たんぱく質(プロテイン)

Protein

たんぱく質はアミノ酸が多数結合した化合物で炭水化物(糖質)、脂質と並ぶ三大栄養素のひとつで、エネルギー源としても働きます。たんぱく質は人間の臓器や筋肉、皮膚、髪などの組織を構成しており、人間の体の基礎をつくる重要な成分です。また、免疫力を高めたり、血液を正常に保ったりと様々な働きを持ちます。

たんぱく質(プロテイン)とは?

●基本情報
たんぱく質とは、アミノ酸が多数結合した化合物で、炭水化物(糖質)、脂質と並ぶ三大栄養素のひとつです。人間を構成している成分のうち、水分に次いで2番目に多い成分です。
人間の体に存在するたんぱく質は20種類のアミノ酸で構成されており、アミノ酸の組み合わせや量の違いにより、性質や作用が異なる約10万種類ものたんぱ く質が人間の体内には存在しています。たんぱく質は筋肉や臓器など人間の体をつくるだけでなく、肌の弾力やハリを保ち、傷の修復を早める効果もあります。 また、たんぱく質は肝臓で分解され、グリコーゲン[※1]や脂肪に変換することで1gあたり約4kcalのエネルギーを生み出し、人間の生命維持に必要な エネルギー源として働きます。さらに、たんぱく質を構成するアミノ酸の中でも、特にBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)は疲労の原因となる乳酸の 蓄積を抑制し、運動時のエネルギー源として働きます。
たんぱく質は必要に応じて分解され、再び合成されるという新陳代謝を繰り返し、生命を維持する上で様々な働きをしています。

●たんぱく質の歴史
たんぱく質は、1838年にオランダの化学者ゲラルドス・ムルダーによって発見されました。たんぱく質は英語でprotein (プロテイン)と呼ばれ、ギリシャ語で「最も大切なもの」という意味を持ちます。漢字ではを意味する「蛋」という文字を含み、「蛋白質」と書きますが、これは卵白にたんぱく質が多く含まれることにちなんで名付けられました。

●たんぱく質の働き
たんぱく質は血液を凝固するトロンビンやフィブリノーゲンを生成し、止血機能において重要な働きをします。また、たんぱく質は血糖値を下げるインスリンや、体の各機能の発達を促す成長ホルモンなどを生成し、体の機能を調節する働きがあります。

また、たんぱく質は体外からの刺激を伝達する役割を担っています。
たんぱく質の中には光や味、においなどの刺激を受容するレセプター(受容体)があります。光や味、においをレセプターが受容すると、細胞内の別のたんぱく質が電気信号に変換し神経に伝えます。これらの電気信号が神経を通り脳に伝わります。
このように光や味、においなどを感受する際にも、たんぱく質は働きます。

たんぱく質は体内の血液を正常に保つ働きがあります。
通常人間の血液は、弱アルカリ性の状態が最も適しており、酸とアルカリの両方の性質を持つたんぱく質は血液中の酸やアルカリを中和し、血液を弱アルカリ性に保つ働きがあります。

●たんぱく質を含む食品
たんぱく質は牛肉、いか、えびなどの動物性たんぱく質と、大豆や豆腐などの植物性たんぱく質があります。それぞれの食品において、たんぱく質を構成するアミノ酸の種類や量は異なっているため、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の両方をバランス良く摂取する必要があります。また、パイナップルやメロンなどのたんぱく質を分解する酵素を含む食品を合わせて摂取すると消化が良くなります。そして、たんぱく質の分解と合成には、ビタミンB6は欠かすことのできない成分のため、一緒に摂取することにより体内でたんぱく質が効率良く働きます。
さらにビタミン、ミネラルといった栄養素はたんぱく質の合成を促進するため、たんぱく質と相性の良い成分といえます。

●たんぱく質の過剰症・欠乏症
たんぱく質を過剰に摂取すると腎臓の負担が大きくなり、腎機能において障害が起きる場合があります。口から摂取したたんぱく質は、胃液によって分解され、最終的にアミノ酸となり吸収され、肝臓へ運ばれます。その際、余分な窒素化合物[※2]が体にとって毒となる尿素[※3]に変わり、それが腎臓を経て排出されます。そのため、腎臓に負担が大きくかかり、腎機能の低下を招いてしまうのです。
さらにたんぱく質の過剰摂取によって、尿酸などが生成され血液が酸性に傾きます。酸性になることで血液の濃度を中和するために大量のカルシウムが消費され、骨粗しょう症を引き起こす危険があります。
また、たんぱく質の不足は、筋力の低下につながります。筋肉はたんぱく質で構成されているため、たんぱく質が不足することでつくられにくくなるのです。筋力の低下により、代謝[※4]が落ちることで抵抗力も低下するため、風邪などの病気にかかりやすくなります。さらに女性は月経不順に、成長期の子どもは成長の阻害につながります。
成人の場合、1日に200~300gのたんぱく質が分解され、その中の約55g~70gの分解物質が尿や汗などに変化し失われています。そのため、推奨摂取量は成人男性で1日60g、成人女性で1日50gとされています。ただし胎児の体を形成する時期である妊娠・授乳期はさらに多くのたんぱく質が必要となります。

●動物性たんぱく質と寿命の関係
戦前の1910年代、摂取するたんぱく質のほとんどが米や大豆などの植物性たんぱく質でした。植物性たんぱく質は、良質ではあるものの必須アミノ酸が不足しており、感染症などに対する免疫力や筋力の低下を招いていました。
ところが戦後、欧米の食文化を取り入れることで、アミノ酸のバランスが取れた肉や乳製品を積極的に摂取するようになり、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質との摂取比率が栄養学上理想的な1:1となりました。その結果、必須アミノ酸のバランスが改善され、たんぱく質本来の働きが発揮されるようになりました。
戦後、日本人の寿命が飛躍的に伸びた要因のひとつに、食の欧米化に伴う動物性たんぱく質の摂取量の増加があると考えられています。

<豆知識>たんぱく質を構成する必須アミノ酸
たんぱく質は多数のアミノ酸によってつくられていますが、特に体内で合成することができない必須アミノ酸は意識的に摂取する必要があります。必須アミノ酸は9種類あり、どれか1種類でも不足していると、アミノ酸は十分に働くことができず、たんぱく質をうまく合成することができません。
そのため「アミノ酸スコア」という、9種類の必須アミノ酸がバランス良く含まれているかどうかを点数で評価したものがあります。アミノ酸スコアの点数が低い場合は、不足している必須アミノ酸をほかの食品から補う必要があります。

[※1:グリコーゲンとは、糖がたくさんつながり、多糖類となった状態で肝臓や筋肉に貯蔵されている物質のことです。グリコーゲンはエネルギーが足りなくなった際にブドウ糖に変化するため、エネルギー源として大切な役割を持っています。]
[※2:窒素化合物とは、多くの生体、物質に存在する生体維持に必要な窒素を含んだ化合物の総称です。]
[※3:尿素とは、哺乳類の尿に含まれる窒素化合物の一種です。]
[※4:代謝とは生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]

たんぱく質(プロテイン)の効果

●免疫力を高める効果
たんぱく質はウイルスの侵入を阻止するリンパ球や、侵入してきた異物を攻撃するマクロファージ、体を感染などから守る免疫グロブリンを生成します。たんぱく質は体外から侵入する異物を排除する抗体の働きを活発にし、免疫力を高める働きを持ちます。

●貧血を予防する効果
たんぱく質と鉄が結合したヘモグロビンは、酸素を全身に運搬する役割を担っており、ヘモグロビンが不足することで全身に十分な酸素が行き届かず、頭痛やめまい、貧血を引き起こしてしまいます。たんぱく質が鉄と結合することでヘモグロビンがつくられるため、貧血を予防するには欠かせない成分であるといえます。

●脳血管障害を予防する効果
たんぱく質は血管を丈夫にし、日本人に多い脳梗塞や脳出血といった脳血管障害が引き起こす痴呆の予防に効果的だといわれています。たんぱく質を構成するアミノ酸であるリジンは血管を丈夫にし、同様にアルギニンは血管を拡張することで脳の血管を詰まらせる血栓症の予防に働きかけます。

●高血圧を予防する効果
たんぱく質の分解に伴って生成される尿素が腎臓から排泄される際に、塩分も一緒に排泄されるため、たんぱく質は食塩の摂りすぎによる高血圧を予防する効果があるといわれています。

●美肌効果
人間の体を構成するたんぱく質の中で最も多く存在するコラーゲンは、肌の潤いやハリを保つ効果があります。

●丈夫な骨をつくる効果
たんぱく質の一種であるコラーゲンは、骨と骨をつなぐ関節を構成する軟骨をつくり、骨密度を高め、丈夫な骨をつくる働きを持ちます。

食事やサプリメントで摂取できます

たんぱく質(プロテイン)を含む食品

○肉類
○魚介類

○乳製品
大豆

こんな方におすすめ

○筋肉を強化したい方
○免疫力を向上させたい方
○貧血でお悩みの方
○肌のハリを保ちたい方
○骨を強くしたい方

たんぱく質(プロテイン)の研究情報

【1】高齢者を被験者にして、たんぱく質食品を筋肉トレーニングの直後もしくは2時間後に摂取させる方法との間で、12週間後の筋力および筋肉量について比較したところ、トレーニング直後の摂取のほうが筋力と筋肉量が増大しているということがわかっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11507179

【2】アメリカ海軍の新兵対象に訓練直後に摂取する栄養を、①栄養摂取なし、②糖質と脂肪を摂取、③糖質、脂肪、たんぱく質の摂取、の3つのグループに分け、54日間の訓練機関で続けました。結果、③のたんぱく質を与えたグループでは、訓練中に感染疾患、筋肉・関節障害、熱中症などで治療を受けた人の割合が他のグループより30%低下しました。また、運動後の筋肉痛も訓練34日目以降では見られなくなったとの報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14657039

【3】慢性C型肝炎患者対象に、大豆たんぱく質摂取の影響を調べた研究があります。大豆たんぱく質を摂取させることで、肝障害の指標になる血中のアラニンアミノトランスフェラーゼを減少させ、C型肝炎ウイルスによる炎症を改善しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22611313

【4】352名のステージ1高血圧の大人に対して、2003年から2008年にかけて行われた二重盲検クロスオーバー無作為試験の結果について考察されています。大豆たんぱく質あるいは乳たんぱく質の摂取は、最大血圧を低下させることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21768541

もっと見る 閉じる

参考文献

・吉田企世子 安全においしく食べるためのあたらしい栄養学 高橋書店

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・上西一弘 栄養素の通になる第2版 女子栄養大学出版部

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・Esmarck B, Andersen JL, Olsen S, Richter EA, Mizuno M, Kjaer M. 2001 “Timing of postexercise protein intake is important for muscle hypertrophy with resistance training in elderly humans.” J Physiol. 2001 Aug 15;535(Pt 1):301-11.

・Flakoll PJ, Judy T, Flinn K, Carr C, Flinn S. 2004 “Postexercise protein supplementation improves health and muscle soreness during basic military training in Marine recruits.” J Appl Physiol. 2004 Mar;96(3):951-6.

・Oliveira LP, de Jesus RP, Boulhosa RS, Mendes CM, Gnoatto MC, Lemaire DC, Toralles MB, Cavalcante LN, Lyra AC, Lyra LG. 2012 “Effect of soy protein supplementation in patients with chronic hepatitis C: a randomized clinical trial.” World J Gastroenterol. 2012 May 14;18(18):2203-11.

・He J, Wofford MR, Reynolds K, Chen J, Chen CS, Myers L, Minor DL, Elmer PJ, Jones DW, Whelton PK. 2011 “Effect of dietary protein supplementation on blood pressure: a randomized, controlled trial.” Circulation. 2011 Aug 2;124(5):589-95.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ