ゲニステイン

genistein

ゲニステインは、主に大豆の胚芽部分に多く含まれている大豆イソフラボンの一種です。
女性ホルモンとよく似た働きや、強い抗酸化作用を持つため、ゲニステインには女性ホルモンの減少によって引き起こされる更年期障害の症状を改善する効果や、生活習慣病を予防する効果があります。

ゲニステインとは?

●基本情報
ゲニステインを含むイソフラボンは、大豆葛(くず)などのマメ科の植物に多く含まれるポリフェノールの一種です。
ポリフェノールは、強い抗酸化作用[※1]があることで知られており、生活習慣やストレスによって増えすぎた活性酸素[※2]を抑え、疲労回復や生活習慣病の予防に役立ちます。
ポリフェノールには、大豆などのマメ科植物に含まれるイソフラボンのほか、ブルーベリーぶどうなどの青紫色の天然色素であるアントシアニン緑茶や紅茶の苦み成分であるカテキン、柑橘類特有の成分であるフラバノン類などがあります。
ゲニステインは、大豆の胚芽部分に多く含まれる大豆イソフラボンの一種で、現在では、ゲニステインやダイゼイン、グリシテインをはじめとする15種類の大豆イソフラボンが発見されています。

●ゲニステインの女性ホルモン様作用
大豆イソフラボンのひとつであるゲニステインは、エストロゲン[※3]という女性ホルモンと似た働きを持つことから「植物性のエストロゲン」と呼ばれています。
エストロゲンは、美しい肌やふくよかな体つきをつくる上で欠かせない女性ホルモンです。
しかし、更年期[※4]を迎えエストロゲンの分泌量が減少すると、体と心に不調が現れるため、エストロゲンと似た働きを持つゲニステインを意識して摂取することが重要となります。

●ゲニステインの抗酸化作用
ゲニステインには、強い抗酸化作用があり、体内で増えすぎた活性酸素を抑え、過酸化脂質[※5]の発生を防ぐ働きがあります。
また、ゲニステインは体内に存在するSOD酵素の働きを活性化させることによって、より強い抗酸化作用を発揮します。

●ゲニステインを含む食品
ゲニステインは大豆イソフラボンの一種であるため、大豆食品から摂取することができます。
大豆そのものを食べることはもちろん、大豆の加工食品からゲニステインを摂取することもできます。
しかし、大豆を加工する間に、ゲニステインなどのイソフラボンが流出・分解するため、食品によって含有量には差があります。
大豆の加工食品には、豆腐や納豆、醤油などがありますが、その中で最もゲニステインなどの大豆イソフラボンの含有量が多いのは、きな粉だといわれています。
きな粉は、大豆を炒ってから皮をむき、ひいた状態のものです。製造工程の中でゲニステインなどのイソフラボンの流出が少ないため、効率良くゲニステインを摂取することができる食品といえます。

●ゲニステインを摂取する上での注意
ゲニステインをはじめとするイソフラボンの1日あたりの目安摂取量は、40~50mgとされています。
ゲニステインは大豆や大豆の加工品に含まれているため、食事から補うこともできますが、サプリメントで補う場合は、1日の上限値が30mgと定められています。
ホルモン剤や抗ガン剤など、婦人科系疾患に関する医薬品を服用している場合、ゲニステインなどのイソフラボンが配合されたサプリメントを摂取する際には、医師への相談が必要となります。
また、大豆アレルギーを持つ方の場合、ゲニステインをはじめとする大豆由来のイソフラボンを摂取すると、アレルギーを引き起こす可能性があります。
妊娠中や授乳中の方は、ホルモンバランスに影響を与える可能性があるため、ゲニステインなどのイソフラボンが配合されているサプリメントの摂取は避けるべきだといわれています。

[※1:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※3:エストロゲンとは、女性ホルモンの一種で、卵胞や黄体から分泌される女性らしい体つきを促進するホルモンのことです。]
[※4:更年期とは、閉経年齢の前後約10年間を表します。平均的な閉経年齢は50歳前後といわれているため、40~60歳前後の期間が更年期にあたります。]
[※5:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]

ゲニステインの効果

●更年期障害の症状を改善する効果
女性は、年齢とともに卵巣の機能が衰え、エストロゲンの分泌が減少することによって、様々な不快症状が現れる更年期障害が引き起こされます。
更年期障害の主な症状として、顔のほてりやのぼせ、発汗、肩こり、頭痛などの身体的な症状に加えて、イライラ、不安、憂鬱など、精神的な症状も見られます。
また、無理なダイエットやストレス、喫煙、睡眠不足などの生活習慣が原因でエストロゲンの分泌が減少するといわれているため、若い女性の場合でも、更年期障害に似た症状が現れることがあります。
イソフラボンは、エストロゲンの分泌を促し、更年期障害の症状を改善する効果があります。

また、イソフラボンがホルモンバランスを整える働きは、エストロゲンの過剰分泌が原因で引き起こされる乳ガンの予防にもつながります。
欧米に比べて大豆の消費量が多いアジア諸国の女性は、ゲニステインを含む大豆イソフラボンの摂取量が多いため、乳ガンの発症率が低いという調査結果も報告されています。【1】【3】

●美肌効果
女性ホルモンであるエストロゲンは、女性らしい体をつくるために必要となるため、ゲニステインなどのイソフラボンは、美しさを保つ上でも重要な成分です。
年齢や生活習慣によってエストロゲンの分泌が減少すると、肌の弾力を保つコラーゲンや、肌に潤いを与えるヒアルロン酸をつくる力が低下してしまいます。その結果、しわやたるみなどの肌の老化現象が引き起こされます。
イソフラボンには、肌の弾力性を保ち、しわを改善する効果があります。【7】【8】

●骨粗しょう症を予防する効果
エストロゲンには、骨の中からカルシウムが溶け出さないようにする働きがあります。
カルシウムは、骨や歯だけではなく血液や筋肉、脳にも含まれています。不足すると、骨からカルシウムを取り出して血液中のカルシウムを一定に保つという仕組みがありますが、エストロゲンの分泌が減少すると、骨にカルシウムを蓄えておく力が低下してしまいます。その結果、骨密度[※5]が低下し、骨がもろくなるため、ちょっとしたはずみで骨が折れやすくなってしまいます。これが、骨粗しょう症の原因のひとつです。
イソフラボンは、エストロゲンと似た働きをすることで、骨の中にカルシウムを蓄え、骨粗しょう症を予防します。【2】【4】

●コレステロール値を下げる効果
ゲニステインをはじめとするイソフラボンには、生活習慣病の原因となるコレステロール値を下げる効果があります。
脂質の一種であるコレステロールは、細胞をつくる重要な成分です。しかし、現代人はバターなどの動物性脂肪を多く含む食品を摂り過ぎる傾向があり、血液中の悪玉(LDL)コレステロール[※6]が増加しやすいといわれています。
コレステロールが増加すると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こす可能性があります。
特に、更年期の女性は年齢とともにエネルギーの代謝[※7]が悪くなるため、コレステロールが増加しやすいといわれています。
イソフラボンは、血液中に増えすぎたコレステロールを減少させる効果があり、生活習慣病や動脈硬化の予防に役立ちます。【5】

●生活習慣病を予防する効果
ゲニステインが持つ抗酸化作用は、生活習慣病の予防に役立ちます。
活性酸素は、ストレス・紫外線・喫煙・過剰な運動などが原因で増加します。活性酸素は、体の中に入ってきた細菌やウイルスを退治してくれる働きを持つため、本来人間の体にとって必要となるものですが、増えすぎるとその強力なパワーによって細胞を傷付けてしまいます。
活性酸素はコレステロールを酸化させ、過酸化脂質をつくり出します。過酸化脂質は、糖尿病や肥満などの生活習慣病を引き起こす原因にもなります。
ゲニステインは、抗酸化作用とコレステロール値の上昇を抑制する働きを併せ持つため、生活習慣病を予防する効果が期待できます。【5】【6】【9】

[※5:骨密度とは、単位面積あたりの骨の量のことです。骨の中には骨梁(こつりょう)という組織が網の目のように張りめぐらされており、強い衝撃から骨を守っています。カルシウムが減少すると、骨密度が低くなり、骨粗しょう症のリスクが高まります。]
[※6:悪玉(LDL)コレステロールとは、肝臓から血管にコレステロールを運ぶ機能があり、数値が高くなると、動脈硬化の原因になります。]
[※7:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることです。]

食事やサプリメントで摂取できます

ゲニステインを含む食品

○納豆・きな粉・豆腐・油揚げ・みそなどの大豆食品

こんな方におすすめ

○更年期障害でお悩みの方
○美肌を目指したい方
○骨粗しょう症を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○生活習慣病を予防したい方

ゲニステインの研究情報

【1】更年期の日本人女性58名に、大豆イソフラボンを1日40mg 、4週間摂取させたところ、更年期症状であるほてりが緩和され、高血圧患者での収縮期及び拡張期血圧は有意に低下したことから、大豆イソフラボンに更年期症状緩和効果があると示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11870016

【2】閉経後女性203名が、大豆イソフラボンを1日80mg とカルシウムを1日500mg を1年間摂取したところ、股関節などの骨ミネラル量の減少が緩和されたことから、大豆イソフラボンに骨粗しょう症予防効果が示唆されました。閉経後4年以上経過した、やせ型の女性、及びカルシウム摂取量が少ない方で、大豆イソフラボンの骨粗しょう症予防効果に有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15630287

【3】卵巣摘出更年期障害ラットにおいて、大豆イソフラボンを28日間摂取させたところ、更年期障害症状の1つ、血中総コレステロール、トリグリセリド値の上昇を抑制した。また日本人女性40名(20-60歳) において、大豆イソフラボンを1日40mg 、6カ月間摂取させたところ、内臓脂肪、血中脂質の改善が見られたことから、大豆イソフラボンの更年期障害予防効果が示唆されています。
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902286277174432

【4】大豆を食べる習慣のないブラジル移民の閉経後の日本人女性を対象に、大豆イソフラボン1日50mg を摂取させたところ、尿中の大豆イソフラボンの量が増加し、骨粗しょう症の指標である尿中ピリジノリンの量が、日本人女性と同等まで回復しました。このことから、大豆イソフラボンには閉経後の骨粗しょう症予防効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12480802

【5】高血圧、高コレステロール血症のスコットランド人61名(年齢45歳~59歳) が、大豆タンパク質20g 以上及び大豆イソフラボン80mg を配合した食事を5週間したところ、収縮期及び拡張期血圧及び総コレステロール、HDL以外のコレステロール(LDLコレステロールなど悪玉コレステロール)が減少しました。摂取24時間後には尿中イソフラボン量が増加したことから、これらの健康機能にはイソフラボンが関係していると考えられています。従って、大豆イソフラボン及び大豆タンパク質は、生活習慣病並びに心血管疾患の予防効果が期待されます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14963058

【6】世界各国の食習慣を調査し、尿中イソフラボン量と男性の虚血性心疾患死亡率を調査した結果、尿中イソフラボンが多い国の男性ほど、虚血性心疾患死亡率が低いことがわかりました。この結果より、尿中イソフラボンが多いほど虚血性心疾患の危険が低いことから、大豆イソフラボンを摂取することの必要性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11710355

【7】年齢肌に悩む30代後半~40代前半の女性26名が、大豆イソフラボンを1日40mg (アグリコンとして)12週間摂取したところ、摂取8週間後では頬の肌の弾力が、次いで12週間後では小じわの改善が見られました。この結果より、大豆イソフラボンは年齢肌に悩む40歳前後の女性の肌の改善に役立つことが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17484381

【8】イソフラボンを顔面皮膚に局所投与し、24週間後に皮膚の状態を調査したところ、表皮の厚み及び皮膚血管の増加が確認されました。このことから、イソフラボンには皮膚の健康維持効果があることが示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19450919

【9】大豆イソフラボンによる空腹時血糖値低下作用を調べた研究(10件、794名)において、大豆イソフラボンの中で、ゲニステインのみ空腹時血糖値低下効果が見られ、他のイソフラボン成分には見られませんでした。
このことから、ゲニステインは特別に空腹時血糖降下作用を示すことが明らかとなりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20581723

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参考文献

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・厚生労働省 大豆および大豆イソフラボンに関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0202-1a.html

・Uesugi S, Watanabe S, Ishiwata N, Uehara M, Ouchi K. 2004 “Effects of isoflavone supplements on bone metabolic markers and climacteric symptoms in Japanese women.” Biofactors. 2004;22(1-4):221-8.

・Chen YM, Ho SC, Lam SS, Ho SS, Woo JL. 2004 “Beneficial effect of soy isoflavones on bone mineral content was modified by years since menopause, body weight, and calcium intake: a double-blind, randomized, controlled trial.” Menopause. 2004 May-Jun;11(3):
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・Nagakura T, Matsuda S, Shichijyo K, Sugimoto H, Hata K.2003 “Studies on the Effects of Soybean Isoflavone Aglycon on Obesity and Blood Lipid Profile.” Eastern Medicine. 2003; 19: 39-50

・Yamori Y, Moriguchi EH, Teramoto T, Miura A, Fukui Y, Honda KI, Fukui M, Nara Y, Taira K, Moriguchi Y. 2002 “Soybean isoflavones reduce postmenopausal bone resorption in female Japanese immigrants in Brazil: a ten-week study.” J Am Coll Nutr. 2002 Dec;21(6):560-3.

・Sagara M, Kanda T, NJelekera M, Teramoto T, Armitage L, Birt N, Birt C, Yamori Y. 2004 “Effects of dietary intake of soy protein and isoflavones on cardiovascular disease risk factors in high risk, middle-aged men in Scotland.” J Am Coll Nutr. 2004 Feb;23(1):85-91.

・Yamori Y, Miura A, Taira K. 2001 “Implications from and for food cultures for cardiovascular diseases: Japanese food, particularly Okinawan diets.” Asia Pac J Clin Nutr. 2001;10(2):144-5.

・Izumi T, Saito M, Obata A, Arii M, Yamaguchi H, Matsuyama A. 2007 “Oral intake of soy isoflavone aglycone improves the aged skin of adult women.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2007 Feb;53(1):57-62.

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・Ricci E, Cipriani S, Chiaffarino F, Malvezzi M, Parazzini F. 2010 “Effects of soy isoflavones and genistein on glucose metabolism in perimenopausal and postmenopausal non-Asian women: a meta-analysis of randomized controlled trials.” Menopause. 2010 Sep-Oct;17(5):1080-6.

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