タラゴン

エストラゴン  フレンチタラゴン
Artemisia dracunculus  Artemisia glauca  Tarragon 

タラゴンは、キク科ヨモギ属のハーブの一種です。古くから薬草として知られていますが、現在では料理に使用されることが多く、特にフランス料理には欠かせないハーブとなっています。また、タラゴンに含まれるエストラゴールには、リラックス効果があるためマッサージのオイルとしても使用されています。

タラゴンとは?

●基本情報
タラゴンはロシア、西アジア、ヒマラヤ地方が原産地のキク科ヨモギ属の多年草植物[※1]です。タラゴンという名前はギリシア語で「蛇」を意味するdrakonや「小さいドラゴン」という意味のフランス語のestragonが語源といわれています。その由来は、タラゴンの細い葉がドラゴンの牙に似ているという説や根が蛇のようにとぐろを巻いているような形をしているところからなどいくつかの説があります。また、フランスでは「食通のハーブ」ともよばれており、フランス料理には欠かせないハーブとなっています。

●歴史
タラゴンは、古くから薬草としてリウマチや痛風[※2]などの鎮痛剤に使用されていましたが、料理に利用されはじめたのは中世以降といわれています。タラゴンは当時スペインを征服していたムーア人がフランスに持ち込み、16世紀になるとイギリスでも広く知られるようになりました。また、13世紀にはアラブの植物学者・薬剤師であるイブン・アル・バイタールが自身の著書で「口臭を消し、不眠症を治し、薬を飲む前にこれを飲めば苦い薬も飲みやすくなる」と紹介しています。また、かつては壊血病[※3]の治療薬としてもしようされており、これはタラゴンに含まれるビタミンCビタミンAによるものと考えられます。
現代では、料理として使われることが多く、肉や魚料理の風味付けに利用して臭みを和らげたり、バターやクリームなどに混ぜたり漬けたりすることで余分な脂肪分をすっきりさせてくれます。

●タラゴンの生産地
タラゴンの原産地はロシアが主ですが、現在はフランスやイタリア、ハンガリーが主な生産地となっています。

●タラゴンの種類
現在一般的にみられるタラゴンは、フレンチタラゴンと呼ばれており、ロシア種のロシアンタラゴンとは成分が異なります。

・フレンチタラゴン
一般的によく栽培されている種類です。スパイシーでアニスに似た甘い香りが特徴で淡い黄色をしており料理や精油[※4]としてよく利用されます。フレンチタラゴンの香りは開花直前に収穫されたものがより強く、乾燥させたりすると、風味が消えてしまいます。そのため。新鮮なうちにビネガーなどに漬けて保存することをおすすめします。また、日本のヨモギの近縁種でもあります。

・ロシアンタラゴン
葉が硬く、香りも弱く草っぽい香りがするため商業的な栽培は多くありませんが、ロシアンタラゴンは種子を結び、丈夫で栽培も簡単であることから種子の利用などに使用されます。

●タラゴンに含まれる成分と性質
タラゴンの精油には消化を促したり、筋肉の緊張を和らげる働きのあるエストラゴールが約80%含まれています。また、エストラゴールには抗アレルギー効果があるといわれております。

[※1:多年草とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する草のことです。]
[※2:痛風とは、飲酒や過労、ストレスなどによって体内で核酸の代謝産物である尿酸がたまり、高尿酸血症が引き起こされることによって発症する病気です。足や手の関節が腫れて、激しい痛みを伴います。]
[※3:壊血病とは、ビタミンCの不足によって体内の各器官に出血性の障害が生じる疾患のことです。]
[※4:精油とは、植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などから抽出した有効成分を高濃度に含有した100%天然の揮発性の芳香物質です。各植物によって特有の香りと機能をもち、アロマテラピーに利用されています。]

タラゴンの効果

●リラックス効果
タラゴンには、リラックス効果があります。タラゴンに含まれるエストラゴールという成分は筋肉の緊張を和らげるはたらきがあるといわれております。筋肉の緊張は、長時間同じ姿勢で取り続けたり、無理な姿勢を続けると乳酸[※5]などの疲労物質が筋肉に溜まり、その結果、筋肉が伸びてしまうといわれております。筋肉が緊張すると、肩こりや頭痛など緊張している筋肉の痛みだけでなく、他の部分にも影響し体に不調をきたしてしまう一因といわれております。そのため、体を温めて血行を促したり、マッサージやストレッチなどこまめに筋肉をほぐすなど工夫をしましょう。マッサージをする際にタラゴンの精油をアロママッサージとして使用するのもおすすめです。

●糖尿病を予防する効果
タラゴンは血糖値の上昇を抑制するはたらきが知られており、糖尿病予防に役立つと考えられております。特にタラゴンの中でもロシアタラゴンがそのはたらきが強いと考えられております。【1】【3】

●消化を促進する効果
タラゴンには、消化を促進する効果があります。これはタラゴンに含まれるエストラゴールによるものです。食欲を刺激することで吐き気やあくびの予防にも効果が期待できます。また、スターアニスバジルと相性が良いことが知られており、料理で一緒に使うとよいでしょう。

●排尿障害を改善する効果
タラゴンには排尿障害を改善する効果があります。タラゴンには老廃物をためないことに役立つことから、デトックス効果が期待できるといわれております。

●喘息を予防する効果
タラゴンに含まれるエストラゴールには抗アレルギー作用や筋肉の緊張を和らげるはたらきがあるといわれております。喘息などに使用する際には、のどの周辺のマッサージとして使用されることもあると言われております。

[※5:乳酸とは、筋肉疲労の原因物質のことです。]

こんな方におすすめ

○疲れやすい方
○リフレッシュしたい方
○食欲不振の方
○消化を促進したい方
○排尿でお悩みの方
○アレルギー症状を緩和したい方

タラゴンの研究情報

【1】タラゴンには糖尿病予防効果が期待でき、そのはたらきにはエストラゴールならびにメチルオイゲノールが関係していると考えられています。特にロシアタラゴンを用いた試験では、グルコース負荷後のラットの血糖値上昇を抑制したことから、タラゴンの中でもロシアタラゴンに糖尿病予防効果が期待できます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21953838

【2】タラゴンは香料や香水として一般に用いられ、痛みや胃腸の疾患にも伝統医薬として用いられてきました。本研究ではタラゴンの抗侵害効果(鎮痛効果)について様々な実験モデルを使って試験を行ったところ、抗侵害効果が認められた。その結果、伝統医薬としての効能に対する科学的な根拠が示されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24074293

【3】2型糖尿病の原因のひとつにインスリンシグナルの崩壊があり、ユビキチンプロテアソームタンパク質による骨格筋の分解に関わっているといわれております。本研究では骨格筋に対するタラゴンエキスの影響について調査し、タラゴンエキスに2型糖尿病の骨格筋の分解抑制の可能性が示唆されたことから、タラゴンに糖尿病予防効果が期待できると考えられております。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23437325

参考文献

・精油の機能と効用 三上杏平 フレグランスジャーナル社

・精油の安全性ガイド下巻 ロバート・ティスランド・トニー・バラッシュ フレグランスジャーナル社

・アロマテラピーのための84の精油 ワンダ・セラー フレグランス・ジャーナル社

・Weinoehrl S, Feistel B, Pischel I, Kopp B, Butterweck V (2012) “Comparative evaluation of two different Artemisia dracunculus L. cultivars for blood sugar lowering effects in rats.” Phytother Res. 2012 Apr;26(4):625-9.

・Obolskiy D, Pischel I, Feistel B, Glotov N, Heinrich M. (2011) “Artemisia dracunculus L. (tarragon): a critical review of its traditional use, chemical composition, pharmacology, and safety.” J Agric Food Chem. 2011 Nov 9;59(21):11367-84.

・Maham M, Moslemzadeh H, Jalilzadeh-Amin G. (2014) “Antinociceptive effect of the essential oil of tarragon (Artemisia dracunculus).” Pharm Biol. 2014 Feb;52(2):208-12.

・Kirk-Ballard H, Wang ZQ, Acharya P, Zhang XH, Yu Y, Kilroy G, Ribnicky D, Cefalu WT, Floyd ZE. (2013) “An extract of Artemisia dracunculus L. inhibits ubiquitin-proteasome activity and preserves skeletal muscle mass in a murine model of diabetes.” PLoS One. 2013;8(2):e57112.

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