作用を持っていると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23065287

【2】ユーカリを含む5種類のハーブの精油成分を調べたところ、ユーカリの精油成分が抗菌作用を持つことがわかり、機能性が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21979069

【3】慢性閉塞性肺疾患患者から抽出培養した肺胞マクロファージに、ユーカリの精油を用いたところ、炎症促進物質LPSによるマクロファージからの活性酸素の放出やTNFαの増加が抑制されたことから、ユーカリは抗酸化作用ならびに抗炎症効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20156758

【4】ラットにユーカリ精油を300mg/kg を投与したところ、炎症促進物質LPSによる炎症が緩和されたことから、ユーカリは抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16706025

【5】ラットにユーカリ精油成分を投与したところ、炎症促進物質LPSによる炎症性細胞の浸潤ならびに気管支の炎症度合に緩和が見られたことから、ユーカリは抗炎症作用ならびに消炎鎮痛作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15719688

【6】ユーカリの葉パウダーを処置した小麦では、5か月間の保管期間中虫害から守るはたらきが見られたため、ユーカリは虫害を防ぐ働きが期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9829267

【7】ユーカリに含まれる21種類の精油成分が同定され、ユーカリの精油は2mg/mL の濃度で虫歯の原因菌のひとつであるミュータンス菌の発育を抑制しました。ユーカリはバイオフィルム形成を抑制するはたらきを持つことから、虫歯や口臭予防効果、デンタルケア効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19659716

【8】65名を対象に、ユーカリエキスを90mg 含有するチューインガムを12週間摂取させたところ、プラーク形成や歯周病の指標となる歯肉炎指数(PLA)ならびに出血(BOP)、歯周ポケット(PD)に改善が見られたことから、ユーカリは歯周病予防効果ならびにデンタルケア効果があると期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18672986

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参考文献

・林真一郎 編 メディカルハーブの事典 東京堂出版

・ヴィクトリア・ザック ハーブティーバイブル 東京堂出版

・佐々木 薫 ハーブティー事典 池田書店

・ハーブ・スパイス館 小学館

・ワンダーセラー 著 アロマテラピーのための84の精油 フレグランスジャーナル社

・大槻 真一郎 ハーブ学名語源事典 株式会社東京堂出版

・Gbenou JD, Ahounou JF, Akakpo HB, Laleye A, Yayi E, Gbaguidi F, Baba-Moussa L, Darboux R, Dansou P, Moudachirou M, Kotchoni SO. 2012 “Phytochemical composition of Cymbopogon citratus and Eucalyptus citriodora essential oils and their anti-inflammatory and analgesic properties on Wistar rats.” Mol Biol Rep. 2012 Oct 14. [Epub ahead of print]

・Tsai ML, Lin CC, Lin WC, Yang CH. 2011 “Antimicrobial, antioxidant, and anti-inflammatory activities of essential oils from five selected herbs.” Biosci Biotechnol Biochem. 2011;75(10):1977-83.

・Rantzsch U, Vacca G, Dück R, Gillissen A. 2009 “Anti-inflammatory effects of Myrtol standardized and other essential oils on alveolar macrophages from patients with chronic obstructive pulmonary disease.” Eur J Med Res. 2009 Dec 7;14 Suppl 4:205-9.

・Zhao W, Wang Y, Tang FD, Xu XQ, Yao HY, Zhu YF, Bian RL. 2006 “The expression of TLR4 in rat acute lung injury induced by lipopolysaccharide and the influence of Eucalyptus globulus oil.” Zhongguo Zhong Yao Za Zhi. 2006 Feb;31(4):319-22.

・Lu XQ, Tang FD, Wang Y, Zhao T, Bian RL. 2004 “Effect of Eucalyptus globulus oil on lipopolysaccharide-induced chronic bronchitis and mucin hypersecretion in rats.” Zhongguo Zhong Yao Za Zhi. 2004 Feb;29(2):168-71.

・Modgil R, Samuels R. 1998 “Efficacy of mint and eucalyptus leaves on the physicochemical characteristics of stored wheat against insect infestation.” Nahrung. 1998 Oct;42(5):304-8.

・Rasooli I, Shayegh S, Astaneh S. 2008 “The effect of Mentha spicata and Eucalyptus camaldulensis essential oils on dental biofilm.” Int J Dent Hyg. 2009 Aug;7(3):196-203.

・Nagata H, Inagaki Y, Tanaka M, Ojima M, Kataoka K, Kuboniwa M, Nishida N, Shimizu K, Osawa K, Shizukuishi S. 2008 “Effect of eucalyptus extract chewing gum on periodontal health: a double-masked, randomized trial.” J Periodontol. 2008 Aug;79(8):1378-85.

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