ナスタチウム

Nasturtium Tropaeolum majus
キンレンカ インディアンクレス ノウゼンハレン

ナスタチウムは南アフリカ原産の植物で、現在は園芸用として親しまれています。花やつぼみ、葉にはピリッとした辛味があり、サラダなどに利用できます。また昔から消毒液や呼吸器の不快感を和らげる薬として使われており、多くの薬効が期待できる植物でもあります。

ナスタチウムとは?

●基本情報
ナスタチウムはノウゼンハレン科ノウゼンハレン属の植物です。熱帯性気候の地域では多年生[※1]として、温帯性気候の地域では一年生植物[※2]として成長します。原産地は南アメリカで、クレソンによく似た風味があることから、インディアンクレスと呼ばれることもあります。品種は100種類以上あり、つる性のものと、それよりも草丈が低く改良されたわい性のものがあります。草丈はつる性のもので1~2m、わい性のもので20 cm~60 cmになります。園芸用としてはわい性のものが親しまれています。
ナスタチウムの種蒔きは、春に行われます。日当たりのよい、水はけのよい場所に蒔かれます。多年草は種を蒔いてから3~4週間で、一年草は10~20日で発芽します。ナスタチウムの茎は肉質があり、葉は円形をしています。中央付近に葉柄がついているので、ハスの葉によく似た形をしています。土が肥えすぎていると、葉だけが元気に育ちすぎて、花が咲かないこともあります。そのため栽培には、養分の少ない土を利用することが適しています。
真夏から初霜の間には、繁った葉がみられ赤色、オレンジ色、黄色の鮮やかな花を咲かせます。そんなナスタチウムの花言葉は、「愛国心」「困難に打ち勝つ」です。
生育には、極端な暑さと寒さを嫌います。そのため夏場は日差しのあたらない明るい日陰の涼しい場所で、冬は霜にあたらないように栽培することが適しています。

●ナスタチウムの歴史
ナスタチウムは、昔からアンデスの人々に消毒液や呼吸器の不快感を和らげる薬として使われていました。ヨーロッパには、16世紀にスペインの探検家によってもたらされました。その後、鉢植えでもしっかりとしたナスタチウムは、園芸用植物として普及しています。

●ナスタチウムの利用
ナスタチウムの花、蕾、葉にはピリッとした辛味があります。そのためサラダに用いられたり、ビネガーの調味用に用いられたりしています。花はその華麗さから、野菜料理、魚料理、赤肉料理、飲み物に添えて装飾として用いられます。未熟な果実はピクルスにされて食べられますが、多量に摂取すると下痢を起こすことがあるので、注意する必要があります。またすりおろすとワサビの代用としても利用できます。
ナスタチウムを利用する際、園芸店で売っているものは食用消費向けではないため、食料専門店で選んだほうがよいです。さらに葉や花はとてもデリケートなものなので、新鮮なうちに使いましょう。

●ナスタチウムの効果
ナスタチウムには、グルコシアン酸、ピラントール、ミロシン、シュウ酸、ビタミンCが含まれています。ナスタチウムは、多くの薬効が期待できる植物です。 特に葉にはビタミンCや、鉄分などが多く含まれています。またアブラムシを遠ざける防虫効果があるため、りんごの木と一緒に植えると、被害を防ぐことがで きるといわれています。

[※1:多年生とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存するものを指します。]
[※2:一年生植物とは、種をまいてから一年以内に発芽・生長・開花・結実・枯死する植物のことです。]

ナスタチウムの効果

●抗菌効果
ナスタチウムの全草には抗菌効果があります。【1】
天然の抗生剤のような作用があり、気管支炎、肺炎、腎炎、膀胱炎など多くの炎症による疾患の改善に用いられています。
葉の煎液[※3]は、最近感染への耐性を強めて、鼻カタル[※4]や気管支カタルを治します。カタルの形成を減らし、洗浄、去痰[※5]も促進するともいわれています。また外用の殺菌剤としても効果があります。

●育毛を促進する効果
ナスタチウムには育毛を促進する効果があります。
本数は変わらないまま毛が細くなったり、抜け落ちて本数が減ってしまったりすると薄毛になってしまいます。
薄毛の原因には、血流が悪くなったり、皮脂[※6]で毛穴が詰まったり、皮膚に炎症が起きるなどの原因が考えられます。ナスタチウムからつくられた頭皮用のローションには薄毛を防ぐ効果があるといわれています。

●傷の治りを早める効果
ナスタチウムの種子は傷の治りを早める効果があります。
使用方法としては、種子をすりつぶし、擦り傷やできものに熱い温湿布として貼ると効果的です。

●美肌効果
ナスタチウムには美肌効果があります。
ナスタチウムの葉に豊富に含まれているビタミンCは、メラニン色素[※7]の合成を抑制し、できてしまったメラニン色素を薄くする効果があります。またコラーゲンの生成も助けるので、肌のハリを保つ効果も期待できます。さらに女性に嬉しい事として、精油や煎じた液を入浴剤として使うと、生理不順にもよいとされています。

[※3:煎液とは、ハーブや生薬などに水を注ぎ、加熱して布ごしした内服用の液体のことです。]
[※4:カタルとは、粘液を分泌する粘膜細胞に炎症が起き,その結果多量の粘液分泌を起こす状態のことです。]
[※5:去痰とは、気管や気管支にたまった痰を除去することをいいます。]
[※6:皮脂とは、皮脂腺から毛や表皮の表面に分泌される分泌物です。]
[※7:メラニン色素とは、シミの原因になるものです。メラニン色素の蓄積によってシミは形成されます。]

こんな方におすすめ

○体調を整えたい方
○薄毛でお悩みの方
○美肌を目指したい方
○生理不順でお悩みの方

ナスタチウムの研究情報

【1】イソシアネートには抗菌作用があると報告されています。ナスタチウムとレッドラディッシュに含まれるベンジル-、アリル-、フェニルエチル-イソシアネートの混合物を使いその抗菌性についての検討を行った結果、濃度により異なる菌の抗菌作用が認めらました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23447075

参考文献

・アンドリュー・シュヴァリエ 世界薬用植物百科事典 誠文堂新光社

・サラー・ガーランド ハーブ&スパイス 誠文堂新光社

・ジェッカ・マクビカー オーガニックハーブ図鑑 文化出版局

・杉田浩一、村本篤子 世界食材事典 柴田出版・園芸百科辞典
http://www.smartgarden.co.jp/engei/nastatium.html

・ハーブの情報専門サイト

・Conrad A, Biehler D, Nobis T, Richter H, Engels I, Biehler K, Frank U. (2013) “Broad spectrum antibacterial activity of a mixture of isothiocyanates from nasturtium (Tropaeoli majoris herba) and horseradish (Armoraciae rusticanae radix).” Drug Res (Stuttg). 2013 Feb;63(2):65-8.

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