モロヘイヤ

mulukhiya
シマツナソ  Jew’s mallow

アラビア語で「王様の野菜」という意味をもつモロヘイヤには、β-カロテンやビタミンE、ビタミンKなどのビタミン類やカルシウムやカリウム、鉄などのミネラル類、ペクチンやマンナンといった水溶性食物繊維が豊富に含まれています。様々な健康効果が期待されている、人気の高い緑黄色野菜です。

モロヘイヤとは?

●基本情報
モロヘイヤはエジプトやアラビア半島で古くから常食されているシナノキ科に属する緑黄色野菜の一種です。別名ツナソとも呼ばれています。エジプトでは5000年以上前から一般に普及していたといわれています。
高温、乾燥地帯でも育つことができる強い生命力とその高い栄養価から、近年注目を集めている野菜です。
虫にも暑さにも強いため、家庭菜園でも人気があります。

<豆知識>エジプト王を救ったモロヘイヤ
エジプトで古くから食べられているモロヘイヤは、アラビア語で「王様の野菜」という意味の「ムルキーヤ」が語源であるといわれています。
かつて、どんな薬も効かない程の重病を患ったエジプト王が、モロヘイヤの葉を刻んでつくったスープを飲んだところ病気が治ったという言い伝えから「王様の野菜」と呼ばれるようになりました。
モロヘイヤスープはエジプトの伝統的な家庭料理として現在でもよく食べられています。各家庭にはマハラタと呼ばれるモロヘイヤ専門の包丁があるそうです。

●モロヘイヤの歴史
中近東地域が原産のモロヘイヤは、クレオパトラにも愛された野菜といわれる程、古くから食用として知られていました。
日本には1980年代に導入され、栄養価の高さに注目が集まり広く知れ渡るようになりました。

●モロヘイヤの生産地
日本では群馬県での生産量が最も多く、次いで三重県、沖縄県、佐賀県と続きます。
モロヘイヤの旬は6月~8月ですが、ハウス栽培では4月~10月が最盛期です。

●おいしいモロヘイヤの選び方
モロヘイヤの葉が1枚1枚しっかりとついていて、先端までつやがあり緑色が鮮やかなもの、茎が折れそうなぐらい張っているものを選びます。
クセがないため、茹でておひたしや和え物などの和風の料理や炒め物、天ぷらなどに幅広く利用されます。
保存する場合は、葉を摘み水気を切ってポリ袋などに入れ、冷蔵庫の野菜室へ入れます。
サッと茹でてラップに包んで冷凍することも可能です。

●モロヘイヤに含まれる成分
モロヘイヤには、β-カロテンをはじめビタミンCカルシウム、カリウム、鉄などのビタミン類・ミネラル類が豊富に含まれています。β-カロテンは、体内で必要な分だけビタミンAに変換されるため、摂りすぎる心配がなく安心です。
特にカルシウムは野菜の中で100g中260mgと、パセリの290mgに次ぐ含有量を誇ります。他には、若返りのビタミンといわれているビタミンEやビタミンK、粘りの成分であるペクチンやマンナンが豊富に含まれており、モロヘイヤは栄養の宝庫ともいわれています。
ペクチンはりんごや柑橘類に含まれる食物繊維の一種です。水溶性と不溶性のものがあり、コレステロール値、血糖値の低下や便秘・下痢の解消効果があります。

モロヘイヤには、多量のシュウ酸が含まれます。シュウ酸は体内でカルシウムなどと結合して、カルシウムの吸収率を低下させます。そのため、過剰摂取には注意が必要です。様々な野菜とともに、バランス良く食べることが大切です。
また、モロヘイヤの種子や枝には、毒性の強いストロファンチジン様物質と呼ばれる成分が含まれています。食べると危険なので、家庭菜園などを行う際は注意が必要です。

モロヘイヤの効果

モロヘイヤには、β-カロテンやビタミンE、ビタミンKなどのビタミン類やカルシウムやカリウム、鉄などのミネラル類、ペクチンやマンナンといった水溶性食物繊維が豊富に含まれているため、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●動脈硬化を予防する効果
日常生活で体内に発生する活性酸素[※1]は、血中の脂質を酸化させ動脈硬化の原因となります。
モロヘイヤに含まれるβ-カロテンやビタミンEには体内の活性酸素を除去する働きがあり、血中の脂質の酸化を防ぎ血管を若々しく保ってくれるため、動脈硬化の予防や改善に効果を発揮するといわれています。
また、モロヘイヤにはポリフェノールの一種であるケルセチンが豊富に含まれています。ケルセチンは強い抗酸化作用[※2]を持つため、ビタミンCやビタミンEと共に動脈硬化の予防や改善に働きかけます。
さらに、モロヘイヤ特有の粘り成分であるペクチンには、余分なコレステロールの吸収を抑え、血中のコレステロール値の上昇を抑える効果があります。
これらの成分を豊富に含むモロヘイヤには、動脈硬化を予防する効果があると考えられています。

●高血圧を予防する効果
食塩の過剰な摂取などによりナトリウムが血中に多く存在すると、体内で水分の移動が正常に行われなくなり高血圧を招いてしまいます。
モロヘイヤに含まれるカリウムには、余分なナトリウムを体外に排出する働きがあるため、血圧を下げ高血圧を予防してくれる効果が期待されています。

●糖尿病を予防する効果
モロヘイヤの粘り成分であるペクチンには、糖の吸収を緩やかにすることにより、血糖値の上昇を抑制する働きがあります。そのため、糖尿病の予防に効果があるといわれています。【4】

●骨粗しょう症を予防する効果
カルシウムは骨格や歯の発達に欠かせない成分です。食物から摂取するカルシウムが不足すると、血中カルシウム濃度を一定に保とうと骨に含まれているカルシウムが血液中に溶け出します。この状態が続くと、骨がスカスカでもろくなる骨粗しょう症が引き起こされます。
また、骨粗しょう症の予防にはビタミンKの摂取も重要であるといわれています。ビタミンKには、摂取したカルシウムを骨に沈着させる働きがあります。
モロヘイヤにはカルシウムやビタミンKが豊富に含まれているため、日常的に摂取することにより骨粗しょう症を予防する働きがあると考えられます。

●貧血を予防する効果
モロヘイヤには、ヘモグロビンの材料となる鉄に加え、鉄の吸収を高めるビタミンCも豊富に含まれているため、貧血の予防に効果的に働きかけるといわれています。
血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少すると貧血になります。ヘモグロビンは、呼吸をした際に肺に取り込まれた酸素を全身の組織に供給する役割を果たしているため、その量が減ると細胞に供給される酸素が不足します。このため、顔が青白くなる、少し動いただけでも息切れがする、動悸が起こる、疲れやすくなる、立ちくらみがするなどの症状が起こります。

●胃の健康を保つ効果
モロヘイヤの粘り成分であるペクチンは、胃液や唾液にも含まれており粘膜の損傷を防いでいます。そのため、胃壁を保護する働きを持っているペクチンを摂ることにより、胃炎や胃潰瘍を予防する効果が期待できます。

●便秘を改善する効果
モロヘイヤにはペクチンやマンナンなどの食物繊維が豊富に含まれているため、便秘の改善に効果的です。モロヘイヤはクセがない野菜なので、ジュースにしても美味しく飲むことができます。例えば、モロヘイヤをヨーグルトやはちみつと一緒にミキサーにかけてジュースにすると乳酸菌も一緒に摂取できるため、便秘解消の相乗効果が期待できます。

●美肌効果
モロヘイヤにはβ-カロテンが豊富に含まれます。β-カロテンから変換されたビタミンAには皮膚や粘膜を丈夫に保ってくれる働きがあるため、肌のカサつきや肌荒れの改善に効果があります。
また、β-カロテンは紫外線によって発生した活性酸素を除去する働きがあり、シミやそばかすの原因となるメラニン色素の発生を抑制する効果があります。
他にも、モロヘイヤには若返りのビタミンといわれているビタミンEが含まれています。さらに、豊富に含まれるビタミンCがコラーゲンの生成を促進し肌のハリが保たれることにより、シワの予防や改善にも役立ちます。
様々な栄養素の相乗効果により、モロヘイヤには美肌を導く効果があるといわれています。

●免疫力を高める効果
β-カロテンから変換されたビタミンAは皮膚やのどなどの粘膜を正常に保つ働きがあり、免疫力を高めるため、口内炎や風邪の予防に効果的です。
また、モロヘイヤに含まれるペクチンには粘膜を保護する働き、ビタミンCやビタミンEには風邪などのウイルスの抵抗力を高める働きがあるため、モロヘイヤは口内炎や風邪の予防に効果的であるといわれています。

●視機能を改善する効果
β-カロテンから変換されたビタミンAは、目が網膜で光を感じる時に必要なたんぱく質であるロドプシンの生成に必要とされる成分で、夜盲症や眼精疲労の予防に効果が期待されています。

[※1:活性酸素とは、酸素分子がより反応性の高い変化した物質の総称です。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※2:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]

モロヘイヤは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○動脈硬化を予防したい方
○高血圧を予防したい方
○糖尿病を予防したい方
○骨粗しょう症を予防したい方
○貧血でお悩みの方
○胃の健康を保ちたい方
○便秘でお悩みの方
○美肌を目指したい方
○免疫力を向上させたい方
○目の健康を維持したい方

モロヘイヤの研究情報

【1】LDL受容体がないマウスに肥満食を与え、
0%(コントロール)、1%、または3%モロヘイヤ葉抽出物(MLP)摂取時の肝臓中の脂質および糖質の代謝遺伝子の発現、血中の生化学分析を行いました。1%および3%MLP摂取群は、コントロールに比べ体重、肝臓重量、トリセリドが有意に低下しました。3%MLP摂取群は、NOX遺伝子(NOを発生させ、酸化ストレスに関係)の発現を抑え、PPARαとCPT1A遺伝子(β酸化:脂肪燃焼に関係)発現の増加が認められました。このことから、モロヘイヤの葉は、肝臓中のβ酸化を高め、抗肥満に働きかけると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20617439

【2】モロヘイヤ葉の水抽出物(AECO)に対するヒ素誘発毒性について調べました。AECO50mg/kgおよび100mg/kgの15日間の経口投与はヒ素誘発酸化ストレスによる心血管障害(DNAの断片化、組織学的検査)を有意に抑制しました。このことから、AECOはヒ素誘発による心疾患を抑制すると考えられました。
また、ヒ素誘発酸化ストレスによる脳障害(抗酸化マーカー、組織学的検査による)も有意に改善しました。このことから、AECOはヒ素誘発による脳障害に対して保護作用があると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20156518
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21787584

【3】モロヘイヤ種子メタノール抽出物を分析した結果、抗バクテリア活性を有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16890386

【4】20%グルコース(コントロール)および20%グルコース‐1%または2%モロヘイヤ葉抽出物(JML-SDF)のラット経口投与について比較検討しました。7名の健常男性に対し、225mlのJML‐SDFジュース(15gJML-SDF凍結乾燥物+75gグルコース)を毎朝飲用させた結果、コントロールと比較して血糖値が有意に低下していました。これらのことからJML-SDFは、血糖を抑える働きを有していると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15830920

【5】6週間マウスへのモロヘイヤ種子抽出物の投与は、脳内のカテコラミン量を有意に増加しました。また、マウス脳内の発作性機能障害にかかわるGABAの量を有意に増加しました。このことから、モロヘイヤは、カテコラミンや脳内のアミノ酸を増加させる働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14556490

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参考文献

・井上正子 新しい栄養学と食のきほん事典 西東社

・本多京子 食の医学館 小学館

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・Wang L, Yamasaki M, Katsube T, Sun X, Yamasaki Y, Shiwaku K. (2011) “Antiobesity effect of polyphenolic compounds from molokheiya (Corchorus olitorius L.) leaves in LDL receptor-deficient mice.” Eur J Nutr. 2011 Mar;50(2):127-33. Epub 2010 Jul 9.

・Das AK, Sahu R, Dua TK, Bag S, Gangopadhyay M, Sinha MK, Dewanjee S. (2010) “Arsenic-induced myocardial injury: protective role of Corchorus olitorius leaves.” Food Chem Toxicol. 2010 May;48(5):1210-7. Epub 2010 Feb 13.

・Das AK, Dewanjee S, Sahu R, Dua TK, Gangopadhyay M, Sinha MK. (2010) “Protective effect of Corchorus olitorius leaves against arsenic-induced oxidative stress in rat brain.” Environ Toxicol Pharmacol. 2010 Jan;29(1):64-9. Epub 2009 Nov 6.

・Pal DK, Mandal M, Senthilkumar GP, Padhiari A. (2006) “Antibacterial activity of Cuscuta reflexa stem and Corchorus olitorius seed.” Fitoterapia. 2006 Dec;77(7-8):589-91. Epub 2006 Jul 15.

・Innami S, Ishida H, Nakamura K, Kondo M, Tabata K, Koguchi T, Shimizu J, Furusho T. (2008) “Jew’s mellow leaves (Corchorus olitorius) suppress elevation of postprandial blood glucose levels in rats and humans.” Int J Vitam Nutr Res. 2005 Jan;75(1):39-46.

・Gupta M, Mazumder UK, Pal D, Bhattacharya S, Chakrabarty S. (2003) “Studies on brain biogenic amines in methanolic extract of Cuscuta reflexa Roxb. and Corchorus olitorius Linn. seed treated mice.” Acta Pol Pharm. 2003 May-Jun;60(3):207-10.

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