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作成日 2011年08月20日
更新日 2016年05月19日

アスタキサンチン

astaxanthin  astaxanthine

アスタキサンチンとは、サケやイクラに含まれる強力な抗酸化力を持つ赤色の天然色素です。
栄養が届きにくい細部にまで入り込むことができるため、目の奥や脳までしっかり届きます。
眼精疲労の改善効果や動脈硬化予防効果などが期待されている注目の成分です。

アスタキサンチンの健康効果
◎眼精疲労を改善する効果
◎眼疾患の予防効果
◎強力な抗酸化作用
◎動脈硬化、メタボリックシンドロームの予防効果
◎筋肉の疲労を軽減する効果
◎美白・美肌効果

目次

アスタキサンチンとは

●基本情報
アスタキサンチンとは、別名「海のカロテノイド」ともいわれる赤色の天然色素で、脂溶性[※1]の成分です。カロテノイドとは、天然に存在する色素のことで、ヒトの体内で合成することはできません。種類はとても多く、600種類以上が知られています。色は赤や黄色、オレンジ色などがあります。カロテノイドには、アスタキサンチンのほか、リコピンルテインβ-カロテンゼアキサンチンなどがありますが、数あるカロテノイドの中でもアスタキサンチンは抗酸化力が非常に強いことで知られています。
抗酸化力とは、紫外線やストレスなどによって発生する活性酸素[※2]を除去する力のことです。アスタキサンチンが持つ抗酸化力は、ビタミンEの約1000倍にもなるといわれています。

●アスタキサンチンの体内蓄積
アスタキサンチンは、脂溶性の成分のため、ビタミンAビタミンDなどのように体内蓄積が心配されますが、摂取後約8時間で血中濃度が最大となり、約72時間後あたりから消失することがわかっています。継続的に摂取した場合でも、摂取前後で血中濃度に大きな差が見られなかったため、体内蓄積は起こらないという安全性が確認されています。

●赤色の生物に含まれるアスタキサンチン
アスタキサンチンは自然界に広く分布しており、サケやイクラ、カニ、エビ、マダイなどに多く含まれています。カニやエビに含まれているアスタキサンチンは、生きているときはたんぱく質と結合しているため、くすんだ色をしていますが、加熱することでたんぱく質とアスタキサンチンが分離し、本来の鮮やかな赤色に変わることが特徴です。マグロなどの赤身の魚はアスタキサンチンと思われがちですが、加熱しても赤くならないため、アスタキサンチンではないことがわかります。

●アスタキサンチンの発見
アスタキサンチンとは、1938年、ノーベル化学賞を受賞したオーストリアの生化学者、リヒャルト・クーン[※3]らによってロブスターから発見されました。アスタキサンチンの「アスタ」はロブスターの属名Astacusにちなんで命名されました。

●ヘマトコッカス藻のアスタキサンチン
サケやカニ、エビなどは、アスタキサンチンを持つオキアミなどのプランクトンを捕食することで自身の体にアスタキサンチンを蓄え赤色に染めますが、ヘマトコッカス藻という微細藻は自身の体でアスタキサンチンをつくり出すことができます。ヘマトコッカス藻は、緑藻網で、ヘマトコッカス科ミドモナス目に属している単細胞の植物プランクトンです。最も高濃度にアスタキサンチンを生合成・蓄積することができるとして、近年高い注目を集めています。
ヘマトコッカス藻は淡水に育ち、葉緑体をもって光合成を営んでいます。最大35㎛ほどの卵型をしており、栄養に富んだ培地では、緑色のコロニーをつくり、2本の鞭毛[※4]で遊泳しています。温度、光、栄養、乾燥などの環境が、個体の生活に適さない条件に変わることで、生き残るための手段として、細胞体に胞子を形成し、休眠状態に入ります。これをシスト化[※5]といいます。胞子をつくると同時に、鞭毛を失い、大きな球状体に成長し、アスタキサンチンを合成・蓄積します。これは乾燥や光ストレスから身を守るためだといわれています。
ヘマトコッカス藻の大量培養により、サプリメントや化粧品などの様々な分野で幅広くアスタキサンチンが使用されるようになりました。人間が体内に摂りいれることで、ストレスや紫外線などから身を守ってくれる働きがあります。

<豆知識①>サケの川のぼりの秘密
サケはもともと白身魚ですが、プランクトンから摂取したアスタキサンチンを体内に蓄えることで、長い回遊の旅に耐えることができ、激流の川をさかのぼることができます。サケの回遊は、ストレスや厳しい環境の戦いであり、アスタキサンチンは体内に大量に発生した活性酸素から身を守る役割を果たします。体内に蓄えられたアスタキサンチンが活性酸素を除去することで、疲労を回復させるのです。このアスタキサンチンは卵であるイクラにも受け継がれます。イクラが孵化するまでの間、紫外線などから卵を守る役割をしてくれるのです。

<豆知識②>サケの養殖にはアスタキサンチンが欠かせない
サケは食物連鎖の中で食物を通じてアスタキサンチンを摂取し、筋肉に蓄積させていますが、養殖のサケは意図的にアスタキサンチン含有のエサを与えています。サケの流通業者はその赤みにランクを付け、適度な赤みを持つサケは高値がつきます。アスタキサンチンの添加量をコントロールすることで、消費者好みのサケを生産しています。

<豆知識③>キンギョやニシキゴイの色揚げにはゼアキサンチンが必要
キンギョやニシキゴイの鮮やかな赤はアスタキサンチンの色ですが、これらコイ科魚類はアスタキサンチンを摂取していません。実はゼアキサンチンというカロテノイド系色素を摂取し、体内でアスタキサンチンに代謝変換することで鮮やかな赤を発色しているのです。

[※1:脂溶性とは、油に溶けやすい性質のことです。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※3:リヒャルト・クーンとは、Richard Kuhn、1900年12月3日-1967年8月1日]
[※4:鞭毛とは、毛状の細胞小器官で、遊泳に必要な推進力を生み出す事が主な役目にあたります。]
[※5:シスト化とは、単細胞生物や下等な多細胞生物に存在する、分厚い強固な膜に包まれた休眠体のことです。]

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アスタキサンチンの効果


●眼精疲労を改善する効果
アスタキサンチンは栄養が届きにくい細部にまで入り込むことができるため、目の奥までしっかり届くことができます。そのため、眼精疲労の改善が期待できます。眼精疲労とは、パソコンや携帯電話、読書などで長時間近くを見ていると、目の中の毛様体筋[※6]が緊張状態となります。その状態が慢性化することで、ひどい場合には目の奥の痛みや肩こり、頭痛となって、体に不調が現れてしまうのです。
眼精疲労の症状を訴える健常者にアスタキサンチン6mgを4週間摂取させたところ、調節機能の改善と自覚症状の改善が確認されました。これにより、アスタキサンチンは眼精疲労に効果的だということがわかりました。

●眼疾患の予防効果
アスタキサンチンは、中途失明において高い割合を占めるぶどう膜炎においても効果的であると考えられています。ぶどう膜とは、目の虹彩、毛様体、網膜、脈絡膜に炎症が起こる疾患で、アスタキサンチンの炎症抑制効果が確認されています。
また、網膜の視機能が最も集中する大切な部位である黄斑が加齢によって変性しゆがみや視野狭窄が起こる「加齢黄斑変性症[※7]」にも有効的な成分であると考えられています。ヒトにおける加齢黄斑変性症でアスタキサンチンの摂取がどのような臨床効果を示すのか、今後の研究成果に期待されています。
それ以外にも、緑内障の予防にも役立つと考えられ、現在も研究が進められています。【10】【13】

●強力な抗酸化作用
アスタキサンチンは、体内に必要以上に発生した活性酸素を抑制する強力な抗酸化力により、美白、美肌、さらには視力回復の効果までもが期待されています。また、アスタキサンチンは免疫力を高めたり、アンチエイジングや動脈硬化予防、血流改善と様々な力を兼ね備えています。【16】

●動脈硬化、メタボリックシンドロームの予防効果
アスタキサンチンは脂質の酸化を抑制する働きに優れているといわれています。動脈硬化とは、活性酸素により酸化した悪玉(LDL)コレステロールが血液中に流れ、血管壁に沈着し血管が硬くなってしまうことをいいます。
アスタキサンチンは活性酸素の発生を抑制し、除去してくれるため、動脈硬化を防ぐよう働きかけます。
また肝臓への脂肪沈着を防ぐこともわかっています。さらに肝硬変につながる炎症や線維化[※8]を抑制する効果もみられ、肝炎や肝硬変の予防にも期待が高まっています。
アスタキサンチンには上記の働き以外にも、筋細胞内の脂質を分解する時に必要なたんぱく質の働きを促進させることから、運動中の脂質利用を高めるということがわかっています。このことから、メタボリックシンドローム[※9]予防や改善を目的とした運動療法においても有効であることが考えられます。【1】【9】【12】【14】

●筋肉の疲労を軽減する効果
アスタキサンチンは、運動によって誘発される疲労、特に筋組織における末梢性疲労を軽減することが明らかになっています。筋肉を動かすエネルギー源は、糖質脂質ですが、中等度以上の運動では、糖質(筋グリコーゲン)の利用割合が多くなります。このグリコーゲンの備蓄量が疲労遅延と持久延長を左右します。アスタキサンチンは筋中のグリコーゲン使用量を抑制する働きがあることから、筋疲労の軽減、疲労物質である乳酸の生成を抑制すると考えられています。
また、アスタキサンチンは筋肉痛などの原因である筋損傷を軽減する効果もあるといわれています。筋損傷の原因はいくつか存在しますが、ランニングのような持久的運動では、運動中に発生する活性酸素が主な原因だと考えられています。アスタキサンチンは効率的に活性酸素を除去する働きがあるため、それによって筋損傷を軽減すると考えられています。
また、これらのことから運動パフォーマンスを向上する効果や、アスリートのウェイトコントロールや内臓脂肪減少を目的とした運動療法時にも有用性が期待されています。

●美白・美肌効果
皮膚では紫外線を浴びることによって、顔にシミやシワが多く現れてしまいます。紫外線が原因となって引き起こされるシミやしわを「光老化」と呼んでいます。
光老化皮膚を詳細に解析すると表皮や真皮は厚くなり、真皮に存在するコラーゲンエラスチンといった皮膚のハリや弾力をつかさどる成分が障害を受けます。これがシワの原因となってしまうのです。このシワの発生は、抗酸化剤や抗炎症剤によって予防できることが明らかになっています。アスタキサンチンは活性酸素(一重項酸素[※10])を除去する力が非常に強いため、紫外線による光老化予防効果があるといわれています。【4】【5】【6】【8】

●その他アスタキサンチンの働き
美容系…目尻のしわ取り、抗皮膚老化、皮膚繊維芽細胞における活性酸素の除去
精神系…スポーツ時における緊張の緩和
中枢神経系…免疫力を高める【15】
疾患…抗炎症作用、ミトコンドリアの保護

<豆知識④>脳にまで届くアスタキサンチン
アスタキサンチンは脳にまで入り込むことができる数少ない成分です。脳は人間にとって非常に重要な臓器であるため、入り込むことができる物質は一部に限られています。必要のない物質や有害な物質は脳の入り口にある「血液脳関門」と呼ばれる場所ではじかれてしまい、通過することができません。アスタキサンチンはこれらの関所を通過し、脳までたどり着くことができる優れた成分です。

[※6:毛様体筋とは、目の中にあるピント調節に関わる重要な部分です。ここが凝り固まると眼精疲労につながってしまいます。]
[※7:黄斑変性症(加齢黄斑変性症)とは、目の黄斑部が加齢などによって変性し、ゆがみや視野狭窄が起こり、放置しておくと最悪失明につながる病気のことです。アメリカでの失明率第1位の病気です。]
[※8:線維化とは、組織を構成している結合組織と呼ばれる部分が異常増殖する現象のことです。肝臓全体が線維化すると、肝硬変となります。]
[※9:メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に高血糖、高血圧、脂質異常症のうち2つ以上を合併した状態をいいます。]
[※10:一重項酸素とは、活性酸素の一種です。]

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食事やサプリメントで摂取できます


アスタキサンチンを含む食品

○サケ
○イクラ
○カニ
○エビ
○ヘマトコッカス藻

こんな方におすすめ

○目の疲れが気になる方
○パソコン・テレビ・携帯電話などをよく使われる方
○疲労を回復したい方
○朝起きるのが辛い方
○スポーツをする方
○いつまでも若々しくいたい方

アスタキサンチンの研究情報

【1】 アスタキサンチンは脂肪細胞とマクロファージで、脂肪燃焼促進物質PPARγを活性化することで、抗肥満作用やインスリン抵抗性を改善します。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22732454

【2】 天然のカロテノイド、アスタキサンチンは肝細胞の脂肪蓄積を抑えることで、脂肪肝などの予防が期待できます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22707263

【3】アスタキサンチンは、活性酸素によって生じる炎症性サイトカインの産生を抑制することで、抗炎症作用を有することが明らかとなりました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22690149

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参考文献

・矢澤一良 著 アスタキサンチンの科学 成山堂書店

・アスタキサンチンの眼精疲労回復効果、食品と開発、38,80,2003

・アスタキサンチンによる視機能の変化、 臨床眼科、58,1051,2004

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