パルキサン

Perluxan

パルキサンは、ハーブの一種であるホップ由来の成分であり、鎮痛作用や抗炎症作用を持つことから、関節の痛みをやわらげ、炎症を予防する効果があるといわれています。

パルキサンとは?

●基本情報
パルキサンとは、アサ科の植物であるホップから抽出される成分です。
ホップは、甘い香りと苦みを特徴とするアジア西部やコーカサス地方原産のハーブであり、ヨーロッパやアジアなどにも自生しています。
一般的には、ビールの香りや苦みをつけるための素材として知られていますが、ヨーロッパでは古くから生薬ハーブとして利用されています。
パルキサンはホップの毬花(きゅうか)[※1]から抽出されます。近年、ホップに含まれる様々な成分の機能に注目が集まっており、パルキサンも研究が進められています。

●パルキサンの歴史
パルキサンは、1998~1999年にかけて、アメリカで開発されました。
当初は、パルキサンという現在の成分名ではなく、ホップ抽出物と呼ばれていました。
その後の研究によってパルキサンの持つ健康機能が明らかにされてきています。現在ではパルキサンの痛みを取る働きによってサプリメントの原料としても大変注目を集めています。

●パルキサンの働き
パルキサンは、鎮痛作用や抗炎症作用が研究されています。痛みの原因物質を取り除き、炎症を促進する物質の発生を抑えることができます。

[※1:毬花とは、裸子植物の雌花のことです。1本の軸の上に、雌しべに胚珠(はいしゅ)をつけたものが多数つき、球状になっています。]

パルキサンの効果

●関節痛の症状を緩和する効果
関節の軟骨の部分には、コラーゲンをはじめ、水分を保つヒアルロン酸グルコサミンコンドロイチンなどの成分が含まれており、それらは関節への負担を軽減させるためのクッションのような役割を果たしています。
加齢や肥満、運動による負荷が原因で軟骨がすり減ってしまうと、関節の骨同士が直接こすれるようになり、痛みが発生します。
特に、膝の関節は体重を支える部分であるため、負担がかかりやすく、炎症を起こすことがあります。
関節炎には、関節リウマチ[※2]や化膿性関節炎、痛風[※3]などがありますが、特に多いとされているのが変形性膝関節症です。
変形性膝関節症とは、膝の関節の機能が低下して、膝の半月板のかみ合わせの緩みや、変形、断裂などを引き起こし、炎症が発生することによって関節液が溜まり、痛みを伴う病気のことです。

変形性膝関節症には、軟骨や半月板が少しずつすり減り、変形することによって起こる一次性のものと、関節リウマチや膝のケガなどが原因で起こる二次性のものがあります。
2009年における日本人の変形膝関節症の推定患者数は、自覚症状のある患者で約1000万人、潜在的な患者数で約3000万人と推定されています。
パルキサンには鎮痛作用と抗炎症作用があり、関節痛の症状を緩和する効果があるといわれています。
炎症の原因物質はシクロオキシゲナーゼ2からつくられるプロスタグランジンなどとされていますが、パルキサンは、この炎症原因物質プロスタグランジンに対する阻害活性が報告されています。【1】【2】【3】【4】【5】

また、関節炎のための治療薬として、パルキサンには副作用がなく、即効性があることも明らかになっています。

[※2:関節リウマチとは、免疫機能に異常が発生することによって関節が炎症を起こし、変形してしまう病気です。腫れや激しい痛みを伴う他、手首や手足の関節で起こりやすく、左右の関節で同時に症状が発生しやすいことも特徴です。]
[※3:痛風とは、飲酒や過労、ストレスなどによって体内で核酸の代謝産物である尿酸が溜まり、高尿酸血症が引き起こされることによって発症する病気です。足や手の関節が腫れて、激しい痛みを伴います。]

食事やサプリメントで摂取できます

パルキサンを含む食品

○ホップ

こんな方におすすめ

○関節痛を緩和したい方

パルキサンの研究情報

【1】ホップ抽出物(パルキサン)がプロスタグランジンE2産生に及ぼす作用を検討するために、リポ多糖(LPS)-誘発ヒト末梢血単核細胞の炎症モデルを用いました。パルキサンはシクロオキシゲナーゼ2から誘発されるPGE2を抑制しました。このことから、パルキサンは抗炎症性作用を有する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16534727

【2】ホップ抽出物(パルキサン)の抗痛覚作用について調べました。酢酸誘発苦悶試験においてマウスへのパルキサン(25~100mg/kg)経口投与は用量依存的に抗痛覚作用を示しました。さらに、パルキサンの投与によって、ホルマリン誘発-侵襲反応時間が短くなり、ナロキソン誘発苦悶試験に対しても抗痛覚作用を示しました。このことから、パルキサンは、抗痛覚作用を有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22802700

【3】更年期不快感に対するホップ抽出物(パルキサン)の有効性を検討しました。閉経後36名の女性に対してパルキサンまたはプラセボを8週間投与し、クッパーマン指数、Menopause Rating Scale(MRS)指数(どちらも更年期障害に対する指数)を評価しました。パルキサン投与群は、更年期障害指数がプラセボ群と比べて有意に改善していました。このことからパルキサン抽出物の摂取は更年期障害の治療の一つの可能性となることが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22802700

【4】アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いてホップ水抽出(HWE)の経口投与による炎症抑制効果を検討しました。HWE(100または150mg/kg)を経口投与し、血清中の免疫グロブリン(IgE)の濃度および耳厚について検査したところ、HWEの経口投与は、有意にアトピー性皮膚炎のIgE産生、耳厚を抑制しました。また、IL-12の産生も低下しました。これらのことから、HWEの摂取は、アトピー性皮膚炎を抑制する働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18391468

【5】ホップ抽出物 (パルキサン) から精製したρイソα酸1000mgの6週間の投与は、変形性膝関節症に対して有効であることがわかりました。この作用は、シクロオキシゲナーゼ-1および-2を直接抑制することによるものであると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18358504

もっと見る 閉じる

参考文献

・Hougee S, Faber J, Sanders A, Berg WB, Garssen J, Smit HF, Hoijer MA. (2006) “Selective inhibition of COX-2 by a standardized CO2 extract of Humulus lupulus in vitro and its activity in a mouse model of zymosan-induced arthritis.” Planta Med. 2006 Feb;72(3):228-33.

・Park SH, Sim YB, Kang YJ, Kim SS, Kim CH, Kim SJ, Seo JY, Lim SM, Suh HW. (2012) “Hop extract produces antinociception by acting on opioid system in mice.” Korean J Physiol Pharmacol. 2012 Jun;16(3):187-92. Epub 2012 Jun 26.

・Erkkola R, Vervarcke S, Vansteelandt S, Rompotti P, De Keukeleire D, Heyerick A. (2012) “A randomized, double-blind, placebo-controlled, cross-over pilot study on the use of a standardized hop extract to alleviate menopausal discomforts.” Korean J Physiol Pharmacol. 2012 Jun;16(3):187-92. Epub 2012 Jun 26.

・Segawa S, Kuroda H, Kaneko T, Watari J. (2008) “Oral administration of a hop water extract ameliorates the development of dermatitis induced by the periodical topical application of a mite antigen in atopic dermatitis model NC/Nga mice.” Biosci Biotechnol Biochem. 2008 Apr;72(4):974-81. Epub 2008 Apr 7.

・Hall AJ, Babish JG, Darland GK, Carroll BJ, Konda VR, Lerman RH, Bland JS, Tripp ML. (2008) “Safety, efficacy and anti-inflammatory activity of rho iso-alpha-acids from hops.” Phytochemistry. 2008 May;69(7):1534-47. Epub 2008 Mar 20.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ