リコピン

lycopene

リコピンとは、カロテノイドの一種で、トマトやすいかに多く含まれている赤色の天然色素です。
強力な抗酸化作用を持ち、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を防ぐことから、血流を改善する効果や、生活習慣病を予防する効果が期待されています。

リコピンとは

●基本情報
リコピンはカロテノイドの一種であり、トマト、すいか、ピンクグレープフルーツなどに含まれている赤色の天然色素です。
カロテノイドとは、植物が自らの身を守るために蓄える天然の色素成分の総称であり、赤色、橙色、黄色などを示す色素です。
カロテノイドはカロテン類とキサントフィル類に分類され、リコピンはカロテン類に属している栄養素です。
リコピンはカロテノイドの中でも秀でた抗酸化作用を持つ成分であり、その効力はβ-カロテンの2倍以上、ビタミンEの約100倍にも匹敵します。

抗酸化作用とは、体内で発生する活性酸素を除去する働きを指します。
活性酸素とは、人間の体内で常に発生しており、外界から侵入してきた細菌やウイルスを攻撃する物質ですが、ストレス、喫煙、紫外線、乱れた生活習慣などが原因で過剰に増加した場合、体内に悪影響を及ぼすと考えられています。
過剰に増加した活性酸素は強い力を持つあまり、体内のたんぱく質、脂質、DNAを傷つけるため、老化や生活習慣病の原因になるといわれています。
リコピンが持つ強力な抗酸化作用によって、体内で増加し過ぎた活性酸素を除去することができるため、様々な病気の予防や美容に対する効果が期待されています。

●リコピンの効果的な摂取方法
リコピンを最も多く含んでいる野菜はトマトですが、その含有量はトマトの熟成する度合いによって大きく異なるといわれています。
完熟トマトでは1kgあたり約50mgのリコピンが含まれていますが、熟していないトマトのリコピン含有量は、その10分の1である5mg程度しか含まれていません。
リコピンは熱に強い成分でもあるため、トマト製品にも豊富に含まれています。
北米では、食品由来のリコピンの85%はトマトジュースのようなトマト製品から摂取されていると考えられています。
また、リコピンは生のトマトに含まれている状態よりも、トマトジュース、トマトペースト、トマトケチャップなどの加熱加工を施された状態の方が体内に吸収されやすい構造であるといわれており、トマト製品に含まれているリコピンは、サプリメントによる摂取と同程度の吸収率であるとされています。
尚、リコピンの効果的な摂取量は1日15mg程度であり、これは大きめトマト約2個分に相当しますが、トマトジュースなら1缶(約150mℓ)で摂取できます。

<豆知識>トマトが赤くなると医者が青くなる
ヨーロッパでは、「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざがあります。
リコピンをたっぷり含む赤く熟したトマトには、他にもビタミン類、ミネラル類、食物繊維などの多彩な栄養素が含まれていることからこのようなことわざが生まれました。
トマトに豊富に含まれるリコピンによる健康効果は、昔から日本だけでなく世界中で注目されていたといえます。

リコピンの効果

●血流を改善する効果
リコピンの持つ抗酸化作用は、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を抑えるため、血流を改善する効果につながります。
血液は、人間の体に酸素、栄養、温度を与えるなどのとても重要な役目を担っているため、血流が悪くなることによって様々な病気や、体温の低下による免疫力の低下が引き起こされます。
血流が悪くなることによって起こる病態は様々ですが、代表的なものとして血栓の生成が挙げられます。
血栓とは、血管内にできる血の塊であり、血流の障害物となる物質です。
血流悪化の一因である血栓が生成される原因のひとつとして、血液中のコレステロールの酸化が挙げられます。
この原因に活性酸素が挙げられるため、活性酸素を除去する作用を持つリコピンは、血流を改善することができると考えられています。
また、活性酸素は、血液や血管を酸化させる作用も持つため、体の老化を促進する原因にもなるといわれており、リコピンの抗酸化作用は、老化を防ぐことにもつながるといえます。【4】【5】【6】

●血流を改善する効果
リコピンの持つ抗酸化作用は、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を抑えるため、血流を改善する効果につながります。
血液は、人間の体に酸素、栄養、温度を与えるなどのとても重要な役目を担っているため、血流が悪くなることによって様々な病気や、体温の低下による免疫力の低下が引き起こされます。
血流が悪くなることによって起こる病態は様々ですが、代表的なものとして血栓の生成が挙げられます。
血栓とは、血管内にできる血の塊であり、血流の障害物となる物質です。
血流悪化の一因である血栓が生成される原因のひとつとして、血液中のコレステロールの酸化が挙げられます。
この原因に活性酸素が挙げられるため、活性酸素を除去する作用を持つリコピンは、血流を改善することができると考えられています。
また、活性酸素は、血液や血管を酸化させる作用も持つため、体の老化を促進する原因にもなるといわれており、リコピンの抗酸化作用は、老化を防ぐことにもつながるといえます。【4】【5】【6】

●生活習慣病の予防・改善効果
リコピンの持つ抗酸化作用は、生活習慣病の予防に効果を示します。
生活習慣病とは、発症の要因に生活習慣が深く関与していると考えられる病気の総称です。
代表的な生活習慣病は、動脈硬化、高血圧、糖尿病などが挙げられ、これらの多くは体内で過剰に発生した活性酸素に起因しています。
動脈硬化や高血圧などは血液や血管の異常によって引き起こされる症状であり、活性酸素が血液中の悪玉(LDL)コレステロールを増加させ、血栓を生成したり血管を傷つけたりすることが原因のひとつです。
そのほかにも、増加した活性酸素は細胞や臓器などに様々な不調をもたらし、進行によっては命に関わる病気の原因にもなります。
リコピンの持つ抗酸化作用は、生活習慣病の原因物質でもある活性酸素の過剰な発生を抑制するため、生活習慣病の予防や改善に効果的であるといえます。【4】【5】【6】

●肥満を予防する効果
リコピンの血流改善作用は代謝の活発化につながるため、肥満を予防する効果が期待されています。
代謝が活発化されると、摂取した脂肪分や糖分などが体内の臓器を介してエネルギーなどに変換されることで、効率良く脂肪や栄養などが消費されます。
血流は、臓器や細胞に酸素や栄養素を送り込み、その働きを活発化させる重要な役割を担っているため、血流の良し悪しは代謝効率に結びつきます。
リコピンには血流を改善する効果があるため、臓器や細胞の働きを活発化させて代謝を上げ、脂肪などが蓄積されにくい体をつくると期待されています。
また、リコピンが持つ抗酸化作用によって、脂肪細胞[※1]の増加を防ぐことができると考えられています。

●美肌効果
リコピンの活性酸素を除去する作用は、美しい肌を維持することにも深く関わっています。
活性酸素は、体内で増加し過ぎると細胞を傷つけますが、その対象は肌を構成している細胞も例外ではありません。
肌は表皮、真皮、皮下組織の3層で構成されており、それぞれの層が正常に生まれ変わりを繰り返すことで、肌はハリや潤いのある健康な状態を維持しています。
しかし、活性酸素によって肌細胞が傷つけられると、正常な状態で生まれ変わることができなくなり、肌の構造に悪影響を及ぼすため、それがしわやたるみの原因となって現れるといわれています。
リコピンが活性酸素を抑制することは、肌細胞を守り、健康な肌を保持することにつながるのです。
また、紫外線によっても増加する活性酸素は、シミやくすみの原因であるメラニン色素の生成を促進する作用も持つため、リコピンの抗酸化作用によって、肌の透明感を維持する効果も期待されています。【7】

●視機能を改善する効果
リコピンを摂取することによって、視覚機能を正常に保つ効果が期待されています。
リコピンの持つ抗酸化作用は、活性酸素を原因とする視覚機能の低下に有効であるといわれています。
また、加齢によって起こる白内障や黄斑変性症[※2]などの視覚障害の予防や改善にはルテインが効果的ですが、リコピンもルテインとの相互作用で効果を発揮することが明らかとなっています。
また糖尿病網膜症患者ではリコピンやルテイン、ゼアキサンチンの濃度が低下していることが知られており、リコピンを摂取することの必要性が注目されています。【1】【2】【3】

[※1:脂肪細胞とは、脂肪滴と呼ばれる脂肪のかたまりを持っている細胞です。脂肪細胞には脂肪を蓄える役割を行う白色脂肪細胞と、脂肪を燃焼させる作用を持つ褐色脂肪細胞の2種類が存在し、体内に存在している脂肪細胞のほとんどは白色脂肪細胞であるといわれています。]
[※2:黄斑変性症とは、目の黄斑部が加齢などによって変性し、ゆがみや視野狭窄が起こり、放置しておくと最悪失明につながる病気のことです。アメリカでの失明率第1位の病気です。]

リコピンは食事やサプリメントで摂取できます

リコピンを含む食材

○トマト
○すいか
○ピンクグァバ
○ピンクグレープフルーツ
○杏子

こんな方におすすめ

○血流を改善したい方
○生活習慣病を予防したい方
○肥満を防ぎたい方
○美肌を目指したい方
○目の健康を維持したい方

リコピンの研究情報

【1】糖尿病網膜症患者では、血中のリコピンなどの非プロビタミンAが低下していることが確認されており、リコピンなどの非プロビタミンAの低下と糖尿病網膜症リスクとの関連性が疑われています。リコピンを豊富に含むトマトを摂取すると、血中のリコピン濃度が上昇することが知られており、糖尿病網膜症との関連性は研究途上ですが、食事からリコピンを摂取することの必要性が提唱されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22411366

【2】糖尿病網膜症患者で、リコピンやルテイン、ゼアキサンチンなどの非プロビタミンAとβカロテンなどのプロビタミンAを比較したところ、健常者に比べて、リコピンなどの非プロビタミンAの濃度が低下していることが確認されました。眼疾患患者におけるリコピンの必要性が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18554424

【3】進行性の糖尿病性網膜症患者では血中リコピン濃度が顕著に低下しており、糖尿病性網膜症患者におけるリコピンの必要性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20099237

【4】リコピン摂取と血中コレステロールと血圧の関係を調査した研究結果(血圧:4件、コレステロール:6件)において、リコピンを摂取することにより収縮期血圧が低下することが示され、またリコピン を1日あたり 25mg を摂取することにより、総ステロールやLDLステロールが低下することが示されています。リコピンには高血圧予防効果と高脂血症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21163596

【5】リコピンを投与することにより、動脈硬化の一因であるLDLの酸化が阻害されたことから、リコピンには動脈硬化予防効果、血流改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11022869

【6】腎臓疾患患者20名における、血中抗酸化物質と動脈硬化との関係を調査したところ、血中濃度のビタミンAやビタミンE、リコピンやβカロテンが低いと、動脈硬化のリスクが高くなり、LDLコレステロールや総コレステロールが増加しました。フィブリノーゲンやC反応タンパク質との相関性が見られたことから、リコピン濃度の低下と動脈硬化リスクの関連性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20378019

【7】健常成人女性20名において、リコピンを16mg を含むトマトペースト55g を12週間摂取させたところ、紫外線に反応して紅斑になる紅斑感受性が抑制され、紫外線によるコラーゲン分解酵素MMP-1の活性化が抑制されたことから、リコピンには紫外線から肌を守るはたらきがあると期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20854436

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参考文献

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・Valero MA, Vidal A, Burgos R, Calvo FL, Martínez C, Luengo LM, Cuerda C. 2011 “Meta-analysis on the role of lycopene in type 2 diabetes mellitus.” Nutr Hosp. 2011 Nov-Dec;26(6):1236-41.

・Brazionis L, Rowley K, Itsiopoulos C, O’Dea K. 2009 “Plasma carotenoids and diabetic retinopathy.” J Br J Nutr. 2009 Jan;101(2):270-7

・Li ZZ, Lu XZ, Ma CC, Chen L. 2007 “Serum lycopene levels in patients with diabetic retinopathy.” Eur J Ophthalmol. 2010 Jul-Aug;20(4):719-23.

・Ried K, Fakler P. 2011 “Protective effect of lycopene on serum cholesterol and blood pressure: Meta-analyses of intervention trials.” Maturitas. 2011 Apr;68(4):299-310.

・Rao AV, Agarwal S.2000 “Role of antioxidant lycopene in cancer and heart disease.” J Am Coll Nutr. 2000 Oct;19(5):563-9.

・Riccioni G, D Orazio N, Scotti L, Petruzzelli R, Latino A, Bucciarelli V, Pennelli A, Cicolini G, Di Ilio E, Bucciarelli T. 2010 “Circulating plasma antioxidants, inflammatory markers and asymptomatic carotid atherosclerosis in end-stage renal disease patients: a case control study.” Int J Immunopathol Pharmacol. 2010 Jan-Mar;23(1):327-34.

・Rizwan M, Rodriguez-Blanco I, Harbottle A, Birch-Machin MA, Watson RE, Rhodes LE. 2011 “Tomato paste rich in lycopene protects against cutaneous photodamage in humans in vivo: a randomized controlled trial.” Br J Dermatol. 2011 Jan;164(1):154-62.

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