グルタチオン

glutathione

グルタチオンはアミノ酸が連なってできる化合物の一種です。活性酸素によるダメージから体を守る抗酸化作用のほか、解毒作用があるため美容や健康に役立つ成分として知られています。

グルタチオンとは

●基本情報
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンという3つのアミノ酸が連なったペプチド(化合物)です。
グルタチオンは動物や植物、微生物の細胞の中に存在しており、生命を維持するために欠かせない成分です。健康や美容の維持に役立つとして、グルタチオンは日本薬局方[※1]では医薬品として記載されているほか、海外ではサプリメントの素材としても広く知られています。
人間の体内では特に皮膚や肝臓などにグルタチオンが多く含まれていますが、年齢や紫外線の影響によって減少しやすいという特徴があります。
また、目の水晶体[※2]や角膜にもグルタチオンが多く含まれており、点眼薬などにもグルタチオンが配合されているものがあります。

●グルタチオンの歴史
グルタチオンは、1969年に日本の製薬会社によって初めて医薬品の原料として市販されました。その後もグルタチオンは主に医薬品として利用されており、特に肝機能の改善や、美白・アンチエイジングのための医薬品の原料としての需要が高い成分です。また、食品やサプリメントとしても利用されています。

●グルタチオンを摂取する際の注意
グルタチオンは日本では医薬品として扱われているため、摂取する際は医師や薬剤師への相談が必要となります。

●グルタチオンの働き
グルタチオンには抗酸化作用[※3]があり、ストレスや過度な運動、飲酒、喫煙、紫外線によって発生する活性酸素[※4]によるダメージから細胞を守る働きがあります。
活性酸素は、体の中に入ってきた最近やウイルスを退治してくれる働きがあり、本来私たちの体にとって必要なものです。しかし、増えすぎるとその強力なパワーにより細胞を傷付けてしまうなど、かえって体に害を与えてしまいます。
グルタチオンは、このような過剰に発生した活性酸素から体を守り、病気や老化を予防することができます。
また、グルタチオンは肝臓で異物の解毒作用をする際にも必要となる成分だといわれています

[※1:日本薬局方とは、日本国内の医療における重要な医薬品の品質・強度・純度などについて定めた基準のことです。]
[※2:水晶体とは、人間の目においてレンズの役割を担っている部位です。直径が1cmほどのレンズで、毛様体筋という筋肉によって厚さを変えることができます。遠くのものを見るときは厚さを薄く、近くのものを見るときは厚くすることで、ピント調節の働きも行っています。]
[※3:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。ストレス、紫外線、喫煙などの要因によって体内で過剰に発生した場合、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

グルタチオンの効果

●美白効果
活性酸素が発生することによって過酸化脂質[※5]が増えると、細胞が壊されたり、過酸化脂質がたんぱく質と結びついて肌のシミの原因となることもあります。
グルタチオンが持つ抗酸化作用によって、シミの原因を予防する効果があります。このような効果があることから、グルタチオンは美容クリニックなどで美白のための治療薬として利用されています。

●生活習慣病の予防・改善効果
過酸化脂質は動脈硬化や高血圧の原因にもなり得るため、グルタチオンが持つ抗酸化作用は、活性酸素の増加を抑えることによって生活習慣病の予防に役立ちます。

●肝機能を高める効果
肝臓が解毒作用を行う上で必要となるグルタチオンには、肝機能を高める効果があります。
肝臓は、栄養素の代謝[※6]や有害物質の解毒、胆汁[※7]の分泌などを行う重要な臓器です。
肝臓の機能が低下してしまうと、毒素や老廃物が体内に溜まりやすくなり、疲れやすくなるほか、病気の原因にもなります。
しかし、肝臓はこれらの病気の自覚症状が現れにくい臓器です。症状が出た時には、既に病気が進行しているケースが多いため、肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれています。
グルタチオンは、体内で解毒酵素がつくられる力を活性化する働きがあるため、肝機能を高める効果が期待できます。【3】

●眼病を予防する効果
グルタチオンは水晶体や角膜に多く存在しており、白内障や角膜疾患などの眼病に対する予防効果があります。
グルタチオンを補うことによって白内障の発症や進行を予防するほか、角膜障害を軽減させることが明らかになっています。
このような効果があることから、グルタチオンが配合されている点眼薬も販売されています。【4】

[※5:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]
[※6:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※7:胆汁とは、肝臓でつくられるアルカリ性の液体です。胆汁酸などを含み、脂肪酸の吸収を助ける作用があります。]

食事で摂取できます

グルタチオンを多く含む食品

○ほうれん草
○キャベツ
○きゅうり
○かぼちゃ
○牛レバー
○マダラ
○赤貝
○ブロッコリー
○酵母

こんな方におすすめ

○シミ、そばかすが気になる方
○生活習慣病を予防したい方
○肝臓の健康を保ちたい方
○白内障や目の炎症を予防したい方

グルタチオンの研究情報

【1】グルタチオンはL-DOPAにはたらきかけ、メラニンの合成と凝集を抑制することから、グルタチオンに対する美白効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18670186

【2】Ⅱ型糖尿病患者は病原菌感染のリスクが高いことが知られています。糖尿病患者では免疫細胞NK細胞等を活性化する免疫物質IL-12が低下しており、これにはグルタチオンの欠損が関連していることがわかりました。グルタチオンが糖尿病による合併症予防に役立つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22546856

【3】アルコール性肝臓疾患とグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST) の遺伝変異に関連性が認められたことから、グルタチオンが肝臓疾患や肝臓保護に重要な役割を果たすと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21967547

【4】ラットまたはマウスの水晶体にはグルタチオンが存在し、目や水晶体に生じる疾患の予防に関与している。グルタチオンはメチオニンまたはアセチルシステインから合成されるが、老年マウスではメチオニンからの合成ができず、白内障発症に関連すると考えられています。このことから、グルタチオンが白内障予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2386490

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参考文献

・BIOINDUSTRY vol.27 no.8 2010 グルタチオン シーエムシー出版

・Matsuki M, Watanabe T, Ogasawara A, Mikami T, Matsumoto T. 2008 “Inhibitory mechanism of melanin synthesis by glutathione.” Yakugaku Zasshi. 2008 Aug;128(8):1203-7.

・Marcos M, Pastor I, Chamorro AJ, Ciria-Abad S, Gonzalez-Sarmiento R, Laso FJ. 2011 “Meta-analysis: glutathione-S-transferase allelic variants are associated with alcoholic liver disease.” Aliment Pharmacol Ther. 2011 Nov;34(10):1159-72.

・Tan KS, Lee KO, Low KC, Gamage AM, Liu Y, Tan GY, Koh HQ, Alonso S, Gan YH. 2012 “Glutathione deficiency in type 2 diabetes impairs cytokine responses and control of intracellular bacteria.” J Clin Invest. 2012 Jun 1;122(6):2289-300.

・Ferrer JV, Gasco E, Sastre J, Pallardo FV, Asensi M, Vina J. 1990 “Age-related changes in glutathione synthesis in the eye lens.” Biochem J. 1990 Jul 15;269(2):531-4.

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