しょうが

Common ginger  Zingiber officinale Rosc.  Gingembre  Zenzero

しょうがには独特の風味と辛みがあり、冷え性の改善やのどの痛みの緩和に効果があり古くから親しまれています。
何種類もの生理機能成分を持ち様々な薬効があるとして、料理や漢方、お菓子などに幅広く利用されています。

しょうがとは?

●基本情報
しょうがはショウガ科ショウガ属に属する、高さ30~50㎝の多年生[※1]の単子葉植物で、食用としているのは肥大した根の部分です。
日本だけでなく、中国をはじめとするアジア各国、欧米でもよく使用される食材です。
しょうがの学名Zingiber officinale Rosc.のうち、サンスクリット語のsringavera(角形の)とofficinaleは(薬用の・薬効のある)という意味に由来しています。
西洋ではジンジャー、東洋ではショウキョウと呼ばれています。

●しょうがの歴史
原産地のひとつであるインドでは紀元前300~500年前からしょうがが保存食や医薬品として使われていました。
インドの古い医学の書物の中には、その薬効により「しょうがは神からの治療の贈り物である」と記されています。
はるか昔からしょうがは薬効がある食材として人々に重宝されていたことがわかります。
中国では紀元前500年頃に、ヨーロッパでは紀元前1世紀頃に栽培が始まったといわれています。
日本には2~3世紀ごろに中国より伝わり、奈良時代には栽培が始まっていました。
14~17世紀頃にイギリスでペストが流行した際、市民の3分の1が亡くなったにも関わらずしょうがをたくさん食べていた人は亡くならなかったという事実を知った当時の国王は、ロンドンの市長にしょうがの入ったパン「ジンジャーブレッド」をつくるように命じました。これがきっかけで、イギリスをはじめとする欧米ではジンジャークッキーやジンジャーブレッドが日常的に食べられるようになったといわれています。

●しょうがの原産地、生産地
原産地は熱帯アジア(インドからマレーシア半島付近)です。
現在では、熱帯から温帯地域の保湿性の優れた砂壌土・壌土で栽培されています。
日本で一般的に食べられている根しょうがは、7~8月に旬を迎え、この時期に収穫されたしょうがを新しょうがと呼んでいます。根しょうがは約50%が中国からの輸入で、国内では高知県・千葉県・和歌山県で栽培されています。

●日本でのしょうがの利用法
日本では、昔からしょうがを刺身や寿司、豚肉などとあわせて食べてきました。しょうがに殺菌効果があることを経験として知っていたからであると考えられています。
すりおろしたしょうがを薬味にしたり、針切りのしょうがを吸い口として添えて食べますが、しょうがは魚や肉の生臭さを消す効果や殺菌効果があることから、下味をつける際にしぼり汁を加えたり、調理の際に一緒に煮たり蒸したりするなど、調理にも欠かせない食材です。
他にも、しょうが湯・あめ湯・砂糖漬けなど、甘味に用いられることもあります。
食用の他には、風邪薬・健胃消化薬・吐き気止め・鎮痛薬の漢方剤に配合されています。

しょうがは摂取するだけでなく、外用薬として用いられることもあります。
しょうがをすりおろしてつくる「しょうが湿布」や「しょうが風呂」などは、皮膚からエキスを吸収でき、血行促進や体を温める効果が期待できます。

●しょうがの品種
日本には、地域に適した栽培方法で育てられているしょうがの品種がいくつかあります。
茎の先端あたりが赤くなる品種のしょうがには、房州赤芽しょうが・金時しょうが・谷中しょうがなどがあります。
また、根の部分が大きくなる品種の大身生姜や三州芽生姜は若いうちに新しょうがとして収穫されると甘酢漬けや砂糖漬けなどの漬物にされ、食べられています。

・ひね(老成)しょうが…最も一般的なしょうがです。貯蔵してあった前年の根しょうがで、種しょうがとも呼ばれます。筋が入っているものが多いですが、太いものが筋っぽさがなくおいしいとされています。
保存する際は、3、4日間なら、通気の良い紙袋などに入れて、日の当らないところに置いておきましょう。長く保存する際は、みじん切りやすりおろしたものを、1回に使う分ずつラップに包んで冷凍保存をしておくと便利です。
・新しょうが…夏(7~8月)に出回る、収穫したばかりのしょうがです。ひねしょうがとは違い、筋が少なくやわらかいことが特徴です。
・葉しょうが…小指大になった根茎を収穫します。まっすぐでしっとりしていて、葉と根の色がはっきりとしているものを選びましょう。やわらかいため、酢漬けにされることが多いです。
・矢しょうが…「筆しょうが」とも呼ばれ、光を遮って栽培したものをさします。
酢漬けにした「はじかみ」は、焼き魚の盛り付けに使用されます。

●しょうがの特徴
しょうがの特徴は、しょうが特有の強い辛味とさわやかな香りですが、この2つに優れた薬効があります。
​しょうがの辛み成分としてジンゲロン・ショウガオール・ジンゲロールなどがあります。
また、しょうがの皮のすぐ下にある細い管には、精油が含まれています。この精油には400種類以上もの香りの成分が含まれており、様々な働きをします。
例えば、シトラール・ジンギベレンといった香り成分には、魚や肉の臭みの成分と結合してにおいを抑える働きがあり、調理の際に役立ちます。
しょうがには、少量のビタミンB₁ビタミンB₂ビタミンCも含まれています。
通常、野菜にはあまり含まれない微量ミネラルの一種マンガンが含まれているのも特徴です。

[※1:多年生植物とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する植物のことです。]

しょうがの効果

しょうがには、香り成分ガラノラクトン、辛味成分ジンゲロール・ショウガオール・ジンゲロンなど優れた薬効をもつ成分が豊富に含まれており、以下のような働きが期待できます。

●冷え症を改善する効果
しょうがに含まれる香り成分ガラノラクトン、辛み成分ジンゲロールは血管に届き、冷えなどで細くなった血管を拡張させる働きがあります。その結果、血液の流れが良くなり、血行不良による冷え性や体のこわばり、肩こりなども改善できます。
血流が良くなると血液がきれいになり、発汗や排尿、排便が促され余分なものが排出されやすくなる効果もあります。
また、しょうがを加熱すると、ジンゲロールの一部がショウガオールという熱をつくり出す働きをもつ成分に変化します。
そのため、ジンゲロールとショウガオールの2つの成分をもつひねしょうがには、新しょうがよりも全身を温める働きがあるといえます。
特に金時しょうがには、ジンゲロールがひねしょうがの4倍と多く含まれているため、最も体を温める働きがあります。
また、体を温めることで関節の痛みを和らげることができます。膝や腰などの関節の痛みは、体の冷えが原因で起こる場合が多いため、しょうがの体を温める働きがつらい関節の痛みの緩和が期待できます。
しょうがを食べることで3~4時間の保温効果が継続するといわれています。
体温を1℃上げることにより、免疫力が30%上昇するといわれており、風邪などの病気の予防にも適した食材ともいわれています。【8】

●殺菌効果
しょうがに含まれるジンゲロン・ショウガオールには、殺菌効果があることが明らかになっています。
食中毒の予防のみならず、風邪や気管支炎、肺炎などの原因である細菌類や水虫などの真菌、フィラリアや回虫などの寄生虫も駆逐するといわれています。
寿司や刺身に添えられているガリ[※2]は、一緒に食べることで魚の臭みを消すだけでなく、食中毒を予防できます。

●吐き気を抑える効果
しょうがに含まれるジンキベレンという成分には、胃腸の運動が活発になりすぎることによって起こる二日酔いやつわり、胃の不調による吐き気を抑える効果があります。

●胃を健康に保つ効果
しょうがは胃腸の内壁の血行を良くし、胃腸の働きを活発にして食べ物の消化吸収を高めます。
また、しょうがにはジンジベインというたんぱく質を分解する酵素も含まれており胃腸の負担を軽減してくれる働きもあります。
しょうがの辛味成分ジンゲロン・ショウガオールには、胃酸の分泌を促進して消化吸収をととのえ、内臓の働きを活発にし、食欲を増進させる効果があります。
さらに、しょうがには潰瘍を抑え、胃潰瘍の原因であるヘリコバクター・ピロリ菌を殺菌する効果があります。【6】

●炎症を抑える効果
プロスタグランジン[※3]という物質が血中でつくられることにより、炎症や痛みといった症状が現れます。しょうがにはそれらの合成を抑える働きがあるため、抗炎症作用や鎮痛作用があるといえます。関節痛やリウマチに効果があったという研究結果も出ています。
また、摂取するだけでなくしょうが湿布やしょうが風呂などとして外用薬としても用いられます。【3】

●せきやのどの痛みを緩和する効果
香り成分ガラノラクトン、辛み成分ジンゲロールはせきやのどの痛みを暖和する効果があります。

●コレステロール値、血圧を低下させる効果
しょうがに含まれる辛み成分ジンゲロンには、脂肪の燃焼を促進する効果があります。
しょうがを摂取した後に30分程度のウォーキングなどの有酸素運動をすると、血行が促進される効果とジンゲロンによる脂肪の燃焼を促進する効果が合わさり、脂肪の燃焼が加速されます。
​冷えの改善やメタボリックシンドロームの予防や改善にも役立ちます。
また、しょうがには血中の中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールが増えすぎたり、善玉(HDL)コレステロールが少なくなりすぎることを予防、改善する効果もあります。【2】【7】

●アンチエイジング効果
ショウガオールやジンゲロールには抗酸化作用[※4]があり、活性酸素[※5]を除去する効果があるといわれています。
​体内で必要以上に活性酸素がつくられると、細胞が正常に再生できなくなり、老化や病気の原因になってしまいます。
しょうがの抗酸化作用によって、老化防止効果が期待できます。

[※2:ガリとは、しょうがの甘酢漬けのことです。食感がガリガリする、あるいはしょうがを刃物で薄く削る際にガリガリと音がすることからこの名前が付けられました。]
[※3:プロスタグランジンとは、体内に細菌が侵入した時に、体内でつくられるホルモン様物質のことです。炎症、発熱を引き起こす原因と言われています。]
[※4:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※5:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

しょうがは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○冷え性の方
○食中毒を予防したい方
○胃の健康を保ちたい方
○関節痛やリウマチでお悩みの方
○せきやのどの痛みを緩和したい方
○コレステロール値が気になる方
○いつまでも若々しくいたい方

しょうがの研究情報

【1】ラットに、しょうが抽出物を1日あたり 300 mg/kg 投与したところ、インスリン感受性および肝臓のグリコーゲンが高まったことから、しょうがの糖尿病改善効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22234408

【2】高脂肪食摂取マウスに、しょうがの一種高良姜およびジンゲロールを6週間摂取させたところ、コレステロールの生合成が抑制されたことから、しょうがの高脂血症予防および抗肥満効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21954187

【3】高脂肪食摂取ラットに、しょうが抽出物を1日当たり 400 mg/kg を6週間摂取させたところ、炎症関連物質NF-κBの活性が抑制されたことから、しょうがの抗炎症作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21902812

【4】高脂肪食ラットに、しょうがの有効成分ジンゲロール類似体を摂取させたところ、インスリンおよび食欲促進物質レプチンの血中濃度の減少し、脂肪および体重が減少したことから、しょうがの抗肥満作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21851089

【5】健常者28名を対象に、しょうが2 g を摂取させた後、運動したところ、48時間後に痛みの緩和が見られたことから、しょうがの筋肉痛予防効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21031618

【6】ラットに、しょうがを含んだ餌を8週間摂取させたところ、アルコールによる粘膜損傷を低減させることがわかりました。活性酸素による抗酸化酵素の活性の低下が抑制されたことから、しょうがの抗酸化力維持効果と胃粘膜保護効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20383223

【7】マウスに、しょうが250μg を10週間摂取させたところ、動脈硬化や血中トリグリセリド量およびコレステロールに改善が見られたことから、しょうがの高脂血症予防効果と動脈硬化予防効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10801908

【8】しょうがの成分、ジンゲロールとショウガオールは体温調節受容体の1つ(TRPV1)を活性化し、アドレナリンの分泌を促進することがわかりました。しょうがの体温維持効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17176640

【9】成人性変形関節症患者10名に対し、しょうがを摂取させたところ、心身面における症状の改善が見られたことから、しょうがが変形関節症治療に有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20626491

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参考文献

・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦、石川広己、東洋彰宏 健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 株式会社同文書院

・CMPジャパン「ハーブ」プロジェクトチーム 薬用ハーブの機能研究 健康産業新聞社

・石原 結實 生姜力―病気が治る!ヤセる!きれいになる!1週間で効く8つの活用法! 株式会社主婦と生活社

・Chang CJ, Tzeng TF, Chang YS, Liu IM. 2012 “Beneficial impact of Zingiber zerumbet on insulin sensitivity in fructose-fed rats.” Planta Med. 2012 Mar;78(4): 317-25.

・Beattie JH, Nicol F, Gordon MJ, Reid MD, Cantlay L, Horgan GW, Kwun IS, Ahn JY, Ha TY. 2011 “Ginger phytochemicals mitigate the obesogenic effects of a high-fat diet in mice: a proteomic and biomarker network analysis.” Mol Nutr Food Res. 2011 Sep;55 Suppl 2:S203-13.

・Li XH, McGrath KC, Nammi S, Heather AK, Roufogalis BD. 2012 “Attenuation of liver pro-inflammatory responses by Zingiber officinale via inhibition of NF-kappa B activation in high-fat diet-fed rats.” Basic Clin Pharmacol Toxicol. 2012 Mar;110(3): 238-44.

・Okamoto M, Irii H, Tahara Y, Ishii H, Hirao A, Udagawa H, Hiramoto M, Yasuda K, Takanishi A, Shibata S, Shimizu I. 2011 “Synthesis of a new [6]-gingerol analogue and its protective effect with respect to the development of metabolic syndrome in mice fed a high-fat diet.” J Med Chem. 2011 Sep 22;54(18): 6295-304.

・Black CD, O’Connor PJ. 2010 “Acute effects of dietary ginger on muscle pain induced by eccentric exercise.” Phytother Res. 2010 Nov;24(11): 1620-6.

・Prakash UN, Srinivasan K. 2010 “Gastrointestinal protective effect of dietary spices during ethanol-induced oxidant stress in experimental rats.” Appl Physiol Nutr Metab. 2010 Apr;35(2): 134-41.

・Fuhrman B, Rosenblat M, Hayek T, Coleman R, Aviram M. 2000 “Ginger extract consumption reduces plasma cholesterol, inhibits LDL oxidation and attenuates development of atherosclerosis in atherosclerotic, apolipoprotein E-deficient mice.” J Nutr. 2000 May;130(5): May;130(5): 1124-31.

・Iwasaki Y, Morita A, Iwasawa T, Kobata K, Sekiwa Y, Morimitsu Y, Kubota K, Watanabe T. (2006) “A nonpungent component of steamed ginger–[10]-shogaol–increases adrenaline secretion via the activation of TRPV1.”  Nutr Neurosci. 2006 Jun-Aug;9(3-4):169-78.

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・則岡孝子 栄養成分の事典 新星出版株式会社

・野間佐和子 旬の食材 春‐夏の野菜 講談社

・本多京子 食の医学館 株式会社小学館

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 株式会社主婦の友社

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