コラーゲン

Collagen

コラーゲンは、体の弾力をつくり出しているたんぱく質のひとつです。皮膚や骨、血管などに含まれ、細胞と細胞を結ぶ働きをしています。コラーゲンには弾力性があるため、肌ではハリや弾力をもたらす効果、関節痛を緩和する効果、骨を丈夫にする効果、血管ではしなやかさを保ち動脈硬化を防ぐ効果など様々な働きが期待されています。

コラーゲンとは

●基本情報
コラーゲンはたんぱく質の一種で、体を構成している全たんぱく質の約30%を占めています。体内における全コラーゲンの約40%は皮膚に、約10~20%は骨や軟骨に存在し、他にも血管や内臓など全身に広く分布しています。
コラーゲンは細胞同士を結び付ける役割を担っており、骨や軟骨、皮膚、内臓の内側に存在している支持組織と呼ばれる組織に存在します。コラーゲンは、体の内側から他の組織を支え、細胞や組織を結びつけ、外との境界をつくる働きをしています。また、皮膚や腱などではコラーゲン同士が結びつくことでできる弾力に富んだ強固なコラーゲン線維が形成されています。

体内のコラーゲン量は、20歳をピークに年齢とともに減少していきます。また、コラーゲンは様々な組織内で絶えず新陳代謝[※1]を繰り返し、その量を保とうとしますが、年齢とともに新陳代謝のスピードも衰えていくため、20歳代に比べ60歳代では約75%にまで減少します。
また、年齢とともにコラーゲンの質が低下することも近年の研究で明らかにされています。紫外線やストレスによって発生する活性酸素[※2]によっても、コラーゲンの質は低下するといわれています。コラーゲンの質が低下すると、コラーゲンが硬くなりすぎるため分解されにくくなり、変質したコラーゲンが増えています。するとコラーゲンの代謝スピードが落ちて、新しいコラーゲンがつくられにくくなります。そのため肌のハリが失われたり、骨や関節がもろくなると考えられています。さらに血管のしなやかさが失われ、動脈硬化を引き起こします。また、高血糖や高脂血症[※3]なども古いコラーゲンの増加が原因のひとつとして考えられています。

●コラーゲンの歴史
コラーゲンが地球に初めて誕生したのは、6億~8億年前と考えられています。急激な気候変動の影響で酸素が大量につくられるようになり、単細胞生物がコラーゲンをつくり出すことができるようになったとされています。コラーゲンの細胞同士を結びつける性質のおかげで、単細胞生物がより高等な多細胞生物に進化したと考えられています。
1940年代に初めてコラーゲンが電子顕微鏡で観察されて以降、コラーゲンに関する様々な研究が世界各国の研究者によって行われています。今では、コラーゲンが配合されたゼリーやドリンク、サプリメントなどが販売され、人気を高めています。

●コラーゲンの語源
コラーゲンという言葉はラテン語で「膠(にかわ)[※4 ]」と「もとになるもの」を意味する「col (コル)」と「gen(ゲン)」が語源です。 コラーゲンが膠(にかわ)の原料となる動物の骨や皮にたくさん含まれていることが由来であるといわれています。

●コラーゲンの構造とその特徴
コラーゲンは分子が3本の鎖がコイルのように巻かれている3重らせん構造をしているため、伸縮性やしなやかさに富んでいると考えられています。一本一本の鎖は1000個ものアミノ酸がつながってできており、分子と分子の間は様々な化合物で橋のようにらせんが簡単にほどけないようになっています。
コラーゲンの分子は、他のたんぱく質の分子に比べて非常に大きいため、体内では消化されにくいといわれています。

<豆知識①>ゼラチンとコラーゲンペプチド
ゼラチンとは、コラーゲンを加熱して抽出・精製したものです。熱によってコラーゲンの3重らせん構造がゆるやかにほどけ分子が小さくなるため、消化されやすく温水にもよく溶けます。溶けたものは冷えるとゲル状になったり、ゼリーのように固まります。これは、ゼラチンがコラーゲンの時のような3重らせん構造に戻ろうとするためです。
酵素を使ってゼラチンをさらに分解し、低分子化したものがコラーゲンペプチドです。コラーゲンが胃腸で消化された状態をあらかじめつくったものと考えることができます。ゼラチンよりもさらに分子が小さいため、体内への吸収も良くなります。コラーゲンペプチドは、ゼラチンと同じく水溶性ですが、ゼラチンのように低温でゲル状になる性質はありません。

●コラーゲンの種類
現在、体内には29種類のコラーゲンが確認されています。発見された順にⅠ型、Ⅱ型…と名付けられており、構造や分子量によって性質が異なります。人間の体内に特に多く存在しているのは、Ⅰ型コラーゲンとⅡ型コラーゲンです。I型コラーゲンは皮膚や骨、腱などに最も多く含まれており、主に内側から体を支える柱のような働きをしています。Ⅱ型コラーゲンは軟骨に多く含まれており、水分を溜め込み関節を守るクッションのような役割を担っています。

[※1:新陳代謝とは、古い細胞や傷ついた細胞が、新しい細胞へ生まれ変わることを指します。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※3:高脂血症とは、血液中に溶けているコレステロールや中性脂肪値が必要量よりも異常に多い状態をのことです。コレステロールは過剰になると体に障害をもたらします。糖尿病と同様に自覚症状に乏しく、動脈硬化によって重篤な病気を引き起こすのが特徴です。]
[※4:膠(にかわ)とは、動物の皮や骨を煮出して固めたものです。古くから接着剤などとして使われ、現在でもマッチの火薬を固めるのに用いたり、バイオリンなど弦楽器をつくる時の接着剤として用いられています。]

コラーゲンの効果

●美肌効果
肌は、表面に近いところから表皮・真皮・皮下組織の3つの組織に分けられます。コラーゲンは真皮の部分に含まれ、真皮全体の約70%を占めています。線維状のコラーゲンが網の目のように交差し、エラスチンヒアルロン酸とともに肌を内から支え、肌のハリと弾力を保っています。
コラーゲンは、ヒアルロン酸やエラスチンとともに真皮にある線維芽細胞によってつくり出されます。線維芽細胞は新しい組織をつくるとともに古くなったものを分解し、ゆっくりと組織の新陳代謝を行っています。しかし、年齢とともに線維芽細胞の働きは衰え、真皮が古い組織で占められるようになると肌が老化していきます。コラーゲンを摂取することによって体内のコラーゲン合成が活発になり、肌にハリや弾力を与え、しわやたるみを防ぐ効果があると期待されています。【2】【5】【6】

●関節痛を改善する効果
関節痛は骨と骨の間でクッションの役割をしている軟骨が擦り減ってしまうことで起こるといわれています。軟骨の約50%はコラーゲンで構成されており、軟骨に含まれるコラーゲンの代謝が悪くなると古いコラーゲンが残り、弾力性が失われ固くなった軟骨は少しの衝撃で潰されたり、擦り減ったりします。軟骨が擦り減ると、骨同士が直接こすれ合うため、それが痛みとなって現れます。症状がひどくなると、激痛で歩くことも困難な状態を引き起こす場合もあります。
コラーゲンを積極的に摂ることで、軟骨そのものの新陳代謝を活発にすることができるため、関節痛を緩和する効果があるといわれています。【4】

●骨を丈夫にする効果
骨を構成する成分の80%がカルシウムリンなどのミネラル、20%がコラーゲンなどのたんぱく質です。
支えとなるコラーゲンの周りにカルシウムなどのミネラルが付着することで、丈夫な骨がつくられます。近年の研究で、 コラーゲン線維が古くなりカルシウムやリンなどの骨の構成成分がコラーゲンに付着しにくくなると、骨がもろくなり骨粗しょう症につながることがわかっています。【1】【3】

●動脈硬化を防ぐ効果
血管壁の強度と弾力性は、血管の主成分であるコラーゲン線維によって保たれています。
血管が傷ついた際、通常であれば自然と血管を修復する機能が働きますが、コラーゲンが不足すると修復機能がうまく働かず、血管がボロボロになってしまいます。
血管内の傷ついた箇所には、コレステロールなどが付着して血栓ができやすくなります。血栓が増えると次第に血管が狭くなっていき、動脈硬化の症状が現れやすくなります。【7】

●その他の効果
コラーゲンには、爪を強化する効果や白髪・抜け毛を防ぎ美しい髪へ導く効果、筋肉量を増やす効果、創傷の治癒を促進する効果、歯周病を予防する効果、血圧や血糖値を調整する効果などがあるといわれ、医療の分野でも期待が集まっています。

<豆知識②>コラーゲンを摂取する時のポイント
コラーゲンは、牛すじ・鳥の手羽先・鳥なんこつ・豚足・うなぎ・カレイ・フカヒレなど数多くの食品に含まれています。しかし、これらの食品を食べ過ぎると、脂質を過剰摂取する恐れがあるため注意が必要です。コラーゲンをより効率的に摂取できるのは、低分子化されたコラーゲンが利用されているサプリメントなどの健康食品だといわれています。
健康食品のコラーゲンの原料は、牛や豚などに含まれる動物性コラーゲンと魚などに含まれる海洋性コラーゲンの2種類に分類されます。海洋性コラーゲンは動物性コラーゲンの7倍も体内への吸収が優れているといわれています。そのため、コラーゲンをサプリメントなどで摂取する場合は、海洋性コラーゲンが配合されているものを選ぶと良いといわれています。
1日のコラーゲンの摂取目安量は5~10gといわれ、毎日摂り続けることが大切です。
さらに、コラーゲンを合成する時に欠かせないビタミンCや鉄を一緒に摂ることで相乗効果が得られるといわれています。また、関節痛が気になる場合はコラーゲンとともに、カニやエビなどに含まれるグルコサミンやオクラやナメコに含まれるコンドロイチンなどを一緒に摂取すると良いといわれています。

コラーゲンは食事やサプリメントで摂取できます

コラーゲンを含む食品

○豚足
○スジ肉
○鶏軟骨
○鶏皮
○魚皮
○フカヒレ
○エイヒレ

こんな方におすすめ

○肌のハリや弾力を保ちたい方
○しみ、そばかすが気になる方
○関節痛を緩和したい方
○骨粗しょう症を予防したい方
○動脈硬化を予防したい方
○白髪・脱毛を予防したい方

コラーゲンの研究情報

【1】軟骨の細胞(ATDC5細胞)にコラーゲン(Pro-Hyp コラーゲン)を投与したところ、軟骨形成成分グリコサミノグリカンの量が増加したことから、コラーゲンは軟骨の健康を維持するはたらきを持つことが示唆されました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19615963

【2】コラーゲンペプチドを1日0.2g を摂取させたところ、紫外線照射による皮膚の障害が緩和されたことから、コラーゲンが紫外線保護作用を持ち、肌の健康維持に重要な役割を果たすと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19352014

【3】ラットへ、コラーゲンを1日あたり16.6g/kg の量で4週間摂取させたところ、骨密度の増加と骨へのカルシウム沈着が確認されたことから、コラーゲンが骨の代謝に関し、健康維持に役立つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15490264

【4】激しい運動によって発生した関節痛に対する効果を調べました。この試験では,ペンシルバニア州立大学のアスリートを対象として, 1日10g のコラーゲンペプチドまたはキサンタンガムを含む飲料を24週間摂取し,関節痛に対する効果を二重盲検法で評価しました。その結果,対照のキサンタンガムと比較して関節痛が有意に低下することが明らかになりました。このことから、コラーゲンペプチドは関節痛に対して有効に働くことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18416885

【5】コラーゲンを1日あたり0.2 g/kg の量で62日間摂取させたところ、真皮の線維芽細胞の数とコラーゲン線維の直径および密度が有意に増加したことから、コラーゲンが肌に重要な役割を果たすと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16967766

【6】乾燥による肌荒れを自覚している女性を対象として、1日あたり2.5, 5, 10gのコラーゲンペプチドを4週間摂取させたところ、角質層の水分量が増加したことから、コラーゲンが肌の健康維持と保水力維持に有益であると考えられました。
https://ci.nii.ac.jp/naid/10024855120

【7】心臓血管系障害ラットにコラーゲンペプチドを8週間摂取させると、血管弛緩作用が見られ、収縮期血圧の低下が見られました。コラーゲンペプチドは、血圧上昇酵素アンジオテンシン変換酵素を阻害することにより、血圧低下作用と心血管保護作用を示すと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20170381

もっと見る 閉じる

参考文献

・中村丁次 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・吉川敏一 辻智子 医療従事者のための機能性食品(サプリメント)ガイド―完全版 講談社

・真野博 コラーゲン完全バイブル 幻冬舎

・則岡孝子 栄養成分の事典 新星出版社

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・Nakatani S, Mano H, Sampei C, Shimizu J,Wada M. (2009) “Chondroprotective effect of the bioactive peptide prolyl-hydroxyproline in mouse articular cartilage in vitro and in vivo.” Osteoarth Cartilage 17:1620-1627 (2009)

・Tanaka M, Koyama Y, Nomura Y. (2009) “Effects of collagen peptide ingestion on UV-B-induced skin damage.” Biosci Biotechnol Biochem. 2009 Apr 23;73(4):930-2. Epub 2009 Apr 7.

・Wu J, Fujioka M, Sugimoto K, Mu G, Ishimi Y. (2004) “Assessment of effectiveness of oral administration of collagen peptide on bone metabolism in growing and mature rats.” J Bone Miner Metab 22:547-553 (2004)

・Clark KL, Sebastianelli W, Flechsenhar K.R., Aukermann D.F., Meza F., Millard R.L., DeitchJR, Sherbondy PS and Albert A (2008) “24-Week study on the use of collagen hydrolysate as a dietary supplement in athletes with activity-related joint pain.” Curr. Med. Res. Opin., 24, 1485-1496.

・Matsuda N, Koyama Y, Hosaka Y, Ueda H, Watanabe T, Araya T, Irie S, Takehana K. (2006) “Effects of ingestion of collagen peptide on collagen fibrils and glycosaminoglycans in the dermis.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2006 Jun;52(3):211-5.

・Ohara H, Ito K, Iida H. and Matsumoto H. (2009) “コラーゲンペプチド経口摂取による皮膚角層水分量の改善効果” Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi 56 137-145

・Zhang Y., Kouguchi T., Shimizu M., Ohmori T., Takahata Y. and Morimatsu F. (2010) “Chicken collagen hydrolysate protects rats from hypertension and cardiovascular damage.” J. Med. Food,13, 399-405.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ