のり

laver
海苔

ノリは「海の牛肉」といわれるほど豊富なたんぱく質を含むほか、ビタミン、ミネラル、食物繊維、EPAなど様々な栄養を持ち、海藻の中では最も栄養バランスが優れています。アミノ酸による独特の旨味がありカロリーも低いので、生活習慣病の予防など、日々の健康のためにも積極的に食事に取り入れたい食品のひとつです。

のりとは

●基本情報
ノリは紅藻類・緑藻類の海藻で、水中の岩石の上に生えるものの総称です。一般的にノリといわれるのはウシタケノリ科アマノリ属のアマノリで、日本周辺では約30種類が知られています。アマノリを細かく刻んですき、乾燥させたものが干しノリになり、焼きノリや味付けノリに利用されます。他にもアオノリ、カワノリ、アオサなどさまざまな種類があります。

●ノリの歴史
ノリは飛鳥時代から食用とされており、701年(大宝元年)に制定された日本最古の成文法典である「大宝律令」[※1]に記録が残されています。「大宝律令」では朝廷への租税として約30種類の海草類が挙げられていますが、中でもノリは高級品として扱われていました。平城京(710年)の都では「にぎめだな」という海藻を売る市場や、「もはだな」というノリやコンブを佃煮のように加工したものを売る市場がありましたが、高級品のため上流階級や貴族がごちそうとして食していました。また、「宇津保物語」には甘海苔や紫海苔としてノリが登場しています。
江戸時代に入ると、東京湾で養殖が始まりアサクサノリが全国で流通し、庶民にも親しまれるようになりました。江戸時代中期に入ると板海苔が登場し、海苔巻が大流行しました。しかし、当時はノリの生態そのものは解明されていなかったため安定的な生産ができませんでした。その後、1949年にイギリスのドリュー女史がノリの糸状体[※2]を発見したことがきっかけで、人工採苗の実用化へとつながり、日本では戦後から本格的な養殖がスタートしました。現在では安定した養殖スタイルが確立されています。
ノリという名前は、ヌルヌルするという意味の「ぬら」がなまったものです。

<豆知識①>2月6日は「海苔の日」
「大宝律令」が施行された大宝2年1月1日を西暦に換算すると702年2月6日となります。このとから業界の発展祈願の気持ちを込めて、全国海苔貝類漁業協同組合連合会が1966年に2月6日を「海苔の日」と制定しました。

●ノリの生産地
全国各地で生産されており、生産地は北海道から東海地方までの東日本地区、瀬戸内海に面した近畿、中国、四国の瀬戸内地区、九州地区の大きく3つに分けられます。育った海によって風味や性質に違いがあり、九州のものはパリパリとして煮るととけやすく、瀬戸内のものはとけにくくしっかりとしているのが特徴です。
有明海漁場の生産量は国内最多で、全国の生産量の約40%は九州地区で生産されます。
海苔は年間を通して出回っていますが、旬は冬で、一般的に12月~2月にかけて収穫されます。各産地で毎年一番最初に収穫されたものは「新海苔」といわれ、やわらかく香り高い風味を持ちます。

●ノリの見分け方と保存方法
厚みがあり、黒褐色で光沢のあるものを選びます。ところどころ穴が開いて透けたものは避け、すき方が丁寧で香りの良いものがおいしいノリです。
保存の際はしっかりと密閉し、冷蔵庫で保管します。しけてしまった場合には佃煮として利用できます。

<豆知識②>大きさと単位
スーパーでは用途によってさまざまなサイズが売られていますが、ノリの基本サイズは縦21cm×横19cmです。1枚の平均重量は約3gで、生産額などはこの枚数であらわされます。また、ノリは10枚が1単位で、10枚束ねたものを1帖と数えます。

●ノリに含まれる成分と性質
ノリにはビタミンC、ビタミンE、などのビタミンが豊富で、β-カロテンを多く含くむことから免疫力向上に効果があります。また、発育促進や心身の健康に不可欠なヨウ素をはじめ、鉄、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルや食物繊維も豊富に含まれます。他にも不飽和脂肪酸のEPAやタウリンの働きにより、生活習慣病の予防にも効果を発揮します。

[※1:大宝律令とは、飛鳥時代701年に制定された日本最古の法律です。大宝律令の制定によって、天皇中心の中央集権国家の体制がかたまりました。]
[※2:糸状体とは、藍藻類の原糸体など、細胞が1列に並んで糸状になったものを指します。]

のりの効果

●生活習慣病の予防・改善効果
ノリには青魚に豊富に含まれる必須脂肪酸のEPAや、カキに含まれるタウリンが豊富に含まれています。EPAには血液をサラサラにする働きがあり、血栓症の予防に効果を発揮します。また、EPAやタウリンには善玉(HDL)コレステロールを増やし、悪玉(LDL)コレステロールを減らす働きがあることから、高血圧や動脈硬化を予防します。
他にもガンの原因となる活性酸素を除去してくれるビタミンC、ビタミンE、β-カロテンなどの抗酸化物質が含まれます。加えて、細胞壁には身体をガンから守るポルフィランという多糖類も含まれます。【1】【2】

●美肌効果
ノリにはビタミンCが豊富に含まれます。人間の皮膚は、紫外線を受けるとメラニンという色素を生成します。メラニンが沈着するとシミやそばかすになりますが、ビタミンCにはメラニンの生成を抑制しシミを防ぐ効果があります。さらにビタミンCにはコラーゲンの合成を助ける作用があります。ビタミンCは一般的に調理などで加熱すると破壊されてしまいますが、ノリに含まれるビタミンCは熱に強く、焼いても壊れないのが特徴です。
また、β-カロテンが体内でビタミンAに変わり潤いのある肌をつくり、ビタミンEが血行を促進し若々しさを保つことで、さらなる美肌効果を発揮します。【3】

●貧血を予防する効果
鉄は血液中にヘモグロビンをつくり、全身に酸素を運ぶ役割を担っています。ノリには鉄が豊富に含まれるため、貧血予防に効果があります。また、ビタミンB12と葉酸も含まれており、この2つの成分が互いに協力しあうことで赤血球がつくられます。ビタミンB12と葉酸のどちらか一方でも不足すると、正常な赤血球が減り悪性貧血を引き起こします。【4】【5】

●腸内環境を整える効果
ノリにはマンナンなどの水溶性食物繊維が含まれます。この食物繊維が水に溶けてゲル化することで、腸内の不要なものを絡め取り排泄させ、腸内環境を整えます。また、食物繊維には糖の吸収抑制やコレステロール値を下げる働きがあります。

のりは食品やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○生活習慣病を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○血圧が高い方
○血流を改善したい方
○美肌を目指したい方
○シミ、そばかすが気になる方
○貧血でお悩みの方
○便秘でお悩みの方

のりの研究情報

【1】高脂血症ラットを対象に、ノリを摂取させたところ、高コレステロール血症が緩和し、肝臓薬物代謝酵素が回復しました。ノリは生活習慣病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23462104

【2】高脂血症ラットにノリを摂取させたところ、抗酸化酵素であるSODやカタラーゼおよび肝臓中のグルタチオン活性が改善し、血中コレステロール濃度も改善したことから、ノリは肝臓保護作用ならびに高脂血症予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20676937

【3】マウスを対象に、ノリを投与したところ、薬物皮膚腫瘍の発生が抑制されたことから、ノリは皮膚保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10403537

【4】米中心の日本食では、ノリなどの海藻類が鉄やビタミンCならびにフィチン酸の供給源です。のりをはじめとする海藻は、特に米中心の食事での鉄吸収を促進することから、貧血予防に有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18029485

【5】生ノリはビタミンB12を豊富に含むことが知られています。特に乾燥ノリより生ノリが優れていることから、ノリは貧血予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9830271

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参考文献

・中嶋洋子 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・本多京子 食の医学館 株式会社小学館

・食材図典 小学館

・西澤一俊・杉村幸子 海藻の本―食の源をさぐる― 研成社

・Schultz Moreira AR, Garcia-Fernandez RA, Bocanegra A, Teresa Mendez M, Bastida S, Benedi J, Sanchez-Reus I, Sanchez-Muniz FJ. (2013) “Effects of seaweed-restructured pork diets enriched or not with cholesterol on rat cholesterolaemia and liver damage.” Food Chem Toxicol. 2013 Feb 22. pii: S0278-6915(13)00137-3.

・Moreira AS, Gonzalez-Torres L, Olivero-David R, Bastida S, Benedi J, Sanchez-Muniz FJ. (2010) “Wakame and Nori in restructured meats included in cholesterol-enriched diets affect the antioxidant enzyme gene expressions and activities in Wistar rats.” Plant Foods Hum Nutr. 2010 Sep;65(3):290-8.

・Higashi-Okai K, Otani S, Okai Y. (1999) “Potent suppressive effect of a Japanese edible seaweed, Enteromorpha prolifera (Sujiao-nori) on initiation and promotion phases of chemically induced mouse skin tumorigenesis.” Cancer Lett. 1999 Jun 1;140(1-2):21-5.

・Garcia-Casal MN, Pereira AC, Leets I, Ramirez J, Quiroga MF. (2007) “High iron content and bioavailability in humans from four species of marine algae.” J Nutr. 2007 Dec;137(12):2691-5.

・Nishimura Y, Ishii N, Sugita Y, Nakajima H. (1998) “A case of carotenodermia caused by a diet of the dried seaweed called Nori.” J Dermatol. 1998 Oct;25(10):685-7.

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